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仮想通貨交換業の法律規制とは?改正資金決済法を弁護士が5分で解説

仮想通貨交換業の規制

はじめに

ビットコインやイーサなどの「仮想通貨」に関し、近時「資金決済法」が改正されて「仮想通貨交換業」の規制が導入されました。ですが、改正の中身をきちんと理解し、実務に落とし込めている方は、少ないのではないでしょうか?

昨今、「ICOを日本国内で行って資金調達をしたい」「仮想通貨の取引所を開設したい」といった仮想通貨によるビジネスに参入する企業がとても増えています。

いずれのビジネスを行う場合でも問題となるのが、今回の「改正資金決済法(通称:仮想通貨法)」という法律による「仮想通貨交換業」の規制です。

そこで以下では、そもそも、「仮想通貨」とは何か?から始まり、仮想通貨交換業の規制を中心に、改正資金決済法により新たにどのような規制がなされのたかをわかりやすく丁寧に解説していきます。

目次

1 改正資金決済法とは

改正資金決済法

改正資金決済法」とは、図書券などの商品券や、Suicaなどの電子マネーに関するルールを定めた「資金決済法」に、新しくビットコインやイーサリアムなどの「仮想通貨」に関するルールを加えたものをいいます。

仮想通貨の普及に対して法整備が追いついていなかったため、時代の変化に対応させるべく、2017年4月1日に改正資金決済法が施行されました。

(1)改正の背景

資金決済法が改正された背景には、以下の2つの事情があります。

  • マネーロンダリング対策
  • 利用者の保護

①マネーロンダリング対策

マネーロンダリング」とは、犯罪によって得られた資金の出所をわからなくするために、他人名義や架空の銀行口座等を使って何回も送金を繰り返すことなどをいいます。

仮想通貨は、その性質上、資金の移転が簡単にすばやく行えます。海外では実際に、仮想通貨を使った巨額のマネーロンダリング事件が起きていたこともあり、仮想通貨の犯罪への悪用防止が急務となりました。

②利用者の保護

2014年、当時世界最大規模の仮想通貨交換所だったマウント・ゴックス社が破綻しました。後日明らかになったのは、マウント・ゴックスがユーザーから預かっていた資金や仮想通貨の額に対して、実際に保有する額が大幅に減っていた、というもので、大きな社会問題となりました。この流れを受けて、仮想通貨ユーザーの保護を図る必要性が高まったのです。

このような状況を踏まえ、ユーザーの信頼を確保するため、資金決済法を改正して仮想通貨に関するルールを新しく設けることとなりました。

(2)改正資金決済法のポイント

資金決済法の改正により新たなルールがいくつか定められましたが、その中でもポイントとなるのが以下の2つです。

  • 法律上の「仮想通貨の定義」が定められた
  • 仮想通貨交換業の登録制・各種規制が導入

これまでは仮想通貨についてとくに明確な定義がありませんでしたが、2017年の改正で、「仮想通貨は支払手段の1つである(財産的価値を持つ)」と定められました。

また、仮想通貨の取扱をする事業者を「仮想通貨交換業」と定め、登録制や各種規制が導入されました。

改正資金決済法について、「仮想通貨の定義」も含めて詳しく知りたい方は「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

(3)ガイドライン等

改正資金決済法の施行に伴って、監督官庁である金融庁などから、「仮想通貨交換業者に関する内閣府令案」と「事務ガイドライン(仮想通貨交換業者関係)」が公表されました。それぞれ、どのような事業内容が仮想通貨交換業の登録が必要となるのか、また、仮想通貨交換業への規制の具体的な内容が示されています。

これから仮想通貨交換業としてサービスを行いたいと検討している事業者の方は、内閣府令案や事務ガイドラインに書かれている内容をしっかりと把握し、理解することが重要です。

2 仮想通貨の定義

仮想通貨とは

仮想通貨」とは、インターネットを通じてユーザー同士が直接やりとりできる通貨のことをいいます。私たちが普段使っているお金のように、国などの公的な発行主体や管理者は存在せず、専門の取引所を通じて円やドルなどと交換することができます。また、仮想通貨には普段私たちが使っている紙幣や硬貨などのような「実物」が存在せず、すべてデータとして管理されています。

改正資金決済法では、以下の2種類が仮想通貨として定義されています。

  • 1号仮想通貨(不特定の人に対して、物を売ったり買ったりするときに使用することができるもの)
  • 2号仮想通貨(1号仮想通貨と交換できるもの)

「1号仮想通貨」の代表的な例はビットコインです。そして、ビットコイン以外の多くの仮想通貨は「2号仮想通貨」にあてはまります。

仮想通貨の定義についてさらに詳しく知りたい方、また、電子マネーとの違いについて知りたい方は、「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

3 「仮想通貨交換業」とは?

仮想通貨交換業

「仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売り買いや交換、またはこれらの媒介などをするサービスのことをいいます。そして、このようなサービスを行う事業者のことを「仮想通貨交換業者」といいます。

先日、コイン流出事件で話題となった「コインチェック」や、CMでよく目にする「ビットフライヤー」のように、独自に取引所や交換所を運営し、仮想通貨に関するサービスの提供をする事業者が仮想通貨交換業者の典型例です。

改正資金決済法では、仮想通貨交換業の定義が以下のように細かく定められています。

  1. 仮想通貨の売買または仮想通貨同士の交換をすること
  2. 上記の行為の媒介・取次・代理をすること
  3. 1・2の行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすること
  4. 1~3の行為を「事業」として行うこと

上記1~3の「いずれか」にあてはまり、かつ、これを「事業」として行う場合に、仮想通貨交換業の登録が必要となります。なお、3については1と2の行為に関するものというしばりがあるため、実質的に判断すべきは、「1または2にあてはまる行為を事業として行っているかどうか」となります。

以下で各要件について詳しくみていきましょう。

(1)仮想通貨の売買または仮想通貨同士の交換をすること

「仮想通貨の売買または仮想通貨同士の交換」とは、事業者自身がユーザーの相手方となって、仮想通貨を売ったり買ったり、また、違う種類の仮想通貨同士を交換することをいいます。たとえば、ビットコインを買いたいユーザーに対して、事業者がビットコインを売る場合です。

また、仮想通貨を送付する業務(円やドルなどを送金するのと同じこと)でも、売買や交換と同じ仕組みを使って行うのであれば、「売買または交換」にあたります。

(2)上記の行為の媒介・取次・代理をすること

媒介・取次・代理」とは、事業者自身は直接取引きの相手方とはならず、ユーザーからの売買・交換の注文を仮想通貨交換業者や他のユーザーへとつなげる行為をいいます。

たとえば、ユーザー同士の買い注文・売り注文をマッチングしたり(=媒介)、ユーザーの代わりに仮想通貨を買う場合(=取次・代理)をいいます。

(3)1・2の行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすること

これは、取引所などで、ユーザーが保有している仮想通貨や取引に使うためのお金を管理することをいいます。ただし、「仮想通貨の売買・交換・媒介等に関して」というしばりがあるため、これ以外の理由でユーザーのお金や仮想通貨を管理する場合はあてはまりません。

(4)1~3の行為を「事業として」行うこと

「事業として」行うとは、1~3に当てはまる行為を反復継続して行うことをいいます。もっとも、「事業として」行われているかどうかは、個別具体的に、実質的な判断がなされる点には注意が必要です(「仮想通貨事務ガイドライン」参照)。

以上4つの要件にあてはまる場合には、「仮想通貨交換業」の登録が必要となります。

なお、仮想通貨交換業の登録方法・手続きの詳細を知りたい方は、金融庁が出している「仮想通貨に関連する事業を行うみなさまへ」をご覧ください。

次の項目では、自社の事業が「仮想通貨交換業」に当てはまる場合、どういった規制がされるのかについて解説していきます。

4 仮想通貨交換業への規制内容

仮想通貨交換業の規制

仮想通貨交換業への規制は、大きく分けて、以下の4つに分かれます。

  1. 財務規制
  2. 行為規制
  3. 監督規制
  4. マネロン規制

それぞれの規制について、詳しくみていきましょう。

5 仮想通貨交換業への規制その1:財務規制

財務規制

改正資金決済法は、仮想通貨交換業の登録にあたり、以下の要件を備えることを求めています。

  • 資本金額が1,000万円以上であること
  • 純資産額がプラスであること

このような規制を設けたのは、仮に資金が不足してしまうと、ユーザーから預かっている仮想通貨などを仮想通貨交換業者が使い込んでしまうおそれが出てくるからです。ですので、この2つの要件を満たしていない企業が仮想通貨交換業の登録を申請したとしても、拒否されることになります。

6 仮想通貨交換業への規制その2:行為規制

行為規制

仮想通貨交換業者は、以下に述べた事項を守ることを義務として課されています。

  1. 名義貸しの禁止
  2. 情報の安全管理義務
  3. 委託先に対する指導
  4. 利用者の保護等に関する措置
  5. 利用者財産の管理義務
  6. 指定仮想通貨交換業務紛争解決機関との契約締結義務など

以上6つの事項のうち、特に重要な①情報の安全管理義務、②利用者の保護等に関する措置、③利用者財産の管理義務について、以下で解説していきたいと思います。

(1)情報の安全管理義務

改正資金決済法は、「仮想通貨交換業者は、内閣府令で定めるところにより、仮想通貨交換業に係る情報の漏えい、滅失または毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならない。」と定めています。この規定は、仮想通貨交換業者に対し、ユーザーの情報を安全に管理するための体制を作るように求めた規定です。具体的には、以下の5点を内容としています。

  1. リスク認識と適切な人員の配慮
  2. 社内規則は作っているか
  3. 情報セキュリティ対策はしているか
  4. システム障害等の緊急時の対応プランを作っているか
  5. システム障害等が発生した場合の対応

それぞれについて、具体的に見ていきましょう。

①ポイント1:リスク認識と適切な人員の配置

    【ポイント1-1】
    代表取締役は、システム障害やサイバーセキュリティ事案(以下「システム障害等」という。)の未然防止と発生時の迅速な復旧対応について、経営上の重大な課題と認識し、態勢を整備しているか

情報安全管理義務における一つ目のポイントは、仮想通貨交換業者の役員陣において、システムリスクをきちんと認識し、リスクに対応するための適切な人員を配置しているか?ということです。

システムが安全かつ安定的に運用されていなければ、仮想通貨交換業者に対する信頼性は確保されません。

「情報安全管理義務」の最終的な目的は、ハッキングなどの不正アクセスによる情報流出を未然に防ぐことにあります。ですが、そもそもの前提として、代表者をはじめとした経営陣がそういった「システムリスク」をきちんと認識していなければ、対処のしようがありません。

そこで、仮想通貨交換業者の役員陣は、システムリスクの内容と、これを未然に防止する方法や万が一のトラブル発生時における対処法などをきちんと把握しておくことが必要になるのです。

    【ポイント1-2】

  • 取締役会は、システムリスクの重要性を十分に認識した上で、システムを統括管理する役員を定めているか。なお、システム統括役員は、システムに関する十分な知識・経験を有し業務を適切に遂行できる者であることが望ましい
  • 代表取締役及び取締役(指名委員会等設置会社にあっては取締役及び執行役)は、システム障害等発生の危機時において、果たすべき責任やとるべき対応について具体的に定めているか。また、自らが指揮を執る訓練を行い、その実効性を確保しているか

さらに仮想通貨交換業者は、こういったシステムリスクを認識した上で、実際にシステムリスクが顕在化するのを防ぐための管理体制を設ける必要があります。

具体的には、システム統括管理役員(※CTOのイメージ)を置くこと、また、CTOに限らず役員陣全体も、トラブル発生時に実践的な指揮をとれるようなトレーニングを積むことが求めらます。

システム統括管理役員には、システムに詳しい人を配置することが望ましいとされています。そのため、システムに関する業務をやった経歴のない方がこのポジションにつくのは不適切です。

②ポイント2:社内規則は作っているか?

システムリスク管理の基本方針が定められているか。システムリスク管理の基本方針には、セキュリティポリシー(組織の情報資産を適切に保護するための基本方針) 及び外部委託先に関する方針が含まれているか。

社内において、システムリスクを管理するための基本方針を定めなければなりません。この基本方針には、セキュリティポリシー(組織の情報資産を適切に保護するための基本方針)と外部委託先に関する方針が含まれているかどうかが重要なポイントになります。

個人情報保護法において、企業はプライバシーポリシー(個人情報におけるその収集や管理などに関する方針)などを作成して公表しなければならないとされています。仮想通貨事業者が保有する情報は、特に重要な情報ですので、社内においてきちんとしたルールを作り、情報を守ることが必要になるのです。

なお、システムのリスク管理について、そのリスクは、客観的な水準によって判断できるものを根拠としていなければならず、また、システムの管理態勢については、定期的に外部機関などの第三者により評価を受けることが推奨されています。

③ポイント3:情報セキュリティ対策はしているか?

    【ポイント3-1】
    コンピュータシステムの不正使用防止対策、不正アクセス防止対策、コンピュータウィルス等の不正プログラムの侵入防止対策等を実施しているか

仮想通貨交換業は、重要な情報を扱いますので、その分、不正なアクセスを受けるおそれや重要な情報が漏えいする危険性が高くなります。

そのため、仮想通貨交換業者は、管理体制を強化すべく、コンピュータシステムの不正使用防止対策、不正アクセス防止対策、コンピュータウィルスなどの不正プログラムの侵入防止対策などをとることが重要になってきます。

つまり、仮想通貨交換業者において、不正アクセスやコンピュータウィルスに関する対策をきちんと構築しておくことが重要なのです。

講ずべきセキュリティの水準は、仮想通貨交換業者が提供するサービスの内容に応じて判断されるため、サービスの規模などに応じて、適切なサービスを提供するためのシステムを整える必要があります。

    【ポイント3-2】
    洗い出した利用者の重要情報について、重要度判定やリスク評価を実施しているか。 また、それぞれの重要度やリスクに応じ、以下のような情報管理ルールを策定しているか。

  • 情報の暗号化・マスキングのルール
  • 情報を利用する際の利用ルール
  • 記録媒体等の取扱いルール

個人情報が流出したというニュースを一度は目にしている方が多いのではないでしょうか。あの種の事件は、外部からの不正アクセスが原因であることが少なくありません。このような事件を起こさないためにも、仮想通貨交換業者は、重要な情報を暗号化・マスキングして、情報から特定の個人や企業が識別されないようにするなど、具体的な取扱基準を決めておく必要があります。

併せて、情報を利用する際のルール情報が含まれる記録媒体を取り扱う際のルールをきちんと作り、また、利用者の重要情報の管理状況を適宜検証できる態勢をとっていることも必要です。

④ポイント4:システム障害等の緊急時の対応プランを作っているか?

  • システム障害などが発生した場合に、利用者に対し、無用の混乱を生じさせないよう適切な措置を講じているか
  • システム障害などの発生に備え、最悪のシナリオを想定したうえで、必要な対応を行う態勢となっているか
  • システム障害などの発生に備え、外部委託先を含めた報告態勢、指揮・命令系統が明確になっているか

システム障害を防止するための対策をとらなければならないことは既に説明しましたが、それでも、実際にシステム障害が生じる可能性は十分に考えられます。

そこで、システム障害が実際に生じた場合を想定して、その場合に、被害を最小限に食い止めるための対策までを構築しておくことが必要になってきます。

たとえば、障害の詳細とその対策を、ユーザーに対し適宜説明・報告する(コールセンターや相談窓口の設置など)ことで、ユーザーの混乱を最小限に抑えることが可能になります。

また、内部において、障害の状況を正確に報告する態勢を作ることで、想定される最悪の被害を把握でき、それに対する対策を立てることができます。さらに、外部委託先を含めたネットワークをきちんと整備することで、状況を共有でき、適切な対応に向けた調整(支援を受けるなど)が可能になります。

このように、障害を防止するための対策が大事であることはもちろんのこと、実際に障害が発生した場合の対策を立てておくことも非常に重要になってくるのです。

なお、システムのリスクについて、詳しく知りたい方は「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」(公益財団法人金融情報システムセンター編)をご覧ください。

⑤ポイント5:システム障害等が発生した場合の対応

コンピュータシステムの障害やサイバーセキュリティ事案の発生を認識次第、直ちに、その事実を当局宛てに報告を求めるとともに、「障害発生等報告書」にて当局宛て報告を求めるものとする。また、復旧時、原因解明時には改めてその旨報告を求めることとする。ただし、障害原因の解明がされていない場合でも1か月以内に現状について行うこととする。なお、財務局は仮想通貨交換業者より報告があった場合は直ちに金融庁担当課室宛て連絡することとする。

システムに障害が生じた場合、仮想通貨事業者は、「障害発生等報告書」を金融庁に提出しなければなりません。金融庁に対する報告書は、障害の発生時だけでなく、システムの復旧時障害の原因解明時にも提出しなければなりません。障害の原因については、仮にその原因が判明しない場合でも、現状を1ヶ月以内に報告しなければなりません

以上の報告を怠ったり遅れたりすると、金融庁から指導を受けることにもなりますので、日頃からシステムの障害を想定した態勢を作り、周知しておくことが重要なのです。

(2)利用者の保護等に関する措置

仮想通貨取引において、ユーザーは仮想通貨交換業者から与えられる情報をもとに、取引をするかどうかであったり、具体的な取引内容を判断していくことになります。このように、仮想通貨交換業者は、ユーザーが適切な取引判断ができるよう必要な情報を説明・提供しなければなりません。具体的には、以下の点に留意するものとされています。

  1. 適切に説明・情報提供が行われる態勢を整備しているか
  2. 社内規則を作り、周知徹底を図っているか
  3. 利用者に対し適切に説明を行っているか

それぞれについて、具体的に見ていきましょう。

①ポイント1:適切に説明・情報提供が行われる態勢を整備しているか?

利用者に対する説明や情報提供を行うに当たっては、取り扱う仮想通貨や取引形態に応じて、内閣府令第16条第1項及び第2項各号、第17条第1項各号及び第2項各 号並びに第4項に規定された事項を説明する態勢が整備されているか。さらに、当該利用者の知識・経験に照らし、必要に応じて書面を交付(電磁的方法を含む)した上で説明を行うこととするなど、適切に情報提供が行われる態勢を整備しているか。

ユーザーに対し、説明・情報提供をしさえすればいいということではありません。対面での取引とインターネットでの取引とでは、求められる説明方法や情報の提供方法も自ずと変わってきます。

仮想通貨事業者は、内閣府令において定められている事項を、取引形態やユーザーの知識などに応じ説明・情報提供をしなければならず、それを実現するための態勢を整備することが求められます。

②ポイント2:社内規則を作り、周知徹底を図っているか?

  • 法令において定められている利用者保護措置について社内規則等を定め、役職員が当該社内規則等に基づき適切な取扱いを行うよう、社内研修等により周知徹底を図っているか
  • 利用者保護措置の実効性を確保するため、内部管理・内部監査等の内部けん制機能は十分発揮されているか
  • 利用者保護措置の実効性の検証を踏まえて、仮想通貨交換業に係る業務の態勢を見直すこととしているか
  • 苦情・相談態勢の整備に当たっては、事務処理ミスがあった場合等の手続きが明確に規定され、円滑に処理される態勢が整備されているか

ユーザーへの情報提供義務を含め、ユーザーの保護を目的とする措置について、仮想通貨事業者は、社内規則などを作り、そこで定めたルールを社内研修などの方法で周知することが求められます。社内において、周知されたルールがなければ、ユーザーを保護しているとは言えません。

また、周知された社内規則がありさえすればそれでいいということではなく、社内規則そのものや、社内規則に基づいた運用がなされているかどうかを、適宜、内部においてモニタリング、検証をすることも必要です。

モニタリングや検証により、重大な問題などが判明したときは、役員に対しきちんと報告がなされ、改善策の検討やその実施がなされることが必要です。

社内規則の内容や運用が適切になされていなければ、そのようなルールを作ったこと自体意味がなくなるからです。

さらに、ユーザーから寄せられた苦情や相談など、仮想通貨事業者にミスがあった場合に、そのような事態を改善する手続きなどがユーザーにとって明確になっていることが必要です。ユーザーからの苦情や相談などに真摯に対応し、ユーザーから理解を得ることは、仮想通貨交換業を行っていくうえで重要なことです。このような場合の対応について、ルールを作っていなければ、結局は、ユーザーの保護に欠けることになります。

そのためにも、苦情や相談などに適切に対応できるだけの態勢を内部で構築しておくことが必要であり、そのことを社内で周知しておくことが求められます。

③ポイント3:利用者に対し適切に説明を行っているか?

内閣府令第16条第1項及び第2項各号、第17条第1項各号及び第2項各号並びに第4項に規定された事項について、利用者の知識、経験等を勘案して、取引形態に応じて、適切に説明を行っているか。

具体的には、以下の点に留意する必要があります。

  • 仮想通貨取引におけるリスクの説明
  • 報酬や費用に関する説明
  • 仮想通貨取引に関する契約をするか否かの判断に参考となる事項の説明
  • 口座開設契約等をするか否かの判断に参考となる事項の説明
  • 分別管理に関する説明

このように、仮想通貨取引に関する契約を締結する前提として、その取引におけるリスクや重要な情報(ユーザーが契約をするかどうかの判断に必要な情報)を説明・提供することにより、ユーザーが適切な判断をすることができるのです。

(3)利用者財産の分別管理義務

仮想通貨交換業者は、ユーザーから預かったお金や仮想通貨を自己の財産と明確に分けて管理しておかないと、混乱を来し、大変なことになります。

そこで、仮想通貨交換業者は、ユーザーからお金や仮想通貨を預かった場合、分別管理についての適切な取り扱いを確保しなければなりません

具体的には、以下の点に留意する必要があります。

  1. 分割管理について、適切な方法が定められているか
  2. 残高を照合し、不足額を解消する態勢をとっているか
  3. 委託先と適切な連携ができているか
  4. 分別管理監査が有効に機能しているか

①分割管理について、適切な方法が定められているか?

分割管理について適切な取り扱いを確保するためには、具体的にどのような方法で管理するかを決めることが必要です。そのため、社内規則において、分別管理の具体的な方法をきちんと定め、ユーザーとの契約にその内容を反映しなければなりません

また、分割管理については、自己の財産と預かっているユーザーの財産が社内規則で定めた方法により明確に分けられており、どちらの財産かということがすぐにわかるようにしておかなければなりません。

②残高を照合し、不足額を解消する態勢をとっているか?

ユーザーから預かっている仮想通貨について、仮想通貨交換業者が管理している帳簿上の金額とネットワーク上の残高が一致していないと、正確に管理しているとはいえず、管理自体に混乱を来します。

そこで、このような場合には、残高がなぜ一致していないのか、その原因を解明するとともに、不足額を解消するなどして残高を一致させなければなりません。この対応は、不一致が生じた日の翌日から5営業日以内に解消することが望ましいとされています。

③委託先と適切な連携ができているか?

ユーザーから預かった仮想通貨の管理を第三者に委託する場合においても、委託先できちんとした分割管理を実施しなければならないことは、委託をしない場合と同様です。この場合、委託をした仮想通貨交換業者は、委託先において、①や②など分割管理についての適切な取り扱いが守られているかどうかを確認しなければなりません。委託してしまえば、もう関係ないというのでは、適切な分割管理は実現できなくなります。

④分割管理監査が有効に機能しているか?

分別管理が適切に運用されているかについてのチェック機能を果たす監査において問題とされた重要な事項は、社内のしかるべき機関(取締役会や監査役会)にきちんと共有される必要があります。そのうえで、一定期間内に改善することが求められます。

このように、仮想通貨交換業者に課せられる分割管理義務についても、ガイドラインで具体的な内容が細かく定められています。ユーザーの財産に関わる非常に重要なルールですので、きちんと理解することが必要です。

7 仮想通貨交換業への規制その3:監督規制

監督規制

改正資金決済法は、仮想通貨交換業者に対する監督規制として、新たに以下にある6つのルールを設けました。

  1. 帳簿書類の作成・保存義務
  2. 報告書の提出義務
  3. 立入検査等
  4. 業務改善命令
  5. 登録の取消等
  6. 登録の抹消

それぞれのルールについて、簡単に見ていきましょう。

(1)帳簿書類の作成・保存義務

手数料などを含む細かい取引記録や、ユーザーに関するお金の収支(毎営業日)、仮想通貨の数量などを記録した帳簿を作成し、保存しなければなりません。保存期間は、帳簿書類の種類に応じて、5年~10年と決められています。

(2)報告書の提出義務

事業年度ごとに作成した報告書のほかに、(1)で説明した帳簿書類を定期的に提出しなければなりません。

(3)立入検査等

仮想通貨交換業者において、不正を行っている疑いがあったり、誤った業務を行っているような場合など、一定の場合に、管理当局は、仮想通貨交換業者に対し、一定の報告や資料の提出を命じることができます。また、管理当局はその職員に仮想通貨交換業者の営業所などに立ち入らせて、質問や帳簿書類などを検査させることができます

なお、仮想通貨交換業者から業務の委託を受けた企業が、立入検査等を受けた場合においては、正当な理由があるときにかぎり、報告や資料の提出または質問や検査を拒否することができます。

(4)業務改善命令

立入検査等により、改善すべき点が出てきたり、ユーザーを保護する観点から、業務の適正のために必要がある時など一定の場合に、管理当局は、仮想通貨交換業者に対し、業務の改善に必要な措置などをとることを命ずることができます

(5)登録の取消等

仮想通貨交換業者が登録申請において虚偽(ウソ)の記載をしたり、(4)で説明した業務改善命令に従わなかったときは、登録を取り消したり、6ヶ月の範囲で業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができます

(6)登録の抹消

登録を取り消した場合、その登録を抹消しなければなりません。

登録に関する規定を除き、どの規制もごくごく当たり前のことをルールとして定めたものです。仮に、このルールに違反してしまうと、ペナルティの対象になる可能性もありますので、帳簿書類の作成など、きちんとした対応が必要です。

8 仮想通貨交換業への規制その4:マネロン規制

マネロン規制

仮想通貨交換業に対する最後の規制に「マネロン規制」があります。

マネーロンダリング(マネロン)」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。「マネーロンダリング」とは、犯罪により得たお金を、口座から口座に転々と移動させることで、そのお金の出所や利益を受けた者をわからなくすることをいいます。口座を転々とする過程で、不正なお金があたかも不正でないお金のように洗濯(ロンダリング)されることから、このように呼ばれています。

このようなマネロンを防止するために作られたルールが「犯収法」という法律です。「犯収法」は、金融機関などにおいて、ユーザーが取引を行う際に、ユーザーと本人が一致しているかどうかを確認することをルールとして定めた法律です。ユーザーと本人が一致していることを確認する(KYC)ことで、犯罪に金融機関が利用されるのを防止することができます。

近年、海外で仮想通貨を使った多額のマネロンが行われたこともあり、日本においても、マネロン規制の対象に仮想通貨交換業者を含めることとしました。具体的には、それまで犯収法の規制対象である「特定事業者」に含まれていなかった仮想通貨交換業者を新たに追加し、以下の義務を課すことにしました。

  1. 口座開設時の取引時確認義務
  2. 確認記録・取引記録等の作成・保存義務
  3. 疑わしい取引の届出義務
  4. 社内管理体制の整備(従業員の教育、統括管理者の選任、リスク評価書の作成、監査等)

それぞれについて、簡単に見ていきましょう。

(1)口座開設時の取引時確認義務

仮想通貨交換業者は、ユーザーが新たに口座を開設する際には、以下の内容を確認しなければなりません。

  1. 本人特定事項
  2. 取引を行う目的
  3. 職業(事業)の内容
  4. 実質的支配者
  5. 資産・収入

このように、ユーザーと本人の同一性やユーザに関するその他の情報を取引時に確認することで、マネロンを防止することができます。

なお、200万円を超える仮想通貨取引は、「ハイリスク取引」とされることから、通常求められる書類とは別に追加の書類を提示することが求められています。

(2)確認記録・取引記録等の作成・保存義務

(1)で説明した取引時確認を終え、実際に取引を終えたら、この取引内容を記録化しなければなりません。作成された記録は、取引に関する契約を終えた日から7年間保存しなければなりません

なお、残高照会など、財産的価値の移転がない取引や財産的価値の移転はあるものの、その価値が1万円以下である場合は、取引記録の作成・保存をする必要はありません。

(3)疑わしい取引の届出義務

ユーザーとの取引の際に、仮想通貨交換業者において、その取引が疑わしい取引であると判断した場合は、その旨を国に届け出なければなりません。

(4)社内管理体制の整備

仮想通貨交換業者は、取引時確認などを正確に実施するため、社内の管理体制を整備する必要があります。社内管理体制の整備のために、仮想通貨交換業者がとらなければならない措置について、具体的に見てみましょう。仮想通貨交換業者がとらなければならない措置は、以下の4点です。

  • 取引時確認事項の情報を最新の状態に維持すること
  • 取引時確認などの措置の実施の規定化
  • 統括管理者の選任
  • 調査書の内容を考慮して構ずべきものとして法律などで定める措置

以上に述べたルールをきちんと守ることで、マネロンを防止することができますので、仮想通貨交換業者においては、その点をきちんと理解し、ルールを誠実に守ることが必要です。

なお、マネロン規制について詳しく知りたい方は「仮想通貨交換業者が守るべきマネロン規制4つの義務を弁護士が解説!」をご覧ください。

9 ペナルティ

ペナルティ

それでは、仮想通貨交換業者が犯収法に違反してしまった場合、どのようなペナルティが科されるのでしょうか。

ペナルティの対象は、仮想通貨交換業者が「取引時確認を怠った場合」です。もっとも、取引時確認を「過失(うっかり)」により怠った場合は、直ちにペナルティが科されるのではなく、国が下記の流れで一定の措置をとります。

  1. 本人の確認について、報告や資料の提出を求める
  2. 仮想通貨交換業者の事業所や施設に立ち入り、書類の検査や関係者への質問を実施する
  3. 措置の実施を適切かつ円滑に進めるために、仮想通貨交換業者に対して必要な指導や勧告をする
  4. 是正に必要な措置をとることを命じる(是正命令)

是正命令に従った措置を講ずることでペナルティは受けずに済みますが、仮に、是正命令に従わなかった場合、

  • 最大2年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のどちらか、または両方が科せられます。

さらに、この場合、是正命令に直接違反した人(従業員)だけでなく、会社(法人)に対しても、

  • 最大3億円の罰金

が科されることになります。

10 小括

まとめ

このように、改正資金決済法は新たに重要なルールを設け、改正資金決済法の施行に伴い、公表されたガイドラインにおいても、仮想通貨交換業に対する規制などについて細かく内容が定められています。また、仮想通貨交換業者がマネーロンダリングの規制対象に含まれることになり、さまざまな義務を新たに課せられることになりました。

仮想通貨交換業の登録を選択した企業、あるいは、登録をしないことを選択した企業においては、登録後に課せられる規制などをきちんと理解したうえで、その選択が自社にとって適切であるのかどうかを判断することが重要です。

11 まとめ

  • 資金決済法の改正のポイントは、①「仮想通貨の定義」が定められた、②仮想通貨交換業の登録制・各種規制が導入された
  • 仮想通貨とは「仮想通貨は支払手段の1つである(財産的価値を持つ)」
  • 改正資金決済法では、仮想通貨を①1号仮想通貨、②2号仮想通貨の2種類に分けて定義している
  • 仮想通貨交換業の定義は、①:仮想通貨の売買または仮想通貨同士の交換、②:①の媒介・取次・代理、③:①②に関して、ユーザーの金銭または仮想通貨の管理をする、④:①~③のいずれかを「事業」として行う、となっている
  • 仮想通貨交換業への規制は、①財務規制、②行為規制、③監督規制、④マネロン規制の4つである
  • 仮想通貨交換業の登録にあたっては、①資本金額が1,000万円以上、②純資産額がプラスであることが必要である
  • 仮想通貨交換業者は、行為規制として、①名義貸しの禁止、②情報の安全管理義務、③委託先に対する指揮、④利用者の保護等に関する措置、⑤利用者財産の管理義務、⑥指定仮想通貨交換業務紛争解決機関との契約締結義務を課される
  • 改正資金決済法は、仮想通貨交換業者に対する新たな監督規制として、①帳簿書類の作成・保存義務、②報告書の提出義務、③立入検査等、④業務改善命令、⑤登録の取消等、⑥登録の抹消の6つを設けた
  • 「マネーロンダリング(マネロン)」とは、犯罪により得たお金を、口座から口座を転々と移動させることで、そのお金の出所や利益を受けた者をわからなくすることをいう
  • マネロンを防止するために作られたルールが「犯収法」
  • 「犯収法」は、金融機関などにおいて、ユーザーが取引を行う際に、ユーザーと本人が一致しているかどうかを確認することをルールとして定めた法律のことをいう
  • 犯収法上、仮想通貨交換業者が負う義務は、①取引時確認、②取引時確認記録、取引記録等の作成および保存、③疑わしい取引の届出、④社内管理体制の整備、の4つである
  • 犯収法上のペナルティの対象は、仮想通貨交換業者が「取引時確認を怠った場合」である

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