婚約破棄で慰謝料請求された!拒否できる3つのケースを弁護士が解説

婚約破棄で慰謝料請求され、「結婚の話は確かにしてたけど、婚約破棄とまで言われる?」「相手にも問題があって別れたのに、慰謝料なんて払わなきゃいけないの?」といった気持ちではないでしょうか。

慰謝料なんか払いたくない、払わなきゃいけないとしても金額は最小限に、また穏便に済ませたいというのが本音でしょう。

結論、客観的にみて「婚約していた」といえない場合、正当事由があって婚約破棄した場合、時効がすぎている場合など、支払わなくてよいケースはいくつかあります。

また、慰謝料請求は相手が妥当な金額よりも高く「ふっかけてくる」のが常で、払うにしても大きく減額できる可能性が高いです。

金額を最小限に抑えるための対処法はあります。

そこで本記事では、婚約破棄で慰謝料請求された場合、支払わなくてよいケース、慰謝料の相場・減額できるケース、実際にとるべき対処法などを解説していきます。

ぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

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1.婚約破棄で慰謝料請求されても支払わなくてよい3つの条件

婚約破棄で慰謝料請求されても支払わなくてよい3つの条件

慰謝料請求された側としては、当然支払いたくない、それができなくても減額を目指すことになります。

そのためまずは法的なルールを確認し、「払わなきゃいけないのか」見通しを立てましょう。

拒否できるかの争点になるのは、以下の3つのポイントです。

【争点になる3つのポイント】

  1. そもそも「婚約」していたと言えるのか
    →「婚約」が成立していなければ慰謝料を払わなくてよい
  2. 婚約破棄した「正当事由」はないのか
    →正当事由があれば慰謝料を払わなくてよい
  3. 時効はすぎていないか
    →時効がすぎていれば慰謝料を払わなくてよい

要するに、(1.)そもそも「婚約」が成立していないか(2.)「正当事由」があるか(3.)時効がすぎているか、どれかに当てはまれば、慰謝料を払う義務はありません。

とはいえ、あなた個人の判断で結論づけていいものでもないので、「客観的にどう判断されるか」を弁護士に相談する必要があるケースは多いです。

そのつもりで、それぞれチェックしてみてください。

1)【支払わなくてよい条件①】そもそも「婚約していた」といえない

「婚約破棄」を理由に慰謝料請求されているわけですから、当然「婚約していた」といえないケースなら慰謝料を払う必要はないことになります。

まず前提として、「婚約」というものに法律上、明確な定義があるわけではありません。

そのため極端にいえば「結婚しようね」という口約束だけでも、双方がそう思っていれば婚約は成立します。

ですが、婚約していたかを争う場面でいえば、状況証拠として不十分になるでしょう。

裁判所が「婚約していた」と客観的に判断するには、以下のような事実が必要になります。

【婚約していたと判断される可能性があるケース】

  • お互いの親へ「婚約者」として紹介した
  • 結婚を前提に同棲していた
  • 結婚式の予約していた
  • 新婚旅行の予約をしていた
  • 会社や友人に対して結婚する旨の報告をした

ただし、これらの事情1つ1つをとっても、「結婚の期待度」が段階的にあります。

例えば「結婚式の準備をしていた」という事実についていえば、下図のように色々なシチュエーションがあり得るでしょう。

「結婚式の準備をしていた」

1番上の「結婚式を予約していた」状況であれば、客観的にみて「婚約してない」というのは無理があります。

逆に、2人で「結婚式は教会(あるいはお寺)で挙げたいよね」などとアバウトに話し合っていただけなら、「婚約していた」という根拠としては弱いです。

2)【支払わなくてよい条件②】婚約破棄した「正当事由」がある

「婚約破棄をしても仕方がない」という事情があって婚約破棄をしたケースもあるでしょう。

「婚約破棄しても仕方がない」といえる理由を「正当事由」といいます。

言い換えれば、相手が悪い・または自分も相手もどちらも悪かった、といえる事情です。

この正当事由が認められれば、慰謝料は払わなくて大丈夫です。

婚約破棄の正当事由とは具体的に、以下のようなものが挙げられます。

【例:婚約破棄の正当事由】

  1. 相手が不倫をした
  2. 相手からの暴力・虐待(DV/モラハラ)があった
  3. 相手が著しく非常識な言動を行った
  4. 相手が重大な隠し事をしていた
    既婚者隠し
    ・多額の借金(500万円以上が目安)
    ・犯罪歴(詐欺・暴力団関係)など
  5. 相手の収入が激減した、収入がなくなった
  6. 相手が重大な病気になった、障害者となった
  7. 相手親族からの差別や嫌がらせがあった
  8. 人生設計がどうしても擦り合わせられない
    ・子供の有無・居住地・宗教など、妥協不可能な対立
    ・相手の性機能障害が発覚した

要するに、「この人とは結婚できないな」というもっともな理由があった場合、婚約破棄したとしてもあなたは悪くありません。

とはいえ、これらの理由が必ずしも「正当事由」として全面的に認められるとは限りません。

例えば、(8.)個めに挙げた「人生設計がどうしても擦り合わせられない」という理由であれば、婚約前に擦り合わせるべきであり、「婚約してから破棄するのは正当事由じゃない」と判断される場合もあります。

3)【支払わなくてよい条件③】時効がすぎている

慰謝料請求には時効があります。

請求される側の目線でいえば、時効をすぎていれば慰謝料を払わなくていいことになります。

時効は、慰謝料請求の根拠が(ⅰ)不法行為か(ⅱ)債務不履行かによって異なります。

【2種類の時効】

根拠 時効
(ⅰ)不法行為(民法709条) ・不貞行為(不倫)
・差別による婚約破棄
・重大な隠し事が原因で婚約解消した(借金・犯罪歴・性病など)
3年
(ⅱ)債務不履行(民法415条) 上↑の不法行為には当てはまらないものの、婚約という「契約」を破った(不履行)したケース 5年

どちらの根拠がとられるかは、個々の事情によりますし、最終的には裁判所の判断によるところでもあります。

時効がすぎているというケースは多くはないでしょうが、少なくとも「大昔の婚約破棄について今さら慰謝料請求される」ことはないと覚えておいてください。

2.婚約破棄で請求される慰謝料の相場

2.婚約破棄で請求される慰謝料の相場

1章では、慰謝料を払う必要があるのかどうかをチェックしました。

拒否が難しいケースであれば、状況からして妥当な金額まで慰謝料を下げる方向性で交渉していくことになります。

婚約破棄の慰謝料相場は、50万円〜200万円程度とされています。

金額に開きがあるのは、婚約破棄したカップル1組1組の事情がそれぞれ考慮されるためです。

金額に影響する要素は、主に以下の4つです。

【慰謝料の金額に影響する4つの要素】

  1. 結婚への期待度
  2. 婚約破棄の正当事由があったか
  3. 訴えられた側に悪質な行為(不貞行為・暴力など)があったか
  4. その他、相手の精神的苦痛を増加させるような事情
  5. 相手側の落ち度

1章で解説した婚約の期待度と正当事由がここでも関係してきます。

それぞれの要素を考慮して、慰謝料が減額できるケース、逆に高くなるケースをみていきましょう。

1)婚約破棄の慰謝料を減額できるケース

慰謝料請求された側としては、慰謝料をなるべく減額したいところですよね。

先に挙げた4つの要素に照らし合わせると、慰謝料を減額できるのは以下のようなケースです。

【慰謝料を減額できるケース】

状況
(1.)結婚への期待度が低かった ・結婚式や新婚旅行のスケジュール・場所・プランなどについて具体的には決めていなかった
・両親に紹介はしていなかった
・同棲はしていたが、賃貸名義は片方のもので、財布も別々だった、など
(2.)婚約破棄の正当事由があった 1章で紹介した「正当事由」がある
(3.)あなた側に悪質な行為がなかった ・不貞行為(不倫)はしていない
・暴力(DV・モラハラ)などはしていない
・重大な隠し事もしていない
(4.)その他、相手の精神的苦痛を増加させるような事情がなかった ・交際期間・婚約期間が短い(1年以内くらいが目安)
・妊娠・出産・中絶などはなかった
・婚約破棄された時の年齢がまだ若い
(5.)相手の方にも落ち度があった ・相手に浪費癖があった
・相手が性交渉を拒否していた(正当な理由なく)
・相手方の家族からの態度が冷たかった、など

なお、上表にあるような「減額するべき」と判断される根拠を「減額要素」といいます(逆は「増額要素」)。

実務では、④の例として挙げている「付き合っている期間が短い」だとか⑤「相手にも落ち度がある」ことが考慮されて減額されるケースが多いです。

相手にも落ち度があるケースというと例えば、相手に浪費癖があったり、性交渉をかたくなに拒否していたりなど。

また、大きなケンカがきっかけで婚約解消になるケースも多いと思いますが、このケンカの原因として、双方に問題があった場合なども、減額要素になりえます。

2)婚約破棄の慰謝料が高額になってしまうケース

反対に、以下のような条件が揃っていれば慰謝料が高額になってしまうことになります。

【慰謝料が高額になってしまうケース】

状況
(1.)結婚への期待度が高かった ・新婚旅行や結婚式をすでに予約までしていた
・同棲し、家計を一緒にしていた
・結納の儀式をしていた、など
(2.)婚約破棄の正当事由がなかった 1章で紹介した「正当事由」がない
(3.)あなた側に悪質な行為があった ・不貞行為(不倫)をしていた
・暴力(DV・モラハラ)をしていた
・重大な隠し事をしていた
(4.)その他、相手の精神的苦痛を増加させるような事情がなかった ・交際期間・婚約期間が長い(2年以上くらいが目安)
・妊娠・出産・中絶があった
・婚約破棄した時点で相手が結婚適齢期(20代後半〜30代前半)だった
(ⅳ)相手側には落ち度がない 相手は非常識な行為などなく、浮気もしておらず、重大な隠し事などもなかった

特に、(3.)で挙げた、不貞行為(不倫)や暴力(DV・モラハラ)があった場合は大きい要員として考えられます。

これらの行為があった場合、そうでないケースに比べて1.5~3倍ほど慰謝料が高くなると考えておいてよいでしょう。

3.【どうすればいいか】婚約破棄で慰謝料請求された場合の対応・流れ

【どうすればいいか】婚約破棄で慰謝料請求された場合の対応・流れ

それでは、婚約破棄で慰謝料請求された場合に「実際どうすればいいか」という話に入りましょう。

いきなり「慰謝料請求された」となると焦る気持ちがあるかもしれませんが、ひとまずは落ち着きましょう。

慰謝料の支払いをあなたにとって不利にならない形で進められるように、請求が来たら以下の順序で対処していくことが鉄則です。

1)相手からの訴えにひとまず対応する

「慰謝料請求された」というと、相手本人や相手方の弁護士から電話で連絡が来たり、内容証明郵便が届いたなどのケースがあるでしょう。

ここで大事なポイントは、以下の2つです。

【大事な2つの初期対応】

  1. 無視はせず、誠意をもって返事すること
  2. ただし、「わかった、支払う。」と言ってしまわないこと

(1.)相手からの訴えを無視してはいけません。

理由は次の章で改めて解説しますが、無視を続けると最終的に相手の請求する金額がそのまま裁判所に認められてしまうからです。

(2.)事態をはやく、丸く収めたい気持ちがあるかもしれませんが、「(少なくとも請求された金額を)わかった、支払う。」と明言してしまってもいけません。

軽い口約束のつもりでも、相手に有利な証拠として使われかねないからです。電話であれば、録音されている可能性もあります。

以上をまとめて、ひとまず「検討します」「内容を確認した上で真摯に対応します」といった返答をして、話し合いに応じる姿勢があることを示しましょう。

そうして時間を稼いでいる間に、弁護士に相談する(次のステップ)のがベストな対応といえます。

2)弁護士に相談する

相手の訴えの内容を確認したら、いち早く弁護士に相談することが大切です。

先述の通り、慰謝料を払う必要があるかどうか、払うとして、金額は妥当か、など専門家でなければ判断が難しいからです。

また、慰謝料を妥当な金額まで減額するのも、弁護士の法的知識や交渉ノウハウがなければ難しいです。

初回の相談は無料の弁護士事務所もあるので、なるべく早めに相談することをおすすめします。

弁護士に相談したら、付き合い始め〜現在までの状況や、婚約破棄の理由などを詳しく弁護士に話します。

あわせて、あなたの主張を裏付ける証拠・データを弁護士に渡しつつ、交渉の準備をしてもらうことになります。

3)慰謝料を減額してもらうよう交渉する

慰謝料請求された側としては、減額を求めて交渉することになります。

減額の交渉は、相手とあなたの当事者間ですることもできますが、円満解決になるケースの多くは、弁護士が交渉するケースです。

弁護士に依頼した場合、交渉自体は全て弁護士に任せられます。

弁護士は、あなたがヒアリングで話した状況と、あなたが提出した証拠にもとづいて、最大限慰謝料を低くするよう交渉します。

なお、交渉の中で「争点」となるポイントについて、その都度ヒアリングされることや、証拠を求められたりすることもあるので、弁護士からの連絡には速やかに対応しましょう。

4)示談書を作成する

相手方と慰謝料の金額や支払い方法・期限などの交渉がまとまったら、示談となり、示談書を作成します。

口約束だけだと、後から追加で慰謝料を請求されるといったこともありえるので、書面で「今回の件での慰謝料は◯◯万円」といった文言を明記しておくわけです。

また、第三者に口外したり、インターネットに書き込んだりされないように、守秘義務についても合意を取って文言を盛り込んでおきましょう。

ちなみに、示談書の作成は、あなたと相手方のどちらが行っても構いません。

作成した後は署名・捺印し、各人が保管します。

弁護士に対応を依頼しているなら、そのまま示談書の作成もお願いすれば確実です。

5)慰謝料を支払う

慰謝料の金額が決まれば、合意した条件にもとづいて支払いを行います。

支払い方法、支払い期日などを守って入金します。

支払いを無視したり滞らせたりすると、強制的に差し押さえとなる可能性もあるので注意してください。

6)解決に至らない場合は裁判で決着する

相手が慰謝料の減額を譲らないなど、交渉してもどうしても合意に至らないときは裁判になる可能性もあります。

といっても、慰謝料請求の案件は約80%の事案が示談交渉で解決しており、裁判にまで発展するケースは多くないと思って大丈夫です。

お互い妥当な金額の慰謝料に落ち着けられるのであれば、示談の方がお互いにとって良いからです。

4.婚約破棄で慰謝料請求された時にやってはいけない3つのこと

婚約破棄で慰謝料請求された時にやってはいけない3つのこと

5章で慰謝料請求された時の対処法を解説しました。

その一連の対応の流れの中で「やってはいけないこと」が3つあります。

それぞれ漠然とした理由からではなく、あなたにとって明確なリスクとデメリットがある行為なので、必ずチェックしてください。

1)感情的になる

慰謝料請求されたことで、どうしても腹が立つケースがあるかと思いますが、感情的になるのは避けるべきです。

例えば相手と対面で「訴えるから」と言われた時に怒鳴りつけたり、内容証明郵便が届いた時に怒りの電話やLINEを送るなど。

なぜなら、このような感情的な対応が「相手の精神的苦痛を増加させた」要素としてカウントされるリスクがあるからです。

怒りに任せて送ったLINEを保存されていたり、会話(電話にせよ対面にせよ)を録音されていたりすれば、あなたの悪質性に拍車をかけます。

また、SNSに「あいつが悪いのに」といった投稿をしたりすると、名誉毀損で50万円の追加賠償が課せられた判例もあるのでさらに注意が必要です。(東京地裁令和4年)

2)正式な請求を無視する

正式な請求とは、内容証明郵便が届いたり、裁判所から訴状が届いた場合などです。

このような状況で「正式に」請求された場合は、放置・無視は絶対にNG です。

というのも、正式な請求を無視することを「消極的同意」といい、「相手の請求内容を全て認める」と判決されてしまうのです。

また、判決がでてから今度「支払い」を無視しているとなれば、銀行口座や給料を含めた資産の差押・凍結までされるリスクがあります。

無視し通すことは絶対にできないですから、早めに対応策を打つのが得策です。

3)証拠隠滅や口止めをしようとする

慰謝料請求される場合、相手に証拠が充実していればいるほど、あなたは不利になります。

ですが、あなたの利益を考えても、証拠隠滅は絶対にやってはいけません。

例えば、「結婚しようね」といった旨のメッセージを削除したり、SNSの投稿を削除したり、婚約相手の日記を勝手に捨てたり、など。

このような証拠隠滅は、相手側に弁護士がついていれば復元などの手法で意外と簡単にばれてしまいます。

また、証拠隠滅が発覚した場合、「証拠隠滅罪」という立派な犯罪になり、最悪の場合刑事告訴にまで発展するリスクがあります。

そうでなくても、あなたの「悪質性」が強調され、慰謝料が高くなることも十分に考えられます。

同じ理由で、あなたから婚約を知らされていた人や浮気を知っている人などに口止めなどをするのもやめましょう。

5.婚約破棄の慰謝料を拒否または減額できた事例・判例

5.婚約破棄の慰謝料を拒否または減額できた事例・判例

婚約破棄に限らず、慰謝料というものは、請求する側の方からは高い金額を「ふっかけられる」のが常です。

だからこそ請求された側としては、交渉や裁判によって減額を主張するわけですが、ここでは実際にその減額がかなった判例をいくつか紹介していきます。

1)3,000万円の慰謝料請求を300万円にまで減額した判例

この事案では、女性が男性から、婚約破棄+暴行をされたとして3,316万円超の慰謝料を請求しました。

付き合っていた時に買った家の費用などもあわせて請求されたため、このような超高額な請求になっていますが、この点は裁判所が却下(認めない)として、大幅な減額になりました。

【判例の詳細】

もともとの請求額 3,300万円超
支払い額 300万円
婚約の根拠 ・両親への結婚前提の紹介

・共同での不動産購入

・友人への婚約者としての相互紹介

婚約破棄の正当事由 なし
増額要素 相手女性への暴力行為
参照 神戸地方裁判所 平成14年1月31日判決

とはいえ今回の件では、婚約破棄に加えて女性への暴力などもあったため、先に示した相場よりも高い300万円での決着となっています。

暴力のような「悪質な行為」が重なれば慰謝料が高くなること、そして、相手は妥当な金額よりもはるかに高く請求してくることがわかる判例でしょう。

2)短期交際を理由に大幅減額した判例

こちらの判例は、正確な請求額こそ不明ですが、少なくとも30%ほど減額に成功した事例とされています。

女性の妊娠・流産があったため100万円にはなりましたが、一方で付き合っていた期間が5ヶ月と非常に短いことが理由で減額ができています。

【判例の詳細】

もともとの請求額 おそらく150万円~200万円
支払い額 100万円
婚約の根拠 女性の妊娠あり

男性も婚約自体は認めていた

婚約破棄の正当事由 なし
増額要素 女性の妊娠あり
減額要素 交際期間が短い(5ヶ月)
参照 東京地方裁判所 平成19年4月27日判決

3)婚約破棄に「正当事由」があるとして慰謝料0円にできた事例

最後に、慰謝料請求を完全に跳ね除け、支払いを0円にした事例も紹介しておきます。

この事例では、男女はお互いに結婚歴があり、どちらにも子供がいました。

そんな中で男性は女性にプロポーズし、2人で家を買う計画も立てていたようです。

しかし、家の購入や子供との関係等を巡って大きなケンカとなり、そのまま関係修復できずに別れました。

その後、男性側から「不当に婚約破棄された」として慰謝料請求したわけですが、婚約解消の原因は2人の性格・人生設計の不一致であり、一方的な破棄ではないし、正当事由があると判断されたとのこと。

【事例の詳細】

もともとの請求額 600万円近く
支払い額 0円(完全拒否)
婚約の根拠 なし
婚約破棄の正当事由 人生設計がどうしても擦り合わせられない
参照 解決事例-京浜蒲田法律事務所

1章で述べたように、婚約破棄に正当事由があれば慰謝料の支払い義務はありません。

今回の場合、結婚の話は確かに目前まで来ていたものの、あくまで2人の話し合いで別れたわけですから、一方的な「破棄」ではありません。

このように、事実をきちんと認識してもらえれば、完全拒否して支払い0円にすることも十分にありえます。

6.婚約破棄で慰謝料請求されたら弁護士にご相談ください

6.婚約破棄で慰謝料請求されたら弁護士にご相談ください

婚約破棄で慰謝料請求された場合は、弁護士への相談が欠かせません。

内容証明郵便が相手本人から届いていたり、口頭で相手本人から「訴えるから」と言われただけであれば、急いで相談する必要はないかもしれません。

しかし、弁護士名義で内容証明郵便が届いたり、裁判所から「訴状」が届く形で訴えられた場合は、迷わず弁護士への相談をしてください。

実際に弁護士がやってくれることと、依頼するメリットとしては大きく以下の4つが挙げられます。

【弁護士に相談する3つのメリット】

  • 慰謝料を最大限下げてくれる
  • 手続きを全ておまかせなので精神的・時間的負担をなくせる
  • 職場にバレたりするリスクも最小限にできる

それぞれ詳しく解説していきます。

1)【メリット①】慰謝料を最大限下げてくれる

弁護士に相談する1番のメリットは、慰謝料の金額を最大限下げてくれることです。

先にも述べましたが、慰謝料請求は相手が妥当な金額よりも高く「ふっかけてくる」のが常です。

それでも、法的な知識や交渉のしかた、証拠の活かし方などのノウハウがなければ、十分に減額することができません。

弁護士に依頼することで、平均すると相手の請求額から30%〜60%近く減額できることが多いですし、先に挙げた事例のように、完全拒否(0円)にできるケースもあります。

なお、慰謝料請求の弁護士費用はほとんどが成功報酬ですから、弁護士費用がかかったとしても慰謝料減額できた分のプラスの方が大きくなります。

成功報酬が減額分の20%だとしましょう。

300万円請求された慰謝料を100万円にまで減額できた場合、減額分として200万円の利益を得つつ、弁護士費用として40万円(減額分の20%)を払うことになります。

  • 200万円ー40万円=160万円

上記のように、あなたの手元に残るお金はプラスになりますから、「弁護士費用がかかる」といえども、弁護士に相談した方がメリットが大きいのです。

2)【メリット②】手続きを全ておまかせなので精神的・時間的負担をなくせる

訴えを受けた当事者にとって、示談交渉や裁判準備は精神的・時間的に大きな負担になりますが、弁護士に依頼すればこうした負担を軽減できます。

例えば、訴えてきた相手方と直接やり取りするのは、お互いに感情的になりやすく、それだけで大きなストレスになりかねません。

弁護士に間に立ってもらえれば、直接的な接触がないため、こうした摩擦が起きるのを避けられます。

また、自力で対応しようとする場合、法的な手続きの方法を1から調べたり、相手との話し合いのために逐一時間を使ったりしなくてはいけません。

こういった時間の面での負担も、弁護士に任せることで解消されるでしょう。

3)【メリット③】職場にバレるリスクを最小限にできる

弁護士に依頼することで、職場にバレるリスクを最小限にできるのもメリットとして挙げられます。

慰謝料請求はあくまで民事事件であり「犯罪」ではないものの、職場にバレるのは避けたいところでしょう。

慰謝料請求に自分で対処するとなると、裁判所に出向く必要があったりして、会社を休まなければならない日もでてきます。

そのほか裁判関係の書類が職場に転送されたり、あなたの様子の変化から同僚に勘づかれたり、さまざまなところからバレるケースがあります。

その点、弁護士に交渉を全て任せれば、職場にまで問題が広がることがないため、バレるリスクはほぼゼロに抑えられます。

まとめ

婚約破棄で慰謝料請求された場合、以下の3つのどれかに当てはまっていれば支払う必要はありません。

  • 【条件①】客観的にみて「婚約していた」といえない
  • 【条件②】婚約破棄した「正当事由」がある
  • 【条件③】慰謝料請求の時効がすぎている

まずはこれらに当てはまっていないかチェックしてみてください。

支払い拒否はできない状況であれば、相手から提示された金額からできるだけ減額する方向性で対処しましょう。

婚約破棄の慰謝料相場は50万円〜200万円程度であり、それ以上の請求を受けていたら、相手が「ふっかけてきている」ことが考えられます。

そのため、請求された初期の段階で「分かった、払う」と言ってしまわないように気をつけつつ、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、法的なルール・判例などの知識に加え、交渉のしかた、証拠の活かし方などのノウハウがあり、請求額から30%〜60%近く減額できる可能性が十分にあります。

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