はじめに

スマホなどを使ったネット証券をビジネスとして始めるにあたり、金商法が関係してくることは知っているけれど、金商法が具体的にどのようなルールを決めているのかを正確に理解している事業者は少ないのではないでしょうか。

守るべきルールの理解が曖昧なまま、ビジネスを開始することは怖くてできませんよね。

そこで今回は、特にネット証券を始めたいと考えている事業者に対して、守るべき金商法のルールを中心に、ITに詳しい弁護士が解説していきます。

1 フィンテック(Fin Tech)とは

フィンテック

フィンテック」とは、「金融(Finance)」×「テクノロジー(Technology)」の造語です。要するに決済などの金融サービスとスマホやPCなどのテクノロジーを結び付けたものをいいます。

具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • LINE Payなどのスマホ決済
  • freeeなどのクラウド会計簿
  • ビットコインなどの仮想通貨
  • 楽天証券などのネット証券

このように、決済だけでなく会計、仮想通貨、ネット証券など様々な分野で利用されているフィンテックですが、その中でも近時、特に注目されているのが、次の項目で見ていくネット証券・スマホ証券です。

2 ネット証券(オンライン証券)・スマホ証券とは

ネット証券

ネット証券(オンライン証券)」とは、インターネット上で株取引サービスを提供する証券会社のことをいいます。なかでも、スマートフォンを使うことに特化したインターネット上の証券会社を「スマホ証券」といいます。

具体的には次のようなものが挙げられます。

【ネット証券】

  • 楽天証券
  • SBI証券
  • 松井証券

【スマホ証券】

  • One Tap BUY
  • スマートプラス
  • FOLIO

近時は特に、その操作の手軽さ・軽快さを利用した「スマホ証券」の注目度が高くなっています。その理由としては以下のようなことが挙げられます。

  • 主要ターゲットが「ミレニアル世代」であること
  • 企業が若い世代にネット証券を普及させたがっていること

そもそもフィンテックは、「ミレニアル世代」を主なターゲットとしています。

ミレニアル世代」とは、1980~2000年代生まれの、PCやスマートフォンなどネットに慣れ親しんだ世代のことをいいます。近時は特にスマホを利用することが多くなっていることから、スマホを主軸にすることで主要ターゲットである若い世代にネット証券を広めようとしているのです。また、証券取引の利用が少ない若い世代を中心にスマホ証券をもっと普及させ、顧客を増やすということが企業のミッションとして掲げられていることも理由の一つとして挙げられます。

それでは、「スマホ証券」と従来の「ネット証券」との間にはどのような違いがあるのでしょうか。

「スマホ証券」には、主に、以下のような特徴があります。

  • 数回のタップで迅速に取引が完了できる手軽さ
  • 簡単なサービス内容が多い
  • 1000円からなど少額からの投資ができる
  • 手数料がとても安い、もしくは無料

具体的には、FOLIOの「テーマ投資」が挙げられます。

テーマ投資」とは、企業の株ではなく、「コスプレ」や「寿司」などのように興味のある分野を選べば、自動的にその分野の企業10社にまとめて投資することができるという投資方法です。はじめて株取引をする場合、どの企業に投資するかを判断するのはすごく大変ですよね。どの企業がいいかなどの情報も自分で集めなければいけないため、とにかく面倒です。そこで、この「テーマ投資」を選択すれば、投資先企業を自分で選ばなくていいうえ、興味ある分野に複数の投資ができ、リスクも勝手に分散してくれるため、とてもお手軽に投資ができます。

このように、「スマホ証券」は株取引をしたことのない若い世代向けに設計されているものが多いため、「テーマ投資」のように簡単にはじめられるサービスが多くあります。

以上のように、「スマホ証券」には、若い世代を新しい顧客として取り込む工夫が多く見られ、ビジネスとしてとても関心を集めています。

もっとも、事業者は「スマホ証券」を含むネット証券をビジネスとして自由に行うことはできません。そこにはクリアしなければならない法的問題があるからです。

3 ネット証券で問題となる法律

ネット証券と法律

ネット証券をビジネスとして行う際には、

  1. 金商法上の金融商品取引業者としての登録
  2. クロスボーダー取引

という2つのルールが問題となります。

4 問題点①:金商法上の金融商品取引業者としての登録

登録

株取引などの金融商品取引業を行う場合、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。

(1)問題の所在

ネットを通して行う「ネット証券」は、通常の株取引のように店舗などにおいて対面で取引を行うことは想定されていません。そのような場合でも金商法上の登録が必要になるのでしょうか。

先に結論を述べると、「ネット証券」も、金商法上の「第1種金融商品取引業」にあたり、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。

(2)第1種金融商品取引業とは?

第1種金融商品取引業」とは、簡単に言うと、株式や社債などの有価証券を対象として販売・勧誘などをする事業のことをいいます。ここにいう「勧誘」とは、株取引などの金融商品取引をやるように促すことを意味します。

例えば、証券会社やFX業者が行っている事業は第1種金融商品取引業にあたります。

証券やFXなどの有価証券の取引は、多大な損失をもたらす可能性も秘めていることから、投資者にとってリスクの高いものです。そのため、ネットを通して行う「ネット証券」であっても、株や証券といった金融商品を取り扱う以上は、投資者が安全に取引を行えるように、事業者は一定の厳しい条件をクリアすることが求められます。

具体的には、「第1種金融商品取引業」の登録を受けるためには以下の5つの条件を満たさなければなりません。

  1. 株式会社であること
  2. 純資産・資本金が5000万円以上あること
  3. 自己資本規制比率が120%以上であること
  4. 主要株主が欠格者でないこと
  5. 事業を的確に遂行できるだけの人的構成を備えていること

①株式会社であること

原則として、取締役会と監査役もしくは委員会が設置されている株式会社であることが必要です。なぜこのような機関を設置していなければならないかというと、監査役などによる監視の目を置いて、会社としての信用力を高めるためです。このように、信用力の高い会社が提供する株取引であれば、投資者としても安心して取引を行うことができるようになります。

さらに、その信用力を高めるために、以下の条件も満たさなければなりません。

(ⅰ)代表取締役に十分な金融業の経験があること

(ⅱ)取締役のうち1人以上が常勤で、かつコンプライアンスのプロであること

②純資産・資本金が5000万円以上あること

純資産・資本金」とは、企業の規模や体力の目安になるもので、信用力に大きくかかわるものです。

第1種金融商品取引業者は、純資産・資本金が5000万円以上である状態をずっと維持していかなければなりません。そのため、事業者は5000万円以上の純資産・資本金をもっている、というだけでは足りず、これを維持し続けなければなりません。なぜなら、一時的にお金を借りて純資産などが5000万円以上あると見せかける事業者が出てくる可能性があり、そのような事業者に会社としての信用力は認められないからです。

事業者は、この先も純資産・資本金が5000万円以上あることを維持し続けるということを国に説明していくことになります。

例えば、以下のようなことを根拠とした説明が挙げられます。

  • 親会社や株主が必要に応じて提供できる資金力
  • 本業の収益性

なお、5000万円以上を維持できなくなると、登録を取り消されるおそれがありますので注意が必要です。

③自己資本規制比率が120%以上であること

自己資本規制比率」とは、何かトラブルが生じた場合に、取引先に支払う金銭があるかどうかという資金の余裕を示す比率のことをいいます。この「自己資本規制比率」が高いほどリスクに強く、企業の財務の健全性が高いといえ、信用力が十分にあるといえます。そのため、「自己資本規制比率」も、純資産・資本金の条件と同じく、一時的に120%であるだけでは不十分で、それを維持し続けなければなりません。

なお、「自己資本規制比率」が140%を下回った場合、120%以上であっても、信用力を維持しきれないおそれがあるため、国に届出をださなければなりません。そのため、登録を受ける際には十分に余裕のある金銭を確保していなければなりません。

たとえば、資産をすべて銀行預金にしておくことが挙げられます。会社資産を現物でもっておくことに比べ、すべて銀行預金にしておくことで、「自己資本規制比率」として高い数字を確保することができます。

④主要株主が欠格者でないこと

主要株主」とは、以下に挙げる2つの企業について、総議決権の20%以上の数の議決権を持つ株主のことをいいます。

(ⅰ)第1種金融商品取引業または投資運用業を行う企業

(ⅱ)(ⅰ)を子会社に持つ親会社

第1種金融商品取引業の登録を受けるには、これらの会社が金商法に違反して「欠格者」となっていないことが必要になります。

ここで問題になりやすいのは(ⅱ)の主要株主です。親会社である企業が、欠格者でないというためには、子会社も含めて欠格者でないことが必要になります。

そのため、ある企業が、「第1種金融商品取引業」の登録をせずに株取引などを提供してしまった場合、その親会社は、子会社が金商法に違反したことにより、欠格者となってしまいます。

特に親会社が外資の企業である場合に、日本で事業を行う子会社が、複雑な法律関係は親会社が何とかしてくれているだろうと考え、登録などの条件をよくわからないままに「第1種金融商品取引業」を行ってしまうことが多いようです。

それでは、このような子会社が、無登録のまま「第1種金融商品取引業」を行ってしまった場合、その親会社は否応なく欠格者となってしまうのでしょうか。

まずは、無登録営業などの違反をした企業に対して、金融庁がどのような対応をとっていくのか、その流れについて以下の図で確認していきましょう。

無登録企業

具体的な流れを説明すると、以下のようになります。

  1. 情報を集める
  2. 文書で注意
  3. 登録を促す
  4. 警告書を出す
  5. 告発
  6. 公表
①情報を集める

情報を集める金融庁は、警察や金融関係の企業、新聞など様々なところから違反している企業についての情報を集めます。

②文書で注意

無登録で「第1種金融商品取引業」の業務を行っている企業が判明した場合には、文書で注意をする。

③登録を促す

その企業がわざと登録を受けなかったなど、無登録に至った経緯が悪質であるといった特段の事情がないかぎり、改善できる可能性があると考えられるため、金融庁は改めて登録するように促します。

④警告書を出す

文書で注意を促しても企業が注意に従わない、もしくは企業がわざと無登録で業務をしているなど悪質で、もとから改善できないと考えられる場合、金融庁は「警告書」を出します。

この時点で、登録手続きを直ちに開始するなどの是正行為をしなかった場合、適正な業務を行う意思がないと判断されるため、後になって登録しようとしても登録が認められることはまずありません。

そのため、警告書が届いた場合には、すぐに適切な是正行為を行う必要があります。

⑤告発

警告にも従わない場合には警察に「告発」します。

⑥公表

企業の名前などを金融庁のHPで公表します。

 

このように、無登録のまま違法に営業をしてしまった企業は、国から文書で注意された時点で、登録手続きをするなど真摯な対応をとれば、登録できる可能性があります。

もっとも、その注意に従わずに、警告書を出されてしまった場合には、適法な業務はできないと判断されてしまうため、登録は極めて難しくなってしまいます。

そのため、文書などで注意を受けてしまった企業は、警告を受けることのないように速やかに登録手続きをするなどの対処をとる必要があります。子会社が無登録のまま営業をしてしまった場合でも、早期に対処することにより、登録することができ、親会社は欠格者とならずに済みます。

⑤事業を的確に遂行できるだけの人的構成を備えていること

事業を的確に遂行できるだけの人的構成」とは、簡単に言うと、金融業を行うのに十分な知識をもつ経験者を雇用したり、コンプライアンス部門を設置して適正な業務を行えるようにすることをいいます。

具体的には、以下のような人員について、それぞれ必要な条件を満たしていなければなりません。

(ⅰ)経営者

(ⅱ)役員や使用人

(ⅲ)コンプライアンス担当者

(ⅳ)内部監査担当者

(ⅰ)経営者

経営者には、金融商品取引業者としての経営の資質が必要とされます。

実際に登録が認められた事例を参考にすると、「経営の資質」としては、以下のような者が挙げられます。

  • 株取引やFX事業などの金融商品取扱事業会社の役員を3年以上経験した者
  • 金商業のセミナーに参加するなどして金商業の経営を学んだ別事業の役員経験者
  • 執行役員などで金商業を統括していた管理能力をもつ者
(ⅱ)役員や使用人

役員や使用人には、株などの金融商品の価値に対する知識や経験が必要とされます。

実際に登録が認められた事例を参考にすると、以下のような者が挙げられます。

  • 金融商品取扱業で3年以上の実務経験を持つ者
  • 株などの金融商品に実際に投資などしていた者

もっとも、企業が登録後に行う事業を実際に経験していなければ登録に必要な経験や知識があるとは認められません。例えば、企業が登録後に行う予定の事業が株取引であった場合、登録に必要な実務や経験は、FX事業での実務経験・知識では認められず、株取引の実務経験・知識でなければなりません。

また、常勤の役職員のなかに、予定している金融業の経験が3年以上ある者複数確保していなければなりません。例えば、株取引を行う予定の企業の場合、株取引の実務経験3年以上の者を2名以上確保しておかなければなりません。

(ⅲ)コンプライアンス担当者

コンプライアンス」とは、企業が法律や規則などのルールをしっかりと守ることを意味します。コンプライアンス担当者には、金商業でのコンプライアンスに関する知識や経験が必要とされます。また、コンプライアンス部門が企業に設置されていなければなりません。

実際に認められた事例を参考にすると、以下のような者が挙げられます。

  • 金商業でのコンプライアンス担当の経験が3年以上ある者
  • 金商業関係の事案を扱ったことのある弁護士

どうしてもコンプライアンス担当者を置くことができない場合には、外部に委託することも認められており、委託先としては、その分野を得意とする弁護士などが挙げられます。

(ⅳ)内部監査担当者

内部監査担当者には、金商業における内部監査の知識や経験が必要とされます。

実際に認められた事例を参考にすると、以下のような者が挙げられます。

  • 金商業で監査役や内部監査担当者としての実務経験が3年以上ある者
  • 別事業での監査役や内部監査担当者の経験がある者

なお、別事業での監査役などの経験を持つ者が金商業に関する知識などに乏しい場合には、顧問弁護士をつけるなどしてサポートする必要があります。

 

以上のように、第1種金融商品取引業の登録を受けるためには、財産的な基盤や内部体制の整備など、さまざまな条件を満たす必要があり、ハードルの高いものとなっています。そのため、登録を受ける際には、事前に細かく条件を確認するなどして、自社がすべての条件をクリアしているかどうかをチェックすることが重要です。

(3)登録にいたるまでの申請手続

登録を受けるための申請を行うにあたっては、申請前に様々な事前準備をする必要があります。例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 組織を作り、人員を集める
  • 登録に必要な書類の準備
  • 財務局と事前面談
  • 書類についての訂正など

これらの事前準備をし、登録が認められ、実際に業務を行えるようになるまでに、平均して1年~2年程度の時間がかかってしまいます。

そのため、「第1種金融商品取引業」を行おうとする事業者は、できるだけ早く業務を開始するために、上で挙げたような条件を満たしているかを細かく確認したうえで、登録を受けるための申請手続きをとる必要があります。独自では不安だという事業者は、金融に詳しい弁護士などの専門家に相談するのもおすすめです。

※金融商品取引業の登録申請手続について、詳しく知りたい方は、電子政府の総合窓口「金融商品取引業の登録の申請」をご覧ください。

(4)小括

「第1種金融商品取引業」の登録を受けるためには、以上に見てきたように、その条件がとても厳しいことに加え、多くの時間を要するため、とてもハードルが高いものとなっています。このように条件が厳しくなっているのは、投資家にとって「第1種金融商品取引業」にあたる株の取引やFXへの投資がとてもリスクが高いため、保護する必要があるからです。

このように、ネット証券自体は手軽なサービスを謳うものであっても、ビジネスとして始めるには厳しい条件をクリアしていかなければならないのです。

5 問題点②:クロスボーダー取引

クロスボーダー取引

(1)問題の所在

クロスボーダー取引」とは、国境を越えて行う取引のことをいいます。

日本の証券会社は、ネット証券も含め、厳しい金商法の条件を満たして登録を受けなければなりませんでしたが、外国のネット証券が日本居住者に対して有価証券を販売等する場合も、金商法上の登録が必要となるのかが問題となります。

(2)クロスボーダー取引に対する法律規制

クロスボーダー取引に関するルールには、以下のように原則とその例外があります。

①原則と例外

外国の証券会社が日本居住者を対象として株取引の勧誘などを行うには、日本での金商法上の登録が必要となります。外国の証券会社であっても、投資家が負うリスクは日本の証券会社が行う場合と何ら変わらないからです。

もっとも、国内に拠点がない外国の証券会社について、以下のように例外的に無登録または許可をもらって、業務を行うことができる場合があります。

    【無登録でよい場合】

  • 株取引などの金商業について「勧誘」をすることなく、業務を行っている
  • 国内にいる者の注文を受けた後、外国からその注文者に対して「第1種金融商品取引業」にあたる株取引などを行っている
    【許可をもらった場合】
    財務局から許可をもらっている

このように、クロスボーダー取引については、一部例外を除き、日本における金商法上の登録を受ける必要があります。このことは、ネット証券においても同じです。

②インターネットなどを用いた外国証券業者によるクロスボーダー取引

①とは異なり、外国のネット証券が自社のホームページなどで株取引などに関する広告を掲載する行為についても、原則として「勧誘」に該当するとされているため、日本での登録が必要となります。

もっとも、日本国内の投資家との間で金商業に関連する行為につながらないような場合には、「勧誘」には当たらないとされています。

そのための措置としては、例えば、以下のようなことが挙げられます。

(ⅰ)担保文言

(ⅱ)取引防止措置等

(ⅰ)担保文言

担保文言」とは、自社のホームページなどで日本国内の投資家をサービスの対象から外していることを明記していることを意味します。

「担保文言」を明記するときには、あわせて以下のような点に注意する必要があります。

  • 担保文言をみるために、他サイトに誘導するなどの、広告を閲覧する以外の操作を要求しないこと
  • 担保文言が、日本国内の投資家が読んで理解できる言語で表示されていること
(ⅱ)取引防止措置等

取引防止措置等」とは、日本国内にいる投資家が投資をできないような措置が講じられていること意味します。「取引防止措置等」を徹底させるために注意すべき点として以下のようなことが挙げられます。

  • 取引時に、投資家から住所、郵送先住所などの情報を提示させ、その居所が日本国内でないかを確認できる手続を経ていること
  • 日本国内の投資家から投資があった場合、それに応じないようにしていること
  • 日本国内に顧客向けのコールセンターを設置するなど、日本国内の投資家に対し株取引などの金商業にあたる行為を誘引することのないようにしていること

このように、外国証券業者は、「勧誘」にあたらないようにするために、「担保文言」や「取引防止措置等」を設けるなどの工夫が必要になります。

③日本で登録を受けた事業者が海外居住者向けに勧誘する場合

日本で登録を受けた事業者が海外居住者向けに株取引などを「勧誘」する場合、その事業者は、勧誘をした海外居住者が居住する国のルールを守らなければなりません。そのルールは国ごとに違ってくるため、海外居住者向けに勧誘する場合には、対象となる国の証券に関するルールを詳しく調査する必要があります。

※外国証券業者が行うクロスボーダー取引などについて、詳しく知りたい方は、金融庁が出している「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(P350~)」をご覧ください。

6 小括

まとめ

「ネット証券」は注目をあびている分野ではありますが、それを事業として始めるには様々な厳しい条件をクリアしなければなりません。

ネット証券を始めようと考えている事業者は、金商法上求められる条件をよく理解しておくことが必須であるといえます。この点の理解が浅いまま、事業を進めてしまうと、登録を拒否されるなどして、合法的に事業を始めることすらできない可能性があります。登録条件の精査などのように難しい対応を強いられる局面もありますので、金融に詳しい弁護士などの専門家に聞いてみるのもおすすめです。

7 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • フィンテックとは、「金融(Finance)」×「テクノロジー(Technology)」の造語である
  • 「ネット証券(オンライン証券)」とは、株取引サービスを、インターネット上で提供する証券会社のことである。
  • 「スマホ証券」とはスマホ利用に特化したネット上の証券会社のことである
  • ネット証券で問題となるのは、主に①金商法上の金融商品取引業者としての登録、②クロスボーダー取引の2つである
  • 「ネット証券」も、金商法上の「第1種金融商品取引業」にあたり、内閣総理大臣の登録を受ける必要がある
  • 登録を受けるには、①株式会社、②純資産・資本金が5000万円以上、③自己資本規制比率が120%以上、④主要株主が欠格者でない、⑤事業を的確に遂行できるだけの人的構成を備えている、という5つの条件を満たす必要がある
  • 登録には事前準備が必要で、登録が認められるまで、1年~2年程度の時間がかかる
  • 「クロスボーダー取引」とは、国境を越えて行う取引のことをいう
  • 外国の証券会社が日本居住者に対して金商業にあたる行為をする場合も、金商法上の登録は必要である
  • 外国の証券会社は無登録または許可をもらうことで日本居住者との間で金商業にあたる行為をできる場合がある
  • 外国のネット証券が日本国内投資家に向けて「勧誘」することは原則禁止である
  • ①担保文言、②取引防止措置等の措置をとっている場合には、「勧誘」に当たらない
  • 日本で登録を受けた事業者が海外居住者向けに勧誘する場合、勧誘対象となる国の証券に関するルールを詳しく調査する必要がある