アーリーラウンド/仕込み代行サービスの「シコメル」のビジネスモデルを弁護士が解説

2021.01.14
シコメル

はじめに

2021年1月14日、プラットフォームを使った仕込み代行サービス「シコメル」を提供するシコメル社が、アーリーラウンドにおいて、総額4,375万円の資金調達を実施したと発表しました。

C2C PTE. LTD.(代表:薛 悠司、村上 英夫/https://c2c-platform.com、以下C2C社)の提供するプラットフォームを活用した仕込み代行サービス「シコメル」( 株式会社シコメルフードテック 代表:西原 直良/https://shikomel.com/、以下シコメル社)は、アーリーラウンドの資金調達として、JFI(JAPAN FISHERIES INNOVATION)株式会社及びミダスキャピタル旗艦ファンド有限責任事業組合を引受先とする第三者割当増資により総額4,375万円資金調達を実施しました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000035174.htmlより

今回は、この「シコメル」について、どのようなビジネスモデルとなっているのかを中心に見ていきます。

1 「シコメル」のサービス概要

概要

「シコメル」は、レストランなどの外食店舗が「仕込み」を外注できるサービスです。

通常のレストランは、食材を仕入れて、厨房で調理します。

これに対し、「シコメル」は、レシピ(食材+手順)をアプリに登録しておくことにより、仕込み済の食材が届くというサービスを提供しています。

「シコメル」は、以下のような流れでサービスが提供されます。

    1. シコメルに注文

    1. 調理(仕込み)

  1. 仕込み済食品の配送

もちろん、仕込み済の食材は仕込みの手間の分だけコストが上乗せされるのでしょうが、レストランは人件費や設備費等を節約することができます。

ここで、仕込みを行う主体は主に食品工場が想定されているようですが、食品工場の空いている稼働を有効活用してレストランの仕込みに使うという想定のようです。つまり、飲食店のレシピと食品工場の技術力・スキマ時間をマッチングさせるDXサービスであると言えます。

2 「シコメル」以外のサービス

シコメル社が展開しているサービスは、主に以下の3つです。

「タノメル」は、飲食店の料理などを自宅でも簡単に調理して食することを実現したサービスです。
また、クラウドファンディングを活用した「タノメルクラファン」では、飲食店とアーティストのコラボによるプロジェクトが目標金額を上回る金額を集めました。

3 「シコメル」の特徴

特徴

「シコメル」には、以下のような特徴があります。

  1. 手間や中間マージンの削減
  2. 新メニューの開発

(1)手間・中間マージンの削減

一般的に、飲食店では、食材そのものを発注し、従業員が店舗などで食材の仕込みを行います。そのため、手間や人件費がかかることはもちろんのこと、仕入れ時には中間マージンも発生します。

シコメルを利用すれば、飲食店は仕込みをしたいレシピをアプリで注文するだけで、後は仕込み済の食品が届くのを待つだけです。

レシピ通りに、カットされた野菜やタレに漬け込まれた肉類、飲食店独自のソースなどが提供されるため、仕込みにかかる手間や人件費、仕入れ時に発生する中間マージンなどを削減することができます。

(2)新メニューの開発

シコメルでは、レシピを提供した店舗が承諾すれば、アプリにその仕込み済商品が登録される仕組みになっています。

そのため、他の飲食店が提供しているメニューの仕込みを、自身のお店で注文することができ、新メニューの開発に活用することが可能です。

このほかにも、シコメルを利用することにより、店舗の人件費や光熱費を削減することができるため、専用のキッチンがなくてもセントラルキッチンを持つことと同じ効果を得られることが可能になります。

その結果、店舗では、こだわりの食材などを使った仕込みや調理に集中できることもメリットの一つです。

また、発注内容や注文後のステータスをアプリで確認することができるため、飲食店は安心して取引をすることができます。

4 今後の展開

展開

シコメル社では、飲食店の収益源に活用するスキームとして、登録した仕込み済商品を他の店舗に販売できるようなスキームを検討しています。

このスキームによれば、レシピを提供した飲食店は、販売分に係る手数料を新たな売上として得ることができます。

また、自身の商品が他の店舗で提供されることにより、飲食店としての認知度が上がることも期待できるのです。

肉や野菜、果物、タレなど製造・卸3社が揃っているため、あらゆるレシピに対応できるだけでなく、市場から食材を直接調達できるため、迅速・安価となります。

加えて、既存の取引先店舗が3社を合計すると、7500店舗以上に上るため、仕込み済商品を販売する場合には、このことが大きな強みとなります。

すでに、魚介類の製造・卸の企業との提携が決まっており、今後は、スイーツなどを作ることができる卸の企業にも協力を求めていくとしています。

【keyword】クラウドキッチン

新型コロナの感染拡大により、クラウドキッチンという新たな業態が生まれてきています。

    1. 【クラウドキッチンとは】
    飲食スペースを持たず、持ち帰りでの商品提供も行わない、デリバリー専業のビジネスモデルのことです。

クラウドキッチンって何だ? デリバリー戦争を制するのはアマゾンかウーバーか(ビジネス+IT)

昨日(2021/1/15)、テレビ東京のワールドビジネスサテライトでも特集されていましたが、大手チェーンレストランがデリバリー需要のために立ち上げたり、個人営業の飲食がデリバリーや弁当などの需要が伸びている需要にフィットさせるため業態転換する例もあるようです。

こういったクラウドキッチンが、仕込みに特化して、複数のレストランのセントラルキッチンになっていくという展開もありうるように思います。

5 法的問題点の分析など

まず、食品衛生法の許可等の問題をどう管理するのかが一つのポイントとなりそうです。

基本的に仕込みをするのは食品加工工場のみに限定しているので余り問題はなさそうですが、プラットフォームの側で全ての工場の衛生管理状況の確認をすることは不可能であるため、食中毒などの事例が起きたときにどう責任を切り分けるのかという問題がありそうです。ハラル対策やアレルギー事故などの対応問題も生じそうです。

飲食フランチャイズでは食品加工工場で主な調理を実施するオペレーションは問題なく行われていますが、同一グループの工場であるという信頼があるからこそ成り立っているシステムを、インターネットのマッチングでどう実現するのかが課題となりそうです。

他方で、今は移動販売車や小規模店舗、Uber eatsや出前館などのための調理専門店舗など、飲食店舗のあり方が多様化していますから、グループ会社の垣根を超えたコラボが実現できるプラットフォームには大きな魅力を感じます。

また、飲食業は日本のみならず世界中のどこにでもある普遍的なサービスです。日本でうまくいったプラットフォームであれば、それをそのまま海外に展開することで非常に大きなビジネスになる可能性もあります。

6 まとめ

飲食店を経営する事業者にとって、コロナ禍による飲食店の売上減は死活問題です。

シコメルは、従来、多くの時間と人を割いて、対応していた仕込みを巻き取ったサービスで、飲食店は、仕込みに投じていた手間や人件費などを削減することができます。

また、仕込み済商品を使って新メニューを開発できるなど、飲食店関係者にとっては、大変ありがたみのあるサービスです。

今後は、仕込み済商品を他の店舗に販売できるようなスキームが実現する可能性もあるため、利用価値の高いサービスとしてよりいっそう浸透していくことが期待されます。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。

弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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IT・EC・金融(暗号資産・資金決済・投資業)分野を中心に、スタートアップから中小企業、上場企業までの「社長の懐刀」として、契約・規約整備、事業スキーム設計、当局対応まで一気通貫でサポートしています。 法律とビジネス、データサイエンスの視点を掛け合わせ、現場の意思決定を実務的に支えることを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所で、訴訟・紛争案件を中心に企業法務を担当。 2015年~2016年 知的財産権法を専門とする米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M. を取得。コンピューター・ソフトウェア産業における知的財産保護・契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、当時法制化が始まった仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の法令遵守等責任者として登録申請業務に従事。 その後、独立し、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業(投資顧問業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。 2020年8月 トップコート国際法律事務所に参画し、スタートアップから上場企業まで幅広い事業の法律顧問として、IT・EC・フィンテック分野の契約・スキーム設計を手掛ける。 2023年5月 コネクテッドコマース株式会社 取締役CLO就任。EC・小売の現場とマーケティングに関わりながら、生成AIの活用も含めたコンサルティング業務に取り組む。 2025年2月 中小企業診断士試験合格。同年5月、中小企業診断士登録。 2025年9月 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期課程)合格。

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