ストックオプションの仕組みとメリット・デメリットを弁護士が解説!

はじめに

ストックオプション」は、付与対象者(役職員等)にとっては、成果がそのまま報酬に直結するというメリットがあり、発行者(事業者)にとっては、付与対象者のモチベーションアップを期待できるというメリットがあります。

現在でこそ、ストックオプションを発行する事業者が多くなりましたが、そもそもの仕組みをご存知でしょうか。

ストックオプションを発行する場合には、その仕組みやメリット・デメリットなどをきちんと理解していないと、失敗に終わることもあります。

そこで今回は、ストックオプションの仕組みを中心に弁護士がわかりやすく解説します。

1 ストックオプションの仕組み

ストックオプション」とは、あらかじめ定められた価格で自社株を取得できる権利のことをいいます。

ストックオプションを付与された役職員等は、将来、株価が上昇した時点でストックオプションの権利を行使し、自社株を取得します。
自社株を取得後、株式を時価で売却することにより、権利行使価格と株価上昇分の差を利益(報酬)として得られるわけです。

会社の業績を上げて株価を上昇させることが、そのまま役職員等の報酬額に直結するため、ストックオプションを付与された者に業績を上げようというインセンティブが働きます。

また、ストックオプションの特徴として、「あらかじめ決められた期間内であれば、あらかじめ決められた価格で株式を取得できる」という点が挙げられます。

たとえば、今後3年間は自社株を1,000円/1株で購入できるという内容のストックオプションを付与されたとしましょう。

この場合、その後3年以内に、会社の業績が向上し株価が2,000円/1株に上昇したとしても、役職員等はストックオプションの権利を行使して1,000円/1株で自社株を取得できることになります。
たとえば、1,000円/1株を100株取得して、そのときの時価である2,000円/1株で売却した場合、1,000円/1株(1株あたりの利益)×100株=10万円を利益(報酬)として得られるわけです。

一方で、会社の業績が下がるなどして株価が下がった場合であっても、ストックオプションの権利を行使しなければ損をするということもありません。

2 ストックオプションのメリット・デメリット

ストックオプションを発行する事業者には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

(1)メリット

先に見たように、自社の業績が向上して株価が上昇すれば、ストックオプションでの利益も大きくなります。
そのため、役職員等が、業績を上げようと意欲的に業務に取り組むようになり、役職員等のモチベーションアップに繋がることが期待できます。

また、ストックオプション制度を導入していることで、将来的なインセンティブを広くアピールできるため、優秀な人材を確保しやすくなります。

さらに、入社した人材は、少なくともストックオプションの権利を行使するまでは会社に留まることが多いため、優秀な人材の流出を防ぐことができます。

(2)デメリット

必ずしも業績が向上して株価が上昇するとは限りません。

反対に株価が下落する可能性も十分にあり、そのような状況になると、特にストックオプション制度を目当てに入社したような人材においては、働くモチベーションが下がる可能性が高いといえます。

また、ストックオプションを付与されている者とそうでない者がいると、社内に不穏な空気を作る可能性もあるため、ストックオプションを付与する基準などを明確にしておくことが必要です。

さらに、ストックオプション制度を目当てに入社した人材の場合、ストックオプションの権利を行使するまでは会社に留まることが多いですが、行使して利益を得ると、会社を辞めてしまう可能性があります。

3 税制適格ストックオプションとは

税制適格ストックオプション」とは、税制面で優遇措置を受けられるストックオプションのことです。

税制面で優遇措置を受けられない税制非適格ストックオプションでは、株式の売却時、そして、ストックオプションの権利行使時の2回にわたって課税がなされます。

このように、税制非適格ストックオプションでは、ストックオプションの権利行使時(この時点ではまだ利益が発生していません)にも課税されるため、役職員等にとっては大きな負担となります。

一方で、税制適格ストックオプションの場合、課税されるタイミングは株式売却時の1回のみです。
この時点では、既に利益が発生しているため、税制非適格ストックオプションと比較すると、税制面の負担が軽くなります。

なお、税制面で優遇措置を受けるためには、以下の要件を満たしていることが必要です。

  1. 無償で発行すること
  2. 付与対象者が自社の取締役・執行役・使用人であること(一定の大口株主などを除く)
  3. 権利行使価格がストックオプションに係る契約締結時の1株あたりの価額以上であること
  4. 権利行使期間が付与決議後2年を経過した日~付与決議後10年を経過するまでの間であること
  5. 第三者への譲渡が禁止されていること


このように、ストックオプションを発行する事業者は、税制面にも配慮しながら発行の是非を検討することが大切です。

4 まとめ

ストックオプションを導入するにあたっては、その仕組みを押さえるとともに、税制面などにも配慮することが必要です。

また、ストックオプションにあるメリット・デメリットを十分に理解し、それらが自社にどのような影響を及ぼすかを検討することも大切です。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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