
はじめに
ICOという資金調達方法があることを知り、関心を持ち始めている事業者やこれからICOをしたいと考えている事業者の中には、仮想通貨交換業の登録を受けなければICOをできないということを耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
ですが、ICO実務においてどのような場合に仮想通貨交換業の登録が必要なのか、具体的に理解できている方は少ないかと思います。
そこで今回は、ICOをするにあたり、そもそも仮想通貨交換業の登録は必要なのか、また、登録が必要かどうかの判断はどのような基準によってなされているのかについて弁護士が詳しく説明します。
目次
1 ICOとは?
まず始めに、ICOの意味とその仕組みについて簡単に説明します。
「ICO(Initial Coin Offering)」とは、資金調達方法の一つで、企業が独自の暗号通貨である「トークン」を投資家に向けて販売し、購入してもらうことで資金を調達することをいいます。スタートアップ企業の多くは、経済的基盤が確立されていないため、ICOにより資金調達する企業も少なくありません。いろいろなところから資金を調達するという意味において「クラウドファンディング」に似ているため、「クラウドセール」または「トークンセール」と呼ぶこともあります。
投資家は、企業が販売した「トークン」をイーサリアムやビットコインなどの仮想通貨により購入します。そのうえで、企業は投資家から得た仮想通貨を、交換所において円などの法定通貨に換金することで、資金調達することになります。ICOの仕組みを図にすると以下のようになります。
以上のような仕組みをもつICOですが、現在の日本では、ICOを直接規制する法律はありません。とはいえ、一切の規制を受けずに自由にICOをすることができるわけではありません。以下で、ICOの法律規制について、解説します。
2 ICOの法律規制
企業は、ICOをする際に投資家に向けてトークンを販売しますが、このトークンのタイプによっては、法律の規制対象となる場合があります。そのため、きちんとした検討をせずに自社トークンを設計してしまうと、何らかの法律に引っ掛かる可能性がありますので、注意が必要です。
自社トークンを販売する形でICOを実施する際には、以下の1~3の順番で、法律規制を受けるかという点について検討していくことになります。
- 仮想通貨交換業の規制(改正資金決済法)
- 前払式支払手段の規制(改正資金決済法)
- ファンド規制(金融商品取引法)
以上の関係を図で示すと次のようになります。
今回は、このうち改正資金決済法上の規制である「仮想通貨交換業の規制」について、解説していきたいと思います。
3 仮想通貨交換業とは?
仮想通貨交換業の規制について具体的な解説に入る前に、そもそもどのような事業を指して仮想通貨交換業というのかという点について見ていきたいと思います。
「仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売買や仮想通貨同士の交換、またはこれらの媒介や代理をサービスの内容とする事業のことをいいます。そして、このような事業を行う事業者を「仮想通貨交換業者」といいます。
コイン流出事件で一躍有名になった「コインチェック」や、近時テレビなどで見る機会が増えた「ビットフライヤー」などのように、独自で交換所や取引所を開設して、仮想通貨に関する事業を展開している事業者が仮想通貨交換業者の典型例です。
もっとも、仮想通貨交換業の定義は、改正資金決済法で細かく定められていますので、以下で見てみましょう。
仮想通貨の売買あるいは仮想通貨同士の交換
- 1の行為の媒介・取次・代理
- 1・2の行為に関して、利用者の金銭あるいは仮想通貨の管理をすること
- 1~3の行為を「事業」とすること
1~3に述べた行為のいずれかをサービスとして提供する事業は、「仮想通貨交換業」にあたり、仮想通貨交換業の登録を受ける必要があります。
それぞれの要件について、以下でもう少し詳しく見てみましょう。
(1)仮想通貨の売買あるいは仮想通貨同士の交換
「仮想通貨の売買あるいは仮想通貨同士の交換」とは、事業者が当事者になって、仮想通貨を売り買いしたり、あるいは、事業者とユーザーとの間で異なる種類の仮想通貨を交換することをいいます。たとえば、イーサリアムの購入を希望するユーザーに対して、事業者がイーサリアムを売る場合がそうです。
(2)1の行為の媒介・取次・代理
「媒介・取次・代理」とは、事業者は取引の当事者にならず、取引の当事者であるユーザーと仮想通貨交換業者の間に入って、ユーザーからの売買や交換の注文を仮想通貨交換業者などにつなげる行為のことをいいます。たとえば、ユーザー同士の売り買いをマッチングしたり(媒介)、ユーザーに代わって仮想通貨を購入したり(取次・代理)する場合がそうです。
(3)1・2の行為に関して、利用者の金銭あるいは仮想通貨の管理をすること
ユーザーが取引所などで保有する金銭や仮想通貨を管理することを意味します。
(4)1~3の行為を「事業」とすること
「事業」とは、1~3にあたる行為を反復継続して行うことをいいます。
以上に挙げた4つの要件をみたす事業は「仮想通貨交換業」にあたりますが、要件1のとおり、仮想通貨交換業といえるためには取引の対象が「仮想通貨」であることが前提になります。ですので、自社トークンがそもそも「仮想通貨」にあたらなければ、その仮想通貨を使って取引をしたとしても、仮想通貨交換業にはあたらないということになります。
つまり、仮想通貨交換業の登録を受ける必要があるかどうかは、以下の順番で検討することになります。
- 自社トークンが「仮想通貨」に該当するか
- 「仮想通貨」を使ったサービスが「仮想通貨交換業」に該当するか
以上の2点をいずれもみたしている場合には、金融庁から仮想通貨交換業の登録を受けなければなりません。仮に、仮想通貨交換業を無登録で行った場合、
- 最大3年の懲役
- 最大300万円の罰金
のいずれか、もしくは両方が科されることになります。
このように、無登録で仮想通貨交換業を行うと、重いペナルティを科せられることになります。それでは、そもそも「仮想通貨」とはどのような通貨をいうのでしょうか。以下で、「仮想通貨」について詳しく解説します。
なお、仮想通貨交換業の定義について、詳しく知りたい方は「仮想通貨交換業の法律規制とは?改正資金決済法を弁護士が5分で解説」をご覧ください。
4 仮想通貨とは?
「仮想通貨」とは、ユーザー同士がインターネットを介して直接やり取りできる通貨のことをいいます。われわれが日常的に使っているお金のように、国などの発行主体や管理者がいるわけではありませんが、専門の取引所により仮想通貨を円やドルなどに換金することができます。また、われわれが日常的に使っている紙幣や硬貨などのような「現物」はなく、仮想通貨はすべてデータで管理されています。
この「仮想通貨」については、改正資金決済法で以下の2種類に分けて定義されています。
- 1号仮想通貨
- 2号仮想通貨
「1号仮想通貨」とは、不特定の人との間で、物の売買をする際に使うことができる仮想通貨で、ビットコインなどに代表されます。これに対し「2号仮想通貨」とは、1号仮想通貨と交換できる仮想通貨で、ビットコイン以外の多くの仮想通貨がこの2号仮想通貨にあたります。
なお、仮想通貨の定義について詳しく知りたい方は、「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。
5 仮想通貨交換業の規制内容
これまでに述べたとおり、①自社トークンが「仮想通貨」に該当し、②その仮想通貨を使ったサービスが「仮想通貨交換業」に該当する場合には、仮想通貨交換業の登録が必要です。そして、仮想通貨交換業の登録を受けた仮想通貨交換業者に対しては、下記の法律規制が適用されることになります。
- 財務規制
- 行為規制
- 監督規制
- マネロン規制
各規制について、以下で簡単に見ていきましょう。
(1)財務規制
改正資金決済法において、仮想通貨交換業の登録を受けるためには、以下の要件を備えることが必要とされています。
- 資本金額が1,000万円以上であること
- 純資産額がプラスであること
この規制は、資金不足によりユーザーから預かっている仮想通貨などを仮想通貨交換業者が使い込むことを防ぐ趣旨です。
(2)行為規制
仮想通貨交換業者は、以下に挙げたことを遵守しなければなりません。
- 名義貸しの禁止
- 情報の安全管理義務
- 委託先に対する指導
- 利用者の保護等に関する措置
- 利用者財産の管理義務
- 指定仮想通貨交換業紛争解決機関との契約締結義務など
それぞれについて、簡単に見ていきましょう。
①名義貸しの禁止
「名義貸し」とは、他の者の取引に際し、自己の商号や名称を貸して契約などを締結させることをいいます。名義貸しは、取引をする人(名義を借りた人の相手方)において、誤認するおそれがありますので、禁止されています。
②情報の安全管理義務
仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業に関する情報の漏えい、滅失などを防止するとともに、情報の安全管理のために必要な措置を講じなければなりません。具体的には、社内規則の策定、情報セキュリティの対策などが挙げられます。
③委託先に対する指導
仮想通貨交換業者は、業務の一部を第三者に委託した場合には、委託先への指導などにより、適切に業務が遂行されるために必要な措置を講じなければなりません。具体的には、委託先における業務状況の確認、などが挙げられます。
④利用者の保護等に関する措置
仮想通貨交換業者は、ユーザーにおいて取引をするかどうか、また、その取引内容などについて適切に判断できるように必要な情報を説明・提供することが必要です。具体的には、説明・情報提供が行われるための態勢整備、社内規則の策定およびその周知徹底などが挙げられます。
⑤利用者財産の管理義務
仮想通貨交換業者は、お金や仮想通貨をユーザーから預かった場合、自己の財産と明確に分ける方法での管理(分別管理)について、適切な取扱いを確保する必要があります。具体的には、不足額を解消する態勢整備、委託先との適切な連携、などが挙げられます。
⑥指定仮想通貨交換業紛争解決機関との契約締結義務など
仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業務に係る紛争解決機関である指定仮想通貨交換業務紛争機関と契約を締結しなければなりません。指定仮想通貨交換業務紛争解決機関が存在しない場合は、仮想通貨交換業に関する苦情処理および紛争解決のための措置を講じなければなりません。
以上6つの規制の中でも、②情報の安全管理義務、④利用者の保護等に関する措置、⑤利用者財産の管理義務については特に重要です。これらの法律規制について詳しく知りたい方は、「仮想通貨交換業の法律規制とは?改正資金決済法を弁護士が5分で解説」をご覧ください。
(3)監督規制
仮想通貨交換業者への監督規制として、改正資金決済法は、以下にある規制を新たに設けました。
- 帳簿書類の作成・保存義務
- 報告書提出義務
- 立入検査等
- 業務改善命令
- 登録の取消等
- 登録の抹消
各規制について、簡単に見ていきましょう。
①帳簿書類の作成・保存義務
ユーザーに関する金銭の収支や仮想通貨の数量などを記録した帳簿を作成しなければなりません。作成した帳簿は、帳簿書類の種類に応じて、5年から10年の間保存しなければなりません。
②報告書提出義務
事業年度ごとに報告書を作成し、①の帳簿書類とともに定期的に提出する必要があります。
③立入検査等
仮想通貨交換業者に不正の疑いがあったり、仮想通貨交換業者が誤った業務を行っているような場合には、管理当局は、仮想通貨交換業者に対し、報告や資料の提出を命じることができます。また、管理当局はその職員に仮想通貨交換業者の営業所などに立ち入らせて質問をさせたり、帳簿書類などを検査させることができます。
④業務改善命令
業務の適正を確保するために必要がある時など一定の場合に、管理当局は、仮想通貨交換業者に対し、業務の改善に必要な措置などを講ずることを命ずることができます。
⑤登録の取消等
仮想通貨交換業者が虚偽(ウソ)の事実に基づいて登録を申請したり、業務改善命令に従わないときは、登録の取消しや業務の全部もしくは一部の停止(6ヶ月の範囲)を命ずることができます。
⑥登録の抹消
⑤により、登録を取り消した場合は、その登録を抹消しなければなりません。
このように、仮想通貨交換業者に対する監督規制については、当たり前のことを定めた規制が多いです。この規制に違反すると、ペナルティの対象になるおそれもありますので、規制内容について理解したうえで、きちんとした対応を心掛けるようにしましょう。
(4)マネロン規制
最後に、「マネロン規制」という規制について見ていきましょう。
「マネーロンダリング(マネロン)」とは、犯罪によって入手した金銭を口座から別の口座へと転々と移動させることで、金銭の出所や利益を受けた者が誰なのかということをわからなくすることをいいます。このようなマネロンを取り締まるために作られた法律が「犯収法」です。「犯収法」は、ユーザーが金融機関などで取引をする際に、ユーザーと本人の同一性を確認することをルールとして定めた法律です。ユーザーと本人の同一性を確認する(KYC)ことで、金融機関が犯罪に利用されることを防ぐことができます。
近時、仮想通貨を利用した多額のマネロンが海外で行われたこともあり、日本でも、仮想通貨交換業者をマネロン規制の「特定事業者」に含めることにしました。
特定事業者としての仮想通貨交換業者には、以下の義務が課されます。
- 口座を開設する際の取引時確認義務
- 確認記録・取引記録などの作成・保存義務
- 疑わしい取引の届出義務
- 社内管理体制の整備
それぞれの義務について、簡単に見ていきましょう。
①口座を開設する際の取引時確認義務
ユーザーが口座を新しく開設する際に、仮想通貨交換業者は、以下の内容を確認する必要があります。
- 本人特定事項
- 取引目的
- 事業(職業)内容
- 実質的支配者
- 資産・収入
以上のような情報を取引時に確認することにより、マネロンのような犯罪を防止する趣旨です。
②確認記録・取引記録などの作成・保存義務
実際に取引を終えたら、取引経緯や具体的な取引内容を記録にする必要があります。作成した記録は、取引に関する契約を終えた日から7年間保存しなければなりません。
③疑わしい取引の届出義務
ユーザーとの取引が疑わしい取引であると仮想通貨交換業者が判断した場合には、その旨を国に届け出る必要があります。
④社内管理体制の整備
仮想通貨交換業者は、正確に取引時確認などを実施するために、社内の管理体制を整備しなければなりません。仮想通貨交換業者が社内管理体制の整備のために、具体的にとらなければならない措置は、次の4点です。
- 取引時確認事項の情報を最新の状態に維持すること
- 取引時確認などの措置の実施の規定化
- 統括管理者の選任
- 調査書の内容を考慮して講ずべきものとして法律などで定める措置
マネロンを防止するために設けられた規制は、以上のように細かく定められています。
仮想通貨交換業者は、それぞれの規制を理解したうえで、きちんとした対応をすることが求められます。
以上のように、仮想通貨交換業者に対する法律規制は、大きく4つに分けることができますが、なかにはかなり細かく定められてる規制もあります。これらの規制をきちんと理解しておかないと、場合によっては、ペナルティの対象にもなりますので、注意が必要です。
なお、マネロン規制について詳しく知りたい方は「仮想通貨交換業者が守るべきマネロン規制4つの義務を弁護士が解説!」をご覧ください。
6 仮想通貨交換業の登録方法
(1)概要
これまでに見てきた内容を検討した結果、仮想通貨交換業の登録を受けようと考えた企業は、実際にどのような手順で登録を受けるのか、ということが気になるところだと思います。そこで、最後に仮想通貨交換業の登録方法について、以下で解説したいと思います。
具体的な解説に入る前に、仮想通貨交換業の登録を受けるまでのステップを確認したいと思います。以下の図を使いながら見ていきましょう。
仮想通貨交換業の登録を受けるためには、そのための申請を行うことが必要になりますが、申請をする前に確認しなければならないのは、①自社で提供を予定しているサービスの内容が「仮想通貨交換業」にあたるのか、という点です。自社で提供を予定しているサービスの内容が仮想通貨交換業にあたらないのであれば、登録を必要とすることなく、サービスを提供することができます。
①を検討した結果、自社で提供を予定しているサービスの内容が仮想通貨交換業にあたるということになれば、次に検討すべきは、②仮想通貨交換業の登録を受けるために必要な「要件」を備えているか、という点です。要件については、後に詳しく解説しますが、要件を備えていない状態で登録申請を行っても、登録を受けることはできません。
②を検討した結果、仮想通貨交換業の登録を受けるために必要な要件を備えているということを確認できれば、そこで初めて③登録申請の手続きに進むことができます。登録申請後、事前面談や事前審査を経て、④仮想通貨交換業の登録完了ということになります。
それでは、仮想通貨交換業の登録を受けるために必要な「要件」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。以下で見ていきましょう。
(2)仮想通貨交換業の登録要件
仮想通貨交換業の登録を申請する事業者は、以下の要件を備えていなければなりません。
- 組織的な要件
- 財産的な要件
- 業務遂行に関する要件(社内体制)
- 商号についての要件
以下で、順番に見ていきましょう。
①組織的な要件
登録申請をする事業者は、
株式会社であること
or
日本国内に営業所および代表者を置く外国仮想通貨交換業者であること
が必要です。
②財産的な要件
登録申請をする事業者は、以下に挙げた2つの要件を備えていなければなりません。
- 資本金の額が1,000万円以上であること
- 純資産額がマイナスでないこと
仮想通貨交換業を始めるには、仮想通貨取引を適切に行うためのシステムを導入する必要があり、そのシステムを導入するための費用が必要になるため、資本金の額に下限が設けられています。
また、負債を多く抱えているような事業者は、仮想通貨交換業を適正に行える見込みが低いため、純資産額がマイナスでないことが要件として課されています。
③業務遂行に関する要件(社内体制)
仮想通貨取引においては、ユーザーから預かる金銭や仮想通貨の分別管理や利用者を保護するための措置が適切に運用されなければなりません。
そのため、仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する社内体制が整備されている必要があります。具体的には、内部管理部門や内部監査部門の機能強化、適切な業務管理体制を維持するためのモニタリングの実施、などです。
また、改正資金決済法(通称:仮想通貨法)など仮想通貨取引に関係する法令を遵守するための社内体制も整備されていなければなりません。仮想通貨交換業者が、関係法令を無視したり違反したりしていると、仮想通貨交換業に対するユーザーの信頼は確保できません。具体的には、法令遵守(コンプライアンス)に対する役職員への研修や教育体制の確立、役職員の法令遵守(コンプライアンス)に対する意識の向上などに努めているか、などといったことが挙げられます。
さらに、仮想通貨交換業の登録申請を行おうとしている事業者が、兼業という形をとっている場合、兼業している事業が公益に反しないことが必要です。
④商号についての要件
仮想通貨交換業の登録申請をする際に、他の仮想通貨交換業者が使用している商号や名称と同一、もしくは類似する商号や名称を登録することはできません。このようなことを許してしまうと、ユーザーが混乱する原因にもなり、公正・安全な取引ができなくなるおそれがあるからです。
以上に挙げた要件を備えたうえで登録申請を行うと、その要件が本当に備わっているか、などについて審査が開始されます。すべての要件が備わっていると判断されれば、無事に仮想通貨交換業の登録を受けることができます。
そのため、登録申請を行う際には、以上の要件が備わっているかという点を事前にきちんと確認することが必要です。
なお、仮想通貨交換業の登録要件について詳しく知りたい方は、「仮想通貨交換業の登録のために必要な6つの要件とは?弁護士が解説!」を御覧ください。
7 小括
今回は、ICOに対する法律規制のうち、改正資金決済法上の仮想通貨交換業の規制にフォーカスして解説してきました。仮想通貨交換業の登録申請をするにあたっては、自社トークンが仮想通貨にあたるのか、また、自社サービスが仮想通貨交換業にあたるのか、などといった事項を事前に検討する必要があります。登録を受けた後についても、仮想通貨交換業者に課される規制は細かく決められています。
ICOを検討している企業は、自社トークンや自社サービスがどのような性質をもっているか、また、仮想通貨交換業の登録を受けた後に課される規制などをきちんと理解したうえで、仮想通貨交換業の登録が必要かという点について判断することが求められます。
8 まとめ
- これまでの解説をまとめると、以下のようになります。
- ICOを実施する際には、①仮想通貨交換業の規制→②前払式支払手段の規制→③ファンド規制の順番で、法律規制を受けるかという点について検討する
- 「仮想通貨交換業」とは、①仮想通貨の売買や仮想通貨同士の交換、または②①の媒介や取次、代理、③①・②の行為に関して、利用者の金銭あるいは仮想通貨の管理をすること、④①~③の行為を「事業」とすることをいう
- 仮想通貨交換業の登録を受ける必要があるかどうかは、①自社トークンが「仮想通貨」に該当するか→②仮想通貨を使ったサービスが「仮想通貨交換業」にあたるか、という順番で検討する
- 仮想通貨交換業を無登録で行った場合、①最大3年の懲役、②最大300万円の罰金のいずれか、もしくは両方が科される
- 「1号仮想通貨」とは、不特定の人との間で、物の売買をする際に使うことができる仮想通貨で「2号仮想通貨」とは、1号仮想通貨と交換できる仮想通貨である
- 仮想通貨交換業者に対しては、①財務規制、②行為規制、③監督規制、④マネロン規制の4つの法律規制が適用される
- 仮想通貨交換業の登録を申請する事業者は、①組織的な要件、②財産的な要件、③業務遂行に関する要件、④商号についての要件、の4つの要件を備えていなければならない