シェアリングエコノミー型プラットフォームに関する法規制を解説

2022.08.07

はじめに

現在では、「モノ」をシェアするフリマアプリや「空間」をシェアする民泊サービスなど、さまざまなものを対象としたシェアに関するサービスが次々に出てきています。
市場規模は今後も拡大すると見込まれており、これからの参入を検討している事業者もいると思います。

今回は、「シェアリングエコノミー」について、法規制を中心に見ていきたいと思います。

1 シェアリングエコノミーのビジネスモデル


シェアリングエコノミー」のサービスに関係してくる当事者は、①提供者、②ユーザー、③プラットフォーム事業者の三者です。

(1)提供者

ユーザーに対してシェアサービスを提供する者です。
提供者は、シェアリングエコノミー型のプラットフォームを利用するにあたり、プラットフォーム事業者との間で利用契約(利用規約)を締結します。

また、プラットフォームを通じて、ユーザーとの間でシェアサービスに関する契約を締結します。

(2)ユーザー

提供者から提供を受けたシェアサービスについて、ユーザーはその対価を提供者に支払います。
ユーザーについても、提供者と同様、プラットフォームを利用するにあたり、プラットフォーム事業者との間で利用契約(利用規約)を締結します。
また、既に見たとおり、提供者との間でも契約を締結します。

(3)プラットフォーム事業者

提供者とユーザーに係る取引の場を提供する事業者です。
具体的には、提供者とユーザーをマッチングさせるとともに、決済機能を提供しています。

多くの場合、プラットフォーム事業者は、取引の場を提供・利用する際のルールを利用規約という形で設けています。
プラットフォームの利用を希望する提供者やユーザーは、この利用規約に同意しなければ、プラットフォームを利用することはできません。

2 シェアリングエコノミー型プラットフォームの種類


現在の日本では、さまざまなシェアサービスが展開されていますが、そのなかでも主要となっているサービスは以下の5つです。

(1)モノ

いらなくなったモノや使っていないモノをシェアの対象とするサービスです。
メルカリは、まさにモノに関するシェアサービスの代表ともいえます。

(2)空間

空き家などの遊休資産をシェアの対象とするサービスです。
民泊サービス「Airbnb」がその代表例です。

(3)お金

サービスに参加した人が他人やプロジェクトなどにお金を貸し出すサービスです。
クラウドファンディングサービス「Makuake」が、例として挙げられます。

(4)移動

移動手段をシェアの対象とするサービスです。
貸自転車サービスや自家用車の相乗りなど、現在では多く見受けられるようになったサービスの一つです。
みなさんもご存知の「Uber」が例として挙げられます。

(5)スキル

空き時間などをシェアの対象とするサービスです。
副業にも適しており、クラウドワークスなどが例として挙げられます。

3 シェアリングエコノミー型プラットフォームの事業者が負う責任

(1)原則

シェアリングエコノミー型プラットフォームでは、提供者とユーザーの間でシェアサービスに関する取引が行われます。
この点からもわかるように、取引自体の当事者はあくまで提供者とユーザーであり、プラットフォーム事業者は当事者ではありません。

そのため、提供者とユーザー間で生じたトラブルについては、原則として、プラットフォーム事業者は責任を負いません。

(2)プラットフォーム事業者が責任を負うケース

プラットフォーム事業者が責任を負う可能性があるのが「不法行為責任」です。

たとえば、シェアの対象となっているものが原因となって多くのユーザーに損害が生じているケースにおいて、このことをプラットフォーム事業者が知っていながら、特に何ら措置を講ずることなく一定期間放置した結果、新たにユーザーに同様の損害が生じた場合には、ユーザーや提供者に対し不法行為責任を負う可能性があります。

また、特定のシェアの対象について、品質を積極的に保証する旨をWebサイトなどにおいて掲載し、その掲載を信用したユーザーが特定のシェアの対象を利用した結果、シェアの対象に不具合があり損害を受けたような場合も、プラットフォーム事業者は不法行為責任を負う可能性があります。

4 プラットフォーム事業者が知っておくべきその他の注意点

(1)利用規約の作成

シェアリングエコノミー型プラットフォームを提供する事業者は、プラットフォームを提供するために利用規約を作成する必要があります。
既に見たように、プラットフォーム事業者はシェアサービスに関する取引の当事者にはあたらないものの、一定の場合には責任を負う可能性があります。

利用規約を作成する際には、このような責任が発生することを回避するとともに、責任発生の元となるトラブルを未然に防ぐという視点を持つことが必要です。
加えて、自社が守るべきルールを策定しておくなど、当事者にとってバランスのとれた利用規約を作成することが大切です。

(2)提供者から手数料を徴収する場合

プラットフォーム事業者のなかには、たとえば、提供者が販売したシェア対象の代金の一部を手数料として徴収するという仕組みを採っている事業者も存在します。

このように、有償でプラットフォームを提供する場合には、特定商取引法にいう通信販売にあたります。
通信販売を行う事業者は、取引条件などを適切な方法で表示する義務を負います。
さまざまなサイトで多く見受けられる「特定商取引法上に基づく表記」は、この表示義務を履行する方法として一般的になっています。

5 まとめ

シェアリングエコノミーの市場規模は、今後も拡大していくことが予想されています。
「空間」や「移動」など、通常シェアの対象としては思いもつかない対象がサービスとして提供されており、今後も、新たなシェア対象が出てくることが期待されます。

シェアリングエコノミー型プラットフォームを提供する事業者は、適切な利用規約や自主ルールを策定するなどして、プラットフォームにおける取引の健全性を確保しなければなりません。
と同時に、プラットフォーム内におけるトラブルの対処法や手数料を徴収する場合の法規制などについても注意する必要があります。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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