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資金移動業の登録に必要な4つの条件とは?登録後の規制とともに解説

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はじめに

現在では、金融機関以外のスマホアプリやWebサイトなどを使って、送金などを行える「資金移動業」のサービスが増えてきました。

そのため、この分野への参入を検討している事業者の方もいらっしゃると思います。そのためには、資金移動業者として登録を受ける必要がありますが、登録を受けるためのハードルは決して低いものではありません。

この記事では、

  • どのような事業であれば資金移動業者として登録をしなければならないのか?
  • 資金移動業の登録後にはどんな規制があるのか?
  • 無登録で事業を行った場合には、どのような罰則が科される可能性があるのか?

などについて、弁護士が詳しく解説していきます。

1 資金移動業とは

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資金移動業」とは、銀行などを除く事業者が100万円以下の「為替取引」を事業として営むことを指します。身近なところでは、近年広がりつつある「LINE Pay」などの個人間送金サービスがこれに当たります。

ここでいう「為替取引」とは、現金以外による決済方法のことをいいます。

たとえば、私たちが日常的に利用する銀行振込みや口座振替は、いずれも直接現金を相手に渡さずに、決済することができるため、為替取引にあたります。

資金移動業を事業とする場合には、内閣総理大臣(国)へのライセンス登録が必要になり、登録後においても様々な規制がかかります。

なお、2020年3月に国会に提出された資金決済法の改正案では、事業者が扱うことのできる金額に応じて資金移動業は以下の3つの類型に分類されています。

  1. 高額類型(第一種資金移動業)
  2. 現行類型(第二種資金移動業)
  3. 少額類型(第三種資金移動業)

(1)高額類型(第一種資金移動業)

高額類型」は、100万円を超える為替取引を行うことができる類型です。他の類型と異なり、高額類型だけは「内閣総理大臣の認可」が必要となるため、そのための審査に通過することが必須条件となります。

また、高額類型では利用者から預かった資金を一定期間以上、事業者の手元に置いておくことができません。これは、送金額が高額となることから、事業者が破綻した場合の影響力を可能なかぎり抑えようとする趣旨から事業者に課される義務です。

(2)現行類型(第二種資金移動業)

現行類型」は、数万円を超える金額から100万円までの為替取引を行うことができる類型です。現行類型は、従来の資金移動業と同じく、登録を受けることによって事業を行うことができます。

(3)少額類型(第三種資金移動業)

少額類型」は、少額(数万円程度)の為替取引を行うことができる類型です。少額類型についても、従来の資金移動業と同じく、登録を受けることによって事業を行うことができます。

このように、現時点で施行されるには至っていないものの、将来的に、資金移動業については3つの類型が設けられることになります。

2 資金移動業の登録要件

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資金移動業の登録を受けるための要件は、主に下記の4つになります。

  1. 株式会社または国内に営業所のある外国資金移動業者であること
  2. 資金移動業を適正かつ確実に遂行するために必要な財産的基盤があること
  3. 資金移動業を適正かつ確実に遂行する体制が整備されていること
  4. 他の資金移動業者と同一または類似の商号や名称を使用していないこと

(1)株式会社または国内に営業所のある外国資金移動業者であること

個人事業者ではなく株式会社であること、または、資金決済法に相当する外国の法令により資金移動業の登録に相当する登録を受けて為替取引を行っていて(外国資金移動業者)、日本国内に支店のある事業者であることが必要です。

(2)資金移動業を適正かつ確実に遂行するために必要な財産的基盤があること

事業者は、以下のような観点から、資金移動業を適切かつ確実に遂行するために必要な財産的基盤があるかどうかを審査されます。

  1. 履行保証金の供託等の義務を履行できるか
  2. ユーザーに対する資金の授受をスムーズに行えるだけの態勢をとっているか
  3. 収支の見通しについて、あらゆる状況を想定した対応方策が確立されていて、その場合でも一定の収益を見込める計画が確立されているか

ここでいう「履行保証金」とは、事業者が、送金途中にある資金の100%以上の金額を履行保証金として保全することが義務付けられるものです。

資金移動業者に求められる財産的基盤は、「〇〇円以上」といったように、定量的な基準は設けられていません。

(3)資金移動業を適正かつ確実に遂行する体制が整備されていること

資金移動業者には、送金業務を行うのに十分な業務運営や業務管理がなされることが求められます。

具体的には、資金決済法で定められている資産保全義務などが確実に履行されることが必要になります。

(4)他の資金移動業者と同一または類似の商号や名称を使用していないこと

他の資金移動業者と商号や名称が同一または類似していると、利用者が為替取引を提供する事業者の区別が困難になり、利用者の保護に欠ける可能性があるため、そのような商号や名称を使用することは認めらません。

このように、資金移動業の登録を受けるには、主に以上の4つの条件をすべて満たしていなければなりません。1つでも満たせない場合は、「登録拒否事由」となり、資金移動業としての登録を受けることができません。

3 ライセンス登録後の規制

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資金移動業者は、登録を受けた後においても、主に以下の4つの規制を課されることになります。

  1. 履行保証金の保全
  2. 利用者保護の措置
  3. 金融ADR制度への対応
  4. 報告書の作成・提出

それぞれを詳しく見ていきましょう。

(1)履行保証金の保全

資金移動業は、ユーザーなどから預かったお金を送金するサービスです。
とはいえ、万が一、資金移動業者が倒産するなどした場合に、ユーザーにスムーズに返金できるだけの措置を講じておく必要があります。

このような観点から、事業者は、送金途中で滞留している資金の100%以上を「履行保証金」として「保全」しなければなりません。

なお、保全を義務付けられる履行保証金の最低額は1000万円と決まっています。

そのため、送金途中で滞留している資金が500万円だったとしても、事業者が保全しなければならない履行保証額は1000万円ということになります。

履行保証金を保全する方法は、下記の3通りありますが、主に使われているのが「供託」です。

  • 資金移動業者の最寄りの法務局に供託する(供託)
  • 銀行や生命保険会社、損害保険会社と保全契約を結ぶ(保全契約)
  • 信託銀行と信託契約を結ぶ(信託契約)

これまでは、上記の保全方法のうち、履行保証金の一部を供託し、残りの金額を保全契約の締結により保全するというように、供託と保全契約を組み合わせることが認められていました。

これが改正案により、さらに、「保全契約+信託契約」「供託+信託契約」といった組み合わせで履行保証金を保全することが可能になります。

※履行保証金の保全について、詳しく知りたい方は、「割勘アプリに規制が!資金決済法改正ポイント3つを法律案を基に解説」の記事でも解説しています。

(2)利用者保護の措置

資金移動業者は、「利用者保護」のために以下の措置を取らなければなりません。

  • 利用者が銀行等の金融機関が行う為替取引と誤認しないような措置を取ること
  • 為替取引にかかる手数料その他の契約内容に関する情報を利用者に対し提供すること
  • 送金額等の資金を受領したときは、受領証書を交付すること
  • 社内規則等を定め、従業員に研修等を行うこと

このように、事業者は利用者に対し、取引に係る適切な情報を提供するとともに、受取証書を発行するなどして、利用者が安心して取引できるための措置を講じなければなりません。

(3)金融ADR制度への対応

金融ADR」とは、中立的な第三者の仲立ちにより、裁判によらない話し合い(あっせんや調停、仲裁)で当事者同士の合意を目指し、紛争を解決する制度です。裁判よりも手続きが簡易で費用負担も軽く済むことが特徴です。

資金移動業は「金融ADR」の適用対象となっているため、資金移動業者は以下の措置を講じる必要があります。

  1. 苦情処理措置
  2. 紛争解決措置

この点、認定資金決済事業者協会である一般社団法人日本資金決済業協会は、以下のような対応をとっています。

①苦情処理措置

会員である事業者は、同協会が実施する苦情解決により、利用者からの苦情の処理を図ります。

②紛争解決措置

会員である事業者は、同協会と東京三(弁護士)会が締結した協定を利用し、紛争を解決します。

(4)報告書の作成・保存

資金移動業者は、事業に関する帳簿書類を作成したうえで、保存しなければなりません。

また、資金移動業者は、主に、以下の報告書を作成し、金融庁に提出しなければなりません。

  • 事業概況書
  • 資金移動業に係る収支の状況を記載した書面
  • 貸借対照表
  • 損益計算書

これらの書類を事業年度の末日から3ケ月以内に金融庁長官宛てに提出しなければなりません。

※事業概況書、資金移動業に係る収支の状況を記載した書面に係る書式は、金融庁HPの「資金移動業者に関する内閣府令別紙様式19」をご覧ください。

4 資金移動業のライセンス登録手続き

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資金移動業のライセンス登録にあたっては、主に、下記の3種類の書類を登録申請書に添付して申請する必要があります。

  1. 登録拒否事由にあたらないことの誓約書面
  2. 財務に関する書類
  3. 資金移動業を適正かつ確実に遂行する体制の整備に関する事項を記載した書類

(1)登録拒否事由にあたらないことの誓約書面

資金移動業を行おうとする事業者において、事業を適切かつ確実に遂行するために必要とされる財産的基礎がなかったり、登録申請書などに虚偽の記載などがある場合、資金移動業の登録申請は拒否されることになります。

そのため、登録申請を行う際には、これらの登録拒否事由に自社があたらないことの誓約書面を添付する必要があります。

(2)財務に関する書類

資金移動業の登録を受けるためには、事業を適切かつ確実に遂行するための財産的基礎があることが条件となっています。

そのため、財務に関する書類として、最終の貸借対照表と損益計算書を添付する必要があり、また、事業開始後3事業年度における事業の収支の見込みを記載した書面を添付する必要があります。

(3)資金移動業を適正かつ確実に遂行する体制の整備に関する事項を記載した書類

資金移動業者には、送金業務を行うのに十分な業務運営や業務管理がなされることが求められるため、業務を適正かつ確実に遂行できるだけの体制が整備されていることが条件となっています。

たとえば、資金移動業に関する組織図や社内規則、利用者との為替取引に係る契約書類、資金移動業の一部を第三者に委託する場合における委託契約書などを添付する必要があります。

※登録申請書をはじめとした各種書類の様式については、金融庁HPで入手することができます。

5 罰則

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無登録で資金移動業を営んだ場合、その事業者には罰則が科されることになります。

そもそも為替取引を行うことができるのは、銀行等の金融機関に限られているため、無登録で資金移動業を行うことは、銀行以外の事業者が為替取引を行ったということを意味することになり、銀行法違反となります。

銀行法では、無登録で資金移動業を行った場合、

  • 最大3年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のいずれか、または両方を科される可能性があります。

6 小括

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現在では、わざわざ金融機関やコンビニなどに出向かなくとも、アプリで瞬時に決済ができるサービスが普及するなどして、さまざまな分野でキャッシュレス化が進んでいます。

そのため、資金移動業のニーズも高まり、今後も多くの参入が見込まれる事業の一つです。

とはいえ、資金移動業の登録を受けることは簡単ではありません。登録を受けるために必要な条件や申請に必要となる書類などを十分に理解し、自社の体制を整備するなどして登録申請を行うことが大切です。

7 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りです。

  • 登録が必要となる資金移動業は今後、取り扱う金額に応じて①第一種資金移動業、②第二種資金移動業、③第三種資金移動業の3つの類型に分けられる
  • 資金移動業の登録条件は主に、①株式会社または国内に営業所のある外国資金移動業者であること、②資金移動業を適正かつ確実に遂行するために必要な財産的基盤があること、③資金移動業を適正かつ確実に遂行する体制が整備されていること、④他の資金移動業者と同一または類似の商号や名称を使用していないことの4つである
  • 資金移動業の登録を受けた事業者には、①履行保証金の保全、②利用者保護の措置、③金融ADR制度への対応、④報告書の作成・提出などの義務が課される
  • 資金移動業の登録手続きに当たっては、①登録拒否事由にあたらないことの誓約書面、②財務に関する書類、③資金移動業を適正かつ確実に遂行する体制の整備に関する事項を記載した書類を添付する必要がある
  • 無登録で資金移動業を行った場合は、銀行法違反となり、①最大3年の懲役、②最大300万円の罰金、のどちらかまたは両方を科される可能性がある
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