はじめに

近時、ソーラーパネル点検を効率的に行うために、ドローンが活用され始めています。

もっとも、ソーラーパネル点検もドローンを使うとなると守らなければならない法律やルールがたくさんあります。「航空法」や「電気事業法」「FIT法」といった難解な法律があり、しかも、きちんと守らないでいると大きなペナルティを受けてしまうものばかりです。点検が目的であっても、ドローンは自由に飛ばせるものではないのです。

そこで今回は、主にソーラーパネル点検をドローンで行いたい事業者やソーラパネル設置者向けに、具体的にどういった法律規制があり、何を守らなければいけないのか、ITに強い弁護士が詳しく解説していきます。

1 ソーラーパネル点検におけるドローンの導入

ドローンとソーラーパネル点検

従来、ソーラーパネル点検は、人が赤外線カメラをもち、ソーラーパネル一つ一つを目視で確認するという方法で行われていました。破損や汚れなど不具合を起こしたパネルがあれば異常発熱を起こすため、異常発熱がないかを赤外線カメラでチェックしていたのです。

最近では、広大な土地に太陽光パネルを並べる大規模な太陽光発電が行われています。このような大規模な太陽光発電は「メガソーラー」と呼ばれています。このようなメガソーラーを、従来のやり方で点検するとなると、そこには多くの人員(人件費)と作業時間が必要になり、ものすごく非効率です。

そこで、ドローンの登場です。

ドローンに赤外線カメラを搭載し、ソーラーパネルの上を飛ばすことで、大量のソーラーパネルをまとめて確認できるため、少人数・短時間での確認が可能になります。

また、ソーラーパネルが屋上や傾斜地など人が点検することが困難な場所に設置されている場合も、ドローンを使えば簡単に点検を行うことができます。

このように、ドローンでソーラーパネルを点検することには様々なメリットがあるため、近時、ソーラーパネル点検にドローンを活用する動きが活発化しています。もっとも、ドローンは自由にいつでも飛ばせるわけではなく、ソーラーパネル点検においても同様で法律に書かれた厳しいルールを守って飛ばす必要があります。その中でも特に注意しなければいけないのが空のルールを定めた「航空法」です。

2 航空法による法律規制

航空法の規制

航空法」とは、航空機の安全運航や秩序を守ることを目的とした法律です。空の秩序を守るため、ドローンも「無人航空機」として規制の対象となっています。

規制の対象となる「無人航空機」とは、以下の4つの条件すべてをみたしたものをいいます。

  1. 飛ぶことができる機体であること
  2. 人が乗れないこと
  3. 遠隔操縦または自動操縦ができること
  4. 機体の重さが200g以上であること

これら4つの条件にあてはまらない、例えば重さ200g未満の「ホビードローン」は「無人航空機」にはたあらず、航空法による規制を受けません。

他方、「無人航空機」にあたる

ソーラーパネル点検用ドローンについては

  1. 飛行場所(飛行禁止区域)
  2. 飛行方法(飛ばし方)

という2つの視点から設けられた規制がかかります。

(1)飛行「場所」の規制

航空法は、以下の3つの場所でドローンを飛ばすことを禁止しています。

  1. 空港などの周辺地域(★)
  2. 150メートル以上の高度
  3. 人口密集地域(DID地区)(★)

ソーラーパネル点検のために、ドローンを飛ばす場合、特に①と③に気を付ける必要があります。

①空港などの周辺地域

空港などの周辺地域では、国の許可なくドローンを飛ばすことは禁止されています。飛行機やヘリコプターの離着陸の際にドローンと接触し、事故に発展する可能性があるからです。

もっとも、長崎空港や福島空港のように、空港周辺にメガソーラーが設置されていることもあります。

このように空港周辺に設置されたソーラーパネルの点検のためにドローンを飛ばす際には、国の許可が必要となります。

なお、空港周辺のドローン飛行が禁止されている高度やエリアは各空港によって異なりますので、国土交通省の「進入表面等の設定状況」をご確認ください。

②150メートル以上の空域

航空法において、航空機は150メートル以上の高度で飛行することとなっているため、ドローンなどの無人航空機は、航空機との接触がないよう、150メートル未満の高度で飛行しなければなりません。

ドローンを150メートル以上の高度で飛ばす場合は、国の許可が必要となります。

③人口集中地区(DID地区)

ドローンを飛ばす場合に想定される事故としては、航空機との接触事故のほかに、ドローンの落下事故が挙げられます。ドローンが落下すると、地上にいる人や物に危害を及ぼす可能性があります。そのため、「人や物の安全を確保する」という観点から、このルールが定められました。

人口集中地区」の範囲については、国土地理院の「人口集中地区マップ」で確認することができます。

人口集中地区マップ

上の画像は東京近郊の人口集中マップですが、赤く色がついている所が人口集中地区です。東京23区は人口集中地区にあたることになります。

このような人口集中地区では、国の許可なくドローンを飛ばすことはできません。

ソーラーパネルの設置場所についても、人が少ないように見えて、実は人口集中地区に指定されている可能性があります。指定されている場合は、国の許可を得たうえで、ドローンを飛ばす必要があります。

(2)飛行「方法」の規制

ドローンを以下の6つの方法で飛ばすことは禁止されています。

  1. 夜間の飛行
  2. 目視外飛行(★)
  3. 人や建物などとの間の距離が30m未満の飛行(★)
  4. イベント会場上空の飛行
  5. 爆発物などの危険物の輸送
  6. 物の投下禁止

今回は、この中でも、ソーラーパネル点検時に特に問題となると考えられる②「目視外飛行」と③「人や建物などとの間の距離が30m未満の飛行」に絞って、以下で解説していきます。

①【規制②】目視外飛行

ドローンやその周辺の状況を正確に把握できていなければ、ドローンを安全に飛ばすことはできません。そのため、ドローンを飛ばす人が直接その目でドローンの位置や周りの状況を確認しなければなりません。

目視の範囲内

もっとも、広大なメガソーラーやソーラーパネルが平地ではない場所に設置されている場合、操縦者の目が届かないケースがあると考えられます。

このような場合も「目視外飛行」にあたるため、国の承認が必要になります。

なお、承認を受けるにあたっては、「機体」・「操縦者」・「安全確保のための体制」という3つの基準について、それぞれ以下の事項を満たす必要があります。

    【機体】

  • 自動操縦システムの装備
  • 機体の位置および異常を地上で把握できること
  • 自動帰還機能などの危機回避機能の装備
    【操縦者】

  • モニター越しに意図した飛行が可能な能力
    【安全確保のための体制】

  • ドローンの飛行状況や周囲の気象状況の変化を常に監視できる補助者の配置

このうち、安全確保のための「補助者」については、これを配置しないことも可能ですが、補助者を配置しない場合は、飛行場所を山や森林など第三者が立ち入る可能性の低い場所にする必要があったり、想定していない事態への適切な対応方法を決定しておく必要があったり、といったように、さらに厳しい基準を満たす必要があります。

※ドローンを目視外飛行する場合の要件について詳しく知りたい方は、国土交通省がまとめた「無人航空機の目視外飛行に関する要件」をご参照ください。

②【規制③】人や建物などとの間の距離が30m未満の飛行

ドローンを飛ばす際には、ドローンと人や建物など(物件)との直線距離が30m以上離れていることが必要とされています。距離が近すぎると、ドローンがぶつかり人や建物などを傷つけてしまうリスクがあるからです。

そのため、人などとの間が30m未満の距離でドローンを飛ばす際には、国の承認が必要になります。

ⅰ「人」や「建物など(物件)」とは?

物件」とは、以下のいずれかにあたるものをいいます。

  • 中に人が存在することが想定される機器
  • 建築物その他の相当の大きさを有する工作物など

具体的には、自動車や住居、鉄塔、堤防、電線、信号機などが物件となります。

ⅱ「人」や「建物など(物件)」に含まれないもの

「物件」には土地そのものや樹木は含まれません。

ここでいう「人」や「物件」には、ドローン飛行の関係者や関係者が管理する物は含まれません。そのため、ソーラーパネルの設置者が、自分で点検するためにドローンを飛ばす際には、ソーラーパネルとの距離が30m未満でも問題ありません。

また、設置者から点検を依頼された事業者がドローンを飛ばす際にも、設置者は関係者といえるため、ソーラーパネル・設置者との距離が30m未満でも問題ありません。

一方で、設置者が管理していない周辺の住居や自動車は、ドローン飛行の関係者が管理する物には含まれないため、ドローンとの距離を30m以上保つ必要があります。

このことをまとめると、以下の図のようになります。

飛行方法の禁止_人や建物などとの間30m未満

もっとも、ソーラーパネルの設置場所との関係で、30m以上の距離を保つことが難しいケースも想定されます。このような場合でも、可能であれば、国からの承認を必要とすることなく、ドローンを飛ばしたいですよね。

この場合、本人や物件の管理者から、30m以内での飛行の了承をもらうことにより、国からの承認を必要とすることなく、ドローンを飛ばすことが可能となります。

 

以上のように、ドローンを飛ばす「場所」や「方法」によっては、国の許可や承認が必要になる場合があります。

国の許可や承認が必要であるにもかかわらず、許可や承認を受けずにドローンを飛ばしてしまった場合には、航空法違反となり、次項で解説するペナルティを受けることになります。

※航空法による法律規制について、詳しく知りたい方は、「ドローン企業が知るべき航空法とは?3つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

3 航空法に違反した場合の罰則(ペナルティ)

ペナルティ

航空法に違反した場合、

  • 最大50万円の罰金

が科される可能性があります。

罰金だけなのかと思われるかもしれませんが、罰金も前科になります。

また、以下のような不利益を被る可能性があります。

  • 就職・転職の際に不利になる可能性がある
  • 資格制限を受けたり、欠格事由にあたる可能性がある
  • 渡航制限を受ける可能性がある

このようなことにならないためにも、ドローンを飛ばす際に国の許可・承認が必要な場合にあたるのか、などをきちんと確認することが大切です。

法律の悩みを迅速に解決します。
スタートアップ、IT、先端技術の法律相談なら私たちにお任せください!
豊富な契約書雛形もご用意していますので、IT企業に関わらずお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちらから

4 航空法上の許可・承認申請のやり方

許可・申請

ドローンを飛ばすための許可・承認を受けるためには、まずは、そのための申請を行う必要があります。

(1)申請の種類

申請をするにあたり、まず検討しなければならないのが、どの申請を行うかという点です。というのも、ドローンの飛行許可申請には以下の2つの申請パターンが用意されているからです。

  1. 個別申請
  2. 包括申請

①個別申請

個別申請」とは、 飛行日や飛行経路(飛行場所)を特定して行う申請です。最も基本的で一般的な申請方法です。

②包括申請

包括申請」とは、飛ばす日や、飛行場所に範囲を設けて行う申請方法です。

たとえば、飛行期間を「1年間」、飛行範囲を「東京都全域」といった内容で行う申請が「包括申請」です。

もっとも、包括申請を行った場合には、以下のタイミングで飛行実績の報告が必要となりますので留意が必要です。

  • 許可・承認期間の開始日からり3ヶ月ごと
  • 許可・承認期間の終了時

これらのタイミングに、飛行実績の報告書を申請書の提出先と同じ機関に提出しなければなりません。

※ドローンの飛行許可申請について詳しく知りたい方は、国土交通省の「許可・承認手続きについて」をご参照ください。

※飛行実績報告書の書式などについて詳しく知りたい方は、国土交通省の「飛行実績の報告要領」をご参照ください。

(2)申請書の提出先

申請書の提出先は以下の3つのいずれかになります。

  1. 空港事務所
  2. 航空局
  3. 国土交通大臣

申請内容に応じて提出先が変わるため、以下の表で提出先をご確認ください。

申請書の提出先

※各提出先の連絡先については、国土交通省が出している「本省運行安全課、地方航空局及び空港事務所の連絡先等一覧」をご覧ください。

(3)申請方法

申請方法は、以下の4つが用意されています。

  1. 郵送
  2. 窓口に持参
  3. オンライン申請
  4. 電話、電子メールまたはファクシミリ

ただし、④の申請は、事故や災害などといった、緊急時のみに認められる申請方法のため、①~③の申請方法であらためて書類を申請する必要があります。

通常、飛行許可申請は、少なくともドローンの飛行を予定している日の10開庁日前までに書類を提出する必要があります。そのため、審査に一定の時間がかかることも踏まえて、時間に余裕をもって、申請することをお勧めします。

※航空法上の許可・承認申請手続について、詳しく知りたい方は、「ドローンの飛行許可申請のやり方は?5つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

5 航空法以外に留意すべき規制

航空法以外のルール

航空法以外に留意しなければいけない法律規制は以下の2つです。

  1. 電気事業法
  2. FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)

これらは、ソーラーパネル設置者に対してルールを定めた法律で、出力50kW以上のソーラーパネルは電気事業法の管轄、出力50kW未満はFIT法の管轄となっています。

どちらの法律も、ソーラーパネル設置者に、ソーラーパネルの点検・メンテナンスについて定める義務を課しています。具体的には、電気事業法は「保安規程」という形式で、FIT法は「保守点検・維持管理計画」という形式となっています。

そのため、ソーラーパネル設置者は、ドローンでソーラーパネル点検を行う場合、ドローンを用いて点検を行うことを「保安規程」や「保守点検・維持管理計画書」に定めて、その通りに運用することが必要となります。

なお、「保安規程」については、電気事業法上、国への届出が必要になります。

「保安規程」の届出をしなかったり、実態と異なる虚偽の内容で届出を行った場合

  • 最大30万円の罰金

というペナルティを科せられる可能性があります。罰金も前科となるため、たいへん重いペナルティだといえます。

また、「保守点検・維持管理計画」については、国への届出義務がないからといって、そもそも定めていなかったり、計画通りに運用していなかったりすると、最悪の場合FIT法の認定取り消しという重い処分を受けて、電気が売れなくなるというペナルティを負う可能性があります。

※「保安規程」の申請・届出に関して詳しく知りたい方は、経済産業省の「電気設備の申請・届出等の手引き」をご参照ください。

※「保守点検・維持管理計画」に関して詳しく知りたい方は、エネルギー庁の「事業計画策定ガイドライン」をご参照ください。

6 小括

まとめ

ドローンは好きなタイミングで飛ばせるものではありません。飛行場所や飛行方法について定めた航空法のルールをきちんと守る必要があります。これは、ソーラーパネルの点検にドローンを用いる場合であっても同じです。

にもかかわらず、航空法のルールに違反してドローンを飛ばすと、航空法違反となり、ペナルティを受ける可能性があります。

このようなことにならないためにも、航空法のルールを十分に理解したうえで、適切にドローンを飛ばすようにしましょう。

7 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 「航空法」はドローンについて、①飛行場所、②飛行方法という2つの視点からルールを設けている
  • 飛行「場所」の規制として、①空港などの周辺地域、②150メートル以上の高度、③人口密集地域(DID地区)という3つの場所における飛行を禁止している
  • 飛行「方法」の規制として、①夜間の飛行、②目視外飛行、③人や建物などとの間の距離が30m未満の飛行、④イベント会場上空の飛行、⑤爆発物などの危険物の輸送、⑥物の投下禁止という6つの方法による飛行を禁止している
  • 国の承認を得て目視外飛行を行うためには、①機体、②操縦者、③安全確保のための体制の基準を満たす必要がある
  • ドローン飛行の関係者や関係者が管理する物に対しては、30m未満の距離での飛行も可能である
  • 航空法に違反した場合、最大50万円の罰金を科される可能性がある
  • 航空法上の許可・承認申請には、①個別申請と②包括申請の2つがある
  • 申請書の提出先は、①空港事務所、②航空局、③国土交通大臣のいずれかである
  • 申請方法としては、①郵送、②窓口に持参、③オンライン申請、④電話、電子メールまたはファクシミリの4つがある