はじめに

ドローンビジネスをする上で、「ドローン事故が発生した場合、自分はどのような法律上の責任を負うのか?」という点について、不安や疑問を抱えている方は少なくないのではないでしょうか?

ドローンは、様々な場面で活用可能性があるため、近時、多くの企業や個人がこぞって「ドローンビジネス」に参入してきています。ただ、ドローンは空を飛ぶものであるがゆえに、落下などの「ドローン事故」が頻発しています。

例えば、首相官邸の屋上にドローンが落下した事件は、テレビでも連日報道されていたため覚えている方も多いと思います。

このように、ドローン企業からすれば、決して他人事ではないドローン事故ですが、

ドローンが何らかの理由で第三者に損害を与えてしまった場合、一体誰がどのような法律上の責任を負うのでしょうか?

操縦の難しいドローンを扱う以上、事故発生のリスクは必ずあり、実際に第三者を巻き込んだ事故が起きてしまったときの対応や責任の内容については、ドローンビジネスをする上では、とても気になるところですよね。

そこで今回は、ドローン事故が起きた際に誰がどのような法律上の責任を負うことになるのか、また、ドローン事故を予防する方法を分かりやすく解説していきます。

1 ドローンとは

ドローンとは

ドローン」とは、無人航空機の一種で、空を飛ぶことができるけど、人が乗って操縦しない機体のことをいいます。

手のひらに乗るものから人を乗せることができるレベルのものまで、人が地上から操縦するもの、または、自動操縦によって飛行するものはすべて「ドローン」にあてはまります。

2 ドローン事故の事例とその原因

ドローン事故と理由

ドローンは空を自由に飛ばすことができ、さまざまな分野で活用することができます。

その反面、人や建物との接触事故や、落下事故がつきものです。この項目では、ドローンの事故における法律上の責任を検討する前提として、実際のドローン事故の事例と、ドローン事故が発生した原因をさっと確認しておきましょう。

(1)ドローン事故の事例

これまでに起こったドローン事故の事例としては、以下のようなものがあります。

  1. 首相官邸へドローンが落下して懲役刑(執行猶予)
  2. ドローンを姫路城に衝突させて書類送検
  3. 高速道路に落下したドローンが走行車と激突して書類送検
  4. 工事現場の撮影中にドローンが落下、人身事故に
  5. イベントで上空を飛行していたドローンが落下し6人が負傷

このように、ドローンが何らかの理由で人や建物に危害を加える事故が後を絶ちません。

ドローンを含む無人航空機によるこういったドローン事故は年々増加していくでしょう。

(2)ドローン事故の原因

ドローン事故の原因のほとんどが、ドローンの落下によるものです。ドローン落下の原因としては、以下の点が考えられています。

  1. 操作スキルが足りないままドローンを飛行させている
  2. ドローンのバッテリー切れ
  3. 風の影響でドローンの制御が困難になる
  4. 通信ロスト、電波障害

3 法律上の責任の種類

法的責任

これまでドローン事故の事例とその原因を概観してきましたが、操縦者としては十分気をつけていたつもりでも、さまざまな理由で実際にドローン事故が起きてしまう可能性があります。

その場合、一体誰がどのような法律上の責任を負うことになるのでしょうか?

この点については、次の3つの観点に分けて検討する必要があります。

  1. 民事上の責任
  2. 刑事上の責任
  3. 行政上の責任

次の項目から詳しく見ていきましょう。

4 法律上の責任①:民事上の責任

民事上の責任

ドローン事故において検討すべき「民事上の責任」とは、「損害賠償責任」のことをいいます。

損害賠償責任」とは、何らかの理由によって第三者に損害を与えてしまった場合に、加害者は被害者に対し、発生した損害について金銭的に賠償する責任を負うことをいいます。

例えば交通事故によって第三者にけがをさせてしまった場合、加害者は、被害者に対してケガの治療費や慰謝料などの賠償責任を負います。

同じように、ドローン事故によって第三者にケガをさせたり建物を傷つけてしまうなど、何かしらの損害を与えてしまった場合には、被害者(建物の場合はその所有者など)に対して損害賠償責任が発生します。

(1)誰が責任を負うのか?

では、この「損害賠償責任」は誰が負うのでしょうか?損害賠償責任を負う者としては、次の5つのパターンが考えられます。

  1. ドローンの操縦者
  2. ドローン操縦者を雇う企業
  3. ドローンの操縦を依頼した企業
  4. ドローンの製造業者(メーカー)
  5. ドローンの販売業者

順番に確認していきましょう。

(2)どんな責任を負うのか?

①ドローンの操縦者~不法行為責任~

まず、「ドローン操縦者」の賠償責任についてみてみましょう。

    【不法行為責任の要件】

  1. 他人の権利などを侵害すること
  2. 故意または過失
  3. 「1.」の行為によって損害が発生したこと

ドローン事故により第三者に損害を与えてしまった場合、ドローンの操縦者は、民法に書かれている「不法行為責任」を負う可能性があります。

不法行為」とは、故意(わざと)あるいは、過失(不注意)によって、他人の権利や利益を違法に侵害する行為のことをいいます。そして、不法行為によって他人に損害を与えてしまった場合、加害者には、被害者に対し損害を賠償する責任が発生します。これを「不法行為責任」といいます。

ドローン事故により誰かにケガをさせてしまった場合についてみると、その行為は「他人の権利や利益を違法に侵害する行為」にあたります。

次に、ドローン操縦者に、不法行為責任が認められるためには、その操縦者に「故意」または「過失」が必要です。

故意」とは、ある行為をわざとやることをいいます。例えば、操縦者がドローンをわざと他人に衝突させたような場合です。

過失」とは、少し注意すれば行為の結果(損害が発生するようなもの)を予想することができたのに、その注意をせず、結果を回避することを怠った状態のことをいいます。要するに、ある行為を不注意でうっかりやってしまうことを「過失」といいます。

故意にドローン事故を起こした場合に責任を負うのは当然ですので、ポイントは、事故が起きてしまった場合に、ドローン操縦者に「過失」が認められるか?にあります。

例えば、バッテリー残量が少ない状態で、ドローンを遠くまで飛ばし、バッテリー切れで落下して人にケガを負わせたようなケースについて考えてみましょう。

市販のドローンの多くは、飛行時間が長くても30分前後と言われています。

そのため、ドローンを長時間操縦する場合、ドローン操縦者としては、バッテリーが短時間で切れることを容易に予想できるわけです。そのため、バッテリー切れによる事故のケースでは、ドローン操縦者に「過失」が認められることは多いでしょう。

他方で、晴天の中、天気予報では降水確率0%とされていたのに突然落雷が起こり、ドローンも落下したようなケースでは、落雷などを予想することは不可能に近いので「過失」は否定されることになります。

最後に、ドローン操縦者が不法行為責任を負うには、過失が認められた上で、被害者に「損害が発生」していることが必要です。言い換えると、被害者に損害が発生していない限り、その行為は違法ではあるものの、不法行為責任を負うことはありません

なぜなら、不法行為責任は、あくまでも、被害者に生じた「損害を賠償」させるための制度だからです。

例えば、ドローンが他人の家の敷地内に落下したとしても、誰かがケガをしたり何かが壊れたりしなければ、操縦者は特に不法行為責任を負わなくて良いということになります。

以上の条件をすべてみたした場合に、ドローン操縦者には不法行為責任が認められることになります。

実際問題としては、冒頭でも挙げた下記「1.~4.」

    【ドローン事故の原因】

  1. 操作スキルが足りないままドローンを飛行させている
  2. ドローンのバッテリー切れ
  3. 風の影響でドローンの制御が困難になる
  4. 通信ロスト、電波障害

多くのケースでは、いずれも「過失」がないといえる事例は少ないでしょうから、ドローン操縦者に不法行為責任が認められてしまうとになるでしょう。

②操縦者を雇う企業~使用者責任~

次に、ドローン操縦者を雇う企業の賠償責任についてみていきましょう。

    【使用者責任の要件】

  1. 従業員が
  2. 企業の事業に関して、
  3. 第三者に損害を与えてしまったこと

例えば、ドローンを使っていろいろな場所を撮影し、その映像を販売して利益を上げている企業(空撮会社)があるとします。その従業員が操縦するドローンが事故を起こして第三者にケガなどの損害を与えてしまった場合、企業は、「使用者責任」を負う可能性があります。

使用者責任」とは、従業員が、仕事をするうえでミスをして誰かに損害を与えてしまった場合に、直接的な加害者ではない雇い主が、その損害に対して賠償責任を負うことをいいます。

直接の加害者でない雇い主が責任を負うその根拠は、「雇い主は自分の事業のために従業員を雇って働かせ、利益を上げているのだから、逆に危険(損害)についても負担するべきだ」という考え方にあります。

この考え方によれば、従業員であるドローン操縦者がドローン事故を起こしてしまった場合、その操縦者を雇っている企業は、たいてい使用者責任を負うことになります。

ただし、雇い主は常に損害賠償責任を負うわけではありません。一定の場合には雇い主が免責されることになっているのです。

具体的には、雇い主は、以下のどちらかを立証することができれば使用者責任を免れることができます。

  1. 加害者である従業員の選任と監督について相当の注意をしたこと
  2. 相当の注意をしても、それでも損害が生じたこと

1.は、使用者に、「選任と監督についての過失がなかったこと」をいいます。

例えば、ドローン企業が従業員(操縦者)を採用するときにきちんと能力や適性を審査したり、ドローンの飛ばし方や管理方法について個別具体的に必要な注意を行っていた場合には、使用者側に過失がないとして使用者責任を免れる可能性が高くなります。

また、2.については、選任・監督上の注意をしても、それでも避けられなかったような予測不能の事態が生じた場合に認められます。例えば、持病などのない操縦者が突然意識を失い、コントロールを失ったドローンが落下して人にけがをさせたような場合です。

③ドローンの操縦を依頼した企業~不法行為責任~

ドローンの操縦を依頼した企業側の賠償責任について検討しましょう。

    【不法行為責任の要件】

  1. 他人の権利などを侵害すること
  2. 故意または過失
  3. 「1.」の行為によって損害が発生したこと

例えば、ある企業がイベントを企画し、その中でドローンを使って撮影をしたいと考え、1日だけドローン企業に撮影を依頼したとします。そして、ドローン企業の従業員である操縦者がドローン事故を起こし、第三者にケガなどの損害を与えてしまった場合、その責任は原則として操縦者やドローン企業が負います(不法行為責任・使用者責任)。

ただし、例外的に、発注者(依頼した企業側)にも責任が及ぶ場合があります。ドローン企業に対する指示や注文について発注者側に過失があった場合には、発注者は、ドローン企業が第三者に与えた損害について、操縦者と同じく「不法行為責任」を負わなければなりません。

具体的には、以下の2つの要件をみたした場合に、発注者に過失が認められ、発注者は損害について賠償責任を負わなければなりません。

  • ドローンについて専門的な知識をもっていたこと
  • 事故が発生することを予測できたにもかかわらず、その企画を無理やり推し進めたこと

例えば、A社に空撮を依頼したB社が、当日現場で突然飛行ルートの変更を要望し、A社はそれに従いドローンを飛ばしたとします。その後ドローンが突然落下し、通行人Cにけがを負わせたとき、B社が指定した飛行ルートが人口集中地区(ドローンの飛行禁止区域)だった場合には、B社は注文者責任を負う可能性があります。

④ドローンの製造業者(メーカー)~製造物責任~

次に、ドローンの製造メーカーの賠償責任についてみていきましょう。

    【製造物責任の要件】

  1. 製品などの
  2. 欠陥により
  3. 他人の生命・身体または財産を侵害したこと

ドローンの不具合などが原因で事故が起きた場合、製造メーカーは、被害者に対して「製造物責任」を負うことが考えられます。

製造物責任」とは、製品の欠陥やバグが原因で第三者に損害を与えてしまった場合に、その製品を作った製造メーカーなどが損害の賠償をすることを定めた法律です。

製造物責任は、製造メーカーに過失(不注意)がなくても責任を負わせるのが特徴です(無過失責任)。具体的な製造過程を知らない被害者が、製造メーカーに過失があったことを立証するのは極めて難しいことから、被害者救済のために無過失責任とされたのです。

とはいえ、製造メーカーは、無条件に賠償責任を負わされるわけではありません。製品に「欠陥」があると認められた場合にのみ、賠償責任を負うことになります。

欠陥」とは、その製品が普通なら備えているはずの安全性を欠いている状態をいいます。例えば、購入したドローンを普通に使用していただけなのに、それすら耐えられないような仕様・設計だったためにドローンが墜落したような場合には、製品について「欠陥」があるといえます。製造メーカーは、ドローン墜落によって発生した損害の賠償責任を負わなければなりません。

ただし、欠陥が認められたとしても、製造メーカーには「開発危険の抗弁」という反論の余地があります。

開発危険の抗弁」とは、製品を開発・販売した時の技術水準では、そこに欠陥があることを見つける(予測する)ことができなかったといえる場合に、企業が製造物責任を免れられることをいいます。

製品が流通した時点では発見することができないような欠陥(開発危険)までも企業の責任にしてしまうと、企業が技術開発をためらってしまうため、このような規定が設けられました。

そのため、製品に「欠陥」があったとしても、「開発危険の抗弁」が認められれば、製造メーカーは製造物責任を負わずにすみます。

(製造物責任を免れたとしても、通常の不法行為責任を負う可能性がある点に注意が必要です。)

ドローン製造メーカーの場合についても、現代のドローン製造技術では、想定できなかったといえる不具合については、この開発危険の抗弁により、免責される可能性があります。

⑤ドローンの販売業者

最後に、ドローンの販売業者の賠償責任についてみていきましょう。

通常、製造物責任を負うのは、まさにそのドローンを作った製造メーカーです。

ただし、「実質的に製造業者と認められる者」については、たとえ、製造メーカーでなかったとしても、メーカーと同じように製造物責任を負わなければなりません

具体的には、ドローンの製造自体はしていなくても、製造段階から指示を出し、ドローンの販売を一手に引き受けたような場合などには、そのドローンを製造したに等しいので、ドローン販売業者は「実質的な製造業者」とみなされ、第三者に対する損害について製造物責任を負うことになります。

また、ドローンの不具合による事故の場合、販売業者は、ドローン操縦者に対して、

  • 瑕疵担保責任
  • 債務不履行責任

を負う可能性があります。

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」とは、物の売り買いなどの目的物に「隠れた瑕疵」があった場合に、その部分について、売った人が責任を負うことをいいます。

隠れた瑕疵」とは、普通に注意しても見つけることができないような不具合のことをいいます。

例えば、ドローンを買った段階ですでに内部の機械が一部腐食していて、それが原因で安全な飛行ができなくなり、落下事故につながったような場合です。

このような場合には、ドローンの販売業者は、使用者に対して損害賠償責任を負わなければなりません。

なお、瑕疵担保責任については、「物の個性に注目した取引き」の場合に適用されます。例えば、世界に1台しかないドローンを購入するように、他に代りのものが無いような場合や中古のドローンの場合です。

そのため、市販のドローンを買った場合には、瑕疵担保責任ではなく「債務不履行責任」が問題となります。

債務不履行」とは、相手方が、契約の本来の内容(目的)に沿った義務を果たさないことをいいます。

ドローン売買においては、「不具合のない完全な機能を持ったドローンを引き渡すこと」が契約の本来の内容であるといえます。

そのため、売ったドローンに元から不具合があった場合には、契約の目的を果たしていないとみなされ、新しいものと交換したり、買主に対して損害賠償の責任を負わなければなりません。

なお、改正民法施行後は、ドローン事故が起きた場合の販売者の責任について、こういった瑕疵担保責任か債務不履行責任かの区別がなくなり、「債務不履行責任」一本で処理されることには注意が必要です。

瑕疵担保責任の改正点について詳しく知りたい方は、「民法改正でシステム開発の何が変わるのか?3つのポイントを徹底解説」をご覧ください。

6 法律上の責任②:刑事上の責任

刑事上の責任

これまでは、ドローン事故が起きた場合の「民事上の責任(賠償の問題)」について解説してきました。以下では、ドローン事故の場合の「刑事上の責任」についてみていきましょう。

刑事上の責任」とは、犯罪を犯した人に対して国から与えられる罰のことをいいます。

例えば、人を殺せば殺人罪となり、死刑となるか無期または5年以上の懲役が科されます。これが「刑事上の責任」です。

ドローン事故の場合にも、その態様が特定の犯罪類型にあてはまる場合には刑事上の責任を負うことになります。

刑事上の責任を負うには、原則として「故意(わざとやること)」がなければいけません。

ただし、「過失(不注意)」が認められれば犯罪として成立するよ、という特別な規定がある場合には、故意が無くても犯罪が成立し、刑事上の責任を負わなければなりません。

以下で、ドローン事故について刑事上の責任を負うケースを「故意」がある場合と「過失」がある場合に分けてみていきましょう。

(1)故意により第三者に損害を与えた場合

①人に対する損害

ドローンの操縦者が、人に対してわざと損害を与えた場合、暴行罪傷害罪に問われる可能性があります。

「暴行罪」と傷害罪の違いは、暴行を加えた結果、その人にケガなどの「傷害」が生じたか否かにあります。

暴行罪の場合は、

  • 最大2年の懲役
  • または

  • 最大30万円の罰金

の刑事罰が下され、

傷害罪の場合には、

  • 最大15年の懲役
  • または

  • 最大50万円の罰金

が科されることになります。

②物や企業に対する損害

(ⅰ)損壊罪

ドローンの操縦者が、建物や車などの物に対してわざと損害を与えた場合、建造物損壊罪器物損壊罪に問われる可能性があります。

例えば、ドローン事故を起こして、建物を壊した場合が「建造物損壊罪」、建物以外の物を壊した場合は「器物損壊罪」になります。

建造物損壊罪の場合は、建物は人が住むものであり、建物を破壊した場合には、同時に人を傷つける危険性が高いことから、罪としては重い、

  • 最大5年の懲役

が科されることになります。

他方で、器物損壊罪の場合には、比較的軽い

  • 最大3年以下の懲役
  • または

  • 最大30万円以下の罰金

の刑罰が科されることになります。

(ⅱ)業務妨害罪

また、企業などに対し、「イベント会場でドローンを飛ばして落下させてやる!」などウソの予告をして大騒ぎとなった場合には、偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。

これを実際に飛ばして落下させた場合には、威力業務妨害罪に問われる可能性があります。

要するに、嘘をついたり、他人を欺いて業務を妨害した場合が「偽計」業務妨害罪、それ以外の力業で業務を妨害た場合は「威力」業務妨害罪となります。

偽計業務妨害罪も威力業務妨害罪のいずれも

  • 最大3年の懲役
  • または

  • 最大50万円の罰金

の刑罰が科されることになります。

(2)過失により第三者に損害を与えた場合

ドローンの操縦者が刑事責任負うを負うのは、何も「故意(わざと)」人や物に損害を与えた場合に限りません。「過失(不注意)」で第三者にケガをさせてしまった場合には過失傷害罪という罪に問われ、

  • 最大30万円の罰金

という刑罰を科される可能性があります。

他方で、ドローン事故の被害者がケガをするにとどまらず、死んでしまった場合には、過失致死罪に問われ、傷害よりも重い

  • 最大50万円の罰金

の刑罰が科される可能性があります。

また、ドローン企業の従業員が不注意によりドローン事故を起こし、第三者にけがを負わせたり死なせてしまった場合には、それぞれ業務上過失傷害罪業務上過失致死罪に問われる可能性があります。

「業務上」過失致死傷と、普通の過失致死傷との違いは、仕事中の事故が否かです。

そのため、ドローン企業が業務の中でドローン事故を起こしたケースでは、たいてい、この業務上過失致死傷罪を検討することになります。

業務上過失傷害罪の場合には、

  • 最大5年の懲役
  • または

  • 最大100万円の罰金

の刑罰が科され、他方で、業務上過失致死罪の場合には、それよりも重い

  • 最大7年の懲役
  • または

  • 最大100万円の罰金

の刑罰が科されることとなります。

7 法律上の責任③:行政上の責任

行政責任

最後に、行政上の責任についてみていきましょう。

行政上の責任」とは、社会的な秩序を乱すような行為をしたときに、行政機関から与えられるペナルティのことをいいます。

刑事上の責任と似ている部分もありますが、刑事上の責任が「犯罪を犯したときに科される刑罰のことで、その判断は裁判所が行う」のに対し、行政上の責任は、「犯罪として処罰されるかどうかとは無関係に科されるペナルティで、その判断は行政機関が行う」ものになります。

行政上の責任については、ドローンの飛行に関するルールを定める「航空法」上、事故を起こしたとしても直接的なペナルティはありません

ただし、ドローンの飛行許可や承認を得る際に、過去に起こした事故が審査の一要素となる可能性はあります。

また、飛行許可や承認を得てドローンを飛ばしていた場合には、事故について国に報告しなければならないケースもあります。具体的には、許可・承認を得る際の申請書に「ドローン事故が発生した時には国へ報告すること」との記載がある場合には、これに従い報告しなければいけません。

8 ドローン事故の予防方法

ドローン事故予防法

ここまでは、「ドローン事故が起きた場合にどのような責任を負うことになるのか」を解説してきましたが、事故を起こさずにすむのであればそれがベストです。そのために必要なのが、「ドローンを飛ばす前の事前対策」です。

事前対策の方法としては、以下のようなものがあります。順番に確認していきましょう。

  1. 事前の機体整備・点検を徹底する
  2. 飛行場所や飛行コースをしっかり把握する
  3. 安全監視員を配置する
  4. 過去の事故事例を把握しておく

(1)事前の機体整備・点検を徹底

ドローンを飛ばす前に機体の整備や点検をしっかりしておくことはかなり重要です。

電源やモーター・カメラが正常に作動するか、ランプが点灯するか、ネジにゆるみは無いかなど、毎回必ず確認するようにしましょう。

(2)飛行場所や飛行コースをしっかり把握

ドローンが墜落してしまった最悪の事態を想定し、どのような場所でドローンを飛ばすのか、また、どこを通過するのかをきちんと把握しておくことが大切です。

特に、航空法上は人口密集地(住宅街や市街地など)や空港の周辺でのドローンの飛行を原則禁止しているため、これらの場所で許可なく飛行させることにならないかにも注意が必要です。

(3)安全監視員を配置

操縦者が機体を見失ってしまった場合、ドローン落下の可能性が高まり、第三者を巻き込む確率も上がります。

このような事態を避けるためにも、ドローンを飛ばすときには、操縦者のほかにドローンを見張るための安全監視員をおくことをおススメします。これにより、ドローンの落下事故が起きる確率をある程度下げることができます。

(4)過去の事故事例を把握

ドローン事故を起こさない・被害を最小限にとどめるためには、過去の事故事例を把握し、その原因や対策を学ぶことが重要です。

そのうえで、無理のない飛行計画を立て、安全に飛行させるようにしましょう。

9 小括

まとめ

ドローンビジネスにおいては、物体を空に飛ばす以上、落下や第三者を巻き込んだ事故が起きる可能性は0ではありません。ドローン事故により誰かに損害を与えたら、操縦者や企業が責任を負うことは理解していただけたかと思います。

ただし、操縦者が少し気を付けるだけでドローン事故は予防することができます。ドローンを飛ばすときには、操縦者の責務として必ず事前対策をするようにしましょう。

10 まとめ

これまでの解説をまとめると以下のとおりです。

  • 「ドローン」とは、無人航空機の総称で、「空を飛ぶことができるけど、人が乗って操縦しない機体」のことをいう
  • ドローンは空を自由に飛ばすことができ、さまざまな分野で活用することができるが、その反面、人や建物との接触事故や、落下事故などの危険性が大いにある
  • ドローン事故の原因のほとんどが落下によるもの
  • ドローン事故により第三者に損害を与えてしまった場合、①民事上の責任、②刑事上の責任、③行政上の責任を負う可能性がある
  • 「民事上の責任」を負う人としては、①ドローンの操縦者、②操縦者を雇う企業、③ドローンの操縦を依頼した企業、④ドローンの製造メーカー(メーカー)、⑤ドローンの販売業者5パターンが考えられる
  • 刑事上の責任については、大きく分けて、操縦者に「故意」がある場合と「過失」がある場合に分かれる
  • 行政上の責任として直接的に規定されているものはない。ただし、ドローン事故を起こした際には航空法上の報告義務などが発生する場合があることに注意
  • ドローン事故を未然に防ぐには、事前の対策がとても重要