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「二重価格表示」とは?押さえておくべき5つのルールを弁護士が解説

価格

はじめに

「通常価格〇〇円の品、販売価格△△円」

というように、販売価格とは別の価格を併記する二重価格表示は、販売価格を安く見せるためによく使われる方法です。

実は、このような二重価格表示にルールがあることをご存じでしょうか。

広告や店頭のPOPでは、消費者に少しでも安く魅力的に見せようとさまざまな工夫が凝らされていますが、ルールを理解せずに二重価格表示を行うと、それが不当表示にあたり、ペナルティを科される可能性もあります。

今回は、二重価格表示とは何か、どのような二重価格表示が不当表示にあたるのかなどについて、弁護士が詳しく解説します。

1 二重価格表示とは

二重価格表示

二重価格表示」とは、販売価格とともに別の価格(比較対照価格)を表示することをいいます。

たとえば、「当店通常価格3000円の品を半額で1500円」という表示がある場合、販売価格(1500円)と比較対照価格(3000円)が一緒に表示されているため、この表示は二重価格表示にあたります。

このように、比較対照価格を販売価格と併記して表示すること自体は問題ありません。

ですが、比較対照価格が事実と異なっていたり、不合理な価格になっていると、販売価格が実際よりも安くなっていると消費者に誤認させるおそれがあるため、このような二重価格表示は不当表示として景表法で禁止されています。

たとえば、以下のような二重価格表示は不当表示となる可能性があります。

  • 同一ではない商品の価格を比較対照価格として表示する場合
  • 比較対照価格について実際と異なる表示やあいまいな表示をする場合

具体的には、品質や性能が異なる商品の価格を比較対照価格として表示することや、実際にその価格で販売されたことがないにもかかわらず、その価格を比較対照価格として表示するような場合です。

このように、価格を2つ併記して表示する場合は、「不当表示」にならないように気を付ける必要があります。

比較対照価格として併記できるのは、次のような価格です。

  1. 同一の商品(品質、性能など)の価格
  2. 同一の商圏にあり、一般的な消費者が代わりに購入できる店舗での価格
  3. 実際に一定期間販売した事実があるなどの根拠にもとづいた価格

以上のように、二重価格表示をすることが直ちに不当表示にあたるということではありませんが、併記して表示する比較対照価格によっては、不当表示にあたる可能性があるため注意が必要です。

また、以上の規制は、消費者に対して商品・サービスを提供するすべての事業者が対象となり、また、その表示媒体も商品に貼られている値札から、店頭表示、チラシ、テレビやインターネットの広告まで、広く対象となります。

そのため、事業者は、二重価格表示を含む景表法上の規制について社内に周知し、コンプライアンスの徹底、倫理意識の向上を図る必要があります。

次の項目からは、併記される比較対照価格について、いくつかのケースを見ていきたいと思います。

2 過去の販売価格を併記する場合

過去

期間限定のセールなどで「当店通常価格」「セール前価格」などと記載して過去の販売価格を比較対照価格として併記する場合があります。

このように、過去の販売価格を比較対照価格として併記する場合、

  1. 同一の商品であること
  2. 最近相当期間にわたって販売されていた価格であること

という2つの条件を満たしていなければなりません。

(1)同一の商品であること

消費者が商品などを適切に比較できるといえるためには、比較対照価格として併記されている商品が品質や性能において同じ商品でなければなりません。

(2)最近相当期間にわたって販売されていた価格であること

「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえるかどうかは、以下の3つの基準により判断されます。

  1. セール開始時点からさかのぼる8週間(商品が発売されていた期間が8週間未満のときは、その期間)において、比較対照価格で販売されていた期間がその商品が販売されていた期間の半分を超える
  2.         +

  3. 比較対照価格で販売されていた期間が通算して2週間以上ある
  4.         or

  5. 比較対照価格で販売された最後の日から2週間を経過していない

このように、①+②、もしくは、①+③を満たしていれば、比較対照価格は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であると考えられます。

反対に、以下のような二重価格表示は、比較対照価格が適切でないため、不当表示にあたる可能性があります。

    NG例①:実際に販売されていた価格よりも高い価格を比較対照価格とするとき

    「スーツ 当店通常価格60,000円の品 30,000円」と表示しているが、実際には通常40,000円で販売している

このケースでは、実際に販売されていた価格よりも高い価格(60,000円)を、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であると消費者が誤認するおそれがあります。

    NG例②:ごく短期間販売していた価格を比較対照価格とするとき

    「扇風機 当店通常価格13,000円を8,500円」と表示しながら、実際には過去の販売期間(8週間)のうち、比較対照価格で販売されていたのは当初2週間だけで、その後の6週間はこれより低い価格で販売されていた

このケースでは、消費者において、ごく短期間販売していた価格(13,000円)を、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であると誤認するおそれがあります。

3 将来の販売価格を併記する場合

将来

将来の販売価格を比較対照価格として併記していながら、その販売価格に根拠がなければ、消費者に対して販売価格が安いと誤認させるおそれがあります。

たとえば、実際に販売する予定のない価格や、ごく短期間での販売を予定している価格を比較対照価格として併記すると、不当表示にあたる可能性があります。

将来予定している価格の設定は、将来的なニーズの見通しなど、不確定な要素によって変動するものです。

そのため、諸要素に関わらず将来の販売価格で販売することが確実であるような場合を除き、将来の販売価格を比較対照価格として二重価格表示をすることは控えるべきだと考えられます。

たとえば、以下のような二重価格表示は、不当表示にあたる可能性があります。

    NG例:「紳士服 お試し価格5,000円 〇月〇日以降は7,000円になります」と表示しながら、実際には同じ商品を〇月〇日以降も5,000円で販売している

この場合、〇月〇日以降も販売価格を引き上げる予定がないにもかかわらず、7,000円という将来の販売価格を比較対照価格として併記しているため、消費者に対し、お試し価格である5,000円が安いとの誤認を与えるおそれがあります。

4 希望小売価格を併記する場合

希望

製造業者、卸売業者などの小売業者以外の者が、商品の「希望小売価格」を設定している場合、小売業者が希望小売価格を比較対照価格として併記するケースがあります。

たとえば、「メーカー希望価格〇〇円 販売価格△△円」といった併記が挙げられます。

通常、希望小売価格は、あらかじめカタログや商品本体に印字されるため、希望小売価格が表示されていれば、消費者は、小売業者の販売価格が安いかどうかを判断する際の参考になります。

もっとも、製造業者などによって設定された価格が公表されていない場合に、その価格を希望小売価格として比較対照価格に用いると、消費者において、販売価格が安いとの誤認を生じるおそれがあり、不当表示にあたる可能性があります。

具体的には、実際に設定された希望小売価格よりも高い価格を比較対照価格に用いることや、希望小売価格が設定されていないにもかかわらず、任意で決めた価格を希望小売価格として比較対照価格に用いることなどが挙げられます。

たとえば、以下のような二重価格表示は、不当表示にあたる可能性があります。

    NG例:「ドラム式洗濯機 メーカー希望小売価格80,000円の品 60,000円」と表示しながら、実際にはメーカーが設定した希望小売価格は70,000円である

この場合、実際にメーカーが設定した希望小売価格は70,000円であるにもかかわらず、それよりも高い80,000円がメーカー希望小売価格として表示されています。

そのため、消費者は、メーカー希望小売価格として表示されている80,000円を参考にして、販売価格が安いと誤認するおそれがあります。

5 競合他社の販売価格を併記する場合

ライバル

自社の販売価格の安さを強調するために、競合他社の販売価格を比較対照価格として表示することがあります。

この場合、消費者は、同じ商品を販売している他社の最近時における販売価格と比較していずれか安い方を購入することが多いといえます。

そのため、競合他社の販売価格を比較対照価格として併記する場合において、その価格が最近時における販売価格といえない場合には、消費者に対し販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示にあたる可能性があります。

具体的には、競合他社の最近時の販売価格よりも高い価格を比較対照価格として用いたり、異なる商圏で消費者が購入する機会のない店舗の販売価格を比較対照価格として用いたりすると、不当表示にあたる可能性があります。

たとえば、以下のような二重価格表示は、不当表示にあたる可能性があります。

    NG例①
    A時計店が、「〇〇製時計 B時計店128,000円の品 100,000円」と表示しているが、実際には、B時計店では90,000円で販売されていた

この場合、A時計店は、競合他社であるB時計店の最近時の販売価格である90,000円よりも高い価格をB時計店の販売価格として比較対照価格に用いています。

そのため、消費者は、比較対照価格として用いた「B時計店128,000円」とA時計店の販売価格である100,000円を比較して、A時計店の販売価格が安いと誤認するおそれがあります。

    NG例②
    A店(広島県)が、「革ベルト B店(沖縄店)10,000円の品 6,800円」と表示しているが、実際には、この比較対照価格は、地域の一般消費者が購入する機会のないB店(沖縄店)における販売価格であった

この場合、A店とB店とでは商圏が異なっており、普段A店で商品などを購入している消費者が購入する機会のないB店の販売価格が比較対照価格として用いられています。

そのため、消費者は、比較対照価格として用いたB店(沖縄店)の販売価格10.000円とA店(広島県)の販売価格6,800円を比較して、A店(広島県)の販売価格が安いと誤認するおそれがあります。

6 他の顧客向けの条件に基づいた販売価格を併記する場合

条件

同一の商品であっても、顧客の条件購入時期に応じて販売価格が異なる場合に、特定の顧客向けの販売価格について、その安さを強調する目的で、他の顧客向けの販売価格を比較対照価格とするケースがあります。

この場合、顧客は、それぞれの販売価格が適用される顧客の条件やその販売価格などを比較したうえで、商品などを選ぶことになります。

そのため、販売価格や適用される顧客の条件などについて、実際と異なる表示やあいまいな表示をすると、消費者において販売価格が安いとの誤認を生じ、不当表示になるおそれがあります。

具体的には、会員制の販売方法において非会員価格を比較対照価格として用いる場合や需要がピークにあるときの販売価格を比較対照価格とした場合、不当表示にあたる可能性があります。

たとえば、以下のような二重価格表示は、不当表示にあたる可能性があります。

    NG例①
    「ダイヤモンドピアス 非会員価格70,000円 会員価格44,980円」と表示しているが、実際には購入を希望する消費者は誰でも簡単に会員になることができて、非会員価格で販売されることがほとんどない

この場合、購入者のほとんどが会員になることができるため、非会員価格で購入する者はほとんどいないといえます。

にもかかわらず、その価格で購入する者がほとんどいないといえる非会員価格を比較対照価格として用いているため、購入者において会員価格が安いとの誤認を生じ、不当表示になるおそれがあります。

    NG例②
    「宿泊料金の標準料金1人当たり30,000円のところ〇月〇日~〇日に限り10,000円」と表示しているが、実際には、この比較対照価格は、宿泊客が多い特定の期間に限定的に適用されている価格である

この場合、オフ時の宿泊料金を表示する際に、ピーク時の宿泊料金を「標準料金」として表示しているため、消費者においてオフ時の宿泊料金が安いとの誤認を生じ、不当表示にあたる可能性があります。

このように、比較対照価格を併記して販売価格を表示する場合には、どのような価格を比較対照価格とするかで、注意すべきポイントが異なります。

事業者は、消費者に対して誤認を与えないように、これらのルールにしたがって比較対照価格を表示するよう注意する必要があります。

7 二重価格表示の2つの事例

事例

ここで、実際にあった2つの二重価格表示の事例について見てみましょう。

(1)楽天の事例

    【事例】
    楽天市場の出店者が、一部の楽天社員からの提案により、セール商品の元値を不当につり上げた価格を比較対照価格として併記し、販売価格を大きく割り引いているように見せていた

この問題に関し、独自に調査を実施した楽天は、

  • 不当な二重価格表示の提案を行った事実は確認できたが、組織的に行われたものではない
  • 提案日時、提案の対象となった商品の特定などは不可能で、売上への影響を確認することが困難である

などとして、その調査結果と再発防止策を消費者庁に報告しました。

これに対し、消費者庁は、実態のない架空の価格を比較対照価格とした二重価格表示は、不当表示にあたるおそれがあることを指摘し、楽天に対して下記の「要請」を行い、その内容を公表しました。

  • 楽天が提出した再発防止策(営業倫理委員会の設置、監査体制の強化)を着実に実施すること
  • 調査結果について社内の周知徹底を図ること
  • 社内で景品表示法についての理解を深めてその遵守を徹底すること

この事例は、事業者だけでなく、ECサイト運営者が責任を負う可能性を示唆したものといえます。

(2)アマゾンの事例

    【事例】
    アマゾンが、事務用品大手のプラスから仕入れて直販していた「クリアホルダー」について、「参考価格9720円(90%オフ)」などと記載して、実際の販売価格と比較して安いかのように表示していた

この事例において、アマゾンが比較対照価格として用いた「参考価格」は製造業者が社内の商品管理上定めていた価格であって、消費者への提示を目的としていないものでした。

消費者庁は、これを不当な二重価格表示にあたるとして、アマゾンに対して措置命令を出しました。

ご存じのとおり、アマゾンはインターネット上の巨大なショッピングモールです。アマゾンの仕入れ先の事業者(本件の場合はプラス)は、アマゾンが提供するシステムの管理画面を通じて、自ら商品を登録し、アマゾンがその商品を販売することになります。

本件も、この「参考価格」を登録したのは、アマゾンがクリアホルダーなどを仕入れていたプラスでした。

アマゾン側は、「プラットフォーマーとして取引の場を提供しているに過ぎず、参考価格は製造者であるプラスが表示したものである」と主張して、消費者庁に対し、処分の取り消しを求める裁判を起こしました。

ですが、裁判所はアマゾンの請求を棄却して、消費者庁による処分を正当なものと認めました。

これらの事例からいえることは、事業者が取引の場を提供しているに過ぎないプラットフォーマーであっても、出店者による不当な二重価格表示について責任を負う可能性があるということです。

そのため、プラットフォームを運営する事業者は、出店者の価格の表示について監督する体制を作り、また、自社内部や出店者に対して景表法上の規制を周知し、出店者が不当な二重価格表示をしないようにする必要があります。

8 不当表示(二重価格表示)に対するペナルティ

ペナルティ

二重価格表示が不当表示にあたる場合、事業者は、消費者庁から、違反行為の停止や再発を防止するために必要な事項などを命ずる旨の「措置命令」を受ける可能性があります。

措置命令を受けたにもかかわらず、命令に従わなかった場合、

  • 最大2年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のいずれか、または、両方を科される可能性があります。

また、法人である場合は、違反行為者とは別に、法人に対しても、

  • 最大3億円の罰金

が科される可能性があります。

さらに、不当表示にあたる行為をした場合には、措置命令とは別に、原則として「課徴金納付命令」を受けることになります。

課徴金納付命令」とは、事業者が不当表示によって得た売上の一部を国に納付させるための命令のことをいいます。

課徴金の額は、商品・サービスについて、不当表示により得た商品の売上額に3%(最長で3年分)を乗じることによって算出されます。

もっとも、算出された課徴金の額が150万円未満(売上額が5000万円未満)のときは、課徴金は課されません。

消費者庁から、「措置命令」や「課徴金納付命令」を受けた場合、事業者は、消費者庁のWebサイトなどにおいて、これらの命令の内容(社名、違反の内容、課徴金の額など)を公表されることになるため、ブランド力や信用を落とすことにも繋がります。

9 小括

小括

「二重価格表示」は、消費者が合理的に商品やサービスを選ぶために参考となる情報の一つです。

もっとも、「二重価格表示」が不適切なものだと、それが消費者に誤認を与え、不当表示にあたる可能性があり、その場合には、ペナルティを受ける可能性もあります。

比較対照価格としてどのような価格を用いるかによって、注意すべきポイントも変わってきます。

そのため、二重価格表示をする場合には、不当表示とならないよう、これらのポイントをきちんと押さえたうえで、適切な比較対照価格を表示することが大切です。

10 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りです。

  • 「二重価格表示」とは、販売価格とは別に比較対照価格を併記することをいう
  • 比較対照価格が事実と異なっていたり、あいまいになっていることにより、消費者に誤認を与えるおそれのある二重価格表示は不当表示にあたる可能性がある
  • 過去の販売価格を併記する場合は、同一の商品について、最近時相当期間にわたって販売されていた価格を用いなければならない
  • 将来の販売予定価格を併記する場合において、その価格で販売することが確実でない場合は不当表示にあたる可能性がある
  • 希望小売価格を併記する場合は、その価格が実際に製造業者などが設定・公表した価格かどうかを注意する必要がある
  • 競合の販売価格を併記する場合は、その価格が、同一の商品のもので、代わりに購入できる他店の最近の販売価格であるかどうかを注意する必要がある
  • 他の顧客向けの条件に基づいた販売価格を併記する場合は、それぞれの価格が適用される条件について、事実と異なる表示やあいまいな表示をすると不当表示にあたる可能性がある
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