NFTは暗号資産にあたる?暗号資産交換業の該当性を弁護士が解説!

はじめに
2021年初頭から急速に取引量を伸ばしているトークンの一つに「NFT」があります。
NFTに裏付けられた音楽やアートなどが数十億円にも上る金額で取引されているのをご存知でしょうか。
ツイッターの創業者ジャック・ドーシー氏による最初のツイートが、3億円を超える金額(日本円)で落札されたことは記憶に新しいところです。
この「NFT」ですが、法的にはどのような位置付けになるのでしょうか。
今回は、「NFT」について、問題となる法規制を中心に解説します。
1 NFTとは?

「NFT(Non-Fungible Token)」は、非代替性トークンとも呼ばれており、ブロックチェーン上の識別子を保有したトークンのことをいいます。
識別子を保有するNFTでは、トークンの保有者を明確にすることができ、この点は、識別子を保有しないビットコインなどと異なります。
また、NFTはそれぞれが独立していることから、それ自体に希少性があり経済的価値が生じます。
現在では、デジタルアートや音楽、ゲームアイテムなどの分野でNFT化が進められているとともに、NFTに適するコンテンツが世界中で模索されています。
国内に目を向けると、2021年3月24日、コインチェック社が「Coincheck NFT(β版)」の提供を開始したと発表しています。
「Coincheck NFT(β版)」は、ブロックチェーン上のNFTをコインチェック社で取扱う13種類の暗号資産(仮想通貨)と交換できるマーケットプレイスです。
NFTは、デジタル世界における権利を明確にすることができると期待されており、現在多くの注目を集めています。
2 NFTは暗号資産?

ブロックチェーン技術を使ったトークンとして有名なものに「ビットコイン」がありますが、ビットコインは一般に「暗号資産(仮想通貨)」として知られています。
そのため、同様にブロックチェーン技術を使うNFTの暗号資産該当性が問題となります。
資金決済法は、暗号資産を以下のように定義しています。
- 
【資金決済法2条5項】
この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
以上の定義を言い換えると、以下のようになります。
いずれかを満たす場合、暗号資産に該当することになります。
- 代価の弁済を目的として不特定の者に対して使用でき、かつ、不特定の者との間で法定通貨と交換できる
- 不特定の者との間で暗号資産と相互に交換できる
以上からすると、NFTの取引対象が限定的であったり、NFTに決済機能が備わっていない場合、「不特定の者」や「代価の弁済のために」という要件を満たさなくなるため、暗号資産にあたらないことになります。
また、ブロックチェーンに記録されたゲーム内アイテムなどは、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済機能を有していないと考えられるため、2号仮想通貨には該当しないと考えられます。
この点は、金融庁が同趣旨の見解を「コメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」で述べています。
このように、NFTを扱う場合、その流通性が及ぶ範囲などによって、暗号資産に該当する可能性があるため、注意が必要です。
3 暗号資産交換業の該当性は?

NFTが暗号資産に該当する場合に問題となるのが、NFTを扱う事業が「暗号資産交換業」にあたるかどうかということです。
ここでいう「暗号資産交換業」については、資金決済法が以下のように定義しています。
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【資金決済法2条7項】
この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
つまりは、暗号資産の売買・交換やその媒介、また、これらの事業に関してユーザーの金銭を管理したり他人のために暗号資産を管理したりすることを事業内容とする場合は、暗号資産交換業にあたるということになります。
この点、暗号資産にあたるNFTを売買することはもちろんのこと、NFTを取引する取引所を開設したりNFTのウォレットサービスなどを事業として行う場合には、暗号資産交換業に該当することになります。
暗号資産交換業を行う場合には、資金決済法上の登録を受ける必要がありますが、登録を受けるための要件はハードルの高いものになっています。
4 暗号資産交換業の登録要件|登録後の規制

暗号資産交換業の主な登録要件と登録後の規制は、以下のようになっています。
(1)登録要件
財産的基礎があることが条件となっており、資本金の額が1000万円以上であることと、純資産額がマイナスでないことが必要です。
また、ユーザーの財産(暗号資産や金銭などを)を扱うという業務の性質上、適正・確実に業務を遂行できる体制が整備されていることが求められます。
さらに、ユーザーの信頼を確保する観点から、コンプライアンス体制が整備されていることも登録を受けるための要件の一つになっています。
(2)登録後の規制
暗号資産交換業者は、登録後もさまざまな義務を課されることになります。
たとえば、事業によって扱うこととなるユーザー情報などを安全に管理するために必要な措置を講じる必要があります。
また、契約内容を適切に提供するなどして、ユーザーを保護しなければならないとする利用者保護義務や、ユーザーの金銭・暗号資産と自社の金銭・暗号資産を分けて管理しなければならないとする分別管理義務なども課されることになります。
5 まとめ
ブロックチェーンを用いたトークンを事業で扱う場合、暗号資産や暗号資産交換業の該当性を検討する必要があります。
もっとも、暗号資産交換業の登録要件は厳しい内容になっているため、登録を回避するためのスキームを模索することが非常に重要になってきます。
また、暗号資産交換業にあたることを前提に事業を進めたいと考えている事業者は、登録要件をはじめ難しい法規制が多く絡んでくるため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
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