はじめに

建設現場などにおいて、一部の作業を人ではなくドローンが行えるようになると便利ですよね。

近時、建設現場における「測量」を始めとして、ドローンの活用が急速に広がっています。もっとも、建設現場だからといって、現場内であれば自由にドローンを飛ばすことができるというわけではありません。建設現場でドローンを飛ばす際にも、守らなければならないルールがあります。

そこで今回は、建設現場における「測量」などにドーローンを活用する場合に注意しなければならない法律規制をITに強い弁護士が解説します。

目次

1 「測量」におけるドローンの活用事例

ドローン測量

ドローンは、空を自由に飛ばすことができるため、近時さまざまな分野で活用されています。現在に至っては、土木・建設現場においてドローンが活用されるなんてことも珍しくありません。このように一見活用されないようにも思える土木・建設現場においてドローンが活用され始めたのはなぜでしょうか。

土木工事や建設現場では、深刻な人手不足による工事費・人件費の高騰に頭を抱えているのが現状です。そのため、ICT(Information and Communication Technology 情報通信技術を活用したコミュニケーション)化による生産性の向上やi-Construction(建設工事に先端技術を導入することにより、生産性の向上を図る仕組み)が推奨されています。その一環として、ドローンの活用に対する期待が高まっているのです。

土木工事や建設工事は、測量・設計→施工計画→施工→検査といった順で進められるのが一般的ですが、この中でも特にドローンの活用が進んでいるのが「測量」の分野です。

もっとも、ドローンを使って「測量」をするにあたり、注意すべき法律規制はないのでしょうか。次の項目で詳しく見ていきましょう。

2 測量の際にチェックすべき法律「航空法」とは

航空法

土木・建設現場でドローンを活用する場合には、「航空法」という法律を知っておく必要があります。

航空法」とは、航空機における安全運航や秩序を守ることを目的とした法律です。

航空法は、ドローンなどの「無人航空機」について、

  1. 飛行場所(飛行禁止区域)
  2. 飛行方法(飛ばし方)

という2つの視点から一定のルールを設けています。

これらのルールについて、具体的に見ていく前にドローンなどの「無人航空機」とはそもそもどのような機体を指すのか、を先に確認しておきましょう。

3 無人航空機とは

ドローン測量

航空法は、以下の4つの要件をすべて満たす機体を「無人航空機」と定義しています。

  1. 飛ぶことができる機体であること
  2. 人が乗れないこと
  3. 遠隔操縦または自動操縦ができること
  4. 機体の重さが200g以上であること

これらの要件をすべてみたす機体は航空法上の「無人航空機」にあたり、航空法の規制対象となります。そのため、無人航空機を飛ばす際には「飛行場所」と「飛行方法」についてそれぞれのルールを守る必要があります。

以下で、簡単に見ていきましょう。

(1)飛ぶことができる機体であること

航空機である以上、空中を飛ぶことができる機体でなければなりません。

(2)人が乗れないこと

人が乗れない機体であることが必要ですが、人が乗れるかどうかは、機体の大きさだけでなく、その構造や性能などを総合的に考慮して判断されます。

(3)遠隔操縦または自動操縦ができること

リモコンなどによって機体を上昇・下降することができる「遠隔操縦」、もしくは、機体そのものに搭載されたプログラムによって自動的に操縦が行われる「自動操縦」が可能であることが必要です。

(4)機体の重さが200g以上であること

機体の重さが200g以上でなければなりません。この重さには、バッテリーの重さは含まれますが、それ以外の取り外し可能な付属品の重さは含まれません。

 

以上からすると、200g「未満」(「以下」ではない)ホビードローンと呼ばれるドローン等であれば、少なくともここでいう「無人航空機」にはあたらないため、基本的には自由に建設現場などで飛ばしてOKということになります。

それでは、航空法による規制について、次の項目から具体的に見ていきましょう。

※「無人航空機」の定義について、詳しく知りたい方は、「ドローン企業が知るべき航空法とは?3つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

4 飛行禁止区域の法律規制(飛ばしていい場所)

飛行禁止区域

ドローンが空を飛ぶ機体である以上、場所を問わず自由に飛ばすことを許してしまうと、飛行機との接触やドローンの落下など、さまざまな危険が生じる可能性が出てきます。このようなことにならないよう、航空法はドローンの飛行場所に一定のルールを設けています。具体的には、以下の3つの場所でドローンを飛ばしてはいけないとされています。

  1. 空港などの周辺地域
  2. 150メートル以上の空域
  3. 人口密集地域(DID地区)

そのため、ドローンを測量現場で飛ばす際には、その現場がこれら3つの場所に当てはまるか否かを判断する必要があります。

以下で、詳しく見てみましょう。

(1)空港などの周辺地域

航空法では、「空港などの周辺地域」について細かく具体的に定義を設けていますが、要は、「空港周辺の上空でドローンを飛ばすことはできない」ということを覚えておけばOKです。

(2)150メートル以上の空域

空港周辺ではないものの、航空機が飛行する高度でドローンを飛ばすと、航空機の安全に影響を与えるおそれがあります。そのため、航空機の最低飛行空域である高度150m以上の空域で、ドローンを飛ばすことはできません。

ドローン

もっとも、ここでいう高さは海抜高度ではなく、実際に飛ばそうと思っている場所の地表からの高度を意味しますので、山岳地帯であっても、飛ばそうとしている地表から150メートル未満であればドローンを飛ばすことができます。

(3)人口密集地域(DID地区)

人や家屋が密集する場所でドローンが落下してしまうと、大惨事になりかねません。そのため、人や家屋が密集する場所でドローンを飛ばすことはできません。「人や家屋が密集する場所」とは、具体的には「人口集中地区(人口が密集している地域)」のことをいいます。たとえば、東京23区は人口集中地区にあたります。

人口集中地区

もっとも、このルールは屋外でドローンを飛ばす場合にかぎって適用されるものであり、屋内で飛ばす場合には自由にドローンを飛ばすことができます。

 

以上のように、航空機や人・家屋などの安全を害するおそれがある場所でドローンを飛ばすことは原則としてできません。もっとも、これらの場所であっても、事前に国から許可を受けていれば、ドローンを飛ばすことができます。

次に、飛行方法(飛ばし方)のルールについて、見ていきましょう。

※飛行禁止区域の規制について、詳しく知りたい方は、「ドローン企業が知るべき航空法とは?3つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

5 飛行方法の法律規制(飛ばし方)

飛ばし方の規制

たとえ、ドローンを飛ばす場所のルールをきちんと守っていても、危険が伴う飛ばし方をするのであれば元も子もありません。そこで、航空法は、飛行場所とは別に飛ばし方についても一定のルールを設けました。以下で見てみましょう。

(1)飛ばし方規制の全体像

ドローンを飛ばす際には、以下の6つのルールを守る必要があります。

  1. 日中(日の出から日没まで)に飛ばすこと
  2. ドローンとその周辺を目視により常に監視すること
  3. 第三者や建物などとの間に30m以上の距離を置くこと
  4. 人が多く集まるイベント会場などの上空で飛ばさないこと
  5. 爆発物などの危険物を輸送しないこと
  6. ドローンから物を投下しないこと

これらのルールに一つでも違反する形でドローンを飛ばすためには、国から事前に承認を受ける必要があります

以下で、順番に見ていきましょう。

(2)【ケース①】日中(日の出から日没まで)に飛ばすこと

日中の飛行

夜にドローンを飛ばすと、ドローンの位置や周りの状況などを正確に把握することが困難になり、非常に危険です。そのため、日中(日の出から日没まで)にかぎりドローンを飛ばすことができます。

(3)【ケース②】ドローンとその周辺を目視により常に監視すること

目視の範囲内

【ケース①】に共通しますが、ドローンやその周辺の状況を正確に把握できていなければ、ドローンを安全に飛ばすことはできません。そのため、ドローンを飛ばす人が直接その目でドローンの位置や周りの状況を確認しなければなりません。

(4)【ケース③】第三者や建物などとの間に30m以上の距離を置くこと

距離の確保

第三者や建物などにドローンが衝突するようなことになると、第三者や建物の所有者などに多大な損害を与えることになります。そのため、ドローンを飛ばす際には、第三者や建物との間に30m以上の距離を置かなければなりません。

(5)【ケース④】人が多く集まるイベント会場などの上空で飛ばさないこと

イベント会場での飛行禁止

お祭りや屋外ライブなど、人が多く集まるイベント会場の上空でドローンを飛ばすと、万一、ドローンが落下した場合に多くの人に甚大な被害をもたらす可能性があります。

そのため、人が多く集まるイベント会場などの上空でドローンを飛ばすことはできません。

(6)【ケース⑤】爆発物などの危険物を輸送しないこと

危険物の輸送禁止

危険物を乗せたドローンが落下したりすると、第三者や建物に被害をもたらす可能性が高いです。そのため、ドローンで危険物を輸送することはできません

(7)【ケース⑥】ドローンから物を投下しないこと

物の投下禁止

ドローンから投下された物が地上の人や建物に当たってしまうと、場合によっては、人の生命を奪ったり、建物を破損してしまうなど、大変危険です。そのため、ドローンから物を投下してはいけません

 

以上からもわかるように、どのルールもごくごく当たり前のことを定めた内容であるということがいえます。これらのルールは、飛ばす場所に関係なくドローンなどの「無人航空機」を飛ばす際には必ず守らなければならないルールです。

それでは、このような規制があることを前提として、土木・建設現場でドローンを使って「測量」を実施する場合に、どのような点に注意すべきかについて、以下で見ていきましょう。

6 建設現場でドローンによる測量をする場合

建設現場でドローン

建設工事は、都心のように人口が密集している場所で行われることもあれば、人気のない場所で行われることもあり、さまざまです。建設現場でドローンを使う以上、その現場がどのような地域なのか、という点を意識しておかなければなりません。

建設現場が以下のような地域において行われる場合には注意が必要です。

  1. 人口密集地域(DID地区)
  2. 山岳地帯

以下で、順に見ていきましょう。

(1)人口密集地域(DID地区)

既に見たように、人口密集地域(DID地区)でドローンを飛ばすためには国から許可を受ける必要があります。典型的には、東京23区内のような地域が人口密集地域にあたりますが、たとえ、自社の建設現場の上空に限定してドローンを飛ばす場合であっても、その建設現場が人口密集地域にあたるのであれば、国から許可を受けなければなりません。

(2)山岳地帯

ダムの建設現場のような山岳地帯でドローンを使って測量を行う場合、ドローンを目視で常に監視することができなくなる場合があります。この場合には、「目視外飛行」をすることについて、事前に国から承認を受けていなければなりません。

このほか、建設現場が行われる「地域」とは直接関係ありませんが、ドローンを使って「現地測量」を実施する場合についても注意する必要があります。現地測量を実施するためには低空飛行が必要になるため、人や建物に接触する可能性が高くなります。

そのため、人や建物との間に30m以上の距離を置かずに飛ばすことについて、事前に国から承認を受けておく必要があります。

 

以上のように、国から承認や許可を受けなければ、ドローンを飛ばすことができない場合もありますので、建設現場でドローンを使って測量を行う場合、建設場所の地域飛ばし方をあらかじめ特定したうえで、然るべき対応をとるようにしましょう。

7 建設現場で資材運搬をする場合

建築資材の運搬

建設現場では、資材を運搬したり、運搬されてきた資材を地面に置いたりといったことが頻繁に行われます。そこで、このような運搬・地面に置くといった作業をドローンを使って行うということが想定されます。

このような場合も、航空法の規制をきちんと確認・検討しなければなりません。以下の3つの場面に分けて、見ていきましょう。

  1. 運搬した物を地面に置く場合
  2. 資材を運搬する場合
  3. 運搬物に火薬類等が含まれる場合

(1)運搬した物を地上に置く場合

既に見たように、ドローンから物を投下することは原則できません。たとえば、農薬をドローンで散布する行為は「物を投下する」行為にあたりますので、事前に国から承認を受けておく必要があります。

もっとも、ドローンによって運搬した物を地面に置く設置するといった行為は「物を投下する」行為にあたらないとされており、禁止されていません。そのため、国による事前の承認は必要なく、自由にドローンを使うことができます。

(2)資材を運搬する場合

ドローンを使って、建設現場の近くにある資材置場から資材を運搬する場合、資材置場が近場であろうがそうでなかろうが、重要なのはドローンを飛ばすエリアがどのような地域なのかという点です。仮に、このエリアが人口密集地域(DID地区)にあたれば、国の許可を受ける必要があります。反対に、このエリアが人口密集地域にあたらず、かつ、空港などの周辺地域・150メートル以上の空域にあたらなければ、国の許可なしに自由にドローンを飛ばすことができます。

(3)運搬物に火薬類等が含まれる場合

ドローンを使って運搬する物が引火性のある液体であったり、火薬類などの危険物にあたる場合、または、それを含む場合、飛ばし方のルールである「爆発物などの危険物を輸送しないこと」に抵触するため、あらかじめ国による承認を受けておく必要があります。

 

以上のように、建設現場でドローンを使って資材を運搬する場合、主には資材を運搬するエリアと運搬物について、航空法による規制に抵触しないかどうかをあらかじめ検討する必要があります。そのうえで、国による承認・許可を受ける必要があるかどうかをしっかりと確認するようにしましょう。

8 小括

まとめ

ドローンを飛ばす際の法規制となる「航空法」は、主に「飛行禁止区域」と「飛ばし方」という2つの側面から一定のルールを設けています。

これら2つの規制は、建設現場などでドローンを飛ばす際にも当然に適用されるルールです。また、ドローンを飛ばす際には必ず知っておかなければならないルールです。

いずれも常識的な内容ですので、十分に理解をしたうえで、適切にドローンを飛ばすようにしましょう。

9 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 土木・建設現場でドローンを活用する場合には、「航空法」という法律を知っておく必要がある
  • 航空法は、ドローンについて、①飛行場所(飛行禁止区域)、②飛行方法(飛ばし方)
  • の2つの視点から規制している
  • 航空法は、①飛ぶことができる機体である、②人が乗れない、③遠隔操縦または自動操縦ができる、④機体の重さが200g以上である、という4つの要件をすべて満たす機体を「無人航空機」と定義している
  • ①空港などの周辺地域、②150メートル以上の空域、③人口密集地域(DID地区)でドローンを飛ばしてはいけない
  • ドローンを飛ばす際には、①日中に飛ばすこと、②ドローンとその周辺を目視により常に監視すること、③第三者や建物などとの間に30m以上の距離を置くこと、④人が多く集まるイベント会場などの上空で飛ばさないこと、⑤爆発物などの危険物を輸送しないこと、⑥ドローンから物を投下しないこと、の6つのルールを守る必要がある
  • 建設現場でドローンによる測量をする場合、その現場が①人口密集地域(DID地区)ではないか、②山岳地帯ではないか、また、③現地測量を予定していないか、といった点を検討する必要がある
  • 建設現場でドローンを使って資材を運搬する場合、主に問題となるのは、①運搬した物を地面に置く場合、②資材を運搬する場合、③運搬物に火薬類等が含まれる場合の3つである