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健康増進法改正で喫煙所はどうなる?注意すべき7つのポイントを解説

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はじめに

2020年4月から「改正健康増進法」が施行され、屋内の公共空間では原則禁煙となりました。

社会問題にもなっている受動喫煙などを踏まえ、今回の改正に至ったわけですが、これにより、施設などの屋内で例外的に喫煙室を設置する際のルールがいくつかにわたり設けられました。

喫煙室を設置しようとする商業施設や飲食店などを運営する事業者は、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。

今回は、改正健康増進法のポイントを中心に、弁護士がわかりやすく解説していきます。

1 改正のポイント

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2020年4月1日に全面施行された改正健康増進法ですが、今回の改正のポイントは、主に以下の7点です。

  1. 屋内は原則禁煙
  2. 屋内で喫煙できる各種喫煙室の設置
  3. たばこの煙の流出防止にかかる技術的基準の設定
  4. 財政・税制支援制度の整備
  5. 喫煙室への標識の掲示義務
  6. 20歳未満の喫煙室への入室禁止
  7. 指導・命令・罰則の適用

健康増進法」は、主に、国民の健康を維持することを目的として、健康に関わるさまざまな取り決めを定めた法律です。

今回の改正は、それまでにも問題となっていた「受動喫煙」を防止することに目的があり、そのことにより、非喫煙者や子供などに健康被害が及ばなくなることが期待されています。

今回の改正により、たばこを楽しみたい喫煙者を利用客として取り込んでいた飲食店などに対しては、喫煙室を設置することを徹底することが求められます。。

次の項目から、今回の改正のポイントについて、詳しく見ていきましょう。

2 屋内は原則禁煙

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今回の改正により、多くの人が利用する施設や飲食店などの屋内は原則禁煙になります。

もっとも、一定の条件を満たすことにより、これらの施設や飲食店などにおいて、次の項目で見る各種喫煙室を設置することができます。

3 屋内で喫煙できる各種喫煙室の設置

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屋内は原則として禁煙となりますが、事業者は、一定の条件を満たすことにより、例外的に屋内で喫煙が可能となる喫煙室を設置することができます。

具体的には、事業者の分類に応じた喫煙室を以下の4つのタイプから選ぶことになります。

  1. 喫煙専用室
  2. 加熱式たばこ専用喫煙室
  3. 喫煙目的室(店)
  4. 喫煙可能室

315-3各種喫煙室の標識

これらの喫煙室には、それぞれに設置するための条件があります。

(1)喫煙専用室

第二種施設においては、喫煙専用室を設置することができます。

ここでいう「第二種施設」とは、学校や病院、行政機関の庁舎など以外の施設のことをいいます。

そのため、基本的には、一般的な事業者は喫煙専用室を設置できるということになります。喫煙専用室では喫煙のみが可能で、飲食その他のサービスなどを提供することはできません。

(2)加熱式たばこ専用喫煙室

一般的な事業者は、加熱式たばこ専用喫煙室を設置することができます。

これは、事業者が、事業の継続に支障を来すおそれがあることから、その点に配慮して認められた経過措置です。

加熱式たばこ専用喫煙室で喫煙できるのは、加熱式たばこに限られているものの、飲食などをすることが許されています。

(3)喫煙目的室(店)

喫煙そのものを目的としたサービスを提供する施設では、後に見るたばこの煙の流出防止に関する技術的基準を満たした空間にかぎり、屋内で喫煙目的室を設置することができます。喫煙目的室内では、喫煙のほか、飲食などをすることも可能です。

たとえば、シガーバーやたばこ販売店、公衆喫煙所などが挙げられます。

(4)喫煙可能室

既存の経営規模が小さい飲食店(既存特定飲食提供施設)などでは、今回の改正が事業の継続に大きく影響を及ぼす可能性があります。

そのため、このような飲食店については、経過措置として、喫煙可能室を設置することが認められています。
喫煙可能室では、喫煙のほか、飲食などをすることができます。

なお、ここでいう「既存特定飲食提供施設」にあたるためには、2020年4月1日時点で既に存在する飲食店で、資本金が5,000万円以下、客席面積が100㎡以下であることが必要です。

4 たばこの煙の流出防止にかかる技術的基準の設定置

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今回の改正には、受動喫煙を防ぐ目的がある以上、たばこの煙が喫煙室から室外に流出しないようにする必要があります。

そのため、設置する喫煙専用室などについては、以下の3つの技術的基準をすべて満たしていることが必要です。

  • 出入口で室外から室内に流入する空気の気流が0.2m毎秒以上
  • たばこの煙(蒸気含む)が室外に流出しないように、壁や天井で区切られていること
  • たばこの煙が屋外や外部に排気されていること

これまでは喫煙スペースとしてパーテーション等を設けて対応していたケースもあるかもしれませんが、今後は壁や天井で隙間なく仕切ったり、排煙設備などを設置するなどして、喫煙室から室外に煙が流出してしまうことを防止する必要があります。

また、第二種施設や喫煙目的施設を運営する事業者などが、自社ではどうしようもできない事情により、以上に挙げた技術的基準を満たすことができない場合には、喫煙場所において、たばこの煙を浄化して室外に排気するための措置を十分に講じることで、上に挙げた3つの技術的基準を満たしているのと同等に扱われる場合があります。

5 財政・税制支援制度の整備

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受動喫煙を防止するためには、設備投資などにより事業者の支出増が見込まれます。

そこで、今回の法改正により、財政や税制面での支援制度が整備されました。

ポイントは下記の2つです。

  1. 受動喫煙防止対策助成金(財政支援)
  2. 特別償却または税額控除制度(税制措置)

(1)受動喫煙防止対策助成金(財政支援)

受動喫煙防止対策助成金」は、事業者が受動喫煙を防止するために必要となる経費のうち、一定の条件を満たしている喫煙室などの設置にかかる工事費や設備費などに対して行われる助成制度のことをいいます。

対象となる事業者は「中小企業事業主」で、具体的には、下記の条件のうち、労働者数または資本金のどちらかの条件を満たしていれば申請することができます。

  • 小売業(飲食店など)⇒労働者数50人以下、資本金5000万円以下
  • サービス業(宿泊業など)⇒労働者数100人以下、資本金5000万円以下
  • 卸売業⇒労働者数100人以下、資本金1億円以下
  • その他の業種⇒労働者数300人以下、資本金3億円以下

助成対象は喫煙室や屋外喫煙所の設置、換気設備の設置に必要な経費で、助成できるのは経費の半額(上限100万円)、飲食店の場合は3分の2まで認められます。

※喫煙室などにおいて満たしていることが必要とされる条件など、詳しくは、厚生労働省の「受動喫煙防止対策助成金職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)」を参照してみてください。

(2)特別償却または税額控除制度(税制措置)

特別償却・税額控除制度」は、2021年3月31日までに、一定の条件を満たした設備などを取得した場合に、その代金について、特別償却(30%)または税額控除(7%)の適用を認めるというものです。

中小企業(資本金1億円以下の法人など)や従業員1000人以下の個人事業主(税額控除対象は資本金3000万円以下)が適用対象となっています。

税制措置は、受動喫煙を防止するための喫煙室に係る器具や備品などを対象としているため、喫煙室の設置そのものに関する費用は、適用対象とはなりません。

具体的には、器具や備品であれば、1台当たりの取得代金が30万円以上、建物附属設備であれば1台当たりの取得代金が60万円以上であれば、税制措置を受けることができます。

6 喫煙室への標識の掲示義務

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設置した各種喫煙室、各種喫煙室を設置している施設には、それぞれに指定されている標識を掲示しなければなりません。

紛らわしい標識を掲示したり、標識を汚損するなどした場合は、罰則の対象となる可能性があります。

たとえば、喫煙専用室を設置している施設の場合、喫煙専用室には、以下の標識を掲示しなければなりません。
315_-6-1喫煙専用室の標識

加えて、喫煙専用室を設置している施設にも、以下の標識を掲示する必要があります。

315_6-2喫煙専用室ありの標識

正しい標識のデータは厚生労働省のサイトからダウンロードできます。PDF版、イラストレーター(AI)版があります。

7 20歳未満の喫煙室への入室禁止

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20歳未満の人は、喫煙を目的としない場合であっても、喫煙ができるエリア内への立ち入りは全て禁止です。これは従業員にも適用されるため、飲食店の学生アルバイトなどで20歳未満の従業員を雇用している事業者の方は、気を付けなければなりません。

もしも立ち入りがあった場合は、施設の管理者が指導対象となります。

また、従業員を雇用している事業者などは、従業員の受動喫煙を防止するための措置を講ずることを努力義務として課されています。

なお、2020年4月から施行された改正民法により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられていますが、たばこや酒による人体への影響を考慮して、これらの解禁年齢は20歳のままとなっています。

※従業員の受動喫煙を防止するための措置について、詳しく知りたい方は、厚労省が出している「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」をご参照ください。

8 指導・命令・罰則の適用

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今回の改正により、違反者には「過料」などの罰則が科されることになりました。

ここでいう「過料」とは、刑事罰である罰金とは異なり、前科にはならないものの、法令違反に対して科される制裁のことをいいます。

具体的には、違反した行為者や施設の管理者などは、

  • 最大50万円の過料

を科される可能性があります。

もっとも、これらの違反を犯すと直ちに過料が科されるわけではありません。

基本的には、

  1. 都道府県知事からの指導
  2. 従わない場合は勧告・命令、事業者の公表
  3. 改善が見られない場合は罰則(過料)の適用

という流れで、最終的に改善されない事業者に対してのみ、過料が科されることになります。

罰則の詳細については以下の通りです。

315_8罰則

9 小括

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今回の健康増進法の改正は、受動喫煙を防止することを目的の一つとしています。
未成年者や高齢者、疾病を持つ人などを対象とした健康への配慮を強化し、これらの人が気兼ねなく、施設や飲食店などを利用できるようになることが期待されます。

他方で、施設や飲食店などを経営する事業者は、喫煙室を設置する際には、今回の改正を十分に理解したうえで、ルールの遵守を周知徹底することが求められます。

10 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りです。

  • 改正のポイントは①屋内は原則禁煙、②屋内で喫煙できる各種喫煙室の設置、③たばこの煙の流出防止にかかる技術的基準の設定、④財政・税制支援制度の整備、⑤喫煙室への標識の掲示義務、⑥20歳未満の喫煙室への入室禁止、⑦指導・命令・罰則の適用の7つである
  • 屋内は原則禁煙になるが、一定の条件を満たせば各種喫煙室を設置できる
  • 屋内で設置できる各種喫煙室には、①喫煙専用室、②加熱式たばこ専用喫煙室、③喫煙目的室(店)、④喫煙可能室の4つのタイプがある
  • たばこの煙が喫煙室の外に出ないよう、壁や天井などで仕切ったり、屋外に煙を排出したりする装置が必要になる
  • 各種喫煙室を設置する事業者は設備投資が必要になるため、一定の条件を満たすことにより利用できる財政・税制面の支援制度が整備された
  • 飲食店の学生アルバイトなどであっても、20歳未満の喫煙室への入室は禁止される
  • 改正健康増進法の違反者には、都道府県知事から指導がなされ、指導に従わず、勧告や命令にも従わないときは過料が科される
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