薬機法改正(2021年8月一部施行)の3つのポイントを弁護士が解説!

2021.12.10

はじめに

2021年8月1日より、改正薬機法の一部が施行されます。

今回の改正では、「許可業者等における法令遵守体制の整備」が一つのポイントとなっています。施行まで2ヶ月を切っているなか、関係する事業者はいまいちど自社の体制を見直しておくことをおすすめします。

今回は、許可業者に求められる法令遵守体制について、弁護士がわかりやすく解説します。

1 薬機法改正のポイント|許可業者に求められる法令遵守体制

薬機法改正のポイントは、以下の3点です。

  1. ルール作り
  2. 制度設計
  3. 監督体制の整備


許可業者は、業務を適正に遂行するという観点から、必要とされる体制整備を行うことが義務付けられます。

2 ルール作り

法令を遵守して業務を適正に行うためには、役員や従業員が遵守すべきルールを内規などで明確に定め、社内に周知することが必要です。

遵守すべき「ルール」として定めなければならない事項は、主に以下の2点です。

  • 意思決定の仕組み
  • 意思決定に基づき適正に業務を遂行するための仕組み


適正に業務を遂行するための意思決定について、適切な仕組みを構築する必要があります。

具体的には、意思決定を行う権限をもつ者、その権限の範囲や意思決定に用いられる判断基準などを定める必要があります。
また、意思決定に至るまでの手続きなどを定めることも必要です。

さらに、意思決定の仕組みを作るだけでなく、それが実際の業務に適正に反映されるような仕組みを作ることも必要です。

具体的には、業務において指揮命令権限をもつ者、その権限の範囲や指揮命令の方法、遂行する業務の手順などを定める必要があります。

3 制度設計

許可業者は、作ったルールを運用するための制度を設計する必要があります。

具体的には、以下の3点が求められます。

  1. 教育訓練と評価制度
  2. 総括製造販売責任者の選任
  3. 業務に責任をもつ役員の選任

(1)教育訓練と評価制度

作られたルールを適切に運用するために、役員や従業員に研修を受けさせたり、法令の内容や適用などについて相談できる窓口などを設置したりすることが考えられます。

また、役員や従業員における法令・内規の理解度、その遵守状況などを対象とした評価制度を設けることも重要だとされています。
そうすることで、役員などにおける法令遵守のインセンティブを高めることが可能になります。

(2)統括製造販売責任者の選任等

許可業者は、業務を適正に遂行できる能力や経験を有する者を総括製造販売責任者として選任しなければなりません。
その際には、総括製造販売責任者が有する権限の範囲を明確に定めたうえで、社内に周知することが必要です。

また、選任された総括製造販売責任者は、業務上必要があるときは、製造販売業者に対して意見を申述しなければなりません。
そのため、有効に意見申述を行うことができるような体制を構築することも必要になります。

(3)業務に責任をもつ役員の選任

製造販売業者は、薬事に関する法令遵守について責任をもつ役員を選任しなければなりません。
そのうえで、同役員の氏名を届け出る必要があります。

4 監督体制の整備

許可業者は、業務が適正に行われているかどうかをきちんと監督できる体制を整備する必要があります。

具体的には、以下の2点が求められます。

  1. 役員や従業員を監督する体制
  2. 業務記録の作成・保存等

(1)役員や従業員を監督する体制

適正に業務が行われるように、役員等による意思決定や業務遂行の状況を正確に把握し、必要に応じて改善のための措置を講じることができるような体制を構築する必要があります。

特に、製造された医薬品等が承認・認証した内容と異なっていないか、医薬品に関する副作用等の情報がきちんと提供されているかといったことは、直接人の身体・生命に関わるため、十分に監督する必要があります。

具体的にどのような体制をとるかは、事業規模や業務内容等に照らし検討する必要がありますが、たとえば、以下のような体制を構築することが考えられます。

①内部監査制度の構築

業務を行う部門とは別に、独立した内部監査部門を設置することが考えられます。

具体的には、業務における法令遵守の状況や法令遵守に伴う問題点などを精査し、必要に応じて役員等に報告を行うことができるような体制を構築することが考えられます。

②内部通報制度の構築

内部通報制度」とは、企業内外の者による申告に基づき、法令・規程違反などの問題を調査・対応するための制度です。

内部通報制度を構築する場合 通報窓口の設置と運用方針の策定、通報によって取得した個人情報の取り扱いや通報者への対応方法などを整備することが必要です。

(2)業務記録の作成・保存等

役員等による意思決定や業務そのものが適正に行われたかどうかを把握するために、業務記録を作成し保存しておくことが考えられます。

業務記録を作成することにより、法令等に違反する行為があった場合に、事実関係を迅速に把握し、原因を分析したり再発防止のための対策を講じたりすることが可能になります。

その際には、業務記録の作成・保存等に関するルールを内規で定めるだけでなく、記録が改変されないよう、適切な情報セキュリティ対策を講じることも必要になってきます。

5 まとめ

許可業者等は、人の身体・生命に害を及ぼさないよう、適正に業務を遂行すべき責務を負っています。
責務を十分に果たすためには、適正に業務を遂行できるよう、法令遵守体制を整備することが何よりも大切です。

現状の体制をいまいちど見直すとともに、必要に応じて体制整備をすることが求められます。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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