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AIの創作物に誰が著作権を持つのか?AIの法律問題を弁護士が解説

AI

はじめに

AI(人工知能)が絵画などのコンテンツを生み出した場合、その著作権は誰のものになるのでしょうか?「AI」なのか、それともAIを作った「」なのか・・・

AIの関係者であれば、一度はこのような疑問を持ったことがあると思います。

AIがレンブラントの作品を真似て新作を創り出したというニュースが出たこともあり、「AIの創作物について誰が著作権を持つのか」が議論されています。ですが、いまだこの点については決着がついていません。

そこで今回は、一弁護士の視点から、AI(人工知能)が作り出した画像・写真などのコンテンツについて誰が著作権を持つのか?などの「AIと著作権」の問題や、広く「AIと法律」の問題について、わかりやすく具体的に解説していきます。

目次

1 AI(人工知能)とは

AIとは
AI(Artificial Intelligence)」とは、人工的に作られた、人間のような知能(人工知能)のことをいいます。そして、AIの中には、「ディープラーニング」という機能が搭載されているものがあります。

ディープラーニング」とは、ざっくりいうと「人間に指示を出されなくても自分で考え発展していく能力」です。この能力によって、AIは、最初から最後まで人間に指示を受けなくても、経験に応じて自己学習していき、ゆくゆくは、色々なことができるようになるのです。その1例として、「AIによるコンテンツの生成」があります。

もっとも、人間のように自己学習し、ドラえもんのように感情と人間以上のレベルの高度な知性を持ったロボット(こういったAIを「汎用型AI」or「強いAI」といいます。)は、現在の技術水準では作れていません。

現在、ビジネスの世界などで活用されているAIは、汎用型AIに比べて数段レベルの低い、「単なる自動化」や、人がやってきたことをロボットに行わせるという意味で「知的作業の代替手段」としてのAIにすぎない(このような意味でのAIを「特化型AI」or「弱いAI」といいます。)ことには注意が必要です。

なお、AIとは何か、また、AIと法的責任の関係について詳しく知りたい方は、「AIの暴走に誰がどんな法律上の責任を負うのか?弁護士が5分で解説」をご覧ください。

2 AIの仕組みと論点の整理

仕組み
AIがコンテンツを生成する過程として、

  1. 学習用データを
  2. 学習用プログラムを使ってAIに学習させ
  3. 学習済みモデルを作成し
  4. 成果物としてコンテンツを生み出す

という流れがあります。
コンテンツ生成過程、

そのため、コンテンツに対する法的保護を検討する際には、これら4つの段階に分けて検討する必要があります。

以下ではまず、成果物としての「コンテンツ」に対する権利関係について検討していきます。

3 AIと著作権の問題

AIと著作権
近時、17世紀オランダ画家・レンブラントの「作風」について、機械学習や顔認識を使って分析し、3Dプリンタを利用して「新作」を創り出すというプロジェクトが実現し、AIによって、レンブラントの作風をまねた新しい作品が生み出されました。

このように、AI(人工知能)が創り出した絵画などのコンテンツについては、誰が著作権を持つのでしょうか?以下で順番に解説していきます。

(1)著作権とは?

著作権」とは、著作物が第三者に無断で利用されたり転載されたりしないように、著作権者を法的に守ってくれる権利のことをいいます。

著作物」とは、人が独自に作り出した画像や文章、音楽や映像などの表現物のことをいい、その著作物を作った人(その著作物について著作権を持っている人)のことを「著作権者」といいます。

創作されたコンテンツが「著作物」にあたる場合、そこには「著作権」が発生します。そして、著作権がある著作物を著作権者の許可なく無断で利用した場合、「著作権侵害」となります。そのため、そのコンテンツは誰でも自由に利用することはできなくなります。

そこで、AIによって生み出されたコンテンツに著作権は発生するのか、また、著作権が発生した場合にこれが誰に帰属するのか、が問題となります。

※なお、著作権とは何か、また、著作物についての引用・転載のルールなどを詳しく知りたい方は、「著作権の引用とは?画像や文章を転載する際の5つの条件・ルール」をご覧ください。

(2)「AIと著作権」が問題となるパターン

AIによるコンテンツと著作権の関係について、「次世代知財システム検討委員会

報告書」などの有識者によるガイドラインによれば、以下の3つのパターンに分けて考えていきます。

  1. 人による創作
  2. AIを道具として利用した創作
  3. AIによる創作

AIと著作権の関係2

メインの議論は「3.AIによる創作」になりますが、以下で順番に確認していきましょう。

4 パターン①:人による創作

人による創作
」によって画像や文章、音楽などの表現物が創作される場合が一番基本的なパターンです。

この場合、著作権法のルールどおり、創作された表現物は当然「著作物」となり、「著作権」は著作物を創作した「著作者」に帰属します(=著作権者)。

これはわかりやすいのですが、問題は、パターン②・③の「AI」の関与によってコンテンツが生み出された場合です。

5 パターン②:AIを道具として利用した創作

AIを道具として使う場合

(1)前提となる「著作物」の考え方

AIと著作権の関係について考える上で、まずは、日本の著作権法において「著作物」がどのように定義されているかを確認します。

著作権法では、「著作物」は以下のように定義されています。

    思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

たしかに、AIでも文学や美術、音楽を創作的に表現することはできます。そのため、AIによるコンテンツも「著作物」として認めてもいいように思えます。ですが、結論から言うと、人間の創作的関与が無く、AIのみによって作り出されたコンテンツについては、著作権法上の「著作物」として認められません。そうすると、このようなコンテンツについては「著作権」が発生しないことになります。

ここでポイントになるのが、上で示した著作物の定義にある「思想又は感情」を創作的に表現したもの、という部分です。この点について、一般的には、著作物とはあくまでも人が思想や感情を創作的に表現したものである、と理解されています。そのため、AIによる創作物が「著作物」として認められるためには、思想又は感情を表現するための「人の創作的な関与があること」が必要になるのです。

(2)AIを道具として利用した場合どうなるか

上記の考え方からすると、人がAIを道具として利用しコンテンツを作った場合は、思想又は感情を表現するにあたって「人の関与」があるといえます。そのため、そのコンテンツは「著作物」となり、「著作権」が発生します。

そして、この場合、AIはあくまでも「道具」として利用されているだけで、コンテンツ制作の主体であり思想又は感情を表現しているのは「」です。そのため、コンテンツ(著作物)についての著作権は人に帰属することになります。人がパソコンを使ってCGを制作した場合、そのCGについての著作権は当然それを作った人に帰属する、と考えられているのと同じ理屈で検討すると、わかりやすいかと思います。

6 パターン③:AIによる創作物

AIによる創作

(1)AIの創作物に著作権は認められない

こちらも上記の考え方を前提に検討していきます。

パターン③は、AIが主体となってコンテンツを制作した場合です。このケースでも、予め人からAIに対する「コンテンツを作成してくれ」という指示はあります。そのため、創作過程において「人の関与」があると考えられ、出来上がったコンテンツは「著作物」として「著作権」が発生するようにも思えます。

ですが、「著作物」として認められるためには、「人の思想や感情を創作的に表現していること」が必要でした。今回のパターンでは、人はコンテンツ制作についての指示を出しているだけで、コンテンツ制作の主体はあくまでもAIです。そうすると、このようにして作り出されたコンテンツは、「の思想や感情が表現されている」ということはできません。そのため、「著作物」にはあたらず、「著作権」も発生しません

冒頭で紹介したレンブラントの新作はこのパターンにあたるため、著作権によって保護されないことになります。

では、AIが独自に生み出したコンテンツは全く保護されること無く、誰でも自由に利用できてしまうのでしょうか?次の項目で検討していきます。

(2)AI独自のコンテンツはまったく保護されないのか?

AIが独自に生み出したコンテンツが著作権によっては保護されないとしても、何にも守られること無くフリーライドが横行すれば、苦労してAIを作った開発者は報われません。そのため、何かしらの形で保護してあげる必要があります

この点、「政府の知財計画2016」では次のように述べられています。

    フリーライド抑制の観点から、市場に提供されることで一定の価値を持つようになったAIコンテンツについては、新たに知的財産として保護が必要となる可能性があり、知財保護のあり方について具体的な検討が必要である。

要するに、AIがコンテンツを生み出したことそれ自体を保護するのではなく、価値を持ったことに対して保護を図る、ということです。

また、以下のようにも述べられています。

    AIが自律的に作り出したコンテンツのうち、商標については、商標法による保護対象となることが考えられる。

これらをまとめると、AIが独自に作り出したコンテンツのうち、今後知的財産として保護される可能性のあるものは、

  • 世に出て多くの人に知られた結果、財産的価値をもつようになったもの
  • 商標などにつき、登録されたもの

となります。

7 AIと他の法律上の問題点

その他の法律
ここまでは、創作過程でAIの関与があるコンテンツについて、著作権がどうなるのかを解説してきました。

AIがコンテンツを生み出せるようになる前提として、①大量のデータを、②特別なプログラムを使ってAIに学習させ、③学習済みのAIモデルを作る、という段階を踏む必要があります。

そこで次の項目から、AIのプログラムそのものや学習済みモデルが知的財産として保護されるのかどうか、

  1. 学習用データ
  2. 学習用プログラム
  3. 学習済みモデル

の3つに分けて順番に検討していきたいと思います。

8 「学習用データ」

学習用データ

(1)学習用データは法律上保護されるか?

AIに学習させるためには、まずは大量のデータが必要となります。このとき、AIを商業利用するのであれば、自社が保有しているデータを利用するケースが多いと思います。

会社にとって自社が保有しているデータというのは、収集から処理、整理まで大変な労力と技術が必要になります。そのため、これらのデータは大きな価値を持ち、貴重なものといえます。

そこで、このデータが知的財産として保護されるかどうかは、AIビジネスを行う上で重要な問題となります。

以下では、学習用データがどのような形で保護される可能性があるのかを、

  1. 営業秘密
  2. データベースの著作物
  3. 発明
  4. 民法上の不法行為に基づく損害賠償請求

の4つに分けて解説します。

①「営業秘密」として保護されるか?

営業秘密」とは、企業などが保有している情報のうち、公には知られていない、独自の技術上・営業上の情報のことをいいます。

もっとも、このような秘密情報は、むやみやたらに保護されるわけではありません。

営業秘密として保護されるためには、以下の3つの要件をみたす必要があります。

  1. 「秘密」として管理されていること(①秘密管理性)
  2. 生産方法や販売方法、その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(②有用性)
  3. 公然と知られていないこと(③非公知性)

AIについては、「②有用性」は問題なく認められるでしょう。また、「①秘密管理性」についても、情報を非公開とし、会社社内部でも特定の権限ある人だけがアクセスできる(アクセス制限)形にすることで、この要件をみたします。

そして、「③非公知性」とは、いまだ世の中の誰にも知られてないことを意味します。

学習用の社内データをすでに商品として販売していたような場合は、この「非公知性」の要件をみたさず、営業秘密として保護されないので注意が必要です。

AIに学習させるために自社で保有しているデータを使う場合、通常、そのデータは秘密情報として管理していることがほとんどです。そのため、上記の3つの要件をみたすこととで、その学習用データは「営業秘密」として不正競争防止法上保護されます

②「データベースの著作物」として保護されるか?

データベース」とは、論文や数値、図形、その他の情報の集合物で、これらの情報をパソコンなどを使って検索できるように体系的に構成したもののことをいいます。このデータベースのうち、「情報の選択や体系的構成に創作性が認められるもの」については、著作物として保護されます。

データベースというのは、パソコンなどによって効率的に素早く検索できる点に価値があるため、そのために情報を並べ替えたり取捨選択が行われています。ここにデータベース作成者の創意工夫が凝らされているのであれば、ちゃんと著作物として保護してあげましょう、というものです。

AI学習用のデータも、検索しやすい体系的な構成となっていて、その構成に創作性が認められるのであれば、「データベースの著作権」として保護されます

反対に、学習用データが、上に指摘したように、有意味な「体系的な構成」をしていない場合には、「データベースの著作物」として保護されない可能性があります。

加えて、学習用データが「データベースの著作物」として保護されない場合に、そこに含まれるそれぞれデータが「著作物」として保護されるものであったとしても、後で説明する「情報解析のための複製等の例外規定(著作権法47条の7)」が適用される可能性があります。これによって、競業他社による複製や二次利用をされてしまうリスクがあることには注意が必要です。

③「発明」として保護されるのか?

特許法では、「プログラム」を「物の発明」として保護しています。そのため、AI学習用のデータが「プログラム」にあたれば、「発明」として保護される可能性がある、と考えられます。

特許法上、「プログラム」は次のように定義されています。

  1. 電子計算機に対する指令であって、一つの結果を得ることができるように組み合わされたもの
  2. その他電子計算機による処理の用に供する情報であって、プログラムに準ずるもの

電子計算機」とは、簡単にいうとコンピュータのことをいい、特許法で保護されるプログラムとは、プログラムそのものというよりは、プログラムの背景にある「アイデア」です。

もっとも、仮に学習用データが「プログラム」にあてはまったとしても、これが「発明」として認められるかどうかはまた別の問題です。特許法上、「発明」は、以下のように定義されています。

    「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

学習用データそのものが、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」にあたるかというと、実際はほとんどのものがあてはまらないと考えられます。

そのため、特許法上の「発明」として保護される可能性はとても低いといえます。

④民法上の不法行為に基づく損害賠償請求の可能性(事後的救済)

①~③までは、学習用データが知的財産として何らかの保護を受けられるのか、という事前的救済について解説してきました。では、仮にこれらのどれにも当てはまらなかった学習用データが第三者から侵害された場合に、事後的救済として損害賠償請求をすることはできるのでしょうか。

この点、判例では、著作物として認められないもの(=著作権法上保護が否定されるもの)については、特段の事情がない限り、侵害行為に対して損害賠償請求をすることはできない、と判断されています。

この判例は学習用データについてのものではないため、今後救済措置が取られる可能性は否定できません。ですが、少なくとも現段階においてはこの判断をベースにする必要があり、学習用データの扱いは慎重に行うべきであると考えられます。

(2)大量のデータ読み込みと情報解析の例外

ここまでは、AIの学習用データとして「自社が保有するデータ」を使用する場合に、これが知的財産として保護を受けるのかどうかを解説してきました。

これとは反対に、「自社が保有するデータ以外のもの」を使ってAIに学習させる場合もあるかと思います。たとえば、インターネット上にアップされている画像や文章などをAIに読み込ませる場合です。このとき、仮にこれらのデータが「著作物」にあたるとすれば、これらを無断で利用することは「著作権侵害」となる可能性があります。そのため、他者の著作物を利用する場合には、原則としてきちんと著作権者の許可を得なければなりません。

もっとも、著作権法では例外として、

    「他人の著作物であっても、コンピュータなどによる情報解析を目的とする場合には、必要と認められる限度において記録媒体への記録や翻案をすることができる」

と定められています。

そのため、大量のデータの中から特定の情報を選んで分析を行うような「学習」をさせるケースは、「情報解析を目的とする場合」であるといえ、上記例外にあてはまることになります。そのため、このような場合には、他人の著作物を無断で利用したとしても、書作権侵害にはあたりません

自社の保有データ以外のものを利用する場合には、

  1. そのデータが著作物にあたるかどうか
  2. 著作物の場合、学習の態様が著作権法上の例外にあてはまるかどうか(著作権者の許可は不要になる)
  3. 例外にあたらないのであれば、そのデータの利用につき著作権者の許可はとっているか

の3点をしっかり確認することが大切です。

9 「学習用プログラム」

学習用プログラム
AIに学習させるための「学習用プログラム」はどのような法的保護をうけるのでしょうか。

この点、プログラムそのものについては著作権法上の「プログラムの著作物」として保護されます。また、プログラムの中身であるアルゴリズム(処理のやり方)については、特許法上の「物の発明」として保護されると考えられます。

さらに、プログラムが社内の秘密情報として扱われるものであれば、不正競争防止法上の「営業秘密」として保護される可能性があります。

10 「学習済みモデル」

学習済みモデル

(1)学習済みモデルは法律上保護されるか?

AIに大量のデータを学習させた「学習済みモデル」は、もともと空っぽだったAIに中身を入れてあげたもので、いわば「より賢くしたAI」といえ、価値のあるものといえます。そのため、このような学習済みモデルがどのように保護されるのかは重要な問題となります。以下で順番にみていきましょう。

①「プログラム」として保護されるか?

まずは著作権法上の「プログラム」として保護されないかを検討します。

著作権法上の「プログラム」として認められるためには、コンピュータを機能させてある結果を得ることができるように、指令を組み合わせたものである必要があります。

しかし、学習済みプログラムは「指令を組み合わせたもの」ではなく、数、行列やパラメータなどの形式で自動出力される、ただの数字の羅列にすぎず、それ自体に著作物としの「創作性(=個性)」はありません。そのため、著作権上の「プログラム」としては保護されない可能性が高いといえます。

②「発明」として保護されるか?

また、特許法上の「発明」として保護されるかというと、プログラムの関数そのものは発明として認められないとされているため、こちらも難しそうです。

③「営業秘密」として保護されるか?

学習済みモデルの場合も、①秘密管理性、②有用性、③非公知性の3つをみたす場合には営業秘密として保護することが可能です。

もっとも、プログラムと学習用データが公に広く知られている場合には、学習済みモデル自体を秘密として管理していても、③非公知性の要件をみたさない可能性があります。

一方、売り切り型の機器に学習済みモデルを搭載する場合には、システムの暗号解除が困難な状態になっていれば、③非公知性の要件をみたす可能性があります。

(2)学習済みモデルを用いた製品は法律上保護されるか?

次に、学習済みモデルを使った製品を販売する場合について検討します。

この場合、製品を作るための学習済みモデルそのものについては「営業秘密」として不正競争防止法による保護を図り(3要件をみたす場合)、出力結果のみを外部に提供して、技術的な部分に関しては社外に漏れないようにする、という方法が考えられます。

また、製品を販売する際に、技術的な部分にプロテクトをかけて保護を図ることもできます。ただし、不正競争防止法上は、プロテクトの解除は禁止されていないため、確実に保護できるかというと怪しいところです。

(3)蒸留モデルは法律上保護されるか?

学習済みモデルにデータの入出力を繰り返して、その出力結果や元の学習用データを別のAIに学習させ、同性能の別モデルを作る、という方法(これを「蒸留(distillation)」といいます。)があります。このようにして作られたモデルを、「蒸留モデル」といいます。

蒸留モデルの作り方3

この「蒸留行為」では、入力データ・出力データを利用して元の学習済みモデルと全く異なる形を構成するため、関連性を証明することができなくなります。そのため、元の学習済みモデルが著作権法上は著作物として保護されるとしても、これを元に第三者に蒸留モデルなどを生成された場合に、元の学習モデルとの関連性や依拠性を証明することができず、元のモデルを作成者権利者は、差止めや損害賠償請求といった権利行使ができない可能性が高くなります(参照:知的財産戦略本部 新たな情報財検討委員会第2回議事録)。これでは、学習済みモデルをたとえ著作物として保護したとしても、結局は元のモデルの権利者は救済されず、保護するといっても絵に描いた餅にすぎません。

この点が、蒸留モデルの問題点といえます。ビジネス的にいえば、「フリーライド」をどこまで許すのか?の問題ともいえます。

他方で、特許法の場合は、元のモデルとの関連性や依拠性が立証できなくても保護を図ることができるため、こちらでは蒸留モデルが保護される可能性があります。

11 小括

まとめ
「AIが生み出したコンテンツ」といっても、その法的保護を検討する際には、①生成されたコンテンツ自体の保護の問題と、②コンテンツを生成するためのAIの作成過程での保護の問題があります。

どちらも、まだはっきりとした規制や考え方が確立されていないため、現行法の中であてはめて考えるしかありません。ここまでの解説でやや難しい部分もあったかもしれませんが、これからAIを使ったコンテンツ生成ビジネスを行おうと検討している方は、まずは現時点での考え方を把握しておくことが大切です。

12 まとめ

これまでの解説をまとめると以下のとおりです。

  • 「AI(Artificial Intelligence)」とは、人工的に作られた、人間のような知能(人工知能)のことをいう
  • AIビジネスでは、大きく分けて、①「学習用データ」、②「学習用プログラム」、③「学習済みモデル」および④「成果物」の4つがどのような保護を受けるかを検討することが必要
  • 成果物については、①人による創作、②AIを道具として利用した創作、③AIによる創作の3つに分けて検討する必要がある
  • AIが独自に作り出したコンテンツのうち、今後知的財産として保護される可能性のあるものは、①世に出て多くの人に知られた結果、財産的価値をもつようになったもの、②商標などにつき、登録されたものとなる
  • 学習用データは、自社保有のデータを利用する場合、①営業秘密、②データベースの著作物、③発明、④民法上の不法行為に基づく損害賠償請求の4つの形で法的保護の可能性を検討する
  • 第三者のデータを学習用データに利用する場合は、著作権侵害とならないように注意しなければならない
  • ただし、大量のデータの中から特定の情報を選んで分析を行うような「学習」をさせるケースは、他人の著作物を無断で利用したとしても、著作権侵害にはあたらない
  • 学習用プログラムは、①プログラムの著作物、②物の発明、③営業秘密として保護される可能性がある
  • 学習済みモデルは、①著作権法上の「プログラム」としての保護、②特許法上の「発明」としての保護が考えられるが、どちらも保護される可能性は低い
  • 学習済みモデルを使った製品については、モデルそのものを営業秘密として守る方法がある
  • 蒸留モデルは、著作権法上は保護されない可能性が高いが、特許法上は保護される可能性がある

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