ドローン規制で押さえておくべき基本を弁護士がわかりやすく解説!

はじめに

近年、さまざまな分野でドローンをビジネスに活用しようとする動きが高まっています。
将来的には、ドローンを活用した民間サービスが増えていくものと考えられます。

この点、政府は2022年度を目途にレベル4(有人地帯での目視外飛行)の実現を目指しており、そのための環境整備が進められています。

ドローンビジネスを検討している事業者は、多岐にわたる法規制を十分に理解することが必要であり、軽い気持ちでビジネスを始めてしまうと、気が付かないうちに法律に違反しているということにもなりかねません。

今回は、ドローンビジネスを検討している事業者が最低限押さえておくべき規制をわかりやすく解説します。

1 基本となるドローン規制

ドローン規制でまず押さえておく必要があるのは、「航空法」が定める基本的なルールです。
具体的には、以下の2つの規制です。

  1. 飛行場所の規制
  2. 飛行方法の規制

2 飛行場所の規制

航空法は、飛行禁止区域として、以下の2つの場所を定めています。

(1)航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域

「航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域」とは、具体的には、以下の2つの区域を指します。

  1. 空港などの周辺空域
  2. 高度150m以上の高さの空域

①空港などの周辺空域

空港の周辺などに設定されている進入表面や転移表面、水平表面などの上空空域において、ドローンを飛ばすことは禁止されています。

このような空域でドローンを飛ばすと、航空機との衝突や航空機の航行に支障を来すおそれがあるためです。

②高度150m以上の高さの空域

上空150m以上で、ドローンを飛ばすことは禁止されています。

この規制も、①と同様、航空機等との衝突などを防止するために課される規制です。

(2)人口集中地区(DID地区)の上空

人口集中地区(DID地区)の上空では、ドローンを飛ばすことが禁止されています。

たとえば、都市圏はそのほとんどが人口集中地区であるため、ドローンを飛ばすことはできません。
人口が密集する場所の上空でドローンを飛ばした場合、落下等により人に被害を及ぼすおそれがあるためです。

※人口集中地区にあたるかどうかは、国土交通省国土地理院のウェブサイトで確認することができます。


このように、航空法はドローンについて、飛行場所を規制しており、これらの飛行場所でドローンを飛ばすためには、国土交通大臣の許可を受けることが必要になります。

3 飛行方法の規制

航空法は、飛行場所とは別に、飛行方法についても一定の規制を設けています。

具体的には、以下の飛行方法を遵守する必要があります。

  1. アルコールや薬物の影響下で飛行させないこと
  2. 飛行前に確認をすること
  3. 周囲の状況に応じ、適切な飛行をすること
  4. 他人に迷惑を及ぼす方法で飛行させないこと
  5. 夜間に飛行させないこと
  6. ドローンとその周囲を目視で監視しながら飛行させること
  7. ドローンと人・物件との距離を30m以上保って飛行させること
  8. 多数の人が集まる催しが行われている場所の上空で飛行させないこと
  9. 爆発物などの危険物を輸送しないこと
  10. ドローンから物を投下しないこと

(1)アルコールや薬物の影響下で飛行させないこと

アルコールや薬物の影響によりドローンを正常に飛ばすことができないおそれがある場合は、ドローンを飛ばすことはできません。

このような状況でドローンを飛ばすと、衝突・落下等により、人や物に危害を及ぼすおそれがあるためです。

(2)飛行前に確認をすること

ドローンを飛ばす前に、ドローンの状況や実際に飛行させる空域とその周囲の状況、バッテリーの残量などを確認するとともに、ドローンの外部点検、作動点検を行わなければなりません。

そうすることにより、衝突・落下等の防止に繋がります。

(3)周囲の状況に応じ、適切な飛行をすること

航空機との衝突のおそれがある場合は、ドローンを地上に降下させるなど、周囲の状況に応じ、適切に飛行させることが必要です。

また、他のドローンが飛行していることを確認した場合は、自己のドローンとの間に安全な距離を確保したり、ドローンを地上に降下させたりするなどの対応が必要になります。

(4)他人に迷惑を及ぼす方法で飛行させないこと

必要がないにもかかわらず、高調音を発したり急降下したりするなど、他人に迷惑を及ぼすような方法でドローンを飛ばしてはいけません。

他人に迷惑をかけるだけでなく、事故に繋がるおそれもあります。

(5)夜間に飛行させないこと

ドローンは、日出から日没までの間でなければ、飛ばすことはできません。

視界が悪くなる夜間にドローンを飛ばすと、衝突・落下等により人や物に危害を及ぼすおそれがあるためです。

(6)ドローンとその周囲を目視で監視しながら飛行させること

ドローンを飛ばす際には、ドローンと周囲の状況を目視で常時監視できる状態でなければなりません。

これらの状況を目視できないと、衝突や落下を起こす可能性が高くなります。

(7)ドローンと人・物件との距離を30m以上保って飛行させること

ドローンと人・物件との距離があまりに近いと、衝突等のおそれがあります。

そのため、距離を30m以上保った状態で、ドローンを飛ばす必要があります。

(8)多数の人が集まる催しが行われている場所の上空で飛行させないこと

展示会や祭礼、縁日など、多くの人が集まる催しが行われている場所の上空でドローンを飛ばすことはできません。

このような場所でドローンを飛ばすと、衝突や落下等により人に危害を及ぼすおそれがあるためです。

(9)爆発物などの危険物を輸送しないこと

爆発性・易燃性のある危険物をドローンで輸送することはできません。

危険物が落下するなどして、人や物に危害を及ぼすおそれがあるためです。

(10)ドローンから物を投下しないこと

ドローンから物を投下することはできません。

投下により、人や物に危害を及ぼすおそれがあるためです。


このように、航空法はドローンの飛行方法について、10にも上る規制を設けています。

これらのうち、(5)~(10)については、国土交通大臣の承認を受けることにより、いずれかの方法によらずにドローンを飛ばすことができます。

4 まとめ

今回は、ドローン規制の基本となる「航空法」について見てきました。

このほかにも、小型無人機等飛行禁止法や民法、電波法、そして、自治体が独自に定める条例等もドローンに関する規制を設けているため、注意しなければなりません。
これらの規制に違反すると、懲役や罰金といった刑事罰を科される可能性もあります。

ドローンビジネスを検討している事業者は、まずは、基本となる航空法上の規制を十分に理解することが必要です。


弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
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IT・EC・金融(暗号資産・資金決済・投資業)分野を中心に、スタートアップから中小企業、上場企業までの「社長の懐刀」として、契約・規約整備、事業スキーム設計、当局対応まで一気通貫でサポートしています。 法律とビジネス、データサイエンスの視点を掛け合わせ、現場の意思決定を実務的に支えることを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所で、訴訟・紛争案件を中心に企業法務を担当。 2015年~2016年 知的財産権法を専門とする米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M. を取得。コンピューター・ソフトウェア産業における知的財産保護・契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、当時法制化が始まった仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の法令遵守等責任者として登録申請業務に従事。 その後、独立し、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業(投資顧問業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。 2020年8月 トップコート国際法律事務所に参画し、スタートアップから上場企業まで幅広い事業の法律顧問として、IT・EC・フィンテック分野の契約・スキーム設計を手掛ける。 2023年5月 コネクテッドコマース株式会社 取締役CLO就任。EC・小売の現場とマーケティングに関わりながら、生成AIの活用も含めたコンサルティング業務に取り組む。 2025年2月 中小企業診断士試験合格。同年5月、中小企業診断士登録。 2025年9月 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期課程)合格。

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