取引透明化法とは?対象事業者に課される3つの規制を弁護士が解説

はじめに
2021年4月1日、取引透明化法(プラットフォーム透明化法)の施行に伴い、日本通信販売協会(JADMA)は経産省から委託を受ける形でデジタルプラットフォーム相談窓口を設置しました。総合物販オンラインモールを利用する事業者を対象に、相談・支援などを実施することを目的としています。
また、経産省は同日、ECモールではアマゾンジャパンと楽天グループ、ヤフーの3社を取引透明化法の規制対象として指定しました。
取引透明化法とは、一体どのような法律なのでしょうか。
今回は、「取引透明化法」について、その概要をわかりやすく解説します。
1 取引透明化法とは

「取引透明化法」は、プラットフォームを通じた取引において透明性や公正性を確保するための法律です。
同法は、あくまでプラットフォーム事業者が透明性・公正性向上のための取組みを自主的に行うことを前提としながら、国が必要最小限に規制するという考えに立っています。
デジタルプラットフォームのうち、特に取引の透明性や公正性を高めることが必要とされるプラットフォーム事業者を「特定デジタルプラットフォーム提供者」として指定して、取引透明化法の規制対象としています。
たとえば、総合物販オンラインモールでは、前年度の国内流通総額が3000億円以上、アプリストアでは2000億円以上のプラットフォーム事業者が規制対象となります。
ECモールのアマゾンジャパンと楽天グループ、そして、ヤフーの3社は、いずれもこの要件を満たすものとして「特定デジタルプラットフォーマー」に指定されました。
2 特定デジタルプラットフォーマーに課される規制

特定デジタルプラットフォーマーに課される主な規制は、以下の3点です。
- 取引条件等の情報開示
- 自主的な体制整備
- 報告書の作成・提出
3 取引条件等の情報開示

事業者は、取引の透明性や公正性を向上させるために、プラットフォームの利用者(商品等の提供事業者と一般利用者)に対し、取引条件を開示することが義務付けられます。
たとえば、以下のような情報を開示する必要があります。
- プラットフォームの利用を拒絶する場合の判断基準
- 商品等に順位を付して表示する場合は、順位決定のために用いられる主要事項
- 商品等提供事業者から取得する商品等に係るデータの使用範囲
- 苦情や協議の申入れを受け付ける方法
取引条件等の情報開示を義務付けることにより、取引の相手方は不透明な部分を抱くことなく、安心して取引を行うことができます。
このほかにも、取引条件を変更する場合には、その内容や理由を事前に通知することが義務付けられます。
特定プラットフォーマーにおいて取引条件等の情報開示義務を遵守していないと認められた場合、経産省より勧告を受ける可能性があります。
この場合、勧告を受けた旨を公表されることになります。
勧告や公表によっても改善されない場合には、経産省より措置命令を受ける可能性があり、措置命令をもっても改善されない場合、措置命令違反として、
- 最大100万円の罰金
を科される可能性があります。
なお、楽天グループは特定プラットフォーマーとして指定されたことを受けて、「楽天市場」における基本的な運営事項を明確にし、楽天市場に出店する店舗を対象に情報を開示しました。上記2や3に関する事項を出店者向けに公開しています。
また、商品等提供事業者が苦情や紛争を申し立てることのできる専用窓口も新設しました。
4 自主的な体制整備

特定デジタルプラットフォーマーは、経産省が定める指針に従って、必要な措置を講じなければなりません。
ここでいう「指針」には、以下のような事項が定められています。
- プラットフォームが公正に提供されるために必要な体制等の整備
- 苦情処理・紛争解決のために必要な体制の整備
- 関係者と緊密に連絡を行うために必要な体制の整備
- 商品等提供利用者の事情を考慮するために必要な措置
このように、特定デジタルプラットフォーマーは取引の公正性を向上させるために必要とされる措置を講じなければなりません。
また、実効性を担保するために、特に必要があると認めるときは、経産省は特定デジタルプラットフォーマーに対し、必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができるようになっています。
5 報告書の作成・提出

特定デジタルプラットフォーマーは、毎年度、報告書を作成し、経済産業大臣に提出しなければなりません。
報告書には以下の事項を記載する必要があります。
- 事業概要
- 苦情処理・紛争解決に関する事項
- 情報開示の状況
- 自主的な体制整備等に関する事項
- 自己評価
経済産業大臣は、報告書等に基づき、特定プラットフォーマーの透明性と公正性につき評価を行い、その評価を公表します。
特定デジタルプラットフォーム提供者は、公表された評価の結果を踏まえ、プラットフォームの透明性と公正性につき、自主的な向上に努めなければならないとされています。
特定プラットフォーマーが報告書を提出しなかったり、報告書に虚偽の記載をしたりした場合、
- 最大50万円の罰金
を科される可能性があります。
6 まとめ
プラットフォームを提供するサービスは増加しており、サービスの業態も多種多様です。
2021年2月から施行された「取引透明化法」は、大規模なプラットフォーム事業者を規制の対象としていますが、同法の目的でもある「取引の透明性・公正性の向上」は、事業規模を問わず、取引を行う事業者が負うべき使命であるともいえます。
その意味では、大規模なプラットフォーム事業者はもちろんのこと、そうでない事業者にとっても事業を運営していくうえで参考にすべき法律であるということがいえるでしょう。
弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
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