ステマは違法?違法となるケースと2つの注意点を弁護士が解説!

はじめに

フジテレビに所属する女性アナ数名のステマ問題が世を騒がせています。

報道によれば、美容室やネイルサロンのインスタグラムに女性アナ数名の写真を掲載することを条件に、料金を無料にしていたということです。

ところで、そもそも「ステマ」がどういったことを意味するのか、違法なことなのか、などをご存知でない方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、「ステマ」について、違法性の有無にも触れながら、わかりやすく解説します。

1 「ステマ」とは

ステマ(ステルスマーケティング)」とは、消費者に宣伝であることを気付かれないようにする宣伝行為のことをいいます。

一般的に、ステマを行う方法は2つあります。

一つは、ユーザーなどを装った事業者が、自社の商品やサービスについて、高く評価する内容を記載する方法です(なりすまし型)。
もう一つは、芸能人やインフルエンサーといった著名人を使って、高い評価で紹介してもらう方法です(利益提供型)。

ステマは、記載・掲載される評価内容が実際のものと合致していないこともあることから、いわゆる「サクラ行為」にも近い広告手法であるといえます。
この場合、ユーザーは、虚偽の評価や情報を基に、商品やサービスに関心をもつことになるのです。

以前に起きたペニーオークションの件は、ステマ問題としても有名な事例です。
同事例では、本来ならありえないような低価格で高額商品を落札したように見せかけていたことが問題となりました。

この事例では、その悪質性から詐欺事件にまで発展しました。

2 ステマは違法?

ステマは、通常の広告よりも低コストで高い効果が見込めるというメリットがありますが、その反面、多くのデメリットもあります。

ステマは、いわゆるサクラ行為に近い広告手法であり、消費者を騙すという側面もあります。
そのため、ステマが発覚した場合、その事業者は批判を浴び、自社ブランドにキズを付けてしまう可能性があります。

その意味で、ステマはハイリスク・ローリターンな広告手法といっていいでしょう。

このように、決してイメージの良くないステマですが、現状、ステマを直接規制する法律は存在しません。
そのため、ステマを行ったからといって、その事業者が直ちに何らかの法的責任を負うということは原則としてありません。

ですが、その態様によっては、「景品表示法(景表法)」という法律に違反する可能性があるのです。

3 景表法に違反するケース

景品表示法(景表法)」とは、商品やサービスを広告する際のルールを定めた法律です。

景表法は、商品やサービスを広告する場合の表示について、以下の2つを禁止しています。

  1. 優良誤認表示
  2. 有利誤認表示

(1)優良誤認表示

優良誤認表示」とは、商品やサービスの性能・品質などを実際のものより優良に見せかける表示のことをいいます。

たとえば、実際はブランド牛ではない国産の牛肉を、国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示した場合、優良誤認表示にあたります。

(2)有利誤認表示

有利誤認表示」とは、価格をはじめとした取引条件について、実際よりも有利なものに見せかける表示のことをいいます。

たとえば、消費者向けに販売する商品について、基本価格を記載することなく「本日に限り半額」と表示したものが、実際は半額とは認められない価格で商品を販売していた場合は、有利誤認表示にあたります。


この点、ステマとの関係で問題となりうるのは、「優良誤認表示」の規制です。

ステマにおいても、消費者になりすました事業者や事業者から依頼を受けた著名人などが、事業者の商品やサービスに関して、実際のものより著しく優良であるように見せかけた広告を行った場合には、「優良誤認表示」にあたり、違法となる可能性があります。

一方で、日弁連は2017年、ステマ問題に関して注目すべき意見書を提出しています。

同意見書によれば、広告としての表示が優良誤認表示もしくは有利誤認表示に当たらないとしても、その表示があたかも中立的な第三者の意見であるかのように誤認されるのであれば、消費者の合理的な選択が阻害されてしまうおそれがあるとされています。

つまり、ステマが優良誤認表示もしくは有利誤認表示との関係では問題とならない場合であっても、それだけでは適正な広告といえないケースも存在するということです。

そのため、ステマを含め広告を打ち出す場合は、消費者の視点に立ったうえで、商品やサービスを合理的に選択できるといえるかを広告表示と照らし合わせて確認することが大切です。


※ステマで問題となりうる刑事上の責任については、「ステマの何が問題なの?ステマの法規制8つのポイントを弁護士が解説」をご覧ください。

4 広告を打ち出す際の注意点

事業者は、広告を打ち出す場合には、ステマや景表法との関係で以下の点に注意する必要があります。

(1)広告である旨を明示する

まずは、消費者がわかるように、広告である旨を明示することが必要です。

これは、芸能人やインフルエンサーといった著名人にPRを依頼する場合であっても同じです。

著名人にPRを依頼する場合には、責任の所在をハッキリとさせておくという意味合いで、広告主が誰であるかを明示しておくことも大切なポイントです。

そうすることで、ステマと判断されることはなくなります。

(2)事実と異なる情報を表示しない

商品やサービスの広告を打ち出す場合には、その性能や品質などについて、事実と異なる情報を表示しないよう、注意する必要があります。

先に見たように、消費者目線で商品やサービスを合理的に選択できるかという観点から、広告内容を検討することが大切です。

5 まとめ

今回のフジテレビ女性アナに関する一件については、インスタグラムに写真を掲載した行為が景表法に違反しているとはいえず、また、ステマにあたるかどうかも微妙だとされています。

とはいえ、ステマにあたる広告を打ち出してしまうと、直接ステマを規制する法律は現状において存在しないものの、事実上の不利益を被る可能性が高いです。

そうならないためにも、ステマや景表法上の規制に注意しながら、適切に広告を打ち出すことが大切です。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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