景表法にいう「措置命令」とは?3つの対処法や罰則を弁護士が解説!

はじめに
自社商品の広告やパッケージが実態とかけ離れてしまったり、商品に付随して提供する景品類が程度を超えたものになってしまうと、事業者は「措置命令」を受ける可能性があります。
「措置命令」と聞くと、経営に支障が出るのではなかろうか、信用問題に繋がるのではなかろうか、などと心配になる事業者の方も多いと思います。
措置命令を受けることがないように広告や景品類に注意することも大切ですが、同時に、措置命令を受けた場合の対応や回避方法について理解しておくことも大切です。
この記事では、
- 「措置命令」とはどういうものか
- 措置命令を回避するための対応
- 措置命令に違反した場合のペナルティー
などについて、弁護士が詳しく解説します。
1 「措置命令」とは
「措置命令」とは、商品やサービスについて、消費者に誤認を与えるような表示(不当表示)をした事業者に対し、消費者庁や都道府県が誤認の排除や再発防止を命じるものです。
このような場合、事業者は具体的にどのような対応をとる必要があるのでしょうか。
この点を見ていく前に、まずは、措置命令について、基本的な内容を押さえておきましょう。
この項目では、
- 措置命令の対象となる行為
- 措置命令の内容はどのようなものか
- 措置命令が出るまでの流れ
について解説します。
(1)措置命令の対象となる行為
景表法は「景品類」(商品・サービスのおまけやプレゼントなど)と「表示」(広告やパッケージの表示)を規制するためのルールが定められた法律です。
具体的に、景表法では、以下の4つを措置命令の対象としています。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- その他内閣総理大臣が指定する表示
- 過大な景品提供
①優良誤認表示
「優良誤認表示」とは、広告などに表示する商品・サービスの品質や規格を、
- 実際のものよりも著しく良いものに見せる
- 競合する他社のものよりも著しく良いものに見せる
というものです。
このような広告は、「優れたものだと思って購入したのに、広告などで言われているほどではなかった」といった誤認を消費者に与えるおそれがあるため、「不当表示」として禁止されています。
たとえば、実際は「ウール80%」の衣服であるにもかかわらず、「ウール100%」と表示することは「優良誤認表示」にあたります。
②有利誤認表示
「有利誤認表示」とは、広告などの表示において、
- 実際のものよりも内容量や価格、販売条件を著しくお得に見せる
- 競合する他社の価格よりも著しく安いと見せかける
というものです。
このように、有利誤認表示は、主に商品やサービスの「取引条件」について、実際のものよりもお得に見せることをいいます。
このような広告は、「安い(多い)と思って購入したのに、そうではなかった」といった誤認を消費者に与えるおそれがあるため、優良誤認表示と同様「不当表示」として禁止されています。
たとえば、実際には100個未満しか商品を用意していないにもかかわらず、「先着100名様に販売」と表示することは「有利誤認表示」にあたります。
③その他内閣総理大臣が指定する表示
上記2つの表示のほか、消費者が特に誤認しやすいものとして、下記の6つの項目が内閣総理大臣により「不当表示」として指定されています。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
以上に挙げた①~③はすべて不当表示として禁止されており、これらに違反すると、措置命令を受ける可能性があります。
※これらの不当表示については、「「誇大広告」とは?押さえておくべき4つの法律と罰則を分野別に解説」の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
④過大な景品提供
景表法は、以上で見た表示規制のほか、商品やサービス、各種のキャンペーンに付随するおまけやプレゼントなどの価格についても一定の規制を設けています。
これに違反すると、措置命令を受ける可能性があります。
※景表法全体については、「景表法とは?広告を出すなら知っておくべき2つの規制を弁護士が解説」の記事を参照ください。
(2)措置命令の内容はどのようなものか
消費者庁や都道府県から出される措置命令は、主に以下の4つの内容で構成されています。
- 命令の内容
- 事実⇒どの表示が不当表示に当たるか
- 法令の適用⇒景表法のどこに抵触するか
- 法令に基づく教示⇒不服申し立ての方法
このうち「1. 命令の内容」については、多くの場合、以下のような内容になります。
- 自社の広告が、景表法に違反していたことを、消費者に告知すること
- 再発防止策を講じて、役員や従業員に周知徹底をすること
- 今後、合理的な根拠がない表示を行わないこと
また、措置命令に不服がある場合の不服申し立ての手続きについても記載されています。
(3)措置命令が出るまでの流れ
消費者庁には、景表法違反が疑われる事実を外部から報告できる窓口が設置されているほか、都道府県の消費生活センターからの情報も集めています。これ以外にも、「職権探知」といい、独自の調査を行っています。
もっとも、表示規制違反が疑われる事実の報告があった場合に、事業者に対してすぐに措置命令が出されるわけではありません。
措置命令を出す前に調査が行われ、事業者に対しては弁明の機会が与えられるため、事業者は、必要な資料を提示し、消費者庁などに説明することができます。
調査の結果、事業者に違反行為が認められた場合は、措置命令が出される可能性があります。
具体的には、先に見たとおり、
- 誤認のあった表示の排除
- 再発防止策の実施
- 今後、同じ違反行為を行わないこと
といった事項を命じられます。
違反行為がみられなかった場合でも、違反の恐れがあるときは、将来的な違反の防止や再発防止の観点から、指導の措置が取られることがあります。
2 措置命令を受けたらやるべきことは? 回避する方法は?
措置命令をいったん受けてしまうと、事業者は不服がないかぎり、基本的に、命じられた措置をとる必要があります。
ですが、言い分がある場合には、以下の方法をとることにより、措置命令を回避できる可能性があります。
- 不実証広告規制
- 不服申し立て
- 取消訴訟を起こす
(1)不実証広告規制
「不実証広告規制」とは、優良誤認表示の疑いがある表示について、景表法に違反するものかどうかを判断するために、消費者庁などが、表示の裏付けとなる資料の提出を事業者に求めることができるというものです。
景表法違反が疑われる事業者には、消費者庁や都道府県による調査が入ることは、既に見たとおりです。
ここではあくまでも疑いの段階であるため、その表示が本当に不当表示に当たるのか、また、提供される景品が過大なものといえるか、などについて調査が行われます。
この中でも、不当表示(優良誤認表示)を疑われる事業者は、優良誤認表示にあたるかどうかの判断のために、必要に応じて、期限を決めてその裏付けとなる客観的・合理的根拠を示す資料の提出を求められます。
資料の提出は、消費者庁から提出を求められてから15日が経過するまでとなっていますが、この期限までに資料を提出しなかった場合、事業者の広告は優良誤認表示にあたるとみなされます。
このように、不実証広告規制は、事業者にとって措置命令を受ける前に与えられる「弁明の機会」です。問題とされている表示に至った根拠などは、この機会で説明をすることができますので、きちんとした根拠があれば、そのことを示す資料を提出するようにしましょう。
(2)不服申し立て
前の項目でご紹介した通り、措置命令には「法令に基づく教示」として、不服申し立ての方法が教示されます。
具体的には、措置命令に不服がある事業者は、処分のあった翌日から起算して3ケ月以内に、書面で消費者庁長官宛てに審査請求をすることができます。
審査請求は、裁判ではないため、手続き費用もかからないほか、裁判よりも短い期間で結論を出してもらうことが可能です。
(3)取消訴訟を起こす
措置命令に不服がある事業者は、措置命令を対象とした取消訴訟を起こすことも可能です。取消訴訟は、措置命令処分または審査請求の裁決があったことを知った日から6ケ月以内、もしくは処分または裁決があった日から1年以内に提起する必要があります。
3 措置命令に違反した場合の罰則は?
措置命令に違反した場合、違反の内容に応じて罰則が設けられています。
まずは、措置命令に従わずに、措置命令違反となった場合、
- 最大2年の懲役
- 最大300万円の罰金
のいずれか、または両方を科される可能性があります。
また、法人の場合は、従業員とは別に法人に対して、
- 最大3億円の罰金
が科される可能性があります。
さらに、措置命令違反があった場合において、違反行為を知りながら、その是正に必要な措置をとらなかった代表者、役員に対しても、
- 最大300万円の罰金
が科される可能性があります。
このほか、措置命令を出すために必要な範囲で提出を求められる報告や帳簿書類などを提出しなかった場合、また、虚偽の報告などをした場合、
- 最大1年の懲役
- 最大300万円の罰金
のいずれかを科される可能性があります。
なお、優良誤認表示、有利誤認表示にあたる行為をした事業者には、これらの罰則に加えて、課徴金の納付を命じられる場合があります。
最後に、この「課徴金制度」について、簡単に見てみましょう。
4 課徴金とは

措置命令とは別に、景表法上のペナルティーとして「課徴金制度」があります。
「課徴金」は、刑罰ではなく、行政処分の一環として納付を命じられるものです。
不当表示にあたるパッケージや広告で得た利益は、違法な手段で得た利益となるため、課徴金はこれを徴収する目的で導入されたものです。
基本的には、不当表示をしていた期間に販売された商品やサービスの売上高の3%が課徴金対象金額になります。
課徴金制度は、措置命令とは別の趣旨をもつ制度であるため、事業者には措置命令と課徴金納付命令の両方が下される可能性もあるということになります。「措置命令に従わなかったので課徴金を支払う」という関係ではありません。
※課徴金については「景表法にいう課徴金制度とは?計算方法や4つの対処法を弁護士が解説」で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。
5 小括
景表法上の措置命令は、主に、不当表示をした事業者に対して発出されることが多い処分です。
消費者庁のwebサイトでは、毎月のように、措置命令を受けた事例が公表されており、その件数からも、少なくないことがわかります。
事業者にとって大切なことは、措置命令が出された場合でも、適切な対処をすることであり、それによって消費者からの信頼を回復することも可能です。
そのためには、再発防止や被害回復に向けた迅速な処理、社内での徹底などを実践することがより大切になるでしょう。
6 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下の通りです。
- 「措置命令」とは、「不当表示」や「過当な景品提供」を行った事業者に対し、消費者庁や都道府県が下す処分のひとつで、消費者への周知や社内での再発防止策の策定などを求められる
- 措置命令を出そうとする場合、事業者には弁明の機会が与えられ、不当表示の根拠となった客観的・合理的な資料の提出を求められることがある
- 措置命令に不服がある事業者は、①審査請求、②取消訴訟により不服申し立てを行うことができる
- 表示規制に違反すると、措置命令とは別に、課徴金を課されることがある
- 措置命令に違反した場合、①最大2年の懲役、②最大300万円の罰金のいずれか、もしくは両方を科される可能性がある
 
      



 
   
   
   
  