景表法に違反した場合の罰則と行政処分を弁護士が3分で解説!

はじめに

商品やサービスを提供する事業者であれば、「景品表示法(景表法)」という法律を知っている方は多いでしょう。

多くの事業者は、効果的な広告を打ち出すなどして、自社の商品やサービスを積極的にアピールします。このときに、気を付けなければならないのが「景表法」です。

景表法は、広告に係る表示などを規制する法律です。
そのため、事業者は景表法を遵守する形で広告を打ち出す必要があります。
とはいえ、気が付かないうちに景表法に違反していたということもあるかもしれません。
この場合、事業者にはどのような罰則等が科されることになるのでしょうか。

今回は、景表法の表示規制に違反した場合の罰則等を弁護士が解説します。

1 景表法が規制する「不当表示」とは

景表法が規制する「不当表示」とは、以下の3つの表示のことをいいます。

  1. 優良誤認表示
  2. 有利誤認表示
  3. 一般消費者に誤認されるおそれのある表示で、内閣総理大臣が指定する表示

(1)優良誤認表示

優良誤認表示」とは、商品やサービスの品質、内容などについて、実際のものよりも著しく優良なものであると表示したり、事実に反して競合他社の商品・サービスよりも著しく優良であると表示したりすることをいいます。

たとえば、日本料理店において、「松阪牛すきやきコース」といったように、あたかも松阪牛を使用しているかのような表示をしていたものが、実際は松阪牛ではない和牛肉を使用していた場合、同店による広告表示は「優良誤認表示」にあたります。

(2)有利誤認表示

有利誤認表示」とは、商品やサービスの取引条件(価格など)について、実際よりも著しく有利であると表示したり、競合他社の同種もしくは類似する商品・サービスよりも著しく有利であると表示したりすることをいいます。

たとえば、通常時の販売価格の半額で販売するかのように表示していたにもかかわらず、実際は、いったん引き上げた通常時の販売価格を半額にしたものであって、通常時の販売価格の半額ではなかった場合、このような広告表示は「有利誤認表示」にあたります。

(3)一般消費者に誤認されるおそれのある表示で、内閣総理大臣が指定する表示

一般消費者に誤認されるおそれがあるとして、内閣総理大臣が指定する表示には、たとえば、以下のようなものがあります。

  • 無果汁の清涼飲料水等に関する不当表示
  • 原産国に関する不当表示
  • 消費者信用の融資に関する不当表示
  • 不動産のおとり広告に関する表示
  • 有料老人ホームに関する不当表示



※「不当表示」について詳しく知りたい方は、「「誇大広告」とは?押さえておくべき4つの法律と罰則を分野別に解説」をご覧ください。

2 景表法に違反した場合のペナルティ

景表法に違反した場合、事業者は以下のように2つの種類のペナルティを受ける可能性があります。

(1)刑事罰

景表法に違反した場合、そのことをもって直ちに刑事罰が科されるわけではありません。

すべてのケースにおいてあてはまるわけではありませんが、景表法に違反すると、まずは消費者庁から措置命令を受けることになります。
ここでいう「措置命令」とは、不当表示をした事業者に対し、消費者庁や都道府県により発令されるもので、消費者に生じた誤認の排除や再発防止のために必要な事項を命じるものです。
この段階で措置命令に従えば、事業者が刑事罰を科されることはありません。

ですが、措置命令に従わなかった場合、事業者は、

  • 最大2年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のいずれか、または両方を科される可能性があります。

また、事業者が法人である場合は、違反した行為者とは別に事業者に対して、最大3億円の罰金が科される可能性があります。

さらに、措置命令違反があった場合において、違反の計画を知っていながらその防止に必要な措置を講じなかった役員や違反行為を知りながらその是正に必要な措置を講じなかった役員は、最大300万円の罰金を科される可能性があります。


※「措置命令」について詳しく知りたい方は、「景表法にいう「措置命令」とは?3つの対処法や罰則を弁護士が解説!」をご覧ください。

(2)行政処分

不当表示を行い景表法に違反した場合、事業者は消費者庁より課徴金を課されることになります。
ここでいう「課徴金」とは、事業者が不当表示により得た利益を没収するためのものです。

納付を命じられる具体的な課徴金の額は、以下の「課徴金対象期間」に行った取引で得た売上高の3%に相当する額となります。

  • 不当表示を開始した日から停止した日までの期間
  •       +

  • 不当表示停止後最後に商品・サービスを提供した日までの期間


課徴金の対象期間は、最後の取引から遡って最長で3年となっているため、この期間を超えて納付を命じられることはありません。

また、事業者が自主的に顧客に対して返金を行った場合は、以下のように、課徴金の額が減額され、または免除される可能性があります。

    【返金総額が課徴金の額を下回る場合】

     課徴金の額ー返金総額=納付すべき課徴金の額

    【返金総額が課徴金の額を上回る場合】

     課徴金は免除


さらに、事業者が課徴金対象行為にあたる事実を内閣総理大臣に報告した場合、課徴金の額が2分の1に減額されます。

もっとも、その報告が、課徴金対象行為について調査が入ったことにより、課徴金納付命令を受けることが予測される段階に至ってなされた場合は、減額されないこととされています。


※「課徴金制度」について詳しく知りたい方は、「景表法にいう課徴金制度とは?計算方法や4つの対処法を弁護士が解説」をご覧ください。

3 まとめ

事業者にとって、景表法に違反した場合のペナルティは決して軽いものではありません。
刑事罰に加え、課徴金の納付を命じられる可能性もあり、多大な経済的損失を受けることになります。

また、一般消費者の信用を失い、事業の継続に支障を来すおそれもあるため、十分に注意する必要があります。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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