貞操権侵害の慰謝料の相場は?増額できる10つの要素と判例を解説!

「貞操権侵害で慰謝料を請求したい」とお考えの方にとって、慰謝料の相場は重要なポイントです。
相場次第で本当に訴えるか決める、あるいは、相手男性が「慰謝料を払うと言ってきたが、金額が安いのではないか?」と不審に思っているケースなどがあるでしょう。
結論、貞操権侵害の慰謝料相場は50万円〜300万円程度。あえてピンポイントにいえば60万円が1つの基準といえます。
ただし、慰謝料はあなたの事情を考慮して最終的に決められます。
そのため正確な慰謝料を把握するには、慰謝料が高くなる「増額要素」と、逆に安くなる「減額要素」を知り、あなたのケースに当てはまっているかチェックすることが大事です。
そこで本記事では、貞操権侵害で請求できる慰謝料の相場にはじまり、「増額要素」と「減額要素」、請求するための手順などを解説していきます。
実際の判例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 貞操権侵害の慰謝料相場は50万円〜300万円程度。ピンポイントにいうなら60万円が1つの基準
- 慰謝料が高く請求できる「増額要素」は以下の10つが挙げられる
- 逆に、相手が既婚者であると知ってからも交際を続けた、相手が既婚者だと見破れる可能性が高かった、などの事情は慰謝料を下げる「減額要素」になる
- 貞操権侵害の慰謝料請求は弁護士に頼むのがほぼ必須!
- 弁護士費用は大部分が「成功報酬」であり、慰謝料と別に弁護士費用も請求できる場合が多いので、金銭的には弁護士に相談して損はない
なお、「貞操権侵害とはそもそも何か」基礎知識の解説は以下の記事で行なっています。ぜひあわせてご覧ください。
[articleIndex]1.【結論】貞操権侵害の慰謝料の相場は50万円〜300万円程度

貞操権侵害が認められて慰謝料請求ができる場合、慰謝料の相場は50万円〜300万円程度とされています。
相場にこのような開きがあるのは、個々の事情によって金額が変動するためです。
騙された側の被害が大きい(=騙した側が悪質)といえる要素があれば、その分慰謝料は高くなり、その逆も然りです。
慰謝料が高くなる要素は3章で詳しく述べますが、例えば以下のような要素があれば、慰謝料は高くなります。
【例:慰謝料の増額要素】
- 妊娠・出産・中絶などがあった
- 交際期間が長かった
- 別れ際の男性(相手)の対応が不誠実だった
このような要素があれば慰謝料は高くなると、まずは覚えておいてください。
1)スタンダードな基準は「60万円」
慰謝料の相場は50万円〜300万円程度だと述べましたが、幅が大きくていまいちピンとこない方も多いでしょう。
あえてピンポイントの金額をいうなら、60万円を1つの基準として考えてください。
というのも、最高裁判所がはじめて「貞操権の侵害」による慰謝料を認めた判例が60万円であり、それが今でも貞操権侵害のスタンダードな慰謝料金額とされているからです。
大きな「増額要素」(3章で詳しく解説する)がなければ、基本は60万円程度なのだと考えておけば間違いないかと思います。
参考判例:東京高等裁判所 昭和44年9月26日
2)裁判で決着しても示談で決着しても慰謝料金額は基本同じ
先に示した慰謝料の相場は過去の裁判例から言えることですが、示談で決着しても、もらえる慰謝料の金額はほぼ同じと考えて大丈夫です。
「示談だと慰謝料が安くされる」と考える方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
示談交渉では「裁判になれば慰謝料◯◯円の判決になる可能性が高いから、その金額で手を打とう」という話し合いが基本となります。
ですから、こちらに弁護士がついている場合、示談でもほぼ確実に適正な慰謝料金額をとってくれると考えておいてください。
2.【先にチェック】貞操権侵害で慰謝料請求できる3つの条件

慰謝料相場の話を深く掘り下げる前に、そもそもあなたの状況は「慰謝料がとれるケースなのか」確認しておきましょう。
条件に当てはまっていなければ、相場を確認しても意味がないからです。
貞操権侵害で慰謝料請求するには、以下の3つの条件を全て満たしている必要があります。
【慰謝料請求できる3つの条件】
- 結婚を見据えた交際だった
- 相手に結婚を隠されていたor今の妻とは別れるつもりだと話されていた
- 交際の中で性行為(またはそれに近い行為)があった
この中の1つでも欠けていると慰謝料を請求するのは難しいので注意してください。
例えば、相手が既婚者だとは知らなかったし性行為もあったけれど、お互いに結婚を意識していなかった場合など。
これは慰謝料請求の対象にはなりません。
貞操権侵害で慰謝料請求ができる条件については、以下のリンクから詳しい解説項目がご覧いただけますので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
3.貞操権侵害の慰謝料を多く請求できる10つの要素

貞操権侵害で慰謝料は、60万円が1つの基準になるものの、細かくは個別の事情によって金額が変わると述べました。
その個別の事情として、「慰謝料を高くするべき」だと考慮される要素(増額要素という)として、以下のようなものがあります。

総じて、男性が「悪質」といえる要素が並んでいることがわかるかと思います。
目安として重大と判断されやすい順に上から並べていますが、もちろん一概にはいえません。
それぞれの要素ごとにも、その重大さがあるからです。(例えば「交際期間が長い」といっても、2年か10年かで全然違う)
また、これらの要素はどれか1つというものではなく、いくつか重なっているケースが多いでしょう。
それらを複合的に評価して最終的な慰謝料額が決定されます。
それぞれの要素について詳しく解説しますので、当てはまっているかチェックしてみてください。
1)妊娠・出産・中絶があった
1番重大に評価されるのは、あなた(女性)に妊娠・出産・中絶があったかどうかです。
妊娠・出産などがあった場合、女性にとっては精神的な負担だけでなく、肉体的な負担も大きいのは言うまでもありません。
特に中絶は特に精神的な苦痛が大きいと判断されるため、より重大に判断され、慰謝料が高くなる傾向にあります。
また肉体的な面でいえば、妊娠や中絶による身体的ダメージ(手術や治療)によって出産能力に影響を与える可能性も考慮されます。
また、手術費用や通院費用などのお金を、あなたが負担していた分がある場合、そのお金も慰謝料に含めて請求できます。
これらの背景から、妊娠・出産・中絶があった場合はそうでないケースに比べて、数十万〜100万円単位で慰謝料が高くなると考えてよいでしょう。
2)「独身」以外にも多く嘘をついていた
相手が「独身」だと嘘をついていたことが発覚してから、よくよく話を聞いてみるとそれ以外にいくつも嘘をついているケースがあります。
具体的には以下のような嘘をついているケースが実際にあります。
- 年齢がもっと高かった
- 職業が違った
- 収入がもっと低かった
- 他にも複数の浮気相手がいた
このような嘘があった場合は、「詐欺」としての性質が強いですし、あなたの判断機会を完全に奪う行為と考えられるため、より悪質です。
3)結婚を強く意識させる行為があった
貞操権侵害は結婚を前提としていたことが大きなポイントですから、「結婚をどれだけ強く意識させられていたか?」も大きな争点になります。
結婚を強く意識させる行為とは、具体的に以下のようなものです。
【例:結婚を強く意識させる行為】
- 婚約を申し込んだ
- 両親への挨拶にいった
- 結婚指輪をプレゼントした
- (あついは上記のことをすると口約束していた)
結婚指輪や両親への挨拶など、結婚がいよいよ近く、現実的だ」と思われることがあった上で、その結婚がなくなれば、より大きな精神的ダメージになるためです。
4)別れ際の男性の対応が不誠実だった
別れ際の対応が不誠実だった場合は、かなり大きな要因として考慮されます。
別れ話を切り出したタイミングでなくても、相手が既婚者だとわかり、あなたが問い詰めた時の対応が不誠実だった場合も同じです。
「不誠実」と言える対応としては、具体的に以下のようなものが挙げられます。
【例:不誠実な対応】
- 逃げて音信不通になった
- リベンジポルノなどの嫌がらせを匂わせる
- 逆ギレして、口汚く罵ってきた
- 話し合いにまともに応じない、はぐらかされた
 ※上のほうがより悪質
不誠実な対応は、被害者の精神的苦痛をさらに深めるものとして評価され、慰謝料の増額要因となります。
5)結婚前提で関係が始まった(結婚相談所で出会ったなど)
「結婚を前提とした」場で出会っていた場合も、慰謝料が高くなる可能性があります。
結婚を前提とした場というと、例えば結婚相談所、婚活サイトや婚活アプリ、婚活パーティ、お見合いなど。
これらの場での出会いはいずれも、「結婚を前提とした人しかいないこと」を前提に、真剣交際を希望する人が集まります。
そこで出会って交際を開始したのなら、少なくとも既婚者ではないことを意味しています。
そんな場に顔を出していたとなると、最初から女性を騙す気があったと解釈できるためです。
また、その出会い方によって女性が信じやすい状態だったことも考慮されて、男性側が悪質だと判断されやすいのです。
6)「結婚する相手以外とは肉体関係を持ちたくない」という考えだった
あなたが「結婚する相手以外とは肉体関係を持ちたくない」という考えだった場合、慰謝料が増額される可能性はかなり高いです。
「結婚する相手以外とは性行為をしたくない」のに騙されて性的関係になったのなら、相手はかなり悪質で、あなたの精神的ダメージが大きいと判断されるためです。
貞操権侵害とはそもそも「誰と性的関係を持つか、自分で決める権利」ですから、これは本質的な意味で「悪質」なケースと言って間違いありません。
ただし、あなた自身が思っていただけでなく、その「肉体関係を持ちたくない」」という考えを相手にも伝えていたことを証明する必要があるので、その点には注意してください。
7)女性の年齢が結婚・出産の適齢期であった
あなたの年齢が結婚・出産の適齢期だった場合も、そうでない場合よりは増額されやすいです。
結婚・出産の適齢期とは具体的に、27歳~34歳ほどの時期を指すのが一般的です。
いうまでもなく、結婚・出産の適齢期を騙されて時間浪費させられることは、女性にとって大きな損害になるからです。
8)女性が若く、男性と年齢が離れていた
年齢について言うと、あなた(女性)の年齢が若い、特に10代〜20歳前後の場合も、慰謝料が高くなりやすいです。
10代〜20歳前後の場合、社会経験・男性経験が浅く、判断能力が低いため、それに漬け込んだ男性の悪質性が高いと評価されるからです。
その上で、男性も同じく若いならまだしも、男性との「歳の差」があると、より男性が悪くみられます。
9)性行為の頻度・回数が多かった
付き合っている期間中の、性行為の頻度・回数が多い場合も、慰謝料の増額要素となります。
性行為の頻度・回数が、単純に被害の大きさに換算されるからです。
いわば、「性行為1回につきあなたの貞操権が1回侵害された」という考え方ができるのです。
また、デリケートな話ですが、性行為の際に避妊をしていた場合よりも、避妊していなかった場合の方が悪質に見られることも付け加えておきます。
避妊するかしないか、それを受け入れるかどうかも、女性の貞操権の一部だからです。
結婚する相手だからこそ、避妊せずに聖行為をしたのに、騙されていたとなると、それこそ損害が大きいと判断されます。
当然、「結婚するし子供もほしいから、避妊したくない」と男性から持ちかけていたのであれば、なおのこと悪質ということになります。
10)交際期間が長かった
「交際期間が長い」という要素も、慰謝料を高くする要素の1つです。
交際期間が長ければ、それだけあなたの貞操権が侵害されていた期間が長く、相手が既婚者だと発覚した時の精神的ダメージが大きいためです。
ではどれくらいから「長い」と考えられるかですが、目安としては2年程度です。
要するに、2年を超えてくると「交際期間が長い」ことを考慮に入れて慰謝料が上乗せされやすくなるということです。
もちろん、それ以上に長くなればなるほど慰謝料も上がります。
4.貞操権侵害の慰謝料が低くなる3つの要素

慰謝料が高くなる「増額要素」があれば、逆に慰謝料が低くなる「減額要素」もあります。
代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 相手が既婚者であると知ってからも交際を続けた
- 相手が既婚者だと見破れる可能性が高かった
- 付き合っている期間が短い・性行為の頻度が少ない
こちらも当てはまっていないか、チェックしてみてください。
1)相手が既婚者であると知ってからも交際を続けた
相手が既婚者だと分かった上で、ある程度の期間付き合い続けていた場合、慰謝料が低くなる可能性があります。
付き合い続けられるということは、あなたにとって相手が既婚者だったことがそれほど大きな損害(ダメージ)になっていないと判断されてしまうからです。
貞操権侵害の慰謝料請求では、「相手が既婚者だと知っていたら付き合わなかったし肉体関係も持たなかったのに、騙されて関係を持ってしまった」ということを訴えます。
相手が既婚者だと知った上ですぐに別れなかったとなると、その訴えに説得力がなくなってしまうのです。
2)相手が既婚者だと見破れる可能性が高かった
相手が既婚者だということを、あなたが見破れる可能性が高かった場合も、慰謝料が低くされがちです。
相手が既婚者だと見破れるきっかけとしては、以下のようなものが挙げられます。
【例:既婚者だと見破れるきっかけ】
- デートが平日夜間にしかできなかった
- クリスマスや大型連休に会えない
- SNSのアカウントを教えてくれない
- 家に招いてくれない
- 左手薬指に日焼け跡や指輪の痕があった
もちろん、相手はこのような怪しい点について嘘をついたりごまかしたりするのが当然です。
ですが、「あなたがちゃんと注意していれば見破れたのではないか」ということが、裁判では厳密に審査されるのです。
見破れる材料があったのに見破れなかったことを、法律用語で「注意義務違反」といい、あなたの落ち度だと判断されてしまうのです。
3)付き合っている期間が短い・性行為の頻度が少ない
付き合っている期間が短い・性行為の頻度が少ないと、慰謝料が低くなる傾向があります。
先ほど述べた、「付き合っている期間が長かったり性行為の頻度が高いと慰謝料が高くなる」のと全く逆のことが言えるからです。
つまり、交際期間が短かったり、性行為が少なければ、単純に被害が軽いと判断されるのです。
5.【金額別】貞操権侵害で慰謝料請求が認められた判例5選

ここからは、貞操権侵害で慰謝料請求が認められた判例を、慰謝料の金額別に紹介していきます。
それぞれ「増額要素」と「減額要素」をまとめつつ紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
1)慰謝料60万円の支払いが認められた判例
【事案の詳細】
| 慰謝料の金額 | 60万円 | 
|---|---|
| 交際期間 | 1年4ヶ月程度 | 
| 妊娠・出産 | あり | 
| 中絶 | なし | 
| 判決 | 参照:東京高等裁判所 昭和44年9月26日 | 
こちらは、冒頭に少し触れた、「貞操権侵害で最初に慰謝料請求が認められた判例」です。
被害に遭った女性は当時新卒で会社に入社したばかりの19歳で、男性は上司でした。
男は既婚者であることを隠してはいなかったものの、「妻と別れて結婚する」と嘘をついて性行為を持ちました。
1年半程度の期間で、10回程度の性行為があったそうです。
女性が妊娠したところで男性は会うのを避けるようになり、本当は離婚の意思がなかったことが判明しました。
この判例で考慮された「増額要素」と「減額要素」はそれぞれ以下の通りです。
【慰謝料の増減要素】
- 増額要素
- 女性が妊娠した
- 別れ際、音信不通になり、はじめ請求に応じなかった(不誠実な対応)
- 女性が当時19歳で、思慮分別に欠けるところにつけ込んだ
 
- 減額要素
- 女性が、男が既婚者であることは最初から知っていた
- 交際期間が比較的短かった
- 出産・中絶への強い後押しや強制はなかった
 
2)慰謝料75万円の支払いが認められた判例
【事案の詳細】
| 慰謝料の金額 | 75万円 | 
|---|---|
| 交際期間 | 1年半程度 | 
| 妊娠・出産 | あり | 
| 中絶 | なし | 
| 判決 | 参考:長野家庭裁判所 諏訪支部 平成23年12月13日 | 
こちらの事例では、男性と被害女性は携帯サイトを通じて出会っています。
男性は「夫婦関係は崩壊しており、別居もしている。必ず離婚する」「必ず君と結婚する」とかなり積極的にアプローチしていました。
ですが実際には別居はしておらず、仲良くないとはいえ、普通の夫婦生活といえる範疇だったようです。
女性が妊娠したことを報告すると、男性はとても喜び、「一緒に子供を育てる」「絶対シングルマザーにさせない」等とこれまた積極的に騙す発言をしていました。
このように、男からの強い後押しがあって出産を決意したにもかかわらず、その後態度を翻され、別れ話を切り出されたということです。
【慰謝料の増減要素】
- 増額要素
- 「夫婦関係は破綻している」「君と結婚したい」と嘘を繰り返しており、積極的に騙そうとしていた
- 出産について、男から強い後押しがあった
- 別れ際、音信不通になり、はじめ請求に応じなかった(不誠実な対応)
 
- 減額要素
- 女性が、男が既婚者であることは最初から知っていた
- 知り合ったきっかけはアダルトサイト内の麻雀スレッドであり、結婚前提の出会いではなかった
- 不倫していたことは男性の奥さんにバレており、「別れろ」と言われても辞めなかった
 →「共同不法行為責任」がある(女性も悪いところがある)と判断された
 
3)慰謝料100万円の支払いが認められた判例
【事案の詳細】
| 慰謝料の金額 | 100万円 | 
|---|---|
| 交際期間 | 1年半程度 | 
| 妊娠・出産 | なし | 
| 中絶 | なし | 
| 判決 | 東京地裁-平成27年1月7日 | 
この事例では、被害女性は男性と職場の同僚として出会っています。
その時、男性Bは、妻がおり、別居中でしたが、独身であり誰とも交際していないと聞かされていました。
付き合う中で、自然と将来結婚した場合の話をするようになっていきます。
その後女性は結婚するために退職し、職場や両親に結婚の報告をしていました。
交際中、男性は、妻からのメールを「妹からだよ」というなど、積極的で悪質な嘘で独身であることを隠していました。
また、1度別れ話になった際「結婚したい、別れたくない」といって女性をつなぎとめようとした。
最終的に男性は妻との関係が修復して、妻を妊娠させたことをきっかけに態度を翻しました。
【慰謝料の増減要素】
- 増額要素
- 妻からのメールを「妹からだ」と言ったように、積極的に騙そうとしていた
- 女性は結婚のために仕事を辞めており、ライフプランが大きく動いていた
- 職場や両親に結婚の報告するほど、結婚を強く意識させていた
- 女性の年齢が31歳〜32歳前後で、結婚の適齢期であった
 
- 減額要素
- 妊娠・出産・中絶などはなかった
 
4)慰謝料200万円の支払いが認められた判例
【事案の詳細】
| 慰謝料の金額 | 200万円 | 
|---|---|
| 交際期間 | 1年弱 | 
| 妊娠・出産 | あり | 
| 中絶 | なし | 
| 判決 | 東京地方裁判所・令和元年8月23日 | 
この事例でも、男性は「結婚式はハワイで挙げたいー」「結婚したらマンション買おうよ」「結婚したいなー」などのメッセージで積極的に結婚の意思を示していました。
婚約指輪を買う約束をしていたり、「(男性の)両親に、『今年結婚する』『今度(交際相手の原告を)連れて行く』と言った」と女性に言うなどして、かなり強く結婚を意識させていたこともわかっています。
さらに女性は出産し、男性とはいずれ一緒に住んで子育てすると聞かされていましたが、しばらくして生活費の支払いがなくなり、音信不通になりました。
【慰謝料の増減要素】
- 増額要素
- 積極的に騙しており、結婚を強く意識させる言動が多かった
- 女性の妊娠・出産があった
- 音信不通、子の認知に応じないなど、男性の不誠実な対応があった
 
- 減額要素
- 交際期間がやや短め
 
5)慰謝料500万円の支払いが認められた判例
| 慰謝料の金額 | 500万円 | 
|---|---|
| 交際期間 | 12年程度 | 
| 妊娠・出産 | あり | 
| 中絶 | あり(3回) | 
| 判決 | 東京地裁-平成19年8月29日 | 
概要をみるとわかる通り、このケースは男性が非常に悪質なため、相場よりもはるかに高い500万円の慰謝料が認められました。
この事例では、男性は女性に自分が既婚者であることを一切告げず、婚約指輪を贈り「真剣に結婚を考えている」と将来の結婚を約束していました。
男性は女性を家族や友人・知人に会わせ、婚約者として紹介していたこともあり、かなり積極的に騙していたといえます。
また、男性の子供を、2度の中絶を経て3度目に出産。
しかし、男性は子どもが生まれると音信不通に。女性と別れることを画策し、子どもの認知にもなかなか応じないなど、不誠実な対応を繰り返しました。
【慰謝料の増減要素】
- 増額要素
- 交際期間が約10年超と長かった
- 女性は男性の家族や親戚に婚約者として挨拶し、男性の実父の法要にも出席していた(結婚を強く意識させた)
- 女性が男性の子どもを妊娠し2回中絶、3回目で出産までさせた
- 女性は20代から30代という女性にとって貴重な時期を男性のために捧げた
- 音信不通、子の認知に応じないなど、男性の不誠実な対応があった
 
- 減額要素
- 男性が女性に月額5万の養育料支払っていた
- 交際中は、男性が女性に生活費として月額50万円程度を支払っていた
 
6.貞操権侵害の慰謝料請求は弁護士に頼むのがほぼ必須!

貞操権侵害の慰謝料をいざ請求するとなったら、弁護士に相談するのがほぼ必須です。
弁護士であれば、状況を整理したうえで適切な金額で慰謝料請求できます。
また、弁護士があなたの代わりに相手との連絡や交渉を行うため、精神的・時間的負担も軽減され、スムーズな解決を目指せるでしょう。
弁護士に相談せず、個人で訴えを起こすという手段もあるにはありますが、非常に手間がかかりますし、精神的にも負担が大きいです。
また、相手に弁護士を立てられた場合、法的知識のハンデがあるため、適正な慰謝料金額よりも低くされてしまうリスクが大きいです。
以下では、弁護士に相談するメリットを挙げていきます。
1)【理由①】手続きが複雑で面倒なので任せたほうが良い
慰謝料請求の訴えを起こすのは、複雑で面倒な手続きをしなければなりません。
具体的には以下のようなものです。
- 内容証明郵便によって訴えを正式に通知する
- 証拠を自分で徹底的に集め、まとめる
- 請求金額を決める
- 請求根拠(どの法律の何条を根拠に請求するのか)を明示する
- 交渉を自分でする
- →裁判にまで発展したらさらに面倒に…
 
慣れていない方がこのような手続きを全て自分でするのは大変ですし、時間もかかります。
弁護士に相談することで、このような手続きは全て任せられますから、その方がメリットは大きいかと思います。
2)【理由②】交渉を有利に進められる
弁護士に依頼することで、交渉を有利に進められるのも大きなメリットです。
慰謝料をなるべく高く請求するには、法律・過去の判例・交渉のノウハウに基づいた専門的な知識が必要です。
このような専門知識に基づいて、あなたがもらうべき適正な金額の慰謝料を請求できます。
逆にあなたが弁護士をつけず、相手だけが弁護士をたててきた場合、相手にだけその専門知識があるため、交渉は不利になるのは間違いありません。
相手の弁護士にもっともらしい根拠を提示されれば、本来もらえるはずの金額よりも低い慰謝料で合意してしまうリスクがあります。
3)【理由③】精神的・時間的負担が軽くできる
最後に、精神的・時間的な負担が軽くなることも挙げられます。
特に、相手との直接のやり取りを避けられる点が大きいでしょう。
貞操権侵害では、交際していた関係かつ「騙された(と思っている)側」と「騙していた側」のトラブルなので、相手と直接話し合う必要が出てきます。
これが大きな心理的負担になる場合があります。
請求する側にとっては、感情的なやりとりや相手の態度によってさらなる精神的苦痛を受ける可能性がありますし、請求される側も感情的な対応で状況を悪化させるリスクがあるのです。
弁護士に依頼すればやり取りをすべて代行してもらえるため、こうしたストレスがかからない状態で交渉を進めてもらえるでしょう。
7.慰謝料から弁護士費用を引いたら手元にいくら残る?

慰謝料の金額とあわせて、弁護士費用についてもセットで押さえておくことをおすすめします。
慰謝料を取れた場合、その慰謝料から弁護士費用を差し引いた金額が、あなたの手元に残るお金になります。
【弁護士費用の内訳】
| 費用の種類 | 相場 | 
|---|---|
| 相談料 | 30分5,500円程度が相場 初回相談は無料なところもある | 
| 着手金 | 10万円〜15万円程度 | 
| 成功報酬 | 獲得した慰謝料に対して 10%〜20% | 
| その他実費 ・交通費 ・印紙代 ・郵送代 ・コピー代 ・ファックス代、etc… | 全体で数万円程度 | 
上に挙げた中でも、1番金額として大きいのは「成功報酬」です。
慰謝料として100万円とれるケースで計算してみると、以下のようになります。
- 100万円(慰謝料)ー10万円(着手金)ー10万円(成功報酬:10%)ー2万円(相談料・実費など)=78万円(手元に残るお金)
料金体系は法律事務所ごとに違い、成功報酬も慰謝料金額によって変動するため一概にはいえませんが、大体弁護士費用は15万円〜20万円程度だと思っておくとよいでしょう。
8.貞操権侵害で慰謝料請求する手順・流れ

貞操権侵害の慰謝料相場についておおよそのイメージがついたかと思います。
ここからは、その慰謝料を実際に請求する手順・流れを解説していきます。
1)まずすること|弁護士に相談する
貞操権侵害で慰謝料を請求したいと思ったら、まず早めに弁護士に相談しましょう。
訴えを起こすとなるとほぼ確実に弁護士のサポートが必要ですし、弁護士と契約している期間によって弁護士費用が変わることもないため、早く相談して損はありません。
早い段階で弁護士からアドバイスをもらっておけば、交渉を有利に進める準備ができます。
次のステップとして解説する「証拠を集める」という作業についていえば、弁護士から「こんな証拠をこうやって集めるといい」といったアドバイスをもらえます。
逆に、相手が先に弁護士を立ててしまうと、先手を打たれて交渉の準備を進められてしまうため、不利になるリスクもあります。
まだ本当に慰謝料請求するか迷っているという方も、初回の相談は無料な事務所も多いので、まず話を聞いてみる意味で相談してみるとよいでしょう。
2)訴える準備|証拠を集める
弁護士への相談と前後して、貞操権を侵害された証拠をできるかぎり集めることが重要です。
貞操権侵害に限らず、慰謝料請求では、どれだけ証拠を提示できるかがカギになるからです。
具体的には以下のような証拠を揃えたいところです。
【貞操権侵害の証拠の例】
- 相手が独身・未婚と偽っていたことを示す証拠
- LINEで「独身です」「未婚です」とやり取りしている内容
- 独身前提のマッチングアプリや婚活イベントの参加を証明できるもの
 
- 肉体関係があったことを示す証拠
- ホテルの領収書や宿泊記録
- 旅行の記録(写真・チケット・レシートなど)
- 性的関係を匂わせるLINEやメールのやり取り
 
- 結婚を匂わせていたことを示す証拠
- 「結婚したい」「老後は◯◯で一緒に暮らしたい」「子どもは◯人欲しい」などのメッセージ
- 結婚式場や新居の下見・相談の記録
- 両親への紹介・挨拶
 
- その他の証拠
- 妊娠・中絶の診断書や医療費の明細書
- 第三者の証言(友人や家族など)
 
どんな証拠が有効か、どう集めればいいかは、以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
3)目指すゴール|示談交渉で慰謝料請求する
貞操権侵害の慰謝料では、先に紹介した証拠を突きつけて、示談交渉で慰謝料を取れるのがベストです。
もちろん、交渉は弁護士が全面的に担ってくれるため、あなたの負担はほとんどありません。
また先述のように、示談でもほぼ確実に適正な慰謝料金額をとってくれると考えて大丈夫です。
対して裁判になると、時間的・手間的な負担が大きくなりますし、弁護士費用も追加費用がかかって高くなります。
裁判で示談よりも高い慰謝料を勝ち取れる可能性ももちろんありますが、負担と追加の弁護士費用に見合うケースはほとんどありません。
もちろん、どんなプランで慰謝料を取りに行くかは弁護士と話し合いで決めるのが基本です。
ですが心構えとして、「あくまで目指すのは示談での慰謝料獲得」と考えておくと、弁護士とも話がスムーズに運びやすいでしょう。
4)最終手段|交渉がダメなら訴訟で慰謝料請求する
貞操権侵害の場合、相手は「奥さんにバレず、穏便に済ませたい」という気持ちから、先ほど述べた示談交渉に応じてくるケースが多いです。
ただし、交渉がまとまらず、相手が支払いを拒否した場合には、最終的な解決手段として訴訟を起こすことになります。
訴訟で「貞操権侵害による慰謝料請求」が正式に認められれば、相手は確実に従わなくてはいけませんし、支払いから逃げるなら財産差し押さえなどの手続きもできるようになります。
そのため、話し合いに応じず連絡を無視するような不誠実な相手でも、必ず慰謝料を払わせることができるのです。
具体的な手続きとしては、貞操権侵害の事実・それを裏付ける証拠・請求する慰謝料の金額などを盛り込んだ訴状を弁護士に頼んで作成してもらい、裁判所に提出しましょう。
その後、実際に裁判が始まるので、裁判所が下した結果にもとづいて慰謝料の金額が確定します。
まとめ
貞操権侵害の慰謝料相場は50万円〜300万円程度です。
あえてピンポイントな金額をいうとすれば、60万円が1つのスタンダードです。
ただし、慰謝料とはあなたの個別の事情を考慮して決められます。
「どんなケースなら金額が高くなるのか、または低くなるのか」を把握しておけば、より正確な金額をイメージできるでしょう。
慰謝料が高く請求できる「増額要素」としては、主に以下の10つが挙げられます。
- 【要素1】女性の妊娠・出産・中絶があった
- 【要素2】相手男性のウソが悪質であった(勤務先や年齢も偽っていたなど)
- 【要素3】結婚を強く意識させる行為があった(両親への挨拶や結婚指輪など)
- 【要素4】既婚者とわかったあと、相手男性の対応が不誠実だった
- 【要素5】結婚前提の場で出会った
- 【要素6】「結婚する相手以外とは肉体関係を持ちたくない」という考えだった
- 【要素7】女性の年齢が結婚・出産の適齢期であった
- 【要素8】歳が離れていた・女性が若かった
- 【要素10】交際期間が長かった
- 【要素9】性行為の頻度や回数が多かった
判例を見ると、50万円〜500万円にいたるまで、それぞれの事情を考慮して慰謝料が認められています。
なお実際に貞操権侵害の慰謝料請求をするには、弁護士に頼むのがほぼ必須です。
弁護士費用は大部分が「成功報酬」であり、慰謝料と別に弁護士費用も相手男性から請求できる場合が多いので、金銭的には弁護士に相談して損はありません。
ぜひ一度、弁護士に相談してみてください。
 
       
   
   
   
  