電子契約を導入するメリットは?2つの法的リスクとともに解説!

2022.11.25

はじめに

近年、その利便性の高さから「電子契約」を導入する事業者が増えています。

新型コロナウイルス感染症の拡大によりテレワークが推進されるなか、これから電子契約を導入しようと検討している事業者もいらっしゃるのではないでしょうか。

もっとも、電子契約には利便性が高いというメリットがある反面、一定のリスクも存在します。
そのため、実際に導入する際には、その点にも十分に留意することが必要です。

今回は、「電子契約」について、そのメリットや法的リスクを中心に弁護士がわかりやすく解説します。

1 電子契約を導入するメリット

電子契約を導入するメリットは、主に以下の4点にあります。

  1. 非対面での契約締結
  2. 管理コストの削減
  3. 利便性の向上
  4. 印紙税の節約

(1)非対面での契約締結

従来、契約は対面で締結することが一般的でした。
また、契約当事者が遠方にいる場合は、郵便でやり取りすることにより契約を締結することもありました。

その点、電子契約は、オンライン上で契約を締結することが可能です。

特に、昨今のコロナ禍では、「対面」によることが好ましくないといえ、その意味でも、非対面で契約を締結できる電子契約は、現在の状況にマッチする契約締結手段なのです。

オンライン上で締結プロセスが完了するため、非対面で、かつ、迅速に契約を締結することが可能です。

(2)管理コストの削減

これまでは紙媒体で契約を締結することが大半を占めていたため、契約の締結数が増えていくにつれて、契約書等の管理も煩雑になることが多くありました。
オフィスでは保管スペースを確保できず、トランクルーム等を借りて契約書等を保管する事業者も少なくないのではないでしょうか。

その点、電子契約は、すべてオンライン上で管理できるため、保管スペースが必要になるということもなく、管理コストを削減することができます。

(3)利便性の向上

「以前に締結した契約を参考にしたい」「過去にどのような契約を締結したかを知りたい」といったように、後になって過去の契約書を確認しなければならなくなることがあります。

このような場合、仮にトランクルームに保管しているのであれば、目当ての契約書を確認できるまでに数日かかることもあります。
また、管理方法が不十分だとそもそもどこに目当ての契約書が保管されているのか、わからないということもあるでしょう。

その点、電子契約では、契約書をはじめとした関連情報がすべてオンライン上で管理されているため、検索機能を用いるなどしてすぐに目当ての契約書等を探すことができます。

このように、電子契約は利便性の向上に資するというメリットもあるのです。

(4)印紙税の節約

紙媒体で契約書を交わす場合、その内容に応じて収入印紙を貼付しなければなりません。

その点、電子契約は、印紙税法にいう課税文書にあたらないため、印紙税がかからないというメリットがあります。

2 電子契約の法的リスク|リスクの回避方法

これまで見てきたように、電子契約には多くのメリットがありますが、その反面、以下のような法的リスクが存在します。

(1)契約の有効性

契約が有効に成立するためには、契約を実際に締結する者がその権限を与えられていなければなりません。

ですが、既に見たとおり、電子契約は、非対面で契約を締結します。
そのため、契約の相手方が契約締結の権限を与えられているかどうかを直接確認することができません。

仮に、契約締結の権限を与えられていない者が独断で電子契約を締結した場合、契約当事者である事業者から契約の有効性を争われ、トラブルに発展するおそれがあります。

このように、電子契約は非対面で締結されるがゆえに、従来見えていたものが見えにくくなるというデメリットがあります。

そのため、電子契約を締結する際には、相手方に契約締結の権限が与えられているかどうかをきちんと確認することが必要です。

契約締結権限の有無を確認する方法としては、電子証明書を用いることが一般的になっています。

(2)情報漏えいのリスク

電子契約は、電子ファイルにより締結されるため、情報漏えいのリスクが伴います。

たとえば、以下のような事態は、どの事業者にとっても発生しうるものです。

  1. 担当者が誤って契約とは関係のない第三者に電子ファイルを送信してしまった
  2. 従業員が不正に電子ファイルを持ち出してしまった
  3. サイバー攻撃に遭い、データが流出してしまった


このような事態が生じると、契約そのものが白紙になる可能性があり、場合によっては、事業者の信用に大きくキズがついてしまいます。

この点、電子契約における情報漏えいを防ぐためには、電子ファイルへのアクセス権限を限られた者にだけ付与し、かつ、閲覧等のために必要なパスワードを設定するなどの措置を講じる必要があります。

そうすることで、電子ファイルにアクセスできる者が限定され、情報漏えいのリスクは必然的に減少します。

また、パスワードを設定しておくことで、万が一第三者に電子ファイルが渡ってしまったとしても、その者はファイルの中身を確認できないため、情報漏えいのリスクはなくなります。

さらに、サイバー攻撃に備えて、情報セキュリティを強化しておくことも必要です。
具体的には、ウイルス対策ソフトの導入を徹底することが考えられます。

3 まとめ

電子契約には、多くのメリットがある反面、一定の法的リスクも存在します。

電子契約を導入する際には、そのためのシステムや社内制度を構築するとともに、法的な観点からも慎重に検討することが必要です。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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