貞操権侵害で訴えられた!円満解決でやるべき3つの事を弁護士が解説

貞操権を侵害したとして、交際していた相手から「訴えるから」と連絡が来た、または弁護士名義で内容証明郵便を使って書面が届いたという方。
「訴えられたらどうなる?」「家族や職場にバレないようにするにはどうしたらいい?」といった疑問や不安があるでしょう。
結論、貞操権侵害で訴えられたあなたは、「まずやるべき3つの対応」を実践し、慰謝料を最小限に抑えつつ和解を目指すのがベストな対応です。
それにより、支払う金額も、家庭や職場にまでバラされるリスクも最小限に抑えられるからです。
逆に、相手の訴えを無視するなどの不誠実な行動をすると、慰謝料の請求金額が上がったり、裁判を起こされたりするおそれがあるのでやめましょう。
本記事では、貞操権を侵害して訴えられた場合に起きる影響や、取るべき3つの対応、慰謝料の相場などについて詳しく解説します。
ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 貞操権侵害で訴えられると慰謝料の支払いや弁護士の費用が必要になるし、相手の行動によっては家庭や職場にもバレる可能性がある
- 裁判になってしまうとさまざまなデメリットがあるので、「慰謝料の金額をなるべく下げた上で和解する」ことを最終的に目指そう
- そのために、訴えられたらまず以下の3つの対応を取る必要がある
- 【対応①】相手の言い分を把握する
- 【対応②】貞操権侵害の条件に当てはまるか確認する
- 【対応③】弁護士に依頼する
 
- 貞操権侵害の慰謝料の相場は50万円~300万円ほどで、より悪質とみなされるケースで高額になる傾向があるが、300万円まで行くことはめったにない
- 貞操権侵害で訴えられたときは、家庭・職場にバレるリスクを最小限にするためにも弁護士に依頼しよう
1.貞操権侵害で訴えられたらどうなる?把握すべき3つの影響

あなたが既婚者なのにそれを隠して交際していたり、配偶者と別れるからと嘘をついて関係を持っていたりしたら、それは「貞操権の侵害」にあたります。
貞操権とは、性的関係を持つことを自分の意思で自由に決定する権利のことで、特に独身女性が持っているものです。
既婚を知っていれば同意しなかった「性的な関係」を、独身・未婚であると偽って同意させることは、相手の自由な意思決定を妨げる違法な行為であるとみなされるのです。
あなたが相手から貞操権侵害の訴えを起こされた場合、生活にどのような影響がありうるのかをまず確認しておきましょう。
1)慰謝料・弁護士費用などの支払いが必要になる
訴えを起こされるということは、ほぼ確実に慰謝料の支払いを相手に求められます。
金額は状況によって変動しますが、慰謝料は50万円~300万円程度になることが多いです(詳細は5章で解説)。
さらに、こうした訴えに対して適切に対応しようとすると弁護士への依頼も別途必要になり、弁護士費用として追加で30万円程度は見込む必要があるでしょう。
このため、貞操権侵害で訴えられることによって、慰謝料・弁護士費用あわせて少なくても100万円程度は支払うことになると考えておきましょう。
2)配偶者に知られて離婚・慰謝料請求されるおそれがある
独身であると偽って不倫していたことを配偶者に知られた場合、離婚に発展したり、配偶者から慰謝料を請求されたりする可能性があります。
通常、貞操権侵害で訴えられたからといって即座に配偶者にまでバレるわけではありません。
ですが、相手と示談に向けて交渉するうちに配偶者に偶然知られてしまうことはありえますし、相手が故意に家庭へ連絡してくることもあります。
相手が配偶者に事実をバラそうとすることは「脅迫罪」「名誉棄損罪」などに問われるリスクがありますが、それでも構わず連絡してくるケースも多くあるのです。
3)職場に知られて社会的信用を失うおそれがある
独身であると偽って不倫していた事実が職場に知られた場合、社会的な信用を失うおそれがあります。
周囲からの信頼を損ねることは避けられませんし、状況によっては風紀を乱したとして会社から何らかの処分がある可能性もあります。
基本的には、貞操権侵害で訴えられたからといって職場にまで連絡が行くことはないのですが、交際相手が同じ職場だった場合は相手から漏れて知られてしまうかもしれません。
また、同じ職場ではなかったとしても、前項のケースと同様に相手が故意に会社に連絡してくることもありえます。
会社へ故意に連絡し事実を広めようとすることも法的にリスクのある行為ですが、リスクを無視して構わず連絡してきた場合、止めることは難しいでしょう。
2.目指すべきは「慰謝料の金額を下げた上で和解」すること

貞操権侵害で訴えられた場合、あなたが目指すべきは「慰謝料の額を最低限まで下げた上での和解(示談成立)」です。
示談が成立しないまま裁判になってしまうと、以下のような複数のデメリットがあり、金銭的にも精神的にも大きな負担になってしまいます。
【裁判になったときのデメリット】
- 裁判のために多くの時間を取られストレスがかかる
- 家庭にはほぼ確実にバレる上、職場にもバレる可能性が高くなる
- 公開の法廷で不倫について詳細に話す必要がある
- メールや写真など様々な証拠が法廷で取り上げられてしまう
- 裁判に対応するためにさらに費用がかかる
これらのデメリットを避けるためにも、慰謝料を正当な範囲で最大限引き下げてもらい、裁判前に和解に至ることがベストな対処法です。
そのために具体的に何をすべきかは、次の章で解説します。
3.貞操権侵害で訴えられたらまず取るべき3つの対応

貞操権侵害で訴えられた場合、基本的に慰謝料の支払いはしなくてはいけません。
とはいえ、慰謝料の支払いは仕方ないとしても金額はなるべく下げたいですし、1章の2項・3項で述べたように家庭や職場に事実を広められるのも避けたいところです。
そこで、訴えられたときはまず以下3つの対応を取るようにしましょう。
- 相手の言い分を把握する
- 貞操権侵害の条件に当てはまるか確認する
- 弁護士に相談する
これらの対応を適切に取ることで、訴えられることによるダメージを最小限に抑えられ、慰謝料を下げた上での示談成立も目指せます。
順番に確認していきましょう。
1)相手の言い分を把握する
まずは相手があなたに何を求めているのか、相手の言い分を把握しましょう。
正式に貞操権侵害を訴えてくる方法はさまざまで、直接会って言われるケース、内容証明郵便などで訴状が送られてくるケース、弁護士から直接連絡があるケースなどがあります。
どの方法であっても、基本的には「慰謝料の請求」をされますが、他にも「直接会っての謝罪」や「金輪際会わない」といった条件が課されることもあります。
相手の要求をよく理解し、今後の対応を検討しましょう。
「慰謝料として◯◯万円を請求する」と書かれていたら、その金額が妥当なのかも確認する必要があります。
また、直接会って「これから訴える」と言われただけの段階なら、話をよく聞き真摯に対応することで実際の請求を控えてもらえる可能性もあります。
反対に、相手の請求を突っぱねたり、丸め込もうとしたりといった不誠実な態度は、より相手を怒らせてしまい慰謝料を高額にされる可能性があるのでNGです。
2)貞操権侵害の条件に当てはまるか確認する
相手の主張を理解した上で、自分のやってきたことが「貞操権の侵害」にあたるのかどうか冷静に確認しましょう。
というのも、あなたが「貞操権を侵害した」と認定されるためには、原則として以下4つの条件を満たさなくてはいけないからです。
【貞操権侵害が認められる条件】
- 独身だと偽って相手と交際した
- 結婚前提の交際だった
- 肉体関係を持った
- 証拠がある
これらの条件に当てはまらなければ、慰謝料の請求自体が認められないか、支払う金額を減らすことができるので確認しておくべきです。
各条件の詳細は3章で解説します。
3)弁護士に相談する
訴えがあった時点で、なるべく早く弁護士に対応を依頼しましょう。
正式に訴えられたことが分かったら、速やかに示談がまとまるよう相手と話し合いを進めるのがベストです。
示談の内容によっては、「職場」や「家庭」に事実を広めないという条件を設けられるので、速やかに示談を進めることでバラされるリスクを抑えられます。
他にも、貞操権侵害による慰謝料は「相場」があるので、相場より高額な請求の場合は減額できるように交渉してもらえますし、裁判に発展した場合の対応も任せられます(詳細は8章で解説)。
また、弁護士への依頼はあなたが貞操権侵害の条件に当てはまっていなくてもすべきです。
訴えがある以上、相手は「貞操権を侵害された」と信じているか、そのような事実はないのに不当な請求をしてきていることになります。
そこであなた自身が直接交渉すると、感情的になって余計に話が拗れてしまう可能性がありますし、対応を誤れば本来払う必要のなかった慰謝料を払うことになる可能性もあります。
弁護士に依頼することで、そうした良くない事態を未然に防ぐことができるのです。
4.貞操権侵害で訴えられる4つの条件

先の章に述べたように、「貞操権の侵害」が認定されるのは以下4つの条件を満たしている場合です。
【貞操権侵害が認められる4つの条件】
- 独身だと偽って相手と交際した
- 結婚前提の交際だった
- 肉体関係を持った
- 証拠がある
あなたがこれらの条件に当てはまっていないなら、慰謝料を請求されても支払わなくて良いか、通常の請求よりも少額で済ませられます。
各条件について詳しく知っておき、当てはまっているかチェックしてみてください。
1)独身だと偽って相手と交際した
条件の1つめは、「相手に独身・未婚だと偽って交際したか」です。
これは「自分は独身・未婚である」と相手に口頭で嘘をついたケースはもちろん、メールやアプリを使ったやり取りも含まれます。
また、SNSに独身と思わせるような書き込みを意図的にしており、SNSを通して交際に発展した場合なども条件に該当する可能性があります。
なお、婚活やお見合いサービス・マッチングアプリなど「独身・未婚を前提とした」サービスを利用して知り合ったケースでは、それ自体が「独身と偽った」とみなされ、実際に慰謝料請求が認められています。
2)結婚前提の交際だった
条件の2つめは、「結婚前提の交際だったか」です。
結婚前提、または結婚に発展する可能性が高い真剣交際であった場合は、訴えられる条件に当てはまります。
結婚についてお互い前向きに語った経験があったり、結婚式や新居について触れたり、両親に紹介したりといった行動を取っていれば間違いなく該当します。
逆に、双方に結婚の意思が全くない、一時的な割り切った関係であった場合は、貞操権侵害にあたらない可能性が高いといえるでしょう。
3)肉体関係を持った
条件の3つめは、「肉体関係を持ったか」です。
最後まで行っていない場合でも、肉体関係に準ずる行為をしていればアウトになります。
一方で、完全なプラトニックや、軽いキスだけなどの場合は貞操権侵害にあたらないとされるのが一般的です。
また、関係を持った回数が多いほど、慰謝料は高額になる傾向にあります。
4)証拠がある
条件の4つめは、「貞操権侵害の証拠があるか」です。
証拠の有無は「貞操権の侵害にあたるか」を判断される材料になります。
証拠が不十分な場合は、慰謝料を請求されても認めずに済むケースもあるのです。
また、交際期間の長さ・妊娠の有無などを示す証拠は、加害者の「悪質さ」の指標にもなり、慰謝料の金額に影響します。
【貞操権侵害の証拠の例】
- 相手が独身・未婚と偽っていたことを示す証拠
- LINEやメールでの「独身です」「未婚です」などのやり取り
- 婚活アプリや結婚相談所のプロフィール
 
- 肉体関係があったことを示す証拠
- ホテルの領収書や予約記録
- 旅行の記録(チケットやレシートなど)
- 性的関係を匂わせるLINEやメールのやり取り
 
- 結婚を示唆していたことを示す証拠
- 「結婚したいね」「子どもは〇人ほしいね」などのメッセージ
- 結婚式場の下見や相談の記録
- 両親への紹介
 
- その他の証拠
- 妊娠・中絶の診断書や医療費の明細書
- 第三者の証言(友人や家族など)
 
5.貞操権侵害で訴えられたときの慰謝料の相場

貞操権侵害における慰謝料は、50万円~300万円が相場です。
ただし、認められる金額は以下のように状況によって変わります。
- 慰謝料が高額になるケース
- 交際期間が長かった(数年以上の深い関係)
- 相手が適齢期だった
- 相手が妊娠・出産した
- 独身であると繰り返し偽ったり、結婚を約束していた
- 相手の社会的評価や生活に重大な影響を及ぼした
 
- 慰謝料が少額で済むケース
- 交際期間が短かった(数か月程度)
- 肉体関係が一度のみだった
- 相手に過失や不倫であるという同意があった
- 結婚を前提としていない交際だった
 
例えば交際期間が10年以上など長期にわたり、相手女性が妊娠までしたケースなどは、女性の人生に与えた影響が大きい分慰謝料も高額になります。
とはいえ、慰謝料が300万円以上にまで達するケースはめったにありません。
大きな額では500万円の判例もあるため状況によるものの、貞操権侵害の慰謝料の上限は大体300万円くらいの金額であると押さえておきましょう。
なお、貞操権侵害の慰謝料相場について、以下の記事ではさらに細かく解説しています。正確な金額を把握したい方はぜひあわあせてご覧ください。
6.貞操権侵害で訴えられた場合の3つの事例・判例

前章で解説したように、貞操権侵害における慰謝料の金額は一律ではなく、状況によって大きく異なります。
どのような状況であれば「貞操権侵害」と認定されるのか、慰謝料が高額になりやすいのはどんなケースかなど、これから紹介する3つの判例にもとづいて具体的に確認しておきましょう。
1)慰謝料200万円の支払いを命じられたケース
結婚する意思があることを繰り返し語られ、出産直前まで既婚者であることを隠されていた女性に、200万円の慰謝料請求が認められたケースがあります。
男性は被害者女性に対して「結婚式はハワイで挙げたい」といった結婚を希望するメッセージを複数回送っており、自分の両親への紹介や、婚約指輪の購入などについても話していたといいます。
その上、出産直前まで既婚者であることを隠していました。
出産後しばらくして養育費の支払いもしなくなり、子どもを認知するといいながらしないといった不誠実な行動をし続けていたことから、多額の慰謝料請求が認められたようです。
2)慰謝料60万円の支払いを命じられたケース
「妻と別れて結婚する」と既婚男性に言われたのを信じて情交関係を結び、子供を出産した女性に60万円の慰謝料請求が認められたケースがあります。
このケースでは、男性が女性と性的関係を結びたいがためだけに「妻と別れて結婚する」と思ってもないことを言い、交際を続けていました。
女性も相手が既婚者であると知って付き合っていたので、一見「貞操権の侵害」の条件を満たさないように思えますが、この場合は男性側・女性側の行動の違法性を比較されています。
この裁判においては、男性が既婚者であると女性が知っていたとしても、女性が当時19歳であったことなど複数の事情と照らし、男性側の違法性の方が大きく、慰謝料の請求は認められるという判断がされています。
3)慰謝料75万円の支払いを命じられたケース
「夫婦関係が破綻しており、もうじき離婚する」と既婚男性に嘘をつかれて、結婚前提と信じて交際し、男からの後押しもあって出産にまで至った女性に75万円の慰謝料請求が認められたケースです。
このケースでは、子どもの認知を求めるとともに、男性や男性の妻から受けた行為に対して慰謝料を請求しています。
男性が既婚者であることを知っていたとはいえ、関係を持った原因は男性側が「夫婦関係が破綻している」と虚偽の発言を繰り返し、結婚をほのめかしていたことで起きました。
さらに、男から強く出産についての後押しもありました。
そのため、前項の場合と同様に、貞操権の侵害を理由として慰謝料請求は認められるという判断がされています。
7.貞操権侵害で訴えられたときの流れ

貞操権侵害で訴えられたとき、訴えがあってから解決までにどのような流れを踏むのかを把握しておくことは大切です。
今後やるべきことの手順を知っておけば、焦らず冷静に対処できます。
順番に確認しておきましょう。
1)相手からの訴えが届く
交際相手から貞操権侵害の訴えが届きます。
方法としては、内容証明郵便を使って文書が配達されたり、弁護士から電話・訪問があったり、相手から直接口頭で言われたりとさまざまです。
まずは訴えの内容や慰謝料の請求金額について把握します。
その上で、受け入れられる内容かどうか確認しましょう。
2)弁護士への相談・依頼を検討する
訴えられた内容をもとに、弁護士に相談しましょう。
貞操権侵害を扱う弁護士は比較的多く、無料相談を受け付けているところも多いです。
弁護士費用や過去の実績なども考慮しつつ、相談する弁護士を選んでください。
ただ、場合によっては弁護士に頼まない選択を取ることもあります。
弁護士に頼まなくても良いケースとしては、請求される慰謝料がごく少額で、数十万円払って弁護士に頼むよりもそのまま請求を受け入れた方が少額で済む場合などです。
ただし、弁護士を通さず個人間だけでやり取りすると、一度払ったのに後から追加の請求をされることもあります。
また、直接対応しようとすることでお互い感情的になり、話が拗れてしまうこともありえます。
これらの懸念を考えると、訴えがあった時点で弁護士に依頼した方が無難です。
3)示談の交渉を進める
示談に向けた交渉を相手方と進めます。
相手が弁護士を立てているケースも多くあります。
あなたも依頼した弁護士と細かく打ち合わせて、交渉を代行してもらうと良いでしょう。
具体的に交渉するのは、慰謝料の金額、支払方法、支払い期日、示談の条件、誓約事項などです。
4)示談書を作成する
相手方と示談について交渉がまとまったら、示談書を作成します。
口約束だけだと、後から追加で慰謝料を請求されるといったこともありえるので、書面で「今回の件での慰謝料は◯◯万円」といった文言を明記しておきます。
また、第三者に口外したり、インターネットに書き込んだりされないように、守秘義務についても合意を取って文言を盛り込んでおきましょう。
ちなみに、示談書の作成は、あなたと相手方のどちらが行っても構いません。
作成した後は署名・捺印し、各人が保管します。
弁護士に対応を依頼しているなら、そのまま示談書の作成もお願いすれば確実です。
5)解決に至らない場合は裁判で決着する
相手が多額の慰謝料を請求してきて譲らないなど、交渉してもどうしても合意に至らないときは裁判になる可能性もあります。
先述の通り、「貞操権侵害」の場合、裁判までいかず、示談で交渉成立させることが望ましいですが、最悪の場合は裁判にまで発展してしまうと覚えておきましょう。
基本的には、相手方があなたに対して損害賠償請求訴訟を起こす形です。
こうなると、訴訟の対応のために弁護士にさらに費用を払うことになるでしょう。
とはいえ、訴訟を起こすのもお金がかかるので、相手方も示談で解決しようとすることの方が一般的です。
6)慰謝料の支払いを行う
慰謝料の金額が決まれば、合意した条件にもとづいて支払いを行います。
支払い方法、支払い期日などを守って入金します。
支払いを無視したり滞らせたりすると、強制的に差し押さえとなる可能性もあるので注意してください。
8.貞操権侵害で訴えられたときの3つの注意点

訴えられたとき、適切でない行動を取ってしまうと事態を悪化させるおそれがあります。
示談で解決できなかったり、裁判で不利になったり、事実を家庭にまで暴露されたりする可能性があるのです。
このようなリスクを避けるため、2章で解説した「3つの対応」とは別に、これから解説する3つの注意点も押さえておいてください。
1)誠意を持った対応を心がける
訴えてきた相手にきちんと謝罪し、請求に対しては誠意をもって応じるつもりがあることを伝えましょう。
相手を騙して関係を持ってしまったのなら、そこはしっかりと説明を尽くして謝罪し、清算するための行動を取らなくてはいけません。
誠意を見せることで、相手の態度を和らげられ、示談に向けた話し合いも進めやすくなります。
ただし、相場と照らして相手の慰謝料の請求金額が高すぎる場合もあります。
「誠意をもって応える」という意味で請求をそのまま受け入れる選択肢もありますが、それが難しいようなら、弁護士に減額を交渉してもらうこと自体は問題ありません。
なお、一度支払いに同意すると撤回できない可能性が高いので、返事は慎重にすべきです。
請求が来ても金額についてすぐに同意はせず、「弁護士と相談してから伝える」と一旦検討の時間をもらうようにしましょう。
2)証拠隠滅はしない
貞操権侵害の証拠を隠滅する行為は避けてください。
4章の4項で述べたような証拠が手元に残っていた場合、裁判での影響を恐れて消してしまいたくなるかもしれませんが、こうした証拠を消すことでかえって不利になる可能性があります。
自分にとって不利な証拠(写真など)を消したとしても、相手が同じ証拠の記録を残していれば消したことがすぐにバレます。
証拠隠滅を図ったことが分かれば、あなたが不誠実な対応を取ったとみなされて心証を悪くし、相手の意見が全面的に認められやすくなる可能性があるのです。
不利な証拠が手元にあったときは、まず弁護士に対応を相談してください。
3)訴えられてから無視や放置は絶対NG
訴えがあったとき、無視や放置を決め込んでしまうのが最もやってはいけないことです。
相手を怒らせてしまい、家庭や職場に事実を広められると言った過激な手段を取られるかもしれません。
また、民事裁判の場合は相手がいなくても進行するので、そのまま裁判に踏み切られた場合、完全に相手の言い分が通ります。
相場を超える多額の慰謝料請求であったとしても、相手の請求通りになるおそれがあるのです。
支払いを無視すれば口座や給与を差し押さえられる可能性もあります。
訴えられたら無視せず、必ずこれまで解説してきた対応を取るようにしてください。
9.貞操権侵害で訴えられたとき弁護士に依頼すべき3つの理由

ここまでで簡単に解説してきた通り、貞操権侵害で訴えられたときは弁護士への依頼が欠かせません。
それは、以下3つの「弁護士ならでは」の理由によるものです。
- 法律のプロなのでベストな対応をしてもらえる
- 精神的・時間的負担を軽減できる
- 家庭や職場にバレるリスクを最小限にできる
感情的になりやすい当事者間の交渉をスムーズに進める上でも、相場よりも高額の慰謝料について交渉してもらうためにも、弁護士の力は重要です。
最後にあらためてその重要性を確認しておきましょう。
1)法律のプロなのでベストな対応をしてもらえる
弁護士は法律の専門家であり、貞操権侵害の訴えに対応できる知識と経験があります。
対応を誤ると相手から裁判を起こされる可能性もある中、弁護士にうまく交渉してもらうことで、速やかに示談に持ち込みやすくなります。
また、こうした訴えの際には相手が弁護士を立てていることも多いです。
法律のプロである弁護士相手に、専門家ではないあなたが対応しても、相手の請求を一方的に押し切られてしまう可能性があります。
お互いに弁護士に任せて対応してもらうことで、話もスムーズに進みやすく、示談の条件もあなたの不利になりすぎないように交渉してくれるでしょう。
2)慰謝料を最大限下げるよう交渉してくれる
弁護士に任せられる「ベストな対応」として1番大きいのは、慰謝料の金額を最大限下げてくれることです。
相手が請求している金額が相場よりも高い場合は大幅に減額してくれますし、相場並の請求であっても、10万円〜30万円ほど下げてくれる可能性が十分考えられます。
なお、慰謝料請求の弁護士費用はほとんどが成功報酬ですから、弁護士費用がかかったとしても慰謝料減額できた分のプラスの方が大きくなります。
成功報酬が減額分の20%だとしましょう。
300万円請求された慰謝料を100万円にまで減額できた場合、減額分として200万円の利益を得つつ、弁護士費用として40万円(減額分の20%)を払うことになります。
- 200万円ー40万円=160万円
上記のように、あなたの手元に残るお金はプラスになりますから、「弁護士費用がかかる」といえども、弁護士に相談した方がメリットが大きいのです。
3)精神的・時間的負担を軽減できる
訴えを受けた当事者にとって、示談交渉や裁判準備は精神的・時間的に大きな負担になりますが、弁護士に依頼すればこうした負担を軽減できます。
例えば、訴えてきた相手方と直接やり取りするのは、お互いに感情的になりやすく、それだけで大きなストレスになりかねません。
弁護士に間に立ってもらえれば、直接的な接触がないため、こうした摩擦が起きるのを避けられます。
また、自力で対応しようとする場合、法的な手続きの方法を1から調べたり、相手との話し合いのために逐一時間を使ったりしなくてはいけません。
こういった時間の面での負担も、弁護士に任せることで解消されるでしょう。
4)家庭や職場にバレるリスクを最小限にできる
弁護士に依頼することで、家庭や職場にバレるリスクを最小限にできます。
弁護士に交渉を進めてもらえるため、直接相手と連絡を取る機会を減らすことができ、周囲にバレにくくなります。
また、弁護士に頼むことで示談交渉をスムーズに進められるので、訴えられてから合意までの時間も短く済ませられるでしょう。
さらに、事実について口外しない約束を示談書で交わせれば、相手が家庭や職場に故意に連絡してくることを牽制できます。
ただし、弁護士に依頼したからといって絶対にバレないわけではないので、弁護士に頼んだからといって楽観せず、慎重な対応が必要です。
まとめ
貞操権侵害で訴えられると、慰謝料の支払いはもちろん、対応のための弁護士費用も必要になります。
その上、相手の行動によっては、家庭や職場にもバレる可能性があります。
この場合目指すべきは、「慰謝料の金額をなるべく下げた上で和解すること」です。
裁判になってしまうとさまざまなデメリットがあるので、裁判になる前に示談の成立を目指しましょう。
そのためにも、まず以下の3つの対応を取ることが大切です。
- 【対応①】相手の言い分を把握する
- 【対応②】貞操権侵害の条件に当てはまるか確認する
- 【対応③】弁護士に依頼する
貞操権侵害の慰謝料の相場は50万円~300万円ほどですが、長期にわたる交際である場合など、より悪質とみなされるケースで高額になる傾向があります。
訴えられたときは絶対に放置せず誠意のある対応を心がけ、なるべく早く示談での解決を目指しましょう。
自分に不利な証拠があっても、隠滅するとかえって裁判で不利になることもあるので、まずは弁護士に相談することです。
法律の専門家である弁護士に任せることで、自力で対応するよりもあなたの精神的・時間的な負担を軽くできますし、家庭や職場にバレるリスクも最小限にできるでしょう。
 
       
   
   
   
  