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「資金決済法に基づく表示」に記載すべき事項をわかりやすく解説!

はじめに

自社サービスで発行するコインやポイントが「前払式支払手段」にあたる場合、発行事業者は資金決済法上、一定の情報を提供すべき義務を負うことになります。

webサービスなどで「資金決済法に基づく表示」というページを見ることがありますが、これは、ここでいう情報提供義務を履行する方法として用いられているのです。

それでは、具体的にどのようなことを記載しなければならないのでしょうか?

今回は、「資金決済法に基づく表示」に記載すべき事項を中心に弁護士がわかりやすく解説します。

1 「資金決済法に基づく表示」に記載すべき事項

資金決済法上、前払式支払手段発行者が利用者に対して提供しなければならない情報は多岐にわたります。

具体的には、以下のような情報が挙げられます。

  1. 氏名、商号又は名称
  2. 前払式支払手段の支払可能金額等
  3. 前払式支払手段の使用期間・期限
  4. 利用者からの苦情・相談に応ずる営業所などの所在地・連絡先
  5. 前払式支払手段を使用できる施設・場所の範囲
  6. 前払式支払手段の利用上の必要な注意
  7. 電磁的方法により金額・数量を記録している前払式支払手段にあっては、その未使用残高を知る方法
  8. 前払式支払手段の利用に係る約款などが存在する場合には、その旨

(1)氏名、商号又は名称

前払式支払手段の発行主体を記載します。

    【記載例】

    <発行者の名称>

     株式会社〇〇〇


発行主体が個人であれば氏名を、法人であれば会社名を記載します。

(2)前払式支払手段の支払可能金額等

一回当たりの前払式支払手段の購入限度額や、一回当たりの前払式支払手段の使用限度額などを記載します。
また、支払可能額などに制限がなければ、その旨を記載します。

    【記載例】

    <支払可能金額等>

  • 1ポイント=10円とします
  • 保有可能な上限は、〇〇ポイントです


たとえば、ゲーム系のアプリなどは、未成年者が多く利用するサービスの一つです。

このようなサービスでは、未成年者が多額の前払式支払手段を購入するおそれがあるため、年齢ごとに購入限度額を記載することもあります。

(3)前払式支払手段の使用期間・期限

前払式支払手段の使用について、期間や期限を設定する場合には、その期間や期限を記載します。

    【記載例】

    <有効期間>

     ポイントは、〇〇から起算して6ヶ月を経過した時点で失効します

(4)利用者からの苦情・相談に応ずる営業所などの所在地・連絡先

前払式支払手段の発行や利用について、利用者から苦情・相談があった場合の窓口に関する情報を記載します。

    【記載例】

    <苦情・相談の窓口>

     東京都千代田区〇〇 △△ビル2階 お客様相談室

     TEL:03-〇〇〇〇-〇〇〇〇
     メール:〇〇@〇〇


連絡先は、相談窓口の電話番号やメールアドレスなどを記載する方法や、問い合わせフォームへのリンクを貼る方法が一般的になっています。

(5)前払式支払手段を使用できる施設・場所の範囲

実際に前払式支払手段を使用できる施設名・サービス名などを記載します。

    【記載例】

    <使用可能な施設・場所の範囲>

     〇〇(サービス名)のサイト内でのみ使用することができます

(6)前払式支払手段の利用上の必要な注意

サービスの内容などに応じて、独自の注意点を記載します。

    【記載例】

    <利用上の注意>

     原則、〇〇コインの払い戻しはいたしません。
     ただし、各サービスの提供を終了する場合は、この限りではありません。


このように、資金決済法では、前払式支払手段の払い戻しが原則として禁止されているため、その旨が記載されることが多いといえます。

(7)電磁的方法により金額・数量を記録している前払式支払手段にあっては、その未使用残高を知る方法

利用者が保有する前払式支払手段の残高を確認する方法について記載します。

具体的には、残高を確認できるページなどを記載することになります。

    【記載例】

    <未使用残高を確認する方法>

     未使用残高は、アプリ内の設定>〇〇でご覧いただけます

(8)前払式支払手段の利用に係る約款などが存在する場合には、その旨

サービスに係る利用規約のリンクを貼ることが一般的です。

    【記載例】

    <利用規約>

     〇〇ポイントの利用につきましては、利用規約(URL・・・)をご覧ください

2 「資金決済法に基づく表示」を掲示する際の注意点

「資金決済法に基づく表示」をサイト上などに掲示する場合、金融庁ガイドラインによれば、以下の点に注意する必要があります。

  • 前払式支払手段を購入するタイミングで利用者が確認できるようになっていること
  • 前払式支払手段を購入した後も利用者が確認できるようになっていること


サイト上で「資金決済法に基づく表示」を掲示していたとしても、利用者が前払式支払手段を購入する際に確認することができなければ、適切に情報を提供しているとはいえません。

そのため、たとえば、利用者が前払式支払手段を購入する際に、「資金決済法に基づく表示」の画面を表示し、購入者において確認済のボタンをクリックしないかぎり、前払式支払手段を購入できないといったような仕組みにすることが考えられます。

3 まとめ

前払式支払手段を発行する事業者の多くは、「資金決済法に基づく表示」を掲示することにより、資金決済法上の義務を果たしています。

「資金決済法に基づく表示」を作成する際には、他社による表記を参考にするなどして、記載すべき事項を正確に盛り込むようにしましょう。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


なお、記事の内容は投稿時の法令・制度に基づいており、投稿後に法改正等がなされている可能性があります。
記事をご参考にされる際は、必ずご自身の責任において最新情報をご確認下さい。

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

弁護士(35487 / 東京弁護士会)。証券会社勤務時代に携わったシステム開発案件を中心に、決済、暗号資産、特許関連法務を多く手掛ける。また、エンジェル投資家としてスタートアップ企業の成長を多角的にサポートする活動も行う。 George Washington University Law School (LL.M.・知財専攻) 卒業(2016)。経済産業省 中小企業庁主催 適正取引講習会 「下請法(実践編)」講師(2024)

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