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資金決済法における3つの規制について、その概要をわかりやすく解説

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はじめに

事業を行うときは、必ずといっていいほど「お金」に関するやり取りが発生します。

このお金に関して、さまざまな規制を設けている法律のうちの一つに「資金決済法」という法律があります。

資金決済法は、仮想通貨の取引や前払式支払手段の発行・管理、決済に関する資金移動など、お金に関するさまざまな分野に対してルールを設けています。

そこで今回は、資金決済法がどのような法律なのか、また、どのような業務を行うときに関係してくるのかなどについて、わかりやすく解説していきます。

1 資金決済法とは

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資金決済法」とは、お金に関する取り扱いルールや事業者に課されるルール、決済に関するルールなどを定めた法律です。

具体的には、主に、以下の3つについて定めています。

  1. 仮想通貨(暗号資産)
  2. 前払式支払手段
  3. 資金移動

それぞれについて、見ていきましょう。

2 仮想通貨(暗号資産)

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仮想通貨(暗号資産)に関しては、2019年(令和元年)6月7日に資金決済法の改正法案が公布されており、1年以内に施行されることになっています。

そのため、この項目では現行法と改正法案を比較しながら、改正のポイントである以下の3点を解説していきます。

  1. 仮想通貨と暗号資産
  2. 仮想通貨(暗号資産)交換業者の登録
  3. 課される規制

(1)仮想通貨と暗号資産

現行法で「仮想通貨」として定義されているものが、改正法では、「暗号資産」という名称に変更され、定義にも多少変更が加えられました。

  1. 仮想通貨の定義(現行法)
  2. 暗号資産の定義(改正法)

それぞれ見ていきましょう。

①仮想通貨の定義(現行法)

現行法では、仮想通貨は以下のように定義されています。

  1. 物品の購入・仮受け、または役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用できること
  2. 不特定の者を相手方として購入・売却を行うことができる財産的価値であること
  3. 電子機器その他の物に電子的方法によって記録され、電子情報処理組織を用いて移転することができるものであること
  4. 日本通貨・外国通貨、通貨建資産でないこと
  5. 不特定の者を相手方として、①~②で掲げたものと相互交換ができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるものであること

つまり、仮想通貨とは、インターネットを通じて直接ユーザー間でやりとりされる通貨で、専門の取引所を介して日本円などの法定通貨と交換できるもののことをいいます。

②暗号資産の定義(改正法)

改正法では、「『電子記録移転権利』を除いたものを暗号資産とする」という文言が加えられました。

電子記録移転権利」とは、流通性のある投資型のトークン(セキュリティトークン)のことです。投資型トークンは、資金決済法ではなく、金融商品取引法が適用されることになります。

なお、改正金融商品取引法では、「電子記録移転権利」について、以下のように定義しています。

         電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示されるもの

ただし、流通性などを考慮して、一定のトークンは電子記録位移転権利から除外されます。

(2)仮想通貨(暗号資産)交換業者の登録

仮想通貨などの売買や交換などを行うサービス事業者は、「仮想通貨交換業者」として登録する必要があります。

今回の改正により、以下のように、仮想通貨(暗号資産)交換業者の定義や登録拒否要件に変更が加えられています。

①仮想通貨(暗号資産)交換業者の定義

資金決済法では、「仮想通貨交換業」(改正後は「暗号資産交換業」)について、以下のように定義しています。

  1. 仮想通貨の売買または仮想通貨同士の交換をすること
  2. 上記の行為の媒介・取次・代理をすること
  3. ①②の行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすること
  4.          +

  5. ①~③の行為を「事業」として行うこと

一方、改正法では、「暗号資産カストディ業務」に対しても、交換業として規制を適用すると定められました。

暗号資産カストディ業務」は、暗号資産の保管と移転を行うもので、売買は行っていません。そのため、現行法では規制が適用されていませんでしたが、改正法により暗号資産交換業として登録が必要になり、規制が適用されます。

※仮想通貨交換業者の定義については、「仮想通貨交換業の法律規制とは?改正資金決済法を弁護士が5分で解説」で解説しているので、参考にしてください。

②登録拒否要件が追加

現行法では、仮想通貨交換業へ登録しようとしている事業者が登録申請書や添付書類の重要な事項について虚偽の記載をしたり、重要な事実の記載が欠けているときは、登録を拒否できると定めています。

このほかにも、主に、以下のような登録拒否要件が定められています。

  1. 株式会社または外国仮想通貨交換業者(国内に営業所を有する外国会社に限る)ではない
  2. 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる財産的基礎を有していない
  3. 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制の整備が行われていない
  4. 他の仮想通貨交換業者が用いている商号・名称と同一、もしくは類似した商号・名称を用いようとしている

今回の改正により、登録申請をしてきた事業者を拒否できる要件として、以下のものが追加されることになりました。

  1. 認定資金決済事業者協会(認定協会)に加入していないこと
  2.         +

  3. 認定協会の自主規制に準ずる内容の社内規則を作成していないこと
  4.         or

  5. 当該社内規則を遵守するための体制を整備していないこと

つまり、登録を拒否をされる条件として、「事業者が認定協会への加入をしていないこと」が必須であり、それに加えて、以下のいずれかに当てはまっていることが挙げられます。

  • 認定協会の自主規制に沿った社内規則を作成していない
  • 上記の社内規約を作成しているものの、体制が整備されていない

これらを考慮すると、登録を受けるためには、以下の2つを両方行っておく必要があります。

  • 認定協会に加入する
  • 認定協会の自主規制に準ずる社内規則の作成や体制の整備を行う

(3)仮想通貨交換業者に課される規制

仮想通貨交換業者には、さまざまな規制が設けられています。

  1. 現行法による規制・義務
  2. 改正後、追加・変更される規制・義務

上記2点に焦点を当てて見ていきましょう。

①現行法による規制・義務

現行法による規制は、主に以下の3つです。

  1. 財務規制
  2. 行為規制
  3. 監督規制

「財務規制」では、利用者から預かっている仮想通貨を交換業者が使い込んだりしないよう、「資本金額は1,000万円以上」などの登録要件が定められています。

また、登録を受けた後も仮想通貨交換業者として「行為規制」や「監督規制」に服することになります。

「行為規制」としては、利用者の情報や財産を管理・保護することを目的として、社内体制の規定などを設けています。

「監督規制」では、帳簿書類の作成・保存義務や報告書の提出義務などが定められています。これは、交換業が不正を行ったとしてもすぐにわかるよう、客観的な証拠を集めることが目的です。

このように、仮想通貨交換業には、利用者保護を目的とした基準や規制・義務が設けられています。

※これらの規制については、「仮想通貨交換業の法律規制とは?改正資金決済法を弁護士が5分で解説」で詳しく解説しているので、参考にしてください。

②改正後、追加・変更される規制・義務

改正後は、主に以下のような規制が追加されます。

  1. 暗号資産の流出リスク対策の義務化
  2. 過剰な広告・勧誘に対する規制
  3. 取引の適正化

これらの規制は、2017年の法改正でも食い止められなかった仮想通貨の流出事件などを踏まえ、より一層、利用者保護を強固なものにすることを目的とし、追加されました。

※新しく追加される規制などの詳細については、「暗号資産とは?資金決済法改正の4つのポイントをIT弁護士が解説!」で詳しく解説しています。

3 前払式支払手段

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次に、前払式支払手段について解説していきます。

(1)前払式支払手段とは

前払式支払手段」とは、「商品などを入手するために、あらかじめ対価を支払うことで変換しておいたチケットやポイント、コイン」のことをいいます。

具体的には、以下の条件のすべてに当てはまっているものが「前払式支払手段」です。

  1. 金額などの財産的価値が、記載・記録されていること
  2. 財産的価値に応じた対価が支払われていること
  3. 金額などの財産的価値と結びついて発行されること
  4. 商品購入やサービス提供を受けるとき等に使用できるものであること

たとえば、商品券やゲーム内コイン・ポイント、交通系電子マネーなどが該当します。

(2)「自家型」と「第三者型」に分類

前払式支払手段は、利用方法によって以下の2つに分類されます。

  1. 自家型前払式支払手段
  2. 第三者型前払式支払手段

①自家型前払式支払手段とは

自家型前払式支払手段」とは、その前払式支払手段を発行している事業者が提供するサービスでのみ利用できるもののことです。

たとえば、「ポケモンGO」で発行されている「ポケコイン」は、現実世界で利用することができず、そのアプリ内でのみ利用できるため、自家型前払式支払手段に該当します。

②第三者型前払式支払手段とは

第三者型前払式支払手段」とは、発行している事業者以外の事業者が提供するサービスでも利用できるもののことです。

たとえば、交通系電子マネー「Suica」は、JRなどの電車だけでなく、コンビニや自販機、ドラッグストア、タクシーなどの支払いでも利用でき、「第三者型前払式支払手段」に該当します。

なお、第三者型前払式支払手段を発行するときは、財務局長等へ登録する必要があり、気軽に発行することはできません。

(3)主な規制内容

「自家型」「第三者型」関係なく、すべての「前払式支払手段」発行者に適用される規制が設けられています。

主な規制は以下の2つです。

  1. 情報の提供義務
  2. 発行保証金の供託

①情報の提供義務

前払式支払手段を発行する場合、公式Webサイトや発行したギフト券の裏面などで、発行者の氏名・名称や苦情相談窓口の連絡先などの情報を掲載する義務が発生します。

掲載する情報は、何らかのトラブルが発生したときに、消費者が必要とする情報がほとんどです。

②発行保証金の供託

毎年3月末か9月末時点で、前払式支払手段の未使用残高が1,000万円を超えていると、その半額を供託所(法務局など)に供託する義務が発生します。

これは「供託義務」とも呼ばれ、倒産などの理由でサービスが終了し、ユーザーがあらかじめ変換しておいた前払式支払手段が利用できなくなる事態に備えて、設けられている義務です。

なお、前払式支払手段であっても、6ヶ月以内で有効期限が切れるものに関しては、供託義務は発生しません。

※前払式支払手段発行者に課される供託義務については、「資金決済法の供託金って?支払義務の回避方法2つを弁護士が徹底解説」で詳しく解説しています。参考にしてください。

4 資金移動業

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(1)資金移動業

銀行等以外の一般事業者は、「資金移動業者」として登録を行うことで、100万円以下の為替取引を行うことができます。

主な登録要件は以下の通りです。

  1. 株式会社または国内に営業所を有する外国資金移動業者であること。
  2. 資金移動業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる財産的基礎を有し、体制の整備が行われていること
  3. 他の資金移動業者と同一または類似の商号・名称を用いていないこと

このように、資金移動業者として登録を受けるためには、一定の財産的基礎が必要になるなど、ハードルが高くなっています。

また、資金移動業者として登録を受けた後も、複数の規制を課されることになります。

(2)資金移動業者への規制

資金移動業者への規制としては、主に以下の3つが設けられています。

  1. 履行保証金の供託等
  2. 利用者の保護を図るための措置
  3. 苦情処理措置・紛争解決措置

①履行保証金の供託等

資金移動業者は、送金途中にあり滞留している資金の全額以上の額を「履行保証金」として保全する必要があります。

具体的な保全方法は、以下の3つであり、主に、利用されている方法が「供託」です。

  • 最寄りの供託所(法務局など)に供託する
  • 銀行等と履行保証金保全契約を締結する
  • 信託会社等と履行保証金信託契約を締結する

なお、滞留している資金等が1,000万円以下の場合であっても最低履行保証金は1,000万円となります。

この規制は、もしも資金移動業者が倒産したとしても利用者には影響が出ないよう、送金するべき資金を全額、確実に送金できる体制とするために設けられています。

②利用者の保護を図るための措置

資金移動業者には、利用者保護を行うために、以下のようなルールが課されます。

  • 利用者が銀行等が行う為替取引と誤認しないような措置をとること
  • 手数料やその他の契約内容に関する情報を利用者に対し提供すること
  • 送金額等の資金を受領したときは受取証書を交付すること
  • 社内規則等を定め、従業者に研修等を行うこと

③苦情処理措置・紛争解決措置

資金移動業者と利用者との間でトラブルが発生した場合、「金融ADR制度」というものを利用し、トラブル解消を図ることができます。

金融ADR制度」とは、公平な第三者が仲立ちし、あっせんや調停、仲裁等による当事者の合意に基づき、紛争を解決する制度です。

この金融ADR制度に対応するために、資金移動業者は、以下の措置を講じなければなりません。

  • 苦情処理措置
  • 紛争解決措置

金融ADR制度は、訴訟よりも手続きが簡便で、費用負担なども軽減されます。

(3)法改正の動向

現在、金融審議会では、資金決済法の改正について議論が行われています。2019年12月20日に公表されたワーキング・グループの報告書では、「資金移動業」に関する改正動向として、以下の2点が挙げられています。

  1. 利用者資金の保全方法
  2. 送金額に応じた規制

それぞれ検討されている内容を押さえておきましょう。

①利用者資金の保全方法

先ほど、履行保証金の供託による利用者資金の保全について紹介しましたが、実は、それ以外にも保全方法として、以下の2つの方法を利用することができます。

  • 保全契約
  • 信託契約

これらの保全方法は、現行法において、供託または保全契約による保全と、信託契約による保全を併用することができませんが、改正後はいずれの保全方法も併用できるようにすることが検討されています。

もしも併用できるようになった場合、以下のような対応も可能となり、利便性が上昇するといえるでしょう。

”例えば、資金移動業者が保全すべき額のうち、通常必要となる固定的な部分については、供託又は保全契約を利用しつつ、日々変動がある部分については、比較的入出金が容易な信託契約を利用するといった対応も可能になる”

(引用元:2019年12月20日・金融庁『金融審議会 決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ 報告』)

②送金額に応じた規制

現行法では、資金移動業者が取り扱える為替取引は、1件あたり100万円が上限とされていますが、個人による高額商品やサービスの購入、企業間決済などで利用されるなど、上限を超える取引ニーズがあると考えられます。

その一方で、既存の資金移動業者が扱っている取引は、1件あたり数万円以下のものが多いのが実態です。

そこで、以下のように、送金額に応じて事業者を分類し、それぞれに新たな規制を設けることがいいのではないかと考えられています。

  • 「高額」送金を取り扱う事業者
  • 現行規制を前提に事業を行う事業者
  • 「少額」送金を取り扱う事業者

5 小括

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資金決済法は、仮想通貨の取り扱いや前払式支払手段の発行、少額の為替取引を行う資金移動業などのサービスを行う場合に、必ず理解しておくべき法律です。

曖昧な理解のまま事業を開始・運営していると、さまざまな罰則が科せられてしまうかもしれません。

また、資金決済法においては、改正に向けた議論が盛んに行われています。

常に最新の動向をチェックするよう心がけましょう。

6 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りとなります。

  • 資金決済法は、お金のやり取りや決済などのルール、事業者への規制などを定めている
  • 仮想通貨は、2020年の法改正により「暗号資産」と改称される
  • 仮想通貨(暗号資産)の売買などを事業とする「仮想通貨(暗号資産)交換業」は登録制である
  • 仮想通貨(暗号資産)交換業者に対しては、利用者保護を目的に、「財務規制」「行為規制」「監督規制」などが定められている
  • 2020年の法改正後は「暗号資産カストディ業務」が暗号資産交換業として規制を受けるほか、交換業者への規制として「暗号資産の流出リスク対策の義務化」「過剰な広告・勧誘に対する規制」「取引の適正化」などが新たに追加される
  • 前払式支払手段は、商品を購入するために、事前にお金を変換しておいた商品券やゲーム内コインなどのことである
  • 前払式支払手段は、利用目的に応じて「自家型」「第三者型」に分けられ、第三者型は登録制である
  • 前払式支払手段の発行者にはさまざまな義務が定められており、「情報の提供義務」や「発行保証金の供託義務」などがある
  • 1案件100万円以下の為替取引を行う「資金移動業」は、登録制である
  • 現在、資金移動に関しては、改正に向けて議論が行われており、「利用者資金の保全方法」「送金額に応じた規制」などが論点になっている
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