はじめに

ドローン法の改正により、自衛隊などの防衛関係施設周辺でのドローンでの飛行が原則禁止となりました。もっとも、どのような手続を行えば、飛行が可能になるのか知らない方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、自衛隊の防衛関係施設周辺でドローンを飛行させるために必要な手続を含め、禁止となったラグビーW杯やオリンピック会場でのドローンの飛行禁止などのドローン法の改正点について、弁護士が詳しく解説します。

1 ドローン法の改正点概要

(1)改正された法律

今回、改正されたのは

  1. 小型無人機等規制法
  2. オリンピック・パラリンピック競技大会特別措置法
  3. ラグビーW杯大会特別措置法

の3つです。

このうち②オリンピック・パラリンピック特措法と③ラグビーW杯特措法は、ドローンに関する規制が同一なため、その改正点については、同じくくりで解説します。

(2)改正の背景

ドローンに関する法律が改正された背景には、

  1. 安全保障上の問題
  2. セキュリティ・テロ対策

があります。

①安全保障上の問題

まず、今回の規制には、安全保障上の問題があります。日本各所に存在する自衛隊関連施設237か所のうち、87か所(37%)の上空は航空法などでの飛行規制がなされておらず、自由にドローンを飛行させることが可能となっていました。それだけでなく、アメリカ軍の関連施設についても、同様に規制が施されていなかったのです。そのため、誰でも内部の状況を把握することが可能な状況となっており、軍事的な機密が保護されていない事態となっていました。

また、それだけでなく、ヘリコプターや戦闘機が離着陸する場所であるため、ドローンと接触することで重大事故が発生するリスクがありました。

②セキュリティ・テロ対策

テロに対するセキュリティ上の問題もあります。2019年にはラグビーW杯、2020年には東京オリンピックが国内で開催されます。競技会の開催場所には、100万人を超えるひとが集まると試算されています。そのため、テロの標的となりうる重要施設や公共交通機関、大規模な集客施設を保護することで、観光客や選手を守るために、ドローンの規制を追加する必要が発生しました。

 

以上のように、安全保障上の施設を保護したり、多くの人が集まる大会において出来る限りリスクを減らすことが重要と判断されました。それにともない、ドローンに関する規制に関する法改正が実施されたのです。

2 改正点①:小型無人機等規制法

(1)改正前の小型無人機等規制法

小型無人機等規制法については、規制の基本的な枠組みは変わりありません。

改正前の小型無人機等規制法の基本的な枠組みとなる

  1. 飛行禁止の対象施設
  2. 飛行禁止の対象
  3. 飛行禁止場所
  4. 都道府県公安委員会等への通報
  5. ペナルティ等

以上5点について確認しましょう。

①飛行禁止の対象施設

従来から、飛行禁止となっていた施設は以下の通りです。

  • 国会議事堂
  • 内閣総理大臣官邸
  • 危機管理行政機関
  • 最高裁判所
  • 皇居・御所
  • 政党事務所
  • 外国公館(大使館や領事館など)
  • 原子力事業所

国家の政をつかさどる重要施設であったり、不測の事態が発生した場合に著しい被害を生み出しかねない施設などが保護の対象となっていました。

②飛行禁止の対象

飛行禁止の規制の対象となっているのは小型無人機特定航空用機器(気球・パラグライダーなど)です。

小型無人機」とは、遠隔操作や自動操縦によって飛行させることができ、人が乗ることのできない、飛行機、回転翼後期、滑空機、飛行船といった無人回転翼航空機(いわゆるドローン)や、ラジコンのような特定航空用機器に類似した機器のことを指します。

なお、「航空法」と異なり、200g未満のドローン(ホビードローン)についても規制の対象となっている点には注意が必要です。

③飛行禁止場所

飛行禁止の対象となっている小型無人機などは、飛行禁止の対象となっている国会議事堂などの施設上空だけでなく、その周辺地域を飛ぶこともできません。

飛行禁止として指定されている周辺地域は、

    (ⅰ)レッドゾーン

    (ⅱ)イエローゾーン

のふたつです。

(ⅰ)レッドゾーン

レッドゾーン」とは、対象施設の敷地の上空のことを指します。

たとえば、国会議事堂のように、塀と門でぐるっと囲われている施設の場合、その門と塀内部の敷地の上空がレッドゾーンとなります。

(ⅱ)イエローゾーン

イエローゾーン」とは、対象施設・敷地からおよそ300m以内の周辺地域の上空を指します。

④都道府県公安委員会などへの通報

レッドゾーンやイエローゾーンで小型無人機などを飛行させるには、48時間前までに対象施設や周辺地域を管轄する都道府県公安委員会に事前に通報する必要があります。

ここでいう「通報」とは、公安委員会に必要な提出物(通報書など)を提出することをいいます。

また、以下の施設や地域では、公安委員会だけでなく、追加で通報しなければいけない通報先がある点には注意が必要です。

  • 皇居・御所:皇宮警察本部長
  • 対象施設周辺地域が海域を含む場合:管区海上保安本部長

⑤ペナルティ等

規制を無視し小型無人機などを対象施設や敷地上空(レッドゾーン)で飛行させた場合は、

  • 最大1年の懲役
  • 最大50万円の罰金

のいずれかが科される可能性があります。

一方で、イエローゾーンでドローンなどを飛行させた場合、警察官などが飛行をやめるよう操縦者に命令をすることになっています(命令前置)。レッドゾーンのように即罰則が科されるわけではなく、イエローゾーンではこの命令に従わなかった場合に、罰則が科されることになります。

このように従来からある規制の基本的な枠組みは変わりありませんが、規制の対象施設や通報の方法などに一部変更が加えられました。

 

※小型無人機などをレッドゾーンやイエローゾーンで飛行させる場合の具体的な手続については警察庁の「飛行を行う場合の手続詳細」をご覧ください。

※小型無人機規制法のルールやイエローゾーンの範囲について詳しく知りたい方は、「ドローンを飛ばす際に注意すべき「無人機規制法」をIT弁護士が解説」をご覧ください。

(2)改正後の小型無人機等規制法

小型無人機等規制法の改正のポイントは、

  1. 防衛関係施設上空での飛行禁止
  2. ペナルティ

以上の2点です。

①防衛関係施設上空での飛行禁止

衝突事故発生リスクを未然に取り除くことや、安全保障上の目的で、従来の飛行禁止の対象施設に、あらたに防衛大臣が指定する自衛隊とアメリカ軍の施設とその周辺の上空でのドローン飛行が禁止されました。

指定された飛行禁止施設は、官報で告知され、インターネットなどで周知がはかられます。

防衛大臣が指定した施設の一覧については、防衛省の「小型無人機等飛行禁止法について」というホームページで確認することができます。

2019年7月10日時点では、自衛隊の一部施設が飛行禁止の対象施設として指定されています。

②ペナルティ

ドローンなどの小型無人機などを指定された対象施設やその周辺で飛行させた場合、

  • 最長1年の懲役
  • 最高50万円の罰金

のいずれかが科される可能性があります。

では、どのような手続を行えば、ドローンを飛ばすことができるのでしょうか。

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3 防衛関係施設上空や周辺地域で飛行させる場合の手続

ドローンを防衛関係施設上空などで飛ばすための手続は、以下のように飛ばすゾーンによって必要な手続きが異なります。

  1. 防衛関係施設の敷地または区域上空(レッドゾーン)
  2. 防衛関係施設の敷地または区域の周囲300mの上空(イエローゾーン)

(1)防衛関係施設の敷地または区域上空(レッドゾーン)

防衛関係施設の敷地または区域上空といったレッドゾーンでドローンを飛行させる手続きは以下の流れで行うことになります。

①同意の取得

指定された防衛関係施設の敷地や区域上空といったレッドゾーンでドローンを飛行させる場合は、まず対象となる施設の管理者の同意を飛行当日の10営業日前までに取得します。

ここで、同意を得られない場合、ドローンを飛ばすことはできません。

同意を得られた場合、次に、飛行当日の48時間前までに関係者への通報を行う必要があります。

②関係者への通報

通報する必要がある関係者は以下のとおりです。

  • 対象防衛関係施設の管理者
  • 対象施設周辺地域を管轄する都道府県公安委員会
  • 管区海上保安本部長(※対象防衛施設周辺地域に海域が含まれる場合のみ)

これらの関係者に、通報書を提出し、実際に飛行させる予定のドローンを提示する必要があります。もっとも、ドローンの提示が困難な場合には、ドローンの写真を提出することで代用することができる場合があります。

通報の際に提出する通報書に記載が必要な事項は以下のとおりです。

  • 小型無人機等の飛行をおこなう日時と目的
  • 小型無人機を飛行させる対象施設の区域
  • ドローン操縦者の氏名・生年月日・住所・電話番号
  • ドローン操縦者の勤務先の名称・住所・電話番号(業務として行う場合)
  • ドローンの製造者・名称・製造番号・色・大きさ・積載物といった特徴
  • (船から飛行させる場合)船舶の名称・船舶番号・稜線登録番号・船種・船籍港や総トン数

なお、対象防衛関係施設の管理者から同意を得る際に、通報書に記載が必要な上記事項について既に提出している場合には、管理者への通報は不要となります。

(2)防衛関係施設の敷地または区域の周囲300mの上空(イエローゾーン)

防衛関係施設の敷地または区域上空の周囲300mといったイエローゾーンでドローンを飛行させる手続きは以下の流れで行うことになります。

①防衛関係施設の管理者の同意が不要な場合

以下の場合には、防衛関係施設の管理者の同意なく、通報の手続のみでイエローゾーンでドローンを飛行させることができます。

  • 国または地方公共団体の業務の場合
  • 土地所有者や占有者が飛行させる場合
  • 土地所有者や占有者から飛行の同意を得た場合

これらのケースにあたらない場合については、防衛関係施設の管理者の同意を取得し、関係者への通報を行う必要があります。

②通報時の提出物

通報の関係者はレッドゾーンと同様です。

もっとも、防衛関係施設の管理者の同意なく、通報の手続のみでイエローゾーンでドローンを飛行させる場合には、通報書・ドローンの提示に加えて、追加の提出物がある点には注意してください。

    【国または地方公共団体の業務の場合】

  • 業務を委託されていることを証明することができる書面の写し 例)業務委託契約書
    【土地所有者や占有者から飛行の同意を得た場合】

  • 同意を得たことを証明することができる書面の写し 例)土地所有者の署名捺印のある同意書

以上のように、原則防衛関係施設やその周辺地域での飛行は禁止されますが、適切な手続をふめば、ドローンの飛行は可能となります。

もっとも、ドローン法の改正は、防衛関係施設の飛行禁止のみならず、ラグビーやオリンピック会場での飛行も禁止しています。

4 改正点②:ラグビーW杯・オリパラ特措法

ラグビーW杯とオリンピック・パラリンピックの準備・運営のための時限的な法律であるラグビーW杯特措法、オリンピック・パラリンピック特措法も改正され、ドローンに関する規制が設けられました。

これらの特措法については、以下の3点を確認します。

  1. 会場上空での飛行禁止
  2. 空港の周辺上空での飛行禁止
  3. 飛行させる場合の手続き

(1)会場上空での飛行禁止

改正ラグビーW杯特措法とオリンピック・パラリンピック特措法で、あらたにドローンの飛行が禁止されたのは、ラグビーW杯およびオリンピック・パラリンピック組織委員会の要請に応じて文部科学大臣が指定する大会会場や関連施設の上空です。選手や観客の安全や、競技を円滑に進め、大会を遅滞なく運営させるための措置です。

たとえば、国立競技場や周辺地域の上空が飛行禁止となる見込みですが、文部科学大臣による具体的な施設の指定は2019年7月10日時点でまだ行われておりません。指定がなされる場合には、地図が作成され、官報やインターネットに掲載され、周知されることになります。

(2)空港の周辺上空での飛行禁止

加えて、ラグビーW杯やオリンピック・パラリンピックの選手や関係者が円滑に、そして安全に移動できることを目的として、国土交通大臣が指定する空港およびその周辺でのドローンの飛行が禁止されました。

国土交通大臣による具体的な空港の指定は2019年7月10日時点でまだ行われておりません。

(3)飛行させる場合の手続

具体的な手続の公表についても、2019年7月10日時点でまだ行われていませんが、以下のフローが想定されています。

ドローンで、ラグビーやオリンピック、パラリンピック会場や周辺の撮影をしたい場合には、原則としてそれぞれの組織委員会の同意を得た上で、公安委員会などに通報する流れとなりそうです。。また、関連する空港とその周辺に関しては、原則として空港の管理者の同意を得て、公安委員会などに通報することになる見込みです。

5 施行日

改正ドローン法は、2019年5月17日に成立し、同年5月24日に公布、同年6月13日から施行されています。

施行日の6月13日以降は、改正ドローン規制法が適用され、指定された防衛関係施設上空とその周辺でのドローンの飛行は禁止されます。飛行させたい場合は、該当する施設の管理者の同意を得る必要があります。

6  小括

あたらしいドローン規制がいつから有効になるかを確認せずに、これまで通り飛ばしたら、いきなり逮捕された、ということが起きかねません。

今回見てきた通り、2019年6月13日以降は、防衛関連施設でのドローン飛行は原則禁止となりますし、ラグビーW杯やオリンピック・パラリンピック会場や空港などについても指定されれば、規制がかかることになります。そのため、規制内容を確認して、適切に手続をふんだうえでドローンを利用しましょう。

7 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 改正された法は、①小型無人機等規制法、②オリンピック・パラリンピック特別措置法、③ラグビーW杯大会特別措置法である
  • 改正された背景には、①ドローン飛行申請とトラブル・事故の増加、②安全保障上の問題、③テロ対策がある
  • 飛行が規制されているのは、対象施設の上空とその周辺300m以内の上空である
  • 小型無人機等規制法の改正で、あらたに規制されたのは防衛関連施設とその周辺の上空である
  • ラグビーW杯・オリパラ特措法の改正で、あらたに規制されたのは大会とその周辺および関係空港とその周辺の上空である
  • 小型無人機等規制法が施行されるのは、2019年6月13日である