はじめに

仮想通貨を扱う業界にいると、「金融庁」という言葉をよく耳にすると思います。

ICOをしたり、仮想通貨取引所を開設する際に、注意しなければならないのがこの「金融庁」による規制です。

ですが、「日本でICOをすることは難しい」「金融庁の審査は厳しい」などと聞いたことはあるものの、実際のところ何故難しいと言われているのか、何が厳しいのかがわからない、という方が多いのではないでしょうか?

そこで、今回は、ICOをしたり、仮想通貨取引所を開設する際の文脈における金融庁のスタンスや法律規制の内容、そして、金融庁の今後の規制動向などについて、ICOに強い弁護士がわかりやすく解説していきます。

目次

1 金融庁とICO・仮想通貨との関係性

金融庁

まず始めに、ICOや仮想通貨との関係で、金融庁が担っている役割について、見ていきたいと思います。たとえば、ICOへの規制を目的とした法律ができたとしましょう。原則として、その法律は施行されてはじめて国民を拘束することになります。ですが、多くの場合、法律は単純明快に解釈できるものではありません。ですので、実務は、法律を管轄する省庁が、施行された法律の趣旨を踏まえた「ガイドライン」をつくり、そのガイドラインに沿って運用されているのが一般的です。

ガイドライン」とは、ざっくりいうと、内部における指針のことをいい、法律のような拘束力はありません。施行された法律の内容が曖昧だったり、解釈に苦しむことがある場合に、国民は行動を起こすことに躊躇を覚えます。ガイドラインは、このようなことがないように、施行された法律の趣旨を読み解き、どのような運用がされているのかをわかりやすく説明した解説書のような役割をはたしているのです。

ICOや仮想通貨に関係することは、金融庁が管轄しており、現に改正資金決済法(通称:仮想通貨法)の趣旨を踏まえたガイドラインが金融庁から出されています。眺めただけでは十分に理解できない法律をガイドラインがわかりやすく説明してくれているのです。

このように、金融庁はガイドラインを出すなどしてICOや仮想通貨に関する指針を国民に示す重要な行政機関であるということがいえます。

以上のことを前提に、ICOへの法律規制について、以下で詳しくみていきます。

2 ICOへの法律規制の有無

ICO法律

現在、日本において、ICOを間接的に規制する法律はあるものの、直接規制する法律はありません。ですが、後に詳しく説明するとおり、今後ICOを直接規制する法律ができる可能性が高いと考えられます。ですので、今後の動向に十分な注意が必要です。

現状は、以上のようにICOを直接規制する法律はないものの、金融庁や関係団体がガイドラインや関係資料を公表しています。ICOを直接規制する法律がないからといって、簡単に考えていると、その結果、ガイドラインに違反していたということにもなりかねず、場合によっては、金融庁から目をつけられることになります。繰り返しになりますが、ガイドラインは、先にみたように、指針を示すものですので、無視することはできません。

なお、ガイドラインは、たとえば、次の項目でご紹介する一般社団法人日本仮想通貨事業者協会(JCBA)など関係団体からも出されており、金融庁の公式見解ではないものの、重要な指針が示されていますので、軽視することはできません。

以下で、金融庁を始め、関係団体から出されているガイドラインについて、簡単に見ていきましょう。

3 金融庁等による5つのガイドライン

金融庁ガイドライン

金融庁のほかにも、自主規制団体などがガイドラインを独自に出しています。重要な指針が示されているガイドラインとして挙げられるのは以下の5つになります。

  1. ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~
  2. 仮想通貨事務ガイドライン
  3. イニシャル・コイン・オファリングへの対応について(お知らせ)」(一般社団法人日本仮想通貨事業者協会)
  4. ICO ビジネス研究会提言レポート」(多摩大学 ルール形成戦略研究所)
  5. 仮想通貨交換業等に関する研究会」の資料(※ガイドラインではありません。)

公表している主体は異なりますが、いずれも重要な指針が示されたものであり、現在のICOや仮想通貨の実務は、これらの指針(特に①~③)に沿った形で運用されています。

そのため、ICOを検討している企業は、これらのガイドラインをきちんと理解しておかないと、自社のICOがガイドラインに違反するなどして、ICOをスムーズに進めることができなくなる可能性があります。

もっとも、以上の説明だけでは、ガイドラインに具体的にどのようなことが示されているのか、などイメージが湧かないかもしれません。そこで、今回はこの中でも特に重要である金融庁によるICO規制を取り上げて、以下で説明していきたいと思います。

4 金融庁によるICO規制のポイント

ICO規制ポイント

ICOや仮想通貨を管轄する金融庁は、ICOへの規制について、どのような点にポイントを置いているのでしょうか。金融庁によるICO規制のポイントは、以下の5点です。

  1. 「仮想通貨交換業」の登録が必要なICOではないか?
  2. 「前払式支払手段」にあたるのではないか?
  3. 「ファンド規制」により第2種金融商品取引法の登録が必要なのでは?
  4. 仮想通貨取引所開設の審査基準はどうあるべきか?
  5. マネロン規制における「本人確認」はどうあるべきか?

以下で順番にみていきましょう。

5 ポイント①:「仮想通貨交換業」の登録が必要か?

仮想通貨交換業の登録

(1)金融庁の問題意識

ICOは、企業が発行した「トークン」を投資家がビットコインなどの仮想通貨で買い、企業は、仮想通貨取引所でその仮想通貨を法定通貨(円など)に換金することで、資金を調達する仕組みです。
ICOの仕組み(最新版)
このとき、自社が発行したトークンが、改正資金決済法(通称:仮想通貨法)の「仮想通貨」にあたるのであれば、金融庁から仮想通貨交換業の登録を受ける必要があります。これは、仮想通貨の「資金を簡単に移動できる」という性質上、犯罪や不正に悪用されるおそれがあるため、一定の水準に達している企業にのみ仮想通貨交換業を行うことを許可するという趣旨からきています。

ただ、仮想通貨交換業の登録を得ることはポッと出のスタートアップでは、実際上不可能に近いです。

なぜなら、登録を受けるためには、相当な資力が必要であることに加え、仮想通貨交換業を適切に遂行できるだけの社内体制が整備されていることも必要です。このほかにも、証券会社レベルのコンプライアンス、セキュリティ体制が整備されてることが必要になるなど、要件が激烈に厳しくなっているからです。

そこで、スタートアップ企業としては、仮想通貨交換業の登録を避けるために、改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたらないようなトークンの設計が必要になってくるわけです。反面、金融庁目線でいえば、発行されたトークンが「仮想通貨」にあたるのでは?という視点で、ICOプロジェクトを日夜精査しているわけです。

このような状況下で、各企業はあらゆる工夫をこらして「仮想通貨」にあたらないようなトークンを設計するようになるわけです。このようなトークンの中には、脱法的に設計されたトークン(実質において仮想通貨と同じといえる)も存在することから、企業が発行したトークンが「仮想通貨」にあたるか、または、あたらないか、という点について、より慎重に判断することが求められるようになります。そして、この点をはっきりさせないと、仮想通貨交換業の登録を受ける必要があるのか、または、必要がないのか、という点もはっきりできません。

以上のように、金融庁は、仮想通貨にあたらないように設計されたトークンが出てきていることを受けて、仮想通貨交換業の登録が必要なケースか?という判断の前提として、仮想通貨該当性の判断に意識を向けなければならなくなったのです。

そうすると、発行する「トークン」が「仮想通貨」に該当してしまうと、基本的には、交換業の登録が必要になり、企業としては、ICOは事実上諦めざるを得ません。

そのため、ICOをしたい企業としては、自社発行トークンが「仮想通貨」に該当しないという設計にしていく必要があるのです。

(2)「仮想通貨」とは

企業は、「仮想通貨」にあたらないようなトークンを工夫して設計することになりますが、そもそも「仮想通貨」とはどのように定義されているのでしょうか。

改正資金決済法(通称:仮想通貨法)では、以下のように「仮想通貨」を定義しています。

  1. 物品やサービスの提供を受ける場合に、その支払いを目的として不特定の者に対して使用できること(不特定性)
  2. 不特定の者に対して、購入・売却ができる財産的価値があること(財産的価値)
  3. 電子的方法で記録され、電子情報処理組織を用いて移転ができること(電子的記録)
  4. 日本通貨(円)や外国通貨(ドル)など、法定通貨ではないこと(非法定通貨)

以上4つの要件をすべてみたす場合は「仮想通貨」にあたります。

以上の要件をまとめると、「物などの購入や売却の際に、不特定の人に対し使うことのできる財産的価値」のことを仮想通貨といいます。

ICO企業は、以上に述べた「仮想通貨」にあたらないようなトークンを工夫して設計する必要がありますが、具体的にどのような工夫をこらすことで「仮想通貨」にあたらないトークンを設計することができるのでしょうか。

ここで、参考までに仮想通貨にあたらないスキームを2つほどご紹介しましょう。

(3)「仮想通貨」にあたらないスキームとは

「仮想通貨」にあたらないスキームとして、今回は、以下の2案をご紹介したいと思います。

※いずれも法的に合法であるとの保証はありませんのでご留意ください。

  • A案)クラウドファンディング類似モデル

自社トークンに技術的な制限をかけることで、改正資金決済法(通称:仮想通貨法)にいう「仮想通貨」にあたらないようにする方法です。

たとえば、トークンを発行した甲社は、そのトークンについて、甲社とユーザーの間でのみ使用できるように設計したとしましょう。この場合、甲社トークンは、仮想通貨該当性の要件1:不特定性、要件2:財産的価値で必要とされる「不特定性」をみたさないことになるため、仮想通貨にあたりません。このように仮想通貨にあたらないように工夫して設計することで、仮想通貨交換業の登録を受けることなく、資金調達できる可能性が出てきます。

また、自社トークンに譲渡制限をかけたり、上場をうたわない、といった方法も考えられますが、上場をうたっていないとはいえ、上場をほのめかしたりした場合、そのトークンは仮想通貨にあたるとされる可能性が高いということがいえます。上場をほのめかしていない場合でも、自社トークンに譲渡制限をかけていなければ同様です

以上のようなスキームによって、「仮想通貨」にあたらないトークンを設計したとしても、そのトークンが「仮想通貨」にあたらないとされる保障はありません

また、自社トークンが仮想通貨にあたらないとされても、結局のところ、上場する際に、仮想通貨にしなければなりませんので、その時に仮想通貨交換業の登録が必要になる可能性があります。

もっとも、自社トークンが「仮想通貨」にあたる場合でも、規制されるのは、あくまでその仮想通貨を「売り買いしたり、交換したり」する場合に限られます。ですので、あくまで仮想通貨を「発行」しているだけとして、仮想通貨交換業にあたらないという考えを採ることも可能だと考えられます。

なお、発行したトークンが「仮想通貨」にあたらないとしても、改正資金決済法上の「前払式支払手段の規制」を受ける可能性があります。この点は、後ほど詳しく説明します。

  • B案)販売委託スキーム

仮想通貨交換業者(登録済)を通じて、自社トークンの発行や売買を行う方法です。実際に、トークンの発行や売買を行うのは、委託を受けた仮想通貨交換業者です。ですので、トークンの発行企業は、仮想通貨交換業の登録を必要とすることなく、登録済みの仮想通貨交換業者を通して資金を調達できるわけです。

また、トークンの発行企業は、委託した仮想通貨交換業者に対し、上場までをいわば出来レース的に委託することが可能かもしれません。この場合、登録済みの仮想通貨交換業者が上場までを対応することになり、ICOにある程度の安全性が保障されますので、投資家も安心して投資することができます。

たとえば、甲社(未登録)が、自社トークンの発行・売買を仮想通貨交換業者であるコムサ(登録済)に委託する場合がこれにあたります。

もっとも、上の例でいうと、コムサがすべての委託を受けてくれるわけではありません。コムサは、委託を受けるための条件を独自に設けています。ですので、この条件をクリアしている案件のみを受託することになり、その案件についても、委託した企業から仮想通貨交換業者に対し、委託手数料が支払われるということになります。

なお、仮想通貨交換業の登録がない事業者に委託して販売する場合のスキームについては、残された問題として金融庁も審議中であるといわれています(そもそもこのようなスキームは、いわゆる通常のICOとは異なるものと考えます)。

以上のように、「仮想通貨」にあたらないスキームとして、今回は2つの案をご紹介しましたが、ご紹介した案の他にも別のスキームは考えられます。「仮想通貨」にあたらないスキームの設計を検討する際には、改正資金決済法で定められている「仮想通貨」の定義をよく理解し、トークンを設計する必要があります。

(4)海外でのICO

日本でICOをすることは条件的に難しいという企業もあると思います。日本でのICOができないのなら、海外でICOをすることはどうでしょうか。

①金融庁の問題意識、想定されるケース

具体的には、海外に法人をつくり、海外法人から日本居住者に向けてトークンを販売する方法です。海外でICOを行えるのであれば、たとえば、日本での仮想通貨交換業の登録など、日本でICOをする際に障害となる条件を避けることができそうです。

この点、金融庁は法律の運営者にすぎず、国会のような立法者ではありません。そのため、金融庁が口出しできるのは、あくまで日本の法律が適用される範囲内でICOが行われる場合だけに限られます。そして、日本の法律は属地主義であるため、日本国内でなされた行為についてしか、口出しできないのが原則です。

そうすると、金融庁としては、本来、海外に法人を置いて行われるICOについては、たとえ、日本居住者向けに行われるものであっても、その行為自体が日本ではなく海外でなされている以上、そのICOを違法だ!として規制することはできないはずです。

ですが、以下で説明するように、金融庁は投資家が日本に住んでいる以上、投資家保護の趣旨で一定の範囲で規制をかける、というスタンスであるように見えます。

②海外から日本居住者向けにするICOの合法性

この点については、タイのバンコクにあるTavitt社という海外法人が日本居住者に向けてトークンを販売したケースが参考になりますので、ご紹介しましょう。

Tavitt社は、自社のウェブサイト内で、金融庁とのやり取りを公開しています(※もっとも、公開されている内容は、あくまでTavitt社が一方的に示したものに過ぎず、実際に金融庁との間で公開されているようなやり取りがなされたのかは不明です。)

Tavitt社のウェブサイト内において、Tavitt社が金融庁との間に協議をもち、Tavitt社は自社トークンを日本居住者に向けて販売することはできず、他方で、海外居住の日本人に向けてトークンを販売することができる、という内容が公開されました。

ここでは、Tavitt社が行ったICOが日本における仮想通貨交換業にあたるということが金融庁が出した理由として挙げられていますが、金融庁の公式見解ではありません。

以上の公開内容は、金融庁の公式見解ではないものの、この内容によると、今後海外ICOを行うことは難しくなる可能性があります。

もっとも、海外にある取引所にトークンを上場させた後に販売する方法については、金融庁において特に言及しておらず、このような方法は合法的であるという考えも成り立つものと考えます。

6 ポイント②:「前払式支払手段」にあたるのではないか?

前払式支払手段

「仮想通貨」にあたらないトークンをうまく設計できれば、それで一件落着ということではありません。自社トークンが「仮想通貨」にあたらない場合、次に検討すべきは、そのトークンが「前払式支払手段」にあたるかどうかという点です。

以下で具体的に見ていきましょう。

(1)金融庁の問題意識

自社トークンが「仮想通貨」にあたらない場合、次に検討すべきは、そのトークンが「前払式支払手段」にあたるかどうかという点です。

自社トークンが「前払式支払手段」にあたる場合、後に詳しく説明しますが、改正資金決済法上の規制を受けることになります。

金融庁は、「仮想通貨」と「前払式支払手段」の関係について、

  • 「仮想通貨」にあたる→「前払式支払手段」にあたらない
  • 「前払式支払手段」にあたる→「仮想通貨」にあたらない

といった整理をしているものと考えられます。

このような整理をしていることからも、金融庁は、発行トークンが「仮想通貨」にあたるかという問題と「前払式支払手段」にあたるかという問題を並列に扱っており、両者を同じレベルの問題として意識しているということがいえます。

(2)「前払い式支払い手段」とは

では、ここでいう「前払式支払手段」とはどのようなことをいうのでしょうか。

前払式支払手段(まえばらいしき・しはらいしゅだん)」とは、以下3つの要件をすべてみたすものをいいます。

  1. 金額や数量が記載・記録されていること(価値の保存)
  2. 金額や数量に応じる対価を得て発行されること(対価性)
  3. 支払いなどに使用すること(権利行使)

これだけではわかりにくい方もいらっしゃると思いますが、身近なところで言うと、Suicaや商品券などがまさに「前払式支払手段」にあたります。SuicaやPasmoを使っている方は多いと思いますが、つまりは、「ユーザーがお金を支払って購入もしくはチャージをすることで、商品やサービスの支払いに使えるもの」を「前払式支払手段」といいます。

以上の要件を検討し、自社トークンが「前払式支払手段」にあたると、以下で述べるような厳しい義務を課されることになります。

(3)トークンが「前払い式支払い手段」に当たる場合の面倒な手続き

自社トークンが「前払式支払手段」にあたる場合、改正資金決済法において定められている以下の義務を負うことになります。

  1. 表示義務
  2. 供託義務
  3. 行政に対する継続的報告義務
  4. 払い戻し義務

以上4つの義務の中でも、供託義務は特に重い内容になっており(少なくとも500万円もの大金を供託しなければならない場合があります)、事業自体を断念しなければならないケースも出てきます。

そのため、ICOを行う企業は、発行するトークンが「仮想通貨」にあたらないようにすることはもちろんのこと、「前払式支払手段」にもあたらないような設計をすることが求められます。

なお、前払式支払手段の内容や規制について詳しく知りたい方は「アプリ課金を導入する際に知りたい!資金決済法4つのポイントとは」をご覧ください。

(4)トークンが「前払い式支払い手段」に該当しないためのスキーム

自社トークンが「前払式支払手段」に該当しないようにするためには、どのような設計にすべきでしょうか。先に述べた3要件(要件1:価値の保存、要件2:対価性、要件3:権利行使)のいずれか一つでも要件をみたさなければ、そのトークンは「前払式支払手段」に該当しません。たとえば、

  • 自社トークンの購入者が受けられるサービスの量や質と、そのトークンの価値とが数量的に対応しないようにすること(要件2「対価性」をみたしません)
  • サービスを受けるたびに、自社トークンの数量が減らないようにすること(要件2「対価性」をみたしません)
  • 自社トークンに決済機能をつけないこと(要件3「権利行使」をみたしません)

のような形でトークンを設計することで、いずれかの要件をみたさないトークンとなり、そのようなトークンは「前払式支払手段」には当たらないものと考えます。

7 ポイント③:「ファンド規制」により第2種金融商品取引法の登録が必要か?

前払式支払手段

(1)金融庁の問題意識

次に考えられるのは、自社トークンがファンド(配当)型トークンにあたる場合の法律規制についてです。ファンド(配当)型トークンは、後に詳しく説明しますが、ユーザーに対する配当が予定されているため、ユーザーメリットが高く、企業からすると資金を調達しやすくなります。ですので、企業は自社トークンにこの配当機能を持たせたいと考えます。ですが、ファンド(配当)型トークンは、金融商品取引法上のファンド規制の対象になります。

ファンド(配当)型トークンについても、そのトークンがファンド(配当)型に設計されているのかどうかについて判断することは簡単ではありませんので、金融庁は、その点について問題意識をもっているのです。

では、金融庁が問題意識をもつ「ファンド規制」とはどのような規制なのでしょうか。

以下で詳しく見ていきましょう。

(2)「ファンド規制」とは?

ファンド」とは、多数の投資家から資金を集め、集めた資金を事業や有価証券へ投資し、その後、生んだ利益を投資家に配当する仕組みのことをいいます(集団投資スキーム)。

そして、自社トークンが以下のような仕組みを持つ場合、原則として、金融商品取引法上のファンド規制の対象になります。

  1. 投資家から資金を集める
  2. 集めた資金を元手に事業を行う
  3. 事業により生んだ利益を投資家に配当する

ファンド規制の対象になると、「第2種金融商品取引業」としての登録を国から受ける必要があるとともに、以下のようにさまざまな義務を課せられることになります。

  • 顧客に対する誠実公正義務
  • 名板貸しの禁止
  • 広告規制
  • 契約締結前の書面の交付
  • 契約締結時の書面の交付
  • 禁止行為等

このことをICOについて見てみましょう。

ICOにおいて発行するトークンが、①「トークンの購入」という形で投資家から出資を受ける→②そのトークンの持分に応じて投資家に利益を配当するという仕組みをもつ場合は、ファンド規制の対象になる可能性があります。

もっとも、ファンド規制の対象になるのは、「投資家が金銭や有価証券により投資した場合」に限定されているため、投資家がトークンを購入するために支払う仮想通貨は、この要件をみたしていないことになります。

そうすると、仮想通貨により投資されるICOは、ファンド規制の対象から外れるようにも思えます。ですが、金融庁はそのようには考えていません。

以下で具体的に見てみましょう。

(3)ファンド(配当)型トークンへの金融庁の解釈

ファンド(配当)型トークンについて、金融庁は、公表しているガイドラインにおいて、

また、ICOが投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます。

としています。

以上からすると、金融庁は、ファンド(配当)型トークンについて、以下のように解釈していると考えられます。

イーサリアムやビットコインなどの仮想通貨は、取引所で簡単に「現金」に換金することができます。そうすると、投資を受けた段階では仮想通貨であるとしても、投資として受け取った仮想通貨は、結局のところ、換金を当然に予定している「現金」を集めるための便法にすぎないと見ることができます。このような仕組みをとらえると、実質的には金銭を集めている、と見るのが自然です。

ICOを行う際には、イーサリアムやビットコインなどの仮想通貨で投資を受けるからといって安心するのではなく、その仕組み次第では、ファンド規制の対象になる可能性があるということを念頭に置いておかなければなりません。

8 ポイント④:仮想通貨取引所開設の審査基準はどうあるべきか?

金融庁の審査基準

(1)金融庁の問題意識

これまでは、主に発行トークンにフォーカスして、そのICOの法律規制について見てきました。これは、前提として、仮想通貨交換業の登録が障害となっていることに起因しています。

また、ご存知の方も多いと思いますが、コインチェック流出事件が起きたことをきっかけに、金融庁は、投資家保護の強化という観点から、仮想通貨交換業の取得をより厳格にするための審査基準を設ける必要があると考えているようです。

(2)「仮想通貨交換業」とは

ここで「仮想通貨交換業」がどのような事業を指すのかについて、簡単に確認しておきましょう。

仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売買や交換、またはこれらを媒介するなどのサービスを提供する事業のことをいいます。そして、このようなサービスを提供する事業者を「仮想通貨交換業者」といいます。

改正資金決済法(通称:仮想通貨法)は、仮想通貨交換業を次のように定義しています。

  1. 仮想通貨の売買や仮想通貨同士を交換すること
  2. 1の行為の媒介・取次・代理をすること
  3. 1・2の行為に関して、ユーザーの金銭や仮想通貨の管理をすること
  4. 1~3の行為を「事業」として行うこと

各要件について、簡単に見てみましょう。

①仮想通貨の売買や仮想通貨同士を交換すること

仮想通貨の売買や仮想通貨同士を交換すること」とは、事業者がユーザーとの間で、仮想通貨の売買や異種の仮想通貨を交換することをいいます。

②①の行為の媒介・取次・代理をすること

媒介・取次・代理」とは、ユーザーと仮想通貨交換業者の間に入って、ユーザーが希望する売買や交換の注文を仮想通貨交換業者などにつなげる行為のことをいます。

③①・②の行為に関して、ユーザーの金銭や仮想通貨の管理をすること

取引所などでユーザーが保有する金銭や仮想通貨を管理することをいいます。

④①~③の行為を「事業」として行うこと

「事業」とは、1~3の行為を反復継続して行うことをいいます。

これらの要件のうち、①~③のいずれかに該当し、かつ、これを「事業」として行う場合(要件④)は、仮想通貨交換業者としての登録を受けなければなりません。

コイン流出事件といえばご存知の方も多いと思いますが、「コインチェック」や、テレビCMでも目にする「ビットフライヤー」などのように、取引所や交換所を置いて、仮想通貨に関するサービスを提供する事業者は「仮想通貨交換業者」にあたります。

そして、仮想通貨交換業者に対しては、一定の規制が課せられます。

以下で、その規制について具体的に見ていきましょう。

(3)仮想通貨交換業者への規制

仮想通貨交換業者に対し課せられる規制は、大きく以下の4つに分かれます。

  1. 財務規制
  2. 行為規制
  3. 監督規制
  4. マネロン規制

それぞれの規制について、簡単に見ていきましょう。

①財務規制

仮想通貨交換業者としての登録を受けるためには、以下に挙げる要件をみたしていなければなりません。

  • 資本金額が1,000万円以上であること
  • 純資産額がマイナスでないこと

この規制は、資金が不足している企業がユーザーから預かった仮想通貨などを使い込むようなことがないようにすることを目的にしています。ですので、この要件をどちらかでも欠いている企業は仮想通貨交換業の登録申請はできたとしても、登録を拒否されることになります。

②行為規制

仮想通貨交換業者は、以下のことを守らなければなりません。

    ⅰ.名義貸しの禁止
    ⅱ.情報の安全管理義務
    ⅲ.委託先に対する指導
    ⅳ.利用者の保護などに関する措置
    ⅴ.利用者財産の管理義務
    ⅵ.指定仮想通貨交換業務紛争解決機関との契約義務など

以上については、金融庁が出しているガイドラインにおいても、重要な指針が示されています。ここでは、特に重要とされるⅰ情報の安全管理義務、ⅱ利用者の保護などに関する措置、ⅲ利用者財産の管理義務を取り上げ、簡単に見ていきたいと思います。

ⅰ.情報の安全管理義務

改正資金決済法は「仮想通貨交換業者は、内閣府令で定めるところにより、仮想通貨交換業にかかる情報の漏えい、滅失または毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならない。」と定めています。ここでいう必要な措置の具体的な内容は、以下のとおりです。

  • リスクの認識と適切な人員の配慮
  • 社内規則の策定
  • 情報セキュリティの対策
  • システム障害などの緊急時の対応プランの策定
  • システム障害などが発生した場合の対応

つまりは、仮想通貨交換業者に対し、ユーザーから預かった情報を安全に管理するための体制を整備することを求めたものです。

ⅱ.利用者の保護などに関する措置

ユーザーが仮想通貨交換業者と取引をするか、また、取引をする場合のその取引内容について、適切な判断ができるよう、仮想通貨交換業者は、必要な情報を説明したり、提供しなければなりません。具体的には、以下の点に注意する必要があります。

  • 適切に説明や情報提供ができる体制を作っているか
  • 社内規則が作られ、かつ、その規則について周知徹底が図られているか
  • ユーザーに対し適切な説明がなされているか

以上のように、仮想通貨取引にあたり、重要な情報(ユーザーが契約をするかどうかについて適切に判断できるだけの情報)を説明し、または提供することを求めることで、ユーザーを保護しているのです。

ⅲ.利用者財産の管理義務

仮想通貨交換業者は、金銭や仮想通貨をユーザーから預かった場合は、適切な方法で分別して管理しなければなりません。具体的には、以下の点に注意する必要があります。

  • 適切な方法により分別管理されているか
  • 残高を照合し、不足額を解消する体制をとっているか
  • 適切な方法で委託先と連携しているか
  • 有効に分別管理監査が機能しているか

このように、適切な方法により、ユーザーから預かった金銭や仮想通貨を自己の財産と分けて管理させることで、仮想通貨交換業者による使い込みなどを防ぐことができるのです。

③監督規制

仮想通貨交換業者に対する監督規制としては、以下の6つがあります。

  • 帳簿書類の作成・保存
  • 報告書の提出
  • 立入検査等
  • 業務改善命令
  • 登録の取消等
  • 登録の抹消

基本的には、どの規制も当たり前のことを定めたものです。これらのルールに違反すると、ペナルティを受ける可能性もありますので、きちんとした対応が必要です。

④マネロン規制

近時、外国で仮想通貨を利用したマネロンが行われたこともあり、日本においても仮想通貨交換業者をマネロン規制の対象に含めました。詳しくはのちほど説明しますが、仮想通貨交換業者に対し、以下の義務を課しました。

  • 口座開設時の取引時確認義務
  • 確認記録・取引記録などの作成・保存義務
  • 疑わしい取引の届出義務
  • 社内における管理体制の整備

これまで見てきたように、仮想通貨交換業者に対しては、大きく分けて4つの規制が課せられますが、それぞれの規制において、仮想通貨交換業者が求められている内容は非常にレベルの高いものになっています。ですので、仮想通貨交換業の登録申請自体を断念する企業や、登録申請まではするものの、結局は、登録許可の審査をクリアすることができずに登録を受けることができなかったり、申請自体を取り下げる企業も出てきてるのが現状です。

ですが、金融庁は、コインチェック流出事件をきっかけに、ユーザーの保護をいっそう強化しなければならないと考えているようです。そのため、以下に述べるように、仮想通貨交換業登録についての審査基準を始め、各方面の規制が強化される可能性があります

以下で、金融庁による今後の規制について、詳しく見ていきましょう。

(4)金融庁による今後の規制

ICOや仮想通貨交換業への規制に関し、金融庁の今後の動きのポイントは以下の3点であるということがいえます。

  1. 仮想通貨交換業への登録基準(審査基準)の見直し
  2. ICOなどの仮想通貨による資金調達への規制
  3. レバレッジ取引(証拠金を用いた仮想通貨の取引)規制

各ポイントについて、簡単に見ていきましょう。

①仮想通貨交換業への登録基準(審査基準)の見直し

金融庁は、コインチェック社の事件をきっかけとして、仮想通貨交換業の登録基準(審査基準)を見直す方向で動いており、遠くない時期に新たな審査基準が設けられる模様です。具体的には、システムリスクに関する審査基準が引き上げられるものと推測されます。既に登録申請を終えている企業は、心配だと思いますが、既存の申請は、有効な申請として扱われたうえで、新たな審査基準の適用を受ける形になるようです。

②ICOなどの仮想通貨による資金調達への規制

ICOなどの仮想通貨周りへの規制に関するポイントは以下の3点です。

  • ICOを行う際に発行するトークンについて、「仮想通貨」に該当する場合をもっと明確にする必要性の有無
  • ホワイトペーパーによる情報開示の義務化
  • 管理当局によるモニタリング

ICOを行う企業にとって、ハードルが高いと言われている仮想通貨交換業の登録をしなければならないか、という問題は、自社トークンが「仮想通貨」に該当するかどうか、という点に左右されます。このようにICO企業にとっては、重要な分岐点ともなる「仮想通貨」の該当性について、その定義がわかりにくいと、ICOを進めることに躊躇をおぼえます。

また、投資家側からすると、企業から与えられる情報が不十分なものだと、投資をするかどうかについて、きちんとした判断ができません。

さらに、ICOに名を借りた詐欺事件もしくは詐欺まがいの事件が多く発生していることなどから、ユーザーの保護を強化する必要性が出てきます。

③レバレッジ取引(証拠金を用いた仮想通貨の取引)規制

レバレッジ」とは、取引をする会社に預ける証拠金に対して掛ける「てこ」のようなものです。取引をする会社に証拠金を預けることで、証拠金の数倍から数百倍の金額で取引をすることが可能になります。1度は耳にしたことがある方が多いと思いますが、通常は、レバレッジ〇〇倍というような言い方をします。

このような取引方法を聞くと、ギャンブルをイメージする方も少なくないと思いますが、実際に、このような取引はギャンブルに近いともいえるとして問題視されていることから、いずれは、レバレッジ取引についても規制が設けられる可能性が高いということがいえます。

以上のように、今後上に述べた3点を反映した法規制が作られる可能性は十分にあるということがいえます。

9 ポイント⑤:「マネロン規制」における「本人確認」

マネーロンダリング

(1)金融庁の問題意識

仮想通貨は、簡単に資金を移転できるという利便性があるため、違法取引やマネーロンダリング(マネロン)に使われる動きもあり、国際的に問題になっています。

そのため、日本でもマネーロンダリングの規制対象に仮想通貨交換業者を含めています。具体的には、仮想通貨交換業者が「特定事業者」として犯収法の規制対象に追加されましたが、仮想通貨が違法取引やマネロンなどの犯罪に使われているかどうかを判断することは簡単ではありません。

そこで、このような判断をより的確に行うための仕組みが必要になってくるわけです。その仕組みを具体化したものが、取引相手の「本人確認義務」です。

このような義務を課すことで、仮想通貨が犯罪に使われることを未然に防ぐことができるようになるわけです。

では、そもそもマネロン規制とはどのような規制なのでしょうか。以下でその概要について見ていきたいと思います。

(2)マネロン規制の概要

マネロン規制の具体的な内容について、いまいちど確認しておきましょう。仮想通貨交換業者は、犯収法上、以下の4つの義務を負います。

  1. 取引時確認義務
  2. 取引時確認記録、取引記録等の作成・保存義務
  3. 疑わしい取引の届出義務
  4. 社内管理体制の整備義務

それぞれの義務について、順番に見ていきましょう。

①取引時確認義務

仮想通貨交換業者は、次の取引をする場合には、本人確認を含め取引時確認をしなければなりません

  • 仮想通貨取引を反復・継続して行うことなどを内容とした契約の締結
  • 200万円を超える仮想通貨の売買や交換(ハイリスク取引)
  • 10万円を超える仮想通貨の移転

以上の取引をする場合において、取引時確認をする際の具体的な確認事項は次のとおりです。

  • 本人を特定する事項
  • 取引の目的
  • 職業または事業の内容
  • 実質的な支配者
  • 資産や収入の内容

ある程度細かく確認事項が定められていますが、これは、後に説明する「疑わしい取引の届出」をすべきかどうかを的確に判断するために定められたルールです。

②取引時確認記録、取引記録等の作成・保存義務

仮想通貨交換業者は、取引時確認記録およびその取引終了後、ただちにこの取引に関する記録を作成しなければなりません。作成した記録は、取引に関する契約終了後7年間保管する必要があります。取引時確認記録や取引記録の記載事項はかなり細かく決められていますので、きちんと確認することが必要です。

なお、残高照会など、財産移転がない取引や1万円以下の取引については、取引記録の作成やその保存をする必要はありません。

③疑わしい取引の届出義務

仮想通貨交換業者は、ユーザーとの取引が怪しい(=「疑わしい取引」)と感じたら、その旨を国へ届出なければなりません。とはいえ、怪しいと感じれば、すべて届出なければならないということではありません。届出が必要になるのは、以下の場合です。

  • 取引により受領した財産が犯罪によって得られたもの(お金に限られない)である疑いがある場合
  • 顧客が取引を利用してマネロンを行っている疑いがある場合

以上のケースにおいては、疑わしい取引として届出が必要になりますが、そもそも何をもって疑わしいと判断することになるのでしょうか。

取引が疑わしいかどうかは、以下のような基準にしたがって判断します。

  • 取引時確認の結果や取引態様、その他の事情で判断する
  • 調査書の内容
  • 法律などで定められている項目や方法に従う

以上のような基準にくわえ、事業者がその業界で求められる一般的な知識と経験を前提にした場合、上に述べたような疑わしさがその取引に認められれば、その取引を「疑わしい取引」とするに十分である、とされています。

なお、マネロン規制について詳しく知りたい方は「仮想通貨交換業者が守るべきマネロン規制4つの義務を弁護士が解説!」をご覧ください。

以上のように、金融庁によるICO規制について、5つのポイントを挙げて見てきました。

どれも非常に重要な内容ですので、ICOを検討している企業やこれからICOを予定している企業は、これらのポイントをきちんと押さえておくことが必要になってきます。

最後に、以下で、金融庁によるICOや仮想通貨交換業への規制が今後どのようになっていくのかについて見ていきます。

10 金融庁による今後のICO・仮想通貨交換業への規制

金融庁の規制

(1)米証券取引委員会(SEC)のICOに対する見解

金融庁による今後のICO・仮想通貨交換業への規制がどのようになっていくのかという問題を見ていくにあたり参考になるのは、日本における金融庁と同じような位置づけにあるアメリカの米証券取引委員会(SEC)のICOに対する見解です。

SEC委員長であるJay Clayton(ジェイ・クライトン)氏は「これまで見てきたICOは有価証券である」と発言しており、「ICOは有価証券の提供であるため、SECは有価証券として規制するべきである」と語っています。

ここでいう「有価証券」とは、私法上の財産権(所有権など)を掲げている証券のことをいい、権利の発生や移転などがその証券によって行われることを必要とするものをいいます。典型的な有価証券の例として、「株」が挙げられます。クライトン氏は、ICOにより発行するトークンは、その性質上「有価証券」と同じであると考えており、有価証券として規制すべきであるとの見解に立っているのです。

(2)IPOに近づけた解釈

IPO(Initial Public Offering)」とは、日本でいう「新規公開株」や「新規上場株式」と表すことができます。具体的には、投資家に株を売り、その株を証券取引所に上場して、株の取引を誰もができるようにする仕組みのことをIPOといいます。IPOによる株の投資は、「上場される前に株を取得して、上場する日にその株を売ることで利益を上げる」という特徴を持っています。

金融庁において、今後どのように規制をしていくかという点について、SECが採っているような見解を参考にした場合、ICOは「有価証券」による資金調達であるといった捉え方、つまり、ICOをIPOに近づけて解釈する可能性があると考えます。このような解釈を採った場合、たとえば、現在は規制されていない仮想通貨におけるインサイダー取引が今後規制される可能性が出てきます。

このように、ICOはその性質において、上場される前に投資家がトークンを取得(購入)して、そのトークンを売ることで利益を上げるという意味でIPOに似た仕組みを持っているということがわかると思います。

もっとも、金融庁による今後のICO・仮想通貨交換業への規制は、先にも述べたように、以下の点が基軸になるものと考えます。

  1. 仮想通貨交換業への登録基準(審査基準)の見直し
  2. ICOなどの仮想通貨による資金調達への規制
  3. レバレッジ取引(証拠金を用いた仮想通貨の取引)規制

なお、金融庁による今後のICO・仮想通貨交換業への規制について、詳しく知りたい方は、「ICO規制の今後とは?金融庁研究会を基に3つの視点で弁護士が解説」をご覧ください。

11 小括

まとめ

今回は、ICOや仮想通貨に関する規制の中でも、特に金融庁による規制を中心に見てきました。ICOや仮想通貨を管轄する金融庁からは、ガイドラインが出されており、そこには重要な指針が示されています。金融庁がどのようなことを規制して、また、どのようなことを許しているのか、をきちんと理解したうえで、ICOを進めることが重要です。また、今後新たな規制が金融庁により設けられる可能性もありますので、今後の金融庁の動向にも注意が必要です。

12 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 金融庁を始め、関係団体から出されているガイドラインは、指針を示すもので、無視することはできない
  • 金融庁によるICO規制のポイントは、①「仮想通貨交換業」の登録の要否、②「前払式支払手段」該当性、③「ファンド規制」による第2種金融商品取引法の登録の要否、④仮想通貨取引所開設の審査基準のあり方、⑤マネロン規制における「本人確認」の②り方、の5つである
  • 「仮想通貨」とは「物などの購入や売却の際に、不特定の人に対し使うことのできる財産的価値」のことをいう
  • 仮想通貨にあたらないスキームの一例として、①クラウドファンディング類似モデル、②販売委託スキームがある
  • トークンが「仮想通貨」にあたらない場合、次に検討すべきは、そのトークンが「前払式支払手段」にあたるかどうかである
  • 金融庁は、仮想通貨と前払式支払手段の関係について、①「仮想通貨」にあたる→「前払式支払手段」にあたらない、②「前払式支払手段」にあたる→「仮想通貨」にあたらないといった整理をしているものと考えられる
  • 「前払式支払手段」とは「ユーザーがお金を支払って購入もしくはチャージをすることで、商品やサービスの支払いに使えるもの」をいう
  • ファンド(配当)型トークンは、金融商品取引法上のファンド規制の対象になる
  • ファンド規制の対象になると、「第2種金融商品取引業」としての登録を国から受ける必要がある
  • 投資家からトークンを購入してもらうことにより出資を受ける⇒②投資家が購入したトークンの持分に応じて利益を配当する、という仕組みをもつ場合には、ファンド規制の対象になる可能性がある
  • 「仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売買や交換、またはこれらを媒介するなどのサービスを提供する事業のことをいう
  • ICOや仮想通貨交換業への規制に関する金融庁の今後の動きのポイントは、①仮想通貨交換業への登録基準(審査基準)の見直し、②ICOなどの仮想通貨による資金調達への規制、③レバレッジ取引規制の3つである