はじめに

起業したり事業をはじめたばかりで、取引先との契約書をどのように交わせばいいか分からないという起業家やスタートアップの社員さんも少なくないのではないでしょうか?

なんとなく取引先から言われるがままに契約を結んではいけないということは分かっていても、どんな内容がNGなのか?どんなタイミングで交渉すればいいのか?捺印?製本?わからないことだらけですよね。

そこで今回は、契約書を交わす際に問題となる点について、実際の契約の締結フローを確認しつつ、一般的な契約書のテンプレートとともに解説します。

1 契約書とは

契約書の書き方・作成・作り方=1

(1)契約とは

そもそも「契約」とは、権利や義務について当事者で約束を結ぶことをいいます。

たとえば、スーパーやコンビニで買い物をしたことがない人はいないですよね。実は、この買い物の際にも契約が締結されています。

スーパーやコンビニといったお店が「売ります」と商品を陳列した上で、お客さんが商品をレジに持っていき「買います」と意思表示をすることで、売買契約が締結されたことになるのです。

この売買契約に基づいて、お店は商品をお客さんに引き渡す義務を負うことになりますし、お客さんはその対価を支払う義務を負うことになります。

義務を負うということは、同時に権利も発生します。

お店はお客さんに対価を支払えと求める権利を持ちますし、お客さんは商品を引き渡せと求める権利を持つことになります。

このような権利・義務といった契約内容を書類にまとめたものが「契約書」です。

もっとも、契約というものは、合意が成立していれば、口頭でも法的には有効となります。スーパーやコンビニで買い物をするのにいちいち契約書を締結していないのは、これが理由です。

そのため、取引をする際に、わざわざ手間をかけて契約書なんて作らなくてもいいような気がしますよね。

ところが、実際には、会社間の契約では契約書が用いられています。では、なぜ契約書を交わすのでしょうか。

(2)契約書はなぜ必要なのか

契約書」とは、合意された契約の内容を明文化した書類のことです。

保証契約や一部の賃貸借契約など法律で契約書の作成が必要とされるものを除けば、一般的には契約書の作成は必須ではありません。しかしながら、契約書は頻繁に利用されます。

それは、以下の2つの目的のためです。

  1. 契約内容の明確化
  2. トラブル対策

①契約の明確化

まず、契約書には契約の内容が詳細に書き込まれます。

これにより、電話や対面での口頭の契約とは異なり、契約の内容を明確にしておくことができますし、「あれ、どんな取引なんだっけ」となったときなどに、あとから見返すことができるようになります。

それだけなく、契約書の中で契約内容が明文化されているため、お互いに契約の内容について、認識が違ったということが生じづらくなります。

②トラブル対策

契約書には、契約の内容が詳細に書き込まれているだけでなく、その内容に合意したことを証明する署名・捺印がなされます。

そのため、当事者はその契約内容には当然拘束されることになり、相手方が契約の義務などを履行していないなど、トラブルが起きた際には、契約書にもとづいて反論することが可能となります。

また、契約書は法的にその効力が認められているため、トラブルが訴訟に発展した場合、お互いが合意した権利や義務などについての最も重要な証拠となります。

以上のように、契約書は、当事者の権利や義務などを明確にすることができ、役務の内容や支払いについての取り決めを具体的に示してくれるだけでなく、争いに陥ってしまった際にも、重要な証拠として機能します。

また、契約書に類似して、覚書というものがあります。

「契約書と別に覚書を締結したけれど、これは有効なの?」 と疑問に思う人もいるかもしれません。次で確認しましょう。

(2)契約書と覚書の違い

覚書」とは、基本的に、契約書を実際に作成する前に、当事者双方が合意したことを書類に残したり、すでに交わされた契約について補足・変更する際に再び交わされる書面のことです。

覚書は、契約書の補助的な書類という位置づけだと思われがちですが、法的な意味は契約書と同じものです。そのため、覚書であっても、契約書と同じように慎重に内容を吟味する必要があります。

では、実際に契約書を作る際には、どのようなフローで行われるのかをチェックしていきましょう。

2 契約書作成の流れ

契約書の書き方・作成・作り方=2

契約書を実際に作成する際には、以下の7つのステップがあります。

  1. 内容の話し合い
  2. 契約書の作成
  3. 契約書の修正・訂正
  4. 契約書の署名・捺印
  5. 契約書の製本・割印
  6. 契約書の送付・郵送
  7. 契約書の保管・収入印紙

このうち①~③は相手と協議するなどといった必要があるもので、④~⑦は事務的に遂行する必要のあることとなっています。1つずつ、解説します。

(1)内容の話し合い

契約書を作成する前提として、当事者間で合意することが必要です。

  • 相手方には何をしてもらうのか
  • 自身は何をするのか
  • 金額
  • 期間

などといった事項を話し合いましょう。

この時点で、双方が納得できる妥協点が見つからず合意に至らなければ、そもそも契約は成立しないため契約書を作成する必要もありません。

(2)契約書の作成

話し合いが終われば、話し合いの内容(合意した内容)をもとに契約書を作成することになります。ここでいう、契約書の作成とは、契約書の案、ドラフトを作成することをいいます。

この契約書の案、ドラフトの作成は、基本的に、当事者のいずれか一方が行います。

この際には、面倒くさがらずに契約書を作成する側に回りましょう。

なぜなら、契約書を作成することで、自身がベストだと思える文言・表現で契約書を作成でき、その後の修正などの場面においても優位に立てると考えられるからです。

(3)契約書の修正・訂正

契約書の案、ドラフトを作成し終わったら、相手方に内容のチェックを依頼しましょう。逆に相手方が契約書の案、ドラフトを作成した場合は、その内容が問題ないかチェックを行いましょう。

契約書は、一度署名・捺印してしまうと、契約書に書かれた義務を負わなければいけません。

契約書に話し合いでは合意していない内容が書かれていても、それに気付かず署名・捺印した時点で、その内容に納得したことになってしまいます。

また、契約内容は簡単に変更できるものではなく、相手方も変更を許容してくれた場合にのみ認められることが基本です。

そのため、

  • 契約書に合意した内容が書かれているか
  • 契約書に合意していない事項が書かれていないか
  • 自身に不利な条項がないか

といった事項をチェックし、もし間違った内容が書かれていたり、不利な条項があれば、必要に応じて契約書の修正・訂正が必要になるのです。

双方が契約書の内容に関してチェックを行い、問題ないことが確認できたら、次は、契約書に署名・捺印していくフェーズとなります。

(4)契約書の署名・捺印

①署名と記名

契約書を作成したら、つぎは署名捺印をする段階となります。

代表取締役社長など契約を締結する権限をもつ決済者が直接名前を書いて会社の印鑑を押すことを「署名捺印」、印刷したり、ゴム印で対応したり自署以外の方法で名前を記載した上で会社の印鑑を押すことを「記名押印」といいます。

実務上は、代表取締役が全ての契約書に署名をすることはあまり多くありません。なぜなら、会社の印鑑さえ押されていれば、署名でも記名でも契約の効力に大きな差はないからです。

もっとも、外国の会社と契約を締結する場合には、注意が必要になります。

外国ではそもそもハンコを契約書で使用する文化がないことが多いです。そのため、外国の会社と契約を締結する場合には、契約を締結する権限をもつ決済者が署名する必要があります。

②署名・捺印する箇所

一般的に、契約書における署名捺印をする箇所(署名欄)は、図で表すと以下の通りとなります(契約書によっては、末尾ではなく、契約書の先頭となる場合もあります)。

契約書における署名捺印

この署名欄には、

  • 住所
  • 会社名
  • 役職
  • 名前

を記載することが一般的です。

また、印鑑について、どの印鑑を利用するのかといった点も気になるものと思います。

会社名と「契約之印」という彫刻がなされた「契約印」を用いることが多いですが、会社の認印や印鑑登録を受けた実印でも問題ありません。

ただし、シャチハタは両者とも、使用しないようにしてください。

シャチハタは100ショップなどで誰でも同じものが手に入るため、シャチハタを使用した当事者が「そんな契約書にハンコを押した覚えがない」と言った場合、言われた側は反論が難しくなってしまいます。

両者が合意し、署名(記名)捺印を行ったら、契約書を製本するフェーズに移ることになります。

(5)契約書の製本・割印

次は、契約書を製本したり、割印を押すフェーズです。

たとえば、契約書が5枚となっている場合、まとめずにクリアファイルなどにいれるだけだと、中身を差し替えられてしまうかもしれません。

それを防ぐための対応として、以下の作業が行われます。

  1. 割印
  2. 製本

①割印

契約書は、契約当事者と同じ部数用意されます。

たとえば、2つの会社が契約を締結する場合には、同じ内容の契約書を2部用意します。同様に、3つの会社が契約を締結する場合には、同じ内容の契約書を3部用意することになります。

割印」とは、2部以上の契約書にまたがるように押印することで、同一の書面であることを示すために押される印のことです。

契約書における割印は、以下の図のように押されます。

契約書における割印

このようにすることで、2社で契約を締結する場合には、自社用の契約書と相手方用の契約書が同一のものであることを証明することが可能となります。

万が一、偽造しようとしたとしても、相手方の印鑑を何らかの形で入手しない限り同一の契約書であることの証明ができません。

そのため、割印を押しておくことで、書面の改ざんやすり替えが極めて困難となる点において、有用性があると考えられています。

②製本

製本」とは、複数枚の契約書類をひとつにまとめ、ホチキスなどで留めた上で、製本テープなどで背表紙を括り契印を押すことをいいます。

契印」とは、2枚以上の書類のページが変わる際などに、連続した書類であることを証明するために押される印のことです。

契約書の製本は、以下の図のように行われます。

製本

上記のように、製本する際には、複数枚の書類をまとめ、製本テープを貼り付け、契印を押します。このようにすることで、中の一部を差し替えようとすると製本テープを剥がさなければならなくなります。

万が一、偽造が行われたとして、中の一枚を差し替えようとしても、製本テープを剥がした跡が残るだけでなく、相手方の契印に使われた印鑑を入手する必要が生じます。そのため、改ざんを防げる確度が高まると考えられるため、このような作業を行います。

また、上記のような製本をしない場合、ページがかわるごとに契印を押すことになります。

製本テープを使用しない場合は、以下のように契印を押します。

契印

ページが変わるごとに契印を押すことで、製本や割印と同様、一部をすりかえることが、極めて困難になります。もっとも、全ページに契印を押すとなると、簡潔なものならばいいですが、数十ページにわたる契約書の場合、大変な事務作業となります。

すべてのページに契印を押す必要が生じる手間が増えるため、複数ページに渡る契約書の場合は、製本テープを用いて製本したほうがよいでしょう。

(6)契約書の送付・郵送

製本まで済んだら、実際に契約書を送付・郵送するフェーズになります。

ここでポイントとなるのは、契約書をどのように送るかということです。基本的に、相手方に配達が完了していることを確認できる手段を用いるようにしましょう。

こうすることで「契約書を受け取っていない」と言われトラブルになることを防ぐことができます。

具体的には、契約書の送付・郵送方法として以下の2つの方法があります。

  1. 簡易書留
  2. 配達証明郵便

①簡易書留

簡易書留」とは、郵便局が荷物の引受から配達までの郵送過程を記録しておいてくれる郵便のことです。

簡易書留の場合、受領書に記載のある引受番号を郵便局のWebサイトに入力することで、配達状況を確認することができます。

そのため、相手が契約書類を受け取っているかどうかといったことがいつでも分かるようになっています。

②配達証明郵便

配達証明郵便」とは、一般書留の一種で、郵便局が配達したという事実を記録し、証明してくれる郵便のことです。

配達が完了すると郵便の差出人に配達証明書が発行されます。

これにより、配達が完了したことを証明できるため、訴訟の際にも用いることのできる証拠資料となります。

配達の証明書類が郵便局から発行される点は大きなメリットと言えますが、配達証明の加算料金として別途320円かかる点はデメリットです。

このように、契約書を送付する際には、簡易書留や配達証明郵便といった追跡が可能な郵便サービスを用いることが一般的です。

簡易書留はウェブ上で配達について確認でき、配達証明郵便は配達完了の書類が発行されます。資料の保管などを考慮して、都合のいいものを用いてください。

(7)契約書の保管・収入印紙

①契約書の保管

契約書は、法律によってその保管期間が決められています。

たとえば、取引があったことを証明するために会社法では10年、法人税法では7年といった具合で保管期間が定められています。

古い契約書も保管期間が満了するまでは保管しなければいけないため、安易に捨てないように注意しましょう。

②収入印紙

契約書の中には、課税文書に該当するものがあります。

課税文書」とは、印紙税が課される書類一般のことです。

課税文書を発行・受領した場合は、契約書内に記載の取引額に応じて、印紙を購入し、契約書に貼り付ける必要があります。なお、印紙を貼るのは、自らの手元に残る一部のみです。

課税文書に該当する文書でよく締結される契約は以下の通りです。

  1. 知的財産権などの譲渡契約書
  2. 請負契約書
  3. 継続的取引の基本契約書

手元の契約書類が課税文書に該当するか、詳しく知りたい方は国税庁のホームページをご覧ください。

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3 契約書の雛形・テンプレート

契約書の書き方・作成・作り方=3

契約書の一般条項についての、雛形・テンプレートはこちらからダウンロードしてください。

なお、記事の最後に、雛形の使用について注意点を記載しているので、ご確認ください。

4 一般的な契約書の書き方

契約書の書き方・作成・作り方=4

ここからは、一般的な契約書がどのように書かれるかを雛形をもとに確認します。

一般的な契約書には、以下の項目が設けられます。

  1. タイトル(表題)
  2. 前文
  3. 契約条項
  4. 秘密情報の取扱い
  5. 損害賠償
  6. 権利義務譲渡の禁止
  7. 反社会的勢力の排除
  8. 解除条項
  9. 有効期間
  10. 管轄裁判所
  11. 協議条項
  12. 日付欄と署名欄

(1)タイトル(表題)

契約書のタイトルは、その契約書が何の契約であるかを予想できるものが望ましいです。

そして、ここで注意しなければいけないのは、契約書のタイトルと中身を一致させるということです。

たとえば、売買契約書というタイトルがついているのに、契約書の中身が売買とは異なるマンションの賃貸借契約書だった場合を考えてみてください。

相手方が送付してきた契約書の中身をろくにチェックせずに契約してしまった場合、売買契約を締結したつもりが、意図していない賃貸借契約を締結してしまうことになります。こうなってしまっては、トラブルになりかねません。

逆に、相手方が送付してきた契約書の中身をチェックした際にタイトルと中身が一致していなければ、どう感じるでしょうか。

「この事業者と取引をしても大丈夫かな?仕事を任せても初歩的なミスをするんじゃないか」と不安になってしまいますよね。

そのため、契約書のタイトルは、契約書の中身と一致させ、何の契約であるかをタイトルから予想できるものにしましょう。

(2)前文

前文」とは、誰と誰が契約を締結するのか、その契約の当事者を特定するための文章のことをいいます。

ここでは、同時に、当事者の略称を定義します。たとえば、「〇〇工業株式会社(以下「甲」という)」といったものです。

契約書における略称は、一般的に、以下の十干(じっかん)が上から順に使われます。

  • 甲(コウ、きのえ)
  • 乙(オツ、きのと)
  • 丙(ヘイ、ひのえ)
  • 丁(テイ、ひのと)
  • 戊(ボ、つちのえ)
  • 己(キ、つちのと)
  • 庚(コウ、かのえ)
  • 辛(シン、かのと)
  • 壬(ジン、みずのえ)
  • 癸(キ、みずのと)

契約の当事者が6名以上になることは、少ないため、己より下はあまり見ることがありません。

これらは、法的文書に特有な略称で馴染みがないかもしれませんが、何度もフルネームで書くのを避けるためにAさん、Bさんと略すことと意味は同じです。

また、十干の他にも秘密保持契約書では「開示者」・「受領者」という略称が使われたり、業務委託契約書では「委託者」・「受託者」という略称が使われたりしています。

(3)契約条項

契約条項」とは、締結される契約に固有な取引情報が書かれた条項のことです。契約の形態ごとに書かれる事項は変わります。

契約条項を定める際には、契約当事者同士が内容について共通の理解を持てる形にします。契約ごとに特有な内容となるため、法律の専門家などを交えて慎重に内容を検討する必要があります。

たとえば、ソフトウェア開発の業務委託契約書では、契約条項は以下のように定めることが考えられます。

    第●条(本件業務)

    本件業務の内容および委託料は以下のとおりとする。

    266:【ひな形】業務委託契約書:受託者側(請負)

(4)秘密情報の取扱い

次の条項は秘密情報の取扱いについてです。いわゆる、秘密保持条項です。

秘密保持条項」とは、契約によって知った情報・知ることができた情報について、外部に漏えいしないことを定める条項のことです。

この秘密保持条項の一例は、以下の通りです。

    第●条(秘密情報の取扱い)

    1.甲および乙は、相手方より提供を受けた技術上または営業上その他業務上の情報のうち、次のいずれかに該当する情報(以下「秘密情報」という。)を秘密として保持し、秘密情報の開示者の事前の書面による承諾を得ずに、第三者に開示、提供または漏えいしてはならないものとする。

     ①開示者が書面により秘密である旨指定して開示した情報

     ②開示者が口頭により秘密である旨を示して開示した情報で開示後●日以内に書面により内容を特定した情報。なお、口頭により秘密である旨を示した開示した日から●日が経過する日または開示者が秘密情報として取り扱わない旨を書面で通知した日のいずれか早い日までは当該情報を秘密情報として取り扱う。

    2.前項の定めにかかわらず、次の各号のいずれか一つに該当する情報については、秘密情報に該当しない。

     ①開示者から開示された時点で既に公知となっていたもの

     ②開示者から開示された後で、受領者の帰責事由によらずに公知となったもの

     ③正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負わずに適法に開示されたもの

     ④開示者から開示された時点で、既に適法に保有していたもの

     ⑤開示者から開示された情報を使用することなく独自に開発したもの

自社が秘密として管理している情報などを契約における必要性から相手方に提供しなければいけないことはよくあります。このような場合には、必ず秘密保持条項を定めて、漏えいしないことを相手方に約束させましょう。

他にも、「営業秘密」の保護の観点でもこの条項は重要です。

営業秘密」とは、秘密として管理されている情報のうち、有用な技術・営業上の情報で、公に知られていないもののことをいいます。たとえば、顧客名簿やソフトウェアなどのプログラム、製品の設計図面などが該当します。

この条項を定め、秘密であることを示した上で相手方に情報を提供することで、秘密としてその情報が管理されていたことや、公に知られていないといった「営業秘密」に該当する条件をみたしやすくなります。

また、契約が終了したからといって開示された情報を好きに利用されては困りますよね。

そのため、後ほど契約期間についての定めを確認しますが、この契約の期間が終了しても情報を保護するといった定めを置いたり、契約終了後には破棄・返還してもらうことを定めることも可能です。

(5)損害賠償

損害賠償条項の一例は以下の通りです。

    第●条(損害賠償)

    甲および乙は、本契約の履行に関し、相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合、相手方に対して、損害賠償を請求することができる。

上記の秘密情報が漏えいされてしまった場合や、契約条項に定めた義務などが履行されなかったことによって生じた損害を補填してもらうための条項です。

なお、損害賠償条項の目的は、トラブル発生後に損害を補填してもらうためだけではありません。

もう一つの役割は、「損害を発生させた場合、賠償をしなければいけないから、しっかりやろう」と当事者が考えるような状況をつくることにあります。

適切に契約で発生した義務を果たさなければならないという状態にすることで、互いに情報の授受や管理に注意を払うことになるわけです。

(6)権利義務譲渡の禁止

権利義務譲渡の禁止の一例は以下の通りです。

    第●条(権利義務譲渡の禁止)

    甲および乙は、互いに相手方の事前の書面による同意なくして、本契約上の地位を第三者に承継させ、または本契約から生じる権利義務の全部もしくは一部を第三者に譲渡し、引き受けさせもしくは担保に供してはならない。

権利義務譲渡の禁止」とは、相手方の書面による許諾なく、契約で発生した権利や義務を移転・譲渡してはいけないという意味です。

契約を締結したのに、契約の相手方がある日突然知りもしない人に変わってしまうと、

  • 誰に納品すればいいの?
  • 誰に請求すればいいの?
  • 依頼していた仕事の状況は?

など、困ってしまいますよね。そういったことを回避するために、設ける条項となります。

(7)反社会的勢力の排除

反社会的勢力の排除の条項の一例は以下の通りです。

    第●条(反社会的勢力の排除)

    1.甲および乙は、相手方に対し、次の各号のいずれかにも該当せず、かつ将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。

     ①自らまたは自らの役員もしくは自らの経営に実質的に関与している者が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等その他反社会的勢力(以下総称して「反社会的勢力」という。)であること。

     ②反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること。

     ③反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること。

     ④自ら若しくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること。

     ⑤反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること。

     ⑥自らの役員または自らの経営に実質的に関与している者が、反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること。

    2.甲および乙は、相手方に対し、自ら次の各号のいずれかに該当する行為を行わず、または第三者を利用してかかる行為を行わせないことを表明し、保証する。

     ①暴力的または脅迫的な言動を用いる不当な要求行為。

     ②相手方の名誉や信用等を毀損する行為。

     ③偽計または威力を用いて相手方の業務を妨害する行為。

     ④その他これらに準ずる行為。

    3.甲または乙は、相手方が前二項のいずれかに違反し、または虚偽の申告をしたことが判明した場合、契約解除の意思を書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)で通知の上、直ちに本契約を解除することができる。この場合において、前二項のいずれかに違反し、または虚偽の申告をした相手方は、解除権を行使した他方当事者に対し、当該解除に基づく損害賠償を請求することはできない。

    4.前項に定める解除は、解除権を行使した当事者による他方当事者に対する損害賠償の請求を妨げない。

契約書には概ね暴力団排除条項または反社会的勢力の排除条項が記載されています。これは法務省による「排除条項に対する方針」や、地方自治体などによる「暴力団排除条例」の影響を受け、設けられるようになりました。

方針や条例では、可能な限り記載するといった努力義務となっていますが、実際にはほとんどすべての契約書に示されています。

というのも、もし反社会的勢力との取引関係が衆目の知るところとなると、その会社は社会的信用を大きく損ない、事業活動が事実上、不可能となるおそれがあるからです。

それだけでなく、反社条項がなければ、後から相手が反社会的勢力であったり、あるいは関係があると判明した際に、スムーズに契約を解除したり、損害賠償を請求したりといった対応が取りづらくなります。

万が一の場合に備えて、この条項を設ける必要があるのです。

(8)解除条項

解除条項の一例は、以下の通りです。

    第●条(解除)

    1.甲または乙は、相手方に次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合には、何らの催告なしに直ちに本契約の全部または一部を解除することができる。

     ①重大な過失または背信行為があった場合

     ②支払いの停止があった場合、または仮差押、差押、競売、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始の申立てがあった場合

     ③手形交換所の取引停止処分を受けた場合

     ④公租公課の滞納処分を受けた場合

     ⑤その他前各号に準ずるような本契約を継続し難い重大な事由が発生した場合

    2.甲または乙は、相手方が本契約のいずれかの条項に違反し、相当期間を定めてなした催告後も、相手方の債務不履行が是正されない場合は、本契約の全部または一部を解除することができる。

    3.甲または乙は、第1項各号のいずれかに該当する場合または前項に定める解除がなされた場合、相手方に対し負担する一切の金銭債務につき相手方から通知催告がなくとも当然に期限の利益を喪失し、直ちに弁済しなければならない。

解除」とは、契約がなかったことにすることをいいます。

解除条項は、契約の一方当事者が、背信行為や支払いの停止など条項に定めた条件(解除事由)をみたしてしまった場合には、契約について協議したり、その是正を求める請求をしたりせずに、すぐに解除できることを定める条項です。

この条項が無ければ、たとえば、相手方が契約内容違反をしても、すぐには解除できなくなってしまいます。

契約をただちに解除したいときに、契約をすぐに解除できるよう、解除条項を設けるようにしましょう。

なお、解除事由は、契約の相手方がその内容でOKだと言ってくれるのであれば、自由に決めることができます。

契約を締結した目的から逆算して、「〇〇が起きたら契約は続けられないな」といった事情が予め分かっているのであれば、解除事由に条件を追加するようにしてください。

(9)有効期間

有効期間の一例は、以下の通りです。

    第●条(有効期間)

    本契約は、本契約の締結日から●●●●年●月●●日まで効力を有するものとする。

この部分は契約の有効期間についての条項です。いつまで契約が有効であって欲しいかを考えて期間を設定しておくことになります。

ただし、秘密情報の取扱い部分でも述べた通り、一定の条項については契約の有効期間が過ぎても効力を存続させることが可能ということには注意が必要です。

(10)管轄裁判所

管轄裁判所の条項の一例は、以下の通りです。

    第●条(管轄裁判所)

    本契約に関する一切の紛争については、●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所として処理するものとする。

管轄裁判所の条項は、トラブルがおきたときにどの裁判所で争うかを予め決めておくために用いられます。

裁判となった場合、当然その裁判所に通わなければいけなくなります。トラブルさえ起きなければ、問題ないとはいえ、万が一のこともあります。

自社から遠い裁判所を管轄裁判所に設定されないように注意しましょう。

(11)協議条項

協議条項の一例は、以下の通りです。

    第●条(協議)

    本契約に定めのない事項または疑義が生じた事項については、信義誠実の原則に従い甲および乙が協議し、円満な解決を図る努力をするものとする。

協議条項の機能は、契約書では定めていなかった事態が発生した時に、協議をして解決するようにすることです。

もちろん、契約締結の時点で想定できるものについては、条項を置けばいいのですが、必ずしもすべてを予測することは現実的には不可能です。そのような事態に備えるために、協議条項が置かれます。

(12)日付欄と署名欄

次は、日付欄と署名欄についてです。

日付と署名は、以下のように記載します。

    本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲、乙記名押印の上、各1通を保有する。

    ●●●●年●月●●日

                      【甲】

                      【乙】

契約書の末尾には、契約を締結した日を記した日付と署名・捺印のスペースが設けられます。この際に、日付をどのように設定すべきかという点に悩むこともあるかもしれません。

日付を設定する際には、

  1. 契約期間の開始日
  2. 契約内容に合意した日
  3. 双方の意思決定が完了した日
  4. いずれかが署名した日
  5. 書面上に最後に押印した日

といったものがありえます。

日付の設定は、会計処理や年度、契約期間の関係から調整されることもありますので、当事者同士で話し合ったうえで日付を設定することになります。

5 小括

契約書の書き方・作成・作り方=5

これまで解説してきた通り、契約書を締結する際には、契約書と覚書の違いなどを理解した上で、契約書作成までのフローを押さえておく必要があります。それらを踏まえて、個別の契約の特徴などに応じて具体的な契約事項を検討していくことになります。

その後、契約書を作成し、割印などを押し、相手方に郵送し、収入印紙を貼り保管するといった作業を行うことになります。分かりづらい面もありますが、適切に対応し、事業を進めていきましょう。

6 まとめ

これまでの説明をまとめると、以下の通りになります。

  • 「契約書」とは、合意された契約の内容を明文化した書類のことである
  • 契約書は主に①契約内容の明確化、②トラブル対策のために作成される
  • 「覚書」とは、基本的に、契約書を作成する前に、当事者が合意したり、すでに交わされた契約について補足・変更する際に再び交わされる、書面のことである
  • 契約書作成のフローは、①内容の話し合い、②契約書の作成、③契約書の修正・訂正、④契約書の署名・捺印、⑤契約書の製本・割印、⑥契約書の送付・郵送、⑦契約書の保管・収入印紙となっている
  • 「割印」とは、2つ以上の書面にまたがるように押印することで、同一の書面であることを示すために押される印である
  • 「契印」とは、2枚以上の書類のページが変わる際などに、連続した書類であることを証明するために押される印である
  • 契約書の郵送には、主に①簡易書留、②配達証明郵便などが使われる
  • 「課税文書」とは、印紙税が課される書類一般のこと
  • 一般的な契約書には、①タイトル(表題)、②前文、③契約条項、④秘密情報の取扱い、⑤損害賠償、⑥権利義務譲渡の禁止、⑦反社会的勢力の排除、⑧解除条項、⑨有効期間、⑩管轄裁判所、⑪協議条項、⑫日付欄と署名などが記載される
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