
はじめに
「ドローンを使って配送ビジネスをしたいけど、どんなルールがあるかわからない。」といった悩みを抱えている事業者の方もいらっしゃると思います。
ドローンは、航空機と衝突したり落下したりするおそれがあり、自由に飛行させるのは危険です。そのため、ドローンを飛ばす際には守らなければならないルール(法律)があります。ドローンを使った配送ビジネスを始めるためには、このルールを理解しておくことが大変重要です。
そこで今回は、ドローンを使って配送ビジネスをする際に注意しておきたい法律規制について、ITに強い弁護士が詳しく解説します。
目次
1 ドローンを活用した配送ビジネスの事例
ネット販売会社によるドローンを使った配送実験は、よくニュースで取り上げられていますよね。ドローンは道路の渋滞に巻き込まれることがなく、スムーズに配送先まで飛行することができるという利点があります。このような利点を活かし、日用品・食品、医薬品などといったものをドローンで配送することが可能となります。
以下で、具体的に見てみましょう。
(1)日用品・食品
ドローンは、日用品や食品の配送に向いています。ネット販売だけではなく、スーパーで売っている食品を配送する際にも、ドローンを活用できます。スーパーから遠い場所に住んでいる高齢者は、食品を買うためにスーパーまで行くことが難しいのが現状です。電話などで注文を受けたスーパーが食品をドローンに乗せて配送することにより、高齢者は自宅にいながらスーパーで買い物をすることができます。
(2)医薬品
医薬品は緊急に必要となる場合が多いため、短時間で配送できるドローンを使うことは有効的です。また、医薬品は軽くて小さいため、その点でもドローンを使った配送に適しています。
病院が少ない地域に住んでいる患者は、定期的に通院するのが難しく、治療を途中でやめてしまうことも少なくありません。病院や薬局が医薬品をドローンに乗せて配送することにより、通院の負担がなくなり、治療を継続することができます。
以上のように、ドローンはその利点を活かして配送ビジネスにおいても活用することができます。もっとも、時間や場所を問わず、自由にドローンを飛ばすことができるわけではありません。
次の項目で、ドローンを飛ばす際に守るべきルールを見ていきましょう。
2 航空法による法律規制
ドローンを飛ばす際に守るべきルールの中でも代表的なものが「航空法」です。ドローンを使った配送ビジネスを検討している方なら、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
航空法は次の2つの視点から、ドローンの自由な飛行を制限しています。
- 飛行場所(飛行禁止区域)
- 飛行方法(飛ばし方)
これらのルールは、航空法が定めている「無人航空機」を規制対象としています。
「無人航空機」とは、以下の要件をすべてみたしている機体のことをいいます。
- 飛ぶことができる機体であること
- 人が乗ることのできないこと
- 200g以上の機体であること
- 遠隔操作または自動操縦によって飛ばすことができること
配送ビジネスに使うドローンは「無人航空機」にあたるのが一般的であるため、航空法の規制対象になると考えていただいて結構です。
それでは、「無人航空機(ドローン)」を対象とする航空法の規制について、具体的に見ていきましょう。
(1)飛行場所(飛行禁止区域)
1つ目は、ドローンの飛行場所(飛行禁止区域)からの視点です。ドローンは空を飛ぶことによって移動するため、航空機と衝突するおそれがあります。そのため、空港周辺や一定の高さ以上の空域での飛行を規制しています。
また、ドローンが落下したときには人や家屋に危害を与える可能性があるため、人や家屋が多い場所での飛行を規制しています。
航空法が規制しているドローンの飛行場所(飛行禁止区域)は、次の3つです。
- 空港周辺の空域
- 150m以上の高さの空域
- 人口集中地区(DID地区)
以下で、簡単に見てみましょう。
①空港周辺の空域
空港周辺の空域でドローンを飛ばすと、航空機の安全な飛行を妨害する可能性があります。そのため、空港周辺の空域でドローンを飛ばすことはできません。
②150m以上の高さの空域
たとえ空港周辺の空域でなくても、航空機の最低飛行空域である高度150m以上の高さの空域でドローンを飛ばすと、①と同様、航空機の安全な飛行を妨害する可能性があります。そのため、150m以上の高さの空域でドローンを飛ばすことはできません。
③人口集中地区(DID地区)
ドローンが空を飛ぶ機体である以上、落下する可能性は常につきまといます。そのような事態になった場合、人や建物などに危害を与える可能性があります。
そのため、人や家屋が多い場所(人口集中地区)でドローンを飛ばすことはできません。
このように、航空法は航空機と衝突するおそれのある場所(上記①および②)、人や家屋が多い場所(上記③)でのドローン飛行を禁止しているのです。
これらの場所でドローンを飛ばしたい場合には、国の許可を受ける必要があります。
(2)飛行「方法」の規制
2つ目は、ドローンの飛行方法(飛ばし方)からの視点です。この視点からのルールは、ドローンを飛ばす「場所」にかかわらず守らなければなりません。たとえ、飛行禁止区域ではない場所でドローンを飛ばす場合であっても、守らなければならないルールということです。具体的には、次の6つにあてはまる飛ばし方は禁止されています。
- 夜間の飛行
- 目視外飛行
- 人や物件との距離が30m未満の飛行
- 人が多く集まるイベント会場の上空での飛行
- 危険物を運ぶための飛行
- 物件を投下する行為が含まれる飛行
これらのルールの中でも、今回は配送ビジネスとの関係で特に問題となる5つのルールに絞って見ていきたいと思いますが、この点は後ほど解説します。
以上のように、航空法はドローンの飛行について、飛行場所(飛行禁止区域)と飛行方法(飛ばし方)といった2つの視点から規制をかけています。そのため、ドローンを飛ばす際には、これらのルールをきちんと守らなければなりません。
では、仮に、これらのルールに違反した場合には、どのようなペナルティを受けるのでしょうか。次の項目で見ていきましょう。
※「無人航空機の定義」や「航空法の規制」について、詳しく知りたい方は、「ドローン企業が知るべき航空法とは?3つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。
3 航空法に違反した場合の罰則(ペナルティ)
航空法に違反した場合には、次のペナルティを受ける可能性があります。
- 最大50万円の罰金
50万円と聞くと驚くかもしれませんが、「最大」で50万円なので、50万円より低い場合もあります。実際の金額は、違反の程度などによって決まります。
「航空法に違反した場合」をまとめると、次のようになります。
- 国の「許可」なく、飛行場所(飛行禁止区域)でドローンを飛ばした場合
- 国の「承認」なく、禁止される飛行方法(飛ばし方)でドローンを飛ばした場合
どちらの場合も最大50万円の罰金が科される可能性があることに違いはありません。
以下は、ペナルティを受けないために、どのような手順で航空法の規制をチェックすべきか、そのフローを図にしたものです。
- ドローンを飛ばそうとしている場所が飛行禁止区域にあたるかどうかの確認
- 飛行禁止区域にあたる場合には、国の「許可」を受ける必要があり、飛行禁止区域にあたらない場合には、飛行方法に反しないかを確認
- 飛行方法に反する場合には、国の「承認」を受ける必要があり、飛行方法に反しない場合には、自由にドローンを飛ばすことができる
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以上が、航空法が設けている基本的なルールとなりますが、ご理解いただけたでしょうか。ドローンを飛ばす際には、飛行場所(飛行禁止区域)と飛行方法(飛ばし方)についてのルールがあり、国の「許可」や「承認」を受けることによって、それらの場所や方法でもドローンを飛ばすことが可能になるというルールになっています。
それでは、配送ビジネスとの関係で特に問題となる4つのルールについて、「日用品・食品」と「医薬品」を例に挙げて、詳しく見ていきたいと思います。
4 ドローンを活用した配送ビジネスに適用されるルール
日用品・食品、医薬品といったものの配送にドローンを使う場合、具体的にどのようなルールが問題となるのでしょうか。
以下で、見てみましょう。
(1)日用品・食品の配送
日用品や食品の配送については、次の6つの規制が特に問題となります。
- 人口集中地区(DID地区)
- 夜間の飛行
- 目視外飛行
- 人や物件との距離が30m未満の飛行
- 物件を投下する行為が含まれる飛行
- 他人の土地所有権との関係
既に見てきたように、①は飛行場所(飛行禁止区域)、②~④は飛行方法(飛ばし方)についてのルールです。
順番に見ていきましょう。
①人口集中地区(DID地区)
日用品や食品を配送する際に、ドローンが飛行する地域が人口集中地区(DID地区)にあたる場合には、国の許可が必要です。「人口集中地区(DID地区)」とは、その名のとおり人口が集中している地域のことです。人や家屋が多い場所でドローンが落下すると、被害が大きくなる可能性があるためにこのようなルールが設けられています。
ドローンを飛ばそうとする場所が人口集中地区にあたるかどうかは、国土地理院が出している「人口集中地区マップ」で確認することができます。
赤く染まっている地域が人口集中地区(DID地区)です。拡大することで、細かい部分まで確認することができます。
②夜間の飛行
「夜間」とは、日没から日の出までの間のことをいいます。ドローンは、日の出から日没までの間の「日中」に飛行させなければなりません。ドローンによる日用品や食品の配送を夜間に行う場合には、国の承認を受ける必要があります。
ドローンの機体には、位置と向きが正確にわかるような表示をすることになっています。夜間にはその表示が見えにくくなるため、ドローンの位置と向きがわからなくなり、適切に飛行させることが難しくなります。衝突や落下の原因にもなりやすいため、夜間の飛行を禁止しているのです。
③目視外飛行
「目視外飛行」とは、ドローンを飛ばす人が「直接」「自分の目で」ドローンを見ずに行う飛行のことをいいます。ドローンやその周辺の状況を正確に把握できていなければ、ドローンを安全に飛ばすことはできません。そのため、ドローンを飛ばす人が「直接」「自分の目」でドローンの位置や周りの状況を確認することがルールとなっています。
もっとも、スーパーから配送先まで日用品や食品を配送する場合、ドローンを飛ばす人が「直接」「自分の目で」ドローンを監視し続けることは通常想定されていません。そのため、この場合は目視外飛行にあたり、国の承認を受ける必要があります。
承認を受けるにあたっては、以下の基準を満たす必要があります。
-
【機体】
- 自動操縦システムの装備
- 機体の位置および異常を地上で把握できること
- 自動帰還機能などの危機回避機能の装備
- モニター越しに意図した飛行が可能な能力
- ドローンの飛行状況や周囲の気象状況の変化を常に監視できる補助者の配置
【操縦者】
【安全確保のための体制】
以上からもわかるように、安全確保のための体制として、「補助者」の配置が求められています。
もっとも、配送ビジネスにおいては、配送ルートに補助者を配置することが困難な場合は少なくありません。
そこで、航空局は、以下の要件を追加で満たせば、補助者なしの目視外飛行が可能となるよう改正を行いました。
-
【飛行場所】
- 山、海水域、河川、湖沼、森林など第三者が立ち入る可能性の低い場所であること
- 飛行高度が150m未満であること
- 空港周辺の空域ではないこと
- 想定される運用方法での十分な飛行実績があること
- 不測の事態が発生した場合、着陸・着水できる場所をあらかじめ選定すること
- 緊急時の対応手順を定めていること
- 飛行前に飛行経路とその周辺の現場確認をすること
【機体の信頼性の確保】
【不測の事態への適切な対応】
このように、補助者を配置しないこととする代わりに、従前の基準に加え、新たに「飛行場所」、「機体の信頼性の確保」、「不測の事態への適切な対応」に関する要件が設けられました。
もっとも、これらの要件は、あくまで暫定的なものであるため、今後変更される可能性があることにご注意ください。
※補助者なしの目視外飛行の要件について、詳しく知りたい方は、国土交通省がまとめた「無人航空機の目視外飛行に関する要件」をご参照ください。
④人や物件との距離が30m未満の飛行
「人」には、ドローンを飛ばす人やその関係者は含まれません。「物件」には、自動車や建物などの人工物は含まれますが、山や木などの自然物は含まれません。ここで注意すべき点は、至るところにある電柱や電線も人工物である以上、物件に含まれるということです。ドローンを使って配送する場合は、このルールに違反することにならないかを必ず検討する必要があります。
航空法は、人や物件との間に30m以上の距離を「保って」ドローンを飛ばすことを求めているため、飛行中に一度でも人や物件との間の距離が30m未満になる場合には、国の承認が必要となります。
⑤物件を投下する行為が含まれる飛行
配送先に到着したドローンは乗せてきた日用品や食品を地面に置くことになりますが、これは物件を投下する行為にはあたりません。
「投下」とは、高い位置から投げ落とすことを意味するため、単に地面に置くことは「投下」には含まれません。そのため、国の承認は不要です。
⑥他人の土地所有権との関係
ドローンを使って日用品や食品を配送する多くの場合、他人の土地の上を飛行することになります。これは、他人の土地を勝手に利用していることにはならないのでしょうか。「ドローンは上空を飛んでいるだけだから、他人の土地を利用していることにはならない。」とも思えますが、それは違います。
「民法」では、土地所有権(土地を自由に利用する権利)がその土地の上下に及ぶとされているため、ドローンが他人の土地の上空を飛ぶには、土地所有者の許可を得る必要があります。配送中にドローンが通過するすべての土地について所有者の許可を得るのは大変なことですが、少なくとも現状では、必要なことだと考えられます。
※ドローンと他人の土地所有権との関係について、詳しく知りたい方は、「ドローンが他人の土地上空を飛ぶのは違法?4つの視点で弁護士が解説」をご覧ください。
(2)医薬品の配送
医薬品の配送については、次の7つの規制が特に問題となります。
- 人口集中地区(DID地区)
- 夜間の飛行
- 目視外飛行
- 人や物件との距離が30m未満の飛行
- 物件を投下する行為が含まれる飛行
- 他人の土地所有権との関係
- 薬機法による規制
順番に見ていきましょう。
①航空法上の問題
ここからもわかるように、医薬品の配送についても、日用品・食品の配送の場合と同様の問題が起きます(①~⑥)。あくまでポイントとなるのは、ドローンをどこで飛ばすのかという点とどのような飛ばし方をするのか、という点の2点です。
この2点をきちんと特定して、国の許可・承認が必要となる場合にあたるのかどうかをしっかりと見極めることが重要です。
②薬機法の問題
医薬品を販売するためには、医薬品などの品質や安全性などを確保するために必要なルールを定めた薬機法の規制を受けることになります。
以下で、具体的に見ていきましょう。
(ⅰ)医薬品販売業の許可
「医薬品」には、強い成分が入っているため副作用を起こすおそれがあります。そのような医薬品を、誰もが自由に売ることができたら危険ですよね。
そこで「薬機法」では、医薬品を売るためには医薬品販売業の許可を受けなければならないとされています。
ドローンを使って医薬品を配送することも医薬品を売ることと変わりはないため、医薬品販売業の許可が必要になります。ドローンを飛ばす事業者が医薬品販売業の許可を受けている場合は、ドローンを使って医薬品を配送することができます。また、医薬品販売業の許可を受けた事業者から配送を頼まれた(委託された)事業者も、たとえ自社が許可を受けていない場合であってもドローンを使って医薬品を配送することができます。
(ⅱ)対面販売が不要な医薬品
医薬品には、大きく分けて次の3つの種類があります。
- 医療用医薬品(処方薬)
- 要指導医薬品
- 一般用医薬品
①の「医療用医薬品」と②の「要指導医薬品」については、薬剤師が医薬品を買う人に直接会って、医薬品の説明をしたうえで売る必要があります(「対面販売」)。そのため、ドローンを使って医薬品を配送する場合は、対面販売をすることができませんので、医療用医薬品と要指導医薬品を配送することはできません。
他方で、③の「一般用医薬品」については対面販売をすることは求められていません。薬局以外の場所にいる人から電話で注文を受けて売ることもできますし、ネット販売も認められています(「特定販売」)。そのため、ドローンを使って配送することも可能です。
以上のように、薬機法は医薬品の取扱いについて、その種類に応じたルールを設けています。もっとも、この取扱いに関するルールは近々改正されることになっています。具体的には、医療用医薬品についてもネット販売が可能になる予定です。その場合、薬剤師による医薬品の説明は、スマートフォンやタブレットによって行われます。
医療用医薬品のネット販売ができるようになれば、ドローンによって医薬品を配送するニーズはさらに高まります。
最後に、航空法上の許可・承認申請のやり方について、確認しておきましょう。
※航空法以外に適用される規制について、詳しく知りたい方は、「200g以下のホビードローンは規制の対象外!?9つの規制を解説」をご覧ください。
5 航空法上の許可・承認申請のやり方
ドローンを飛ばす際に、国の許可・承認が必要になる場合があることは既に説明したとおりです。そして、国の許可や承認を受けるためには、申請をすることが必要になります。まずは、申請の種類から見てみましょう。
(1)申請の種類
ドローンの許可・承認申請には、大きく分けて次の2つの方法があります。
- 個別申請
- 包括申請
順番に見ていきましょう。
①個別申請
「個別申請」とは、ドローンを飛ばす日が決まっていて、飛ばす場所が1ヶ所に特定できる場合に行う申請です。
②包括申請
「包括申請」とは、ドローンを飛ばす日が決まっていない、または飛ばす場所が1ヶ所に特定できない場合に行う申請です。
包括申請は、さらに「期間包括申請」と「飛行経路包括申請」に分けられます。
「期間包括申請」は、ドローンを飛ばす期間(最大1年間)を特定して申請する必要があります。許可を受けることができれば、その期間内は何度でもドローンを飛ばすことができます。
「飛行経路包括申請」は、ドローンを飛ばす場所を複数特定するか、飛ばす範囲を特定したうえで申請する必要があります。
なお、包括申請により許可を受けた場合には、3ヶ月ごとに実績を報告することが義務づけられていますので、その点は注意が必要です。
次に、申請時に提出する書類について見てみましょう。
(2)提出する書類
申請時に提出しなければならないのは、「申請書」と「添付書類」の2点です。
①申請書
申請書には、ドローンを飛ばす目的・日時・場所・高さといった基本的な事項を記入します。そのほか、なぜ飛行禁止区域や飛行方法(飛ばし方)で飛行をする必要があるのか、という「申請の理由」などを記入する必要があります。申請の理由は、許可や承認をするかどうかを国が判断するにあたって重要な部分となります。
②添付書類
提出する書類は、申請書だけではなく、申請書と併せてさまざまな添付書類を提出しなければなりません。添付書類は、申請書の記入事項が正しいことを明らかにするためのものであるため、申請書の記入事項に対応する形になっています。
たとえば、
- 「ドローンを飛ばす場所」に関する書類:飛行の経路の地図
- 「ドローンの機体」に関する書類:ドローンの機能・性能に関する基準適合確認書
- 「ドローンを飛ばす人」に関する書類:ドローンを飛行させる者に関する飛行経歴・知識・能力確認書
- 「ドローンを安全に飛行させるための体制」に関する書類:飛行マニュアル
などが挙げられます。
(3)申請書類の提出先
申請書類の提出先は、空港事務所または地方航空局です。どちらになるかは、以下のようにドローンの飛行場所と飛行方法によって決まります。
(ⅰ) 空港事務所が提出先となる場合
以下の場所でドローンを飛ばす場合には、空港事務所が提出先となります。
- 空港周辺の空域
- 150m以上の高さの空域
(ⅱ) 地方航空局が提出先となる場合
他方で、以下の場所でドローンを飛ばす場合には、地方航空局が提出先となります。
- 人口集中地区(DID地区)
- 夜間の飛行
- 目視外飛行
- 人や物件との距離が30m未満の飛行
- 人が多く集まるイベント会場の上空での飛行
- 危険物を運ぶための飛行
- 物件を投下する行為が含まれる飛行
なお、地方航空局には、東京航空局と大阪航空局の2つがあり、以下のようにドローンを飛ばす場所に応じて提出先が決まります。
-
【東京航空局】
- 新潟県・長野県・静岡県より東の場合
-
【大阪航空局】
- 富山県・岐阜県・愛知県より西の場合
それぞれの航空局における詳細な管轄を知りたい方は、国道交通省が出している「各空港事務所の管轄区域」で確認することができます。
(4)申請期限・申請方法
申請書類は、ドローンを飛ばすことを予定している日の10開庁日前までに提出しなければなりません。申請書類が揃っていなかったり、内容に間違いがあったりすると審査に時間がかかるため、飛行予定日を過ぎてしまうおそれがあります。申請をする際には、飛行予定日から3~4週間程度の余裕をもって申請することが望ましいでしょう。
また、申請書類は、申請先の「窓口」で提出できることはもちろんのこと、「郵送」によっても行えます。現在は「オンライン申請」もできるようになり、ドローンの許可・承認申請が手軽になりました。災害により緊急にドローンを飛ばす必要が生じたなどの一定の要件をみたす場合には、「電話やメール、ファックス」による申請も可能です。
(5)お問い合わせ先
許可・承認の申請方法についてわからないことがある場合は、下記の無人航空機ヘルプデスクに電話をして聞いてみましょう。
無人航空機ヘルプデスク
電話番号:0570-783-0720
受付時間:午前9時30分から午後6時00分まで(土日祝除く)
また、申請書類に不備がないかどうかをメールで確認してもらうこともできます。各空港事務所と地方航空局のメールアドレスは、国土交通省が出している「本省運行安全課および空港事務所の連絡先一覧」をご覧ください。
※航空法上の許可・申請のやり方について、詳しく知りたい方は、「ドローンの飛行許可申請のやり方は?5つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。
6 小括
ドローンを使って配送ビジネスをする場合には、ドローンを飛ばす際に適用されるルールを理解しておく必要があります。飛行場所や飛行方法を規制する航空法だけでなく、民法や薬機法のルールも確認する必要があります。
国の許可や承認が必要な場合にあたるかどうかをしっかりと見極めて、適切にドローンを飛ばすようにしましょう。
7 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。
- 短時間で空を移動できるドローンは、日用品や食品、医薬品などといったものを配送するのに適している
- 航空法によって、①空港周辺の空域、②150m以上の高さの空域、③人口集中地区(DID地区)でドローンを飛ばすことが原則禁止されている
- 航空法によって、①夜間の飛行、②目視外飛行、③人や物件との距離が30m未満の飛行、④人が多く集まるイベント会場の上空での飛行、⑤危険物を運ぶための飛行、⑥物件を投下する行為が含まれる飛行が原則禁止されている
- 国の許可・承認が必要であるのに許可・承認を受けずにドローンを飛ばすと、最大50万円の罰金が科されるおそれがある
- ドローンを使って日用品や食品を配送する場合は、①航空法、②民法の規制を検討する必要がある
- ドローンを使って医薬品を配送する場合は、①航空法、②民法、③薬機法の規制を検討する必要がある