送金サービスを規制する資金決済法のルールを弁護士が3分で解説!

はじめに
「送金サービス」といえば、従来は銀行のみが取り扱っていたサービスですが、現在では、銀行以外の事業者でも送金サービスを取り扱う事業者が多数存在します。
送金サービスとの関係で問題となるのは「資金決済法」という法律です。
これから送金サービスへの参入を検討している事業者は、資金決済法による規制をきちんと理解しておく必要があります。
今回は、資金決済法による送金サービスへの規制内容を中心に解説します。
1 資金決済法にいう「資金移動業」とは
資金決済法が定める「資金移動業」とは、銀行等以外の者が為替取引(現金以外の方法で資金を移動する取引)を業として行うことをいいます。
わかりやすい例でいうと、私たちが日常的に行っている銀行での振込みは、現金を使わずに相手方に資金を移動していることになるため、ここでいう「為替取引」にあたります。
この点、送金サービスは、基本的には現金以外の方法で一方から他方へ資金を移動することを目的としたサービスです。
たとえば、利用されている方もいらっしゃると思いますが、「Pay Pay」や「LINE Pay」は送金サービスにあたります。
送金サービスは、原則として資金決済法上の「資金移動業」にあたるため、資金決済法による規制を受けることになります。
なお、現状は、資金移動業者による送金サービスとして扱える金額は100万円が上限とされていますが、2020年に法改正がなされたことにより、今夏から100万円を超える送金も可能になります。
※改正資金決済法により、分類されることとなった資金移動業の類型については、「資金移動業の登録に必要な4つの条件とは?登録後の規制とともに解説」をご覧ください。
2 送金サービスを始める際に知っておくべきポイント
資金移動業にあたる送金サービスを提供する場合、特に押さえておくべきポイントは以下の3点です。
- 登録制
- 供託義務(or保全契約等)
- 取引時における本人確認
3 登録制
資金移動業にあたる送金サービスを開始するためには、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
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【資金決済法37条】
内閣総理大臣の登録を受けた者は、銀行法第四条第一項及び第四十七条第一項の規定にかかわらず、資金移動業を営むことができる
資金移動業の登録要件は、決して楽にクリアできるような内容にはなっていません。
登録要件としては、主に、以下の4点が挙げられます。
- 株式会社または日本に営業所のある外国資金移動業者である
- 事業を適正に遂行できる財産的基礎がある
- 事業を適正に遂行できる体制が整備されている
- 他の資金移動業者と同一または類似する商号などを用いていない
このように、登録を受けるためには、一定の財産的基礎があることが必要であり、また、内部体制が十分に整備されていることが求められます。
事業者を対象とした要件のほかにも、事業者の取締役を対象とした要件もあり、ハードルの高い登録要件になっています。
これらのいずれか一つでも満たさない要件があると、資金移動業の登録を受けることはできません。
※資金移動業の登録要件について詳しく知りたい方は、「資金移動業の登録に必要な4つの条件とは?登録後の規制とともに解説」をご覧ください。
4 供託義務(or保全契約等)
送金サービスは、利用者の資金を扱うというその特性から、利用者を保護するための規制が複数設けられています。
そのなかでも、特に重要な規制が「供託義務」です。
「供託義務」は、利用者から受領したお金を保全するために課される義務であり、具体的には、送金途中で滞留している資金の100%以上に相当する額を「履行保証金」として保全しなければなりません。
たとえば、資金移動業者が倒産してしまった場合に、利用者から受領したお金を返金できなければ、利用者にとっては大きな損失となります。
まして、一般消費者は、そのようなサービスを安心して利用することができなくなります。
このように、利用者の保護を実現するという観点から、事業者には供託義務が課されているのです。そうすることで、万一、事業者が倒産した場合であっても、迅速に利用者に返金できるようになります。
この場合の「供託」とは、事業所の最寄りの法務局に供託することを意味しますが、履行保証金保全契約を締結することによって、供託に代えることも可能です。
「履行保証金保全契約」とは、一定の基準を満たす銀行などとの間で締結する契約のことをいい、一定の事由が発生した場合に履行保証金を供託することを内容とする契約です。
5 取引時における本人確認
取引時における本人確認は、資金決済法ではなく、犯収法により資金移動業者に義務付けられています。
具体的に、以下の要件を満たす場合、取引時に本人確認を行う必要があります。
- 取引額が10万円を超えること
- 預貯金などの受入れを内容とする取引を行うことなく為替取引などを継続的に行うこと
送金サービスでは、IDやパスワードの発行を受けて会員登録をすることにより、サービスを利用できるようになることが一般的です。
このように、IDやパスワードの付与を前提として会員登録をさせるサービスは、その多くが上記要件2に該当するため、事業者には、取引時における本人確認が義務付けられることになります。
6 まとめ
近時、厚労省において解禁を検討している「給与のデジタル払い」は、資金移動業者に大きく影響を及ぼすことが想定されます。
これまでは、銀行等が独占してきただけあって、給与が確実に支払われるのかといった不安の声も上がっています。
一方で、コロナ禍により、送金サービスのニーズが高まっているという側面もあります。
送金サービスをはじめとする「資金移動業」の分野は、従来より、規制の在り方などについて議論が重ねられており、まだまだ法整備が十分であるとはいえないため、今後の動向にも注意しておくことが必要です。
弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 
      




 
   
   
   
  