スクレイピングとは?実施時に注意すべき3点をわかりやすく解説!

はじめに

スクレイピング」という言葉をご存知でしょうか。

スクレイピングをうまく活用できれば、新商品・新サービスの開発やマーケティングなど、さまざまな面で業務の効率化を図ることができます。

もっとも、スクレイピングを行う際には、その前提として知っておかなければならない法規制があります。
過去には、スクレイピングを原因とした逮捕事例も出ているため、この点を疎かにしてしまうと取り返しのつかない事態になるおそれもあります。

そこで今回は、「スクレイピング」の概要や実施時に注意すべき法規制などを中心に、弁護士がわかりやすく解説します。

1 スクレイピングとは

スクレイピング(scraping)」とは、HTMLの情報をウェブサイトから抽出し加工するコンピュータソフトウェア技術のことをいいます。

クローラというプログラムを使い、インターネット上に存在するウェブサイト間を行き来することで、さまざまな情報を収集することができます(「クローリング」といいます。)。

たとえば、検索エンジンがサイトをインデックスする際にも、このクローリングが行われています。

2 スクレイピングの活用

多くの事業者にとって、業務上必要なデータをさまざまなウェブサイトから取得して活用することは当たり前にもなっています。
とはいえ、人の手でこれらの情報をより多く取得するには、手間と労力が必要です。

その点、スクレイピングを活用すれば、業務の効率化を図ることができます。

たとえば、スクレイピングを活用して他社の商品情報を取得することにより、マーケティングの効率化を図ることができます。
また、ニュースサイトからキーワードを抽出することにより、世間のトレンドを把握することができ、自社サイトのコンテンツ作成に役立てることも可能です。

一方で、新しいサービスの開発に活かすこともできます。

たとえば、多数のECサイトから商品価格情報をスクレイピングすることにより、価格比較を内容とするサービスを開発することが可能になります。
また、変動が激しい情報(地図や株価など)を提供するサービスなどを開発することも可能です。

ご存知の方も多いと思いますが、わたしたちが日常的に利用している「検索エンジン」もスクレイピングを活用したサービスの一つです。

3 スクレイピングを行う際の注意点

スクレイピングを行う場合には、主に、以下の3点に注意する必要があります。

  1. 著作権
  2. 業務妨害罪
  3. 利用規約

(1)著作権

著作権」とは、著作者が「著作物」を独占的に利用できる権利のことをいいます。
ここでいう「著作物」とは、自己がもつ考え・感情などを創作性(オリジナリティ)をもって表現したものです。

著作物として著作権法で保護される場合、他人が著作権者から同意を受けずに勝手に著作物を複製(コピー)するようなことは原則としてできません。

このことは、スクレイピングにより取得した他社の情報についても同じです。

たとえば、スクレイピングにより取得した他社のコンテンツなどに創作性(オリジナリティ)が認められれば、他社のコンテンツは著作権法上の「著作物」にあたります。
そのため、これらを複製するためには、原則として、著作権者である他社から同意を得ることが必要になります。

とはいえ、その都度著作権者の同意を求めることは現実的ではないため、例外的に著作権者の同意を得ることなく、スクレイピングによって取得した他社の情報などを記録・翻案(取得した情報に新たに表現を加えること)できる場合があります。

具体的には、情報解析が目的である場合には、著作権者の同意を得ていなくとも取得情報を記録・翻案することが可能です。

(2)業務妨害罪

スクレイピングをするためには、他社コンテンツなどにアクセスすることが必要ですが、ここで注意しなければならないのがアクセスの頻度です。

アクセスの頻度が程度を超えて高くなると、相手のサーバに大きな負荷をかけることになり、相手のシステムに支障が生じる可能性があります。

過去には、偽計業務妨害罪にあたるとして、スクレイピングを行った者が逮捕されるという事件も起きています(Librahack事件)。

偽計業務妨害罪の成否は、スクレイピング行為によって相手方の業務が妨害されたといえるかどうかによって判断されることになります。

アクセスの頻度に明確な基準があるわけではありませんが、1秒につき1回の頻度で1日2000回のスクレイピングを行ったというLibrahack事件は、一つの目安になるともいえるでしょう。

(3)利用規約

スクレイピングを行う際には、対象サイトの利用規約を確認することが必要です。

現在では、個人情報保護などの観点からスクレイピングを禁止しているサイトも少なくありません。

利用規約で禁止されているにもかかわらず、スクレイピングを行ってしまうと、最悪の場合、民事上の責任を追及されるおそれもあるため注意が必要です。

4 まとめ

スクレイピングは、うまく活用することで、業務の効率化に繋がります。

一方で、やり方を誤ると法的責任を負うだけでなく、最悪の場合、刑事罰の対象となる可能性もあります。

スクレイピングを行う際には、著作権の所在や対象サイトの利用規約などをきちんと確認することが大切です。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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