著作権(知財)
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著作権の制限とは?無断で使用することができる7つのパターンを解説

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目次

はじめに

「これは著作権侵害?」という境界線に悩んだことはありませんか。

「勝手に著作物を使うな!」と指摘したら、「著作権の制限があるので問題ない」と言われてしまったり、許諾が必要ない方法で使っているはずなのに、著作権者から「無断使用だ」と言われてしまったり……。

本来、著作権は著作物を独占使用できる権利ですが、例外的に著作権者に許諾を得なくても利用が認められる場合があります。条件付きで著作権の行使を制限し、自由に利用できるのです。

この記事では

  1. 著作権はなぜ制限されるのか
  2. 著作権が制限される7つのパターン

について、弁護士が詳しく解説をしていきます。

 

1 著作権はなぜ制限されるのか

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(1)著作権の制限とは

著作権」とは、画像や文章、音楽などの「著作物」を独占利用できる権利です。

著作権者(権利を持っている人、著作物を生み出した著作者とは限りません)」以外の他人が著作物を使う場合は、原則として著作権者に許諾を得る必要があります。

もっとも、一定の条件を満たせば、著作権者の許諾がなくても自由に使うことができます。

このように著作権者の権利を制限し、許諾を得なくても利用できるようになることを「著作権の制限」と言います

(2)著作権の制限は文化の発展のため

著作権の制限は、主に文化を発展させることが目的です。

権利を制限することが、なぜ文化を発展させることに繋がるのかわからない方もいるかもしれません。

文化の発展というものは、これまでにない新しい著作物をゼロから生み出した場合にのみ起こるわけではありません。過去の著作物から学んだり、利用したりすることで発展していくという場合もあります。

そのため、著作権をガチガチに保護した結果、過去の著作物から学んだり、著作物を利用したりすることを難しくしてしまうと、文化の発展をじゃましてしまうことがあるのです。

もっとも、無条件で著作物を利用されてしまうと、著作権者は利益を得る機会を奪われてしまいます。

そのため、著作権の制限に際し、一定の条件をつけることで、著作権者の権利とのバランスがとられているのです。

まずは、著作権が制限されるパターンにはどのようなものがあるのかを確認していきましょう。

 

2 著作権が制限される7つのパターン

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著作権が制限されるのは、大きく分けて以下の7つです。

  1. 私的利用
  2. 写り込み・検討過程など
  3. 調査研究・教育目的
  4. 福祉目的・非営利目的
  5. 報道目的、立法・司法・行政上の利用
  6. 美術の著作物の展示・譲渡など
  7. プログラムの著作物・電子計算機での利用

この7つのパターンのいずれかに該当すれば、著作権者に許諾を得ずに著作物を利用することができます。

以降の項目では、それぞれのパターンについて

  • 著作権が制限される結果何ができるようになるのか
  • 著作権が制限される条件
  • 例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

を解説していきます。

3 私的利用

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(1)何ができるようになるのか

本来、著作物の複製(コピー)は著作権者のみができることになっています。もっとも、「私的利用」に限り、著作権者以外の者も、著作権者に許諾を得ることなく複製(コピー)することができます。

たとえば、個人的に聴くために、CDから音楽を採録したり、テレビ番組を録画したり、勉強のために参考書をコピーすることなどがこれにあたります。

このように、私的利用に対して著作権が制限されるのは、小規模の私的利用は、著作権者の利益を侵害することが少ないからです。

(2)著作権が制限される条件

私的利用といえるためには、

  1. 業務や営利目的ではないこと
  2. 家庭や個人という限られた範囲内で私的に利用する目的であること
  3. 使用する者自身が複製すること

が条件となっています。

家庭や個人という限られた範囲内」とある通り、サークルなどのグループであっても、家庭と同規模で、閉鎖的であれば、私的利用の範囲内といえる余地があります。

また、子供や高齢者など、「使用する者自身が複製すること」が困難な場合は別の人が代わりにコピーを取ったりすることは認められます。

(3)例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

以下の3つに関しては、個人などで楽しむ目的であっても、著作権者から許諾を得ない限りは、複製することはできません。

①自動複製機器を用いた複製

ここでいう「自動複製機器」とは、複製を自動的(半自動的)に行うことができる機器のことをいいます。

たとえば、FAXやダビング機器などが具体例です。このような機器で著作物をそのまま複製されてしまうと、オリジナルの著作物と全く同じものが出回ってしまうため、私的利用目的であってもNGとされています。

もっとも、コピー機もここに含めてしまうと、社会的影響が大きくなってしまうため、当面コピー機を用いた文書や図画の複製は私的利用であればOKとされています。

②技術的保護手段の回避

個人で私的に楽しむ場合であっても、複製を防ぎ著作物を技術的に保護する機能(コピーガードなど)を意図的に外して複製した場合や、それらの機能が外れていることを知っていながら複製して使用した場合は目的外の使用となります。

③違法なサイトからのダウンロード

また、インターネットを通してダウンロードすることも複製(コピー)にあたります。

そのため、すでに著作権を侵害した方法で配信されているインターネット上の音楽や映像、書籍などのコンテンツをダウンロードして使用する場合も制限対象とはなりません。

 

4 写り込み・検討過程など

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(1)写り込み

①何ができるようになるのか

撮影などを行う場合、撮りたい対象以外に、背景やBGMなども撮影・録画・録音されてしまうことがあります。

たとえば、ロケで街を巡る場合を考えてください。出演者を撮影するつもりでも、偶然店舗の看板やポスター、音楽などの著作物が写ったり、録音されてしまうことは防げないですよね。

このように撮りたい対象以外のものが撮影に含まれてしまうことを「写り込み」といいます。

写り込んだり、録音された対象が著作物にあたれば、本来、撮影・録画・録音にあたって著作権者の許諾を得なければいけません。

もっとも、写り込んだ著作物すべてに対して許諾を得なければいけないとすると現実的ではなく、撮影のハードルが上がり、結果文化の発展をじゃましてしまいます。

そのため、写り込みに関しては一定の条件のもとで、著作権者の許諾を得なくてもいいことになっています。

②著作権が制限される条件

著作物が写り込んでも、著作権者の許諾を得なくてよいのは以下の条件を満たした場合です。

  1. 撮影・録音・録画によって著作物を生み出す場合であること
  2. 撮りたい対象から取り除くことが困難な著作物で、その著作物が撮影の中で、量的・質的に軽微であること

撮影・録音・録画が対象となっていることから、スケッチは含まれないことに注意してください。

また、分離することが困難かどうかは客観的に判断されます。

たとえば、ロケ時に通行人が着用している服のキャラクターの絵が偶然撮影されてしまった場合、それを分離することは困難ですが、モデルや出演者がキャラクター付の服を着用している場合、その服は変更可能なため、取り除くことが困難な著作物には当たらないと考えられます。

③例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

写り込んでしまった著作物の種類や用途などから判断して、著作権者の利益を不当に害する場合には、著作権者から許諾を得なければいけません。

ここでいう「著作権者の利益を不当に害する場合」とは、写り込んだ著作物の市場と衝突したり、その著作物の将来的な販路をじゃましてしまったりする場合などをいい、写り込んだ著作物ごとに判断されることになります。

(2)検討過程の場合

①何ができるようになるのか

本来であれば、著作物を利用するためには、著作権者に許諾を得る必要があります。

もっとも、著作物を利用した商品を作成する際には、その検討過程で企画書や資料、試作品などに、実際に使われる著作物の図案や音楽を利用することで許諾するかどうかを判断しやすくなる場合があります。

このような場合は、検討過程における著作物の利用として、著作権者に事前に許諾を得る必要はありません。

②著作権が制限される条件

検討過程で著作権が制限されるには、

  1. 著作権者の許諾を受けて著作物を利用しようとする者であること
  2. 許諾を受ける検討の過程において著作物を利用すること
  3. 著作物の利用範囲が検討過程で必要な限度内であること

が条件です。

ここでいう「検討の過程」とは、著作権者へ許諾を申し出る前、許諾の申込、許諾を得た後を含みます。たとえ、検討の結果、許諾を与えないことが決まったとしても、著作物の利用が著作権侵害となるわけではありません。

③例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

写り込みの場合と同様に、検討過程での著作物の利用が、著作物の種類や用途などから判断して、著作権者の利益を不当に害する場合には、著作権者から許諾を得なければいけません。

5 調査研究・教育目的

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(1)図書館等における利用

図書館・美術館・博物館などは、多くの人々が知識・芸術に触れる機会を提供するという公益的機能を持っています。

そのため、本来であれば著作権者の同意を得なければいけない、著作物のコピーや電子化を著作権者の同意なく行うことができます。

また、同様に絶版などの理由で入手が困難な著作物のコピーを提供したり、電子化した著作物をインターネットで送信することもできます。

(2)引用・転載

①何ができるようになるのか

本来であれば、他人が生み出した著作物を、自分の著作物に取り入れるためには、著作権者の許諾が必要です。

もっとも、先人が生み出した著作物を取り入れることで、より文化が発展することもあります。

そのため、著作権者の同意を得なくても、一定の条件のもとで、他人の著作物を引用・転載することができます。

ここでいう「引用」とは、自身の著作物の中に他人の著作物の一部を取り入れることをいい、「転載」とは、引用の範囲を超えて、自身の著作物の中に他人の著作物を取り入れることをいいます。

②著作権が制限される条件

著作権者の許諾を得ずに引用するためには

  1. すでに公表された著作物であること
  2. 公正な慣行に基づいていること
  3. 引用の範囲が正当な範囲内であること
  4. 出所を明示していること

という条件を満たさなければいけません。

公正な慣行」といえるためには、たとえば、引用を行う必然性があることや、引用部分がどこからどこまでなのか明確になっていることなどが必要です。

また、「正当な範囲内」といえるためには、たとえば、引用部分が必要最小限にとどまっており、主従関係が引用部分がサブ、それ以外の部分がメインとなっていることなどが必要です。

他方、著作権者の許諾を得ずに転載を行うためには、

  1. 国・地方公共団体といった行政機関などの名義で公表した資料であること
  2. 一般に周知させることを目的とした資料であること
  3. 説明の財調として転載すること
  4. 出所を明示していること

という条件を満たさなければいけません。

転載については、行政機関などが公表した資料であることが条件となっていることに注意してください。

行政機関などが公表した資料であっても、転載を禁止することが書かれていれば、転載NGです。どうしても転載したい場合は、行政機関から転載の許諾を得るようにしましょう。

(3)学校での利用

著作権者から許諾を得なくても、学校や公民館といった非営利目的の教育機関には、

  • 著作物をもとに教師が教材・試験問題を作成すること
  • その教材・試験問題をプリントアウトして配布すること
  • 遠隔で授業や試験のために、その教材・試験問題をインターネットなどで送信したりすること

などが認められています。

なお、営利目的の試験・検定であれば著作権者への補償金の支払が必要である点には注意が必要です。

また、教育関連として、

  • 教科書(デジタルも含む)への著作物の掲載
  • 学習指導要領に従った学校教育番組への著作物の利用

なども可能です。

なお、教科書の掲載にあたっては、文化庁長官が定めた補償金を著作権者へ支払う必要があったり、教育番組に著作物を利用した場合んは、著作権者に補償金を支払う必要があったりするため、注意しなければいけません。

6 福祉目的・非営利目的

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(1)福祉目的の場合

①何ができるようになるのか

本来であれば、著作物の内容に変更を加えて新たな著作物を生み出すことができるのは、著作権者のみです。

もっとも、聴覚や視覚に障害がある人の福祉のために、既に公表されている著作物の内容を認識できる形に加工したり、加工したものを複製したり、公衆送信したりすることができます。

たとえば視覚障碍者向けであれば点字に翻訳したり、聴覚障害者向けであれば音声を文字に起こす処理(映像字幕など)、ラジオ放送、手話翻訳など必要と認められる範囲の複製や、その著作物をインターネットを使って送信したり、貸し出したりすることができます。

②著作権が制限される条件

著作権者の許諾を得ずに福祉目的で著作物を利用するためには、

  1. 著作物はすでに公表されたものであること
  2. 必要と認められる範囲でのみ複製や加工ができること
  3. 出所を明示すること

などの条件を満たさなければいけません。

③例外的に著作権が制限されない場合

著作物が未公開のものである場合は、適用されません。

また、すでに著作権者によって同様のもの(字幕入り映像など)が販売されている場合などは、同じものを福祉目的として作成してしまうと、著作権者の利益を不当に害してしまうことになるため、著作権者の許諾を得なければいけません。

(2)非営利目的の場合

①何ができるようになるのか

公表されている著作物を、上演、演奏、上映、口述などする場合、本来であれば、著作権者の許諾を得なければいけません。もっとも、非営利目的の場合、著作権者の許諾を得なくても上演、演奏、上映、口述することができる場合があります。

具体的には、入場料を取らない学校行事での演劇上演や演奏会などがこれにあたります。

②著作権が制限される条件

非営利での利用目的で著作権者の許諾なく著作物を利用するためには、

  1. 未公表の著作物を扱わないこと
  2. 営利を目的としないこと
  3. 観客から入場料や観覧料などの料金を徴収しないこと

の条件を満たすことが必要です。

③例外的に著作権が制限されない場合

非営利目的のみでの利用ですので、入場料金を取らないこと以外に、上演、演奏、口述する人(実演家等)に対して報酬の支払があってはいけないことになっています。報酬の支払がある場合は、著作権者から許諾を得なければいけません。

特に注意が必要なのは、「宣伝のために無料で上映・上演する」場合です。この場合、宣伝目的は非営利目的ではないと判断され、著作権者の許諾が必要になります。

④その他非営利目的で著作権者の許諾なく著作物の利用が認められている場合

上記以外にもたとえば、以下の場合は、非営利・無料で行われる限り、著作権者の許諾なく著作物の利用が認められます。

  • 図書館での本や音楽CDの貸し出し
  • 視聴覚教育施設や福祉施設等で行われる映画のレンタル(著作権者への補償金の支払が必要)
  • 喫茶店などの店舗でテレビを放送すること

7 報道目的、立法・司法・行政上の利用

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(1)時事問題の論説の転載

①何ができるようになるのか

新聞や雑誌などには時事問題の論説として、その問題に対する報道機関としての主義主張が展開されています。この論説も、著作物にあたるため、本来、著作権者から許諾を得ない限り、転載したり、その内容をテレビなどで放送することはできません。

もっとも、論説というものは、国民が議論の基礎とすることができるものであることから、著作権者の許諾を得ることなく、一定の条件のもと他の新聞、雑誌、テレビなどに転載・放送することができます。

②著作権が制限される条件

以下の条件を満たせば、著作権者から許諾を得なくても論説を転載することが可能です。

  1. 新聞または雑誌に掲載して発行された論説であること
  2. 学術的な性質を有するものではないこと
  3. 政治、経済、社会の時事問題に関する論説であること
  4. 出所を明示すること

③例外的に著作権が制限されない場合

転載・放送を禁止することが論説に表示されている場合には、著作権者の許諾を得なければ、論説の転載・放送はNGです。

(2)政治上の演説等の利用

①何ができるようになるのか

著作権は、口述したものにも発生します。そのため、演説や陳述というものも、著作物にあたることがあります。

もっとも、政治上の演説や、裁判での陳述というものは、一般に周知させる必要があるものとして、著作権者の許諾を得なくても一定の条件のもと利用可能です。

同様に、国・地方公共団体の行政機関などで行われた演説・陳述も、一定の条件のもと利用可能です。

②著作権が制限される条件

著作権者の許諾なく、政治上の演説や裁判での陳述を転載・放送などする場合には、以下の条件を満たさなければいけません。

  1. 公開で行われた政治上の演説・陳述や裁判手続きにおける公開の陳述であること
  2. 同一の著作者のもののみを編集しないこと
  3. 出所を明示すること

また、著作権者の許諾なく、国・地方公共団体の行政機関などで行われた陳述を転載・放送などする場合には、以下の条件を満たさなければいけません。

  1. 公開の演説・陳述であること
  2. 報道の目的上正当と認められる利用であること
  3. 新聞・雑誌への掲載、放送、などでの利用であること
  4. 出所が明示されていること

(3)時事の事件の報道のための利用

①何ができるようになるのか

また、著作物を含む事件の報道をする場合、その著作物を提示しなければ内容が伝わらないことがあります。海賊版の摘発で被害があった書籍の表紙や、著名な絵画が出展される美術展の開催を知らせる内容などは、具体的な著作物の画像や映像を使うことがあり、このような報道での利用は制限範囲に含まれます。

②著作権が制限される条件

  1. 時事事件に関係する著作物のみを利用していること
  2. 報道の目的上正当な範囲内であること
  3. 出所の明示をしていること(慣行がある場合)

ここでいう「時事事件」とは、犯罪だけでなく、社会で起きた事件、出来事を意味しています。

また、「時事事件に関係する著作物」とは、海賊版の販売のように事件そのものを構成した著作物や、その事件の過程で見られたり聞かれたりした著作物のことをいいます。

(4)立法・司法・行政上の利用

他に、著作物が原因で立法・司法・行政上の手続きがストップしないように、以下の場合などには、著作権者の同意がなくても著作物の利用が認められています。

  • 裁判手続き
  • 立法・行政機関での内部資料
  • 行政庁の行う各種手続(薬事や特許、商標、意匠など)
  • 情報公開法などによる開示のための利用

8 美術の著作物の展示・譲渡など

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(1)美術品の展示

①何ができるようになるのか

美術著作物や未公表の写真の著作物には、原作品(オリジナル)を展示するための「展示権」という権利が著作者に認められています。権利がある以上、大衆の目に触れる形で展示することができるのは著作者のみとなります。

もっとも、せっかく著作物を譲渡してもらったのに、著作物を展示できなければ譲渡してもらった意味がなくなってしまう場合があります。

そのため、一定の条件のもと、著作者の許諾を得なくても、展示できることとなっています。

②著作権が制限される条件

美術の著作物の展示について、著作権が制限される結果、著作者の許諾が不要になる条件は以下の通りです。

  1. 美術または写真の著作物であること
  2. オリジナルの所有者自身から展示の同意を得ていること

③例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

たとえ、美術著作物のオリジナルを譲渡してもらい、展示ができるようになったとしても、展示してはいけない場所があります。

具体的には、街路や公園、ビルの壁面など、誰にでも開放されている屋外のスペースです。

このように、屋外スペースにオリジナルの著作物の展示することが許されないのは、誰でも自由に著作物を利用できるようになってしまうからです。詳しくは次の項目で説明します。

他方、美術著作物でなく、写真の著作物であれば、そのオリジナルを屋外スペースに展示することもOKです。なぜなら、誰でも写真であれば、誰でも利用可能になるわけではないからです。

(2)屋外の美術著作物や建築著作物の自由利用

①何ができるようになるのか

屋外スペースに設置されているオリジナルの美術著作物や、建築物は原則として自由に利用が可能となっています。

そのため、たとえば、公園にある像や、著名な建築物を写真撮影したりスケッチしたりすることは、著作権上何ら問題ないことになります。

②著作権が制限される条件

著作権者の同意を得なくても自由に利用するための条件は以下の通りです。

  1. 美術著作物や建築著作物であること
  2. 誰にでも開放されてる屋外スペースに設置されていること
  3. 出所を明示すること(慣行があるとき)

③例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

もっとも、次のケースは、美術著作物や建築著作物の市場を奪いかねない行為として、著作権者から許諾を得なければ行ってはいけません。

  • 全く同じ彫刻の美術品を作ること
  • 全く同じ建物を作ること
  • 誰にでも開放されている屋外スペースに設置するためにコピーすること
  • 美術著作物にういてコピーの販売を目的とすること

(3)美術展における作品の解説・紹介のための利用

オリジナルの美術著作物や写真を展示する際に、解説・紹介を行うために、小冊子に掲載したり、上映したり、インターネットで配信することができます。

なお、この紹介は、オリジナルの著作物を展示する者が行うとともに、出所の明示をしなければいけない点に注意してください。

9 プログラムの著作物・電子計算機での利用

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(1)プログラムの著作物の複製

①何ができるようになるのか

誰が作っても同じ表現となる場合には、プログラムは著作物となりませんが、創作性があれば、プログラムも著作物になり得ます。

プログラムが著作物にあたる場合、本来は著作権者のみが、そのプログラムをコピーすることができます。

もっとも、それではせっかく開発したソフトを他人が使うことができません。

このため、著作権の制限により、一般に販売しているパッケージソフトなどの購入者は、自分で使用する目的であれば、ソフトウェアの中のプログラムをPCなどにコピーできます。

②著作権が制限される条件

プログラムの所有者がバックアップコピーやプログラムが動くゆおにするための修正・改良を行うためであれば、以下の条件で著作権が制限されます。

  1. プログラムの所有者が行うこと
  2. プログラムの実行に際して必要最低限であること
  3. 例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

あくまでもプログラムを実行する本人にのみ複製が許可されますので、他人に渡してしまった場合は著作者の許諾を得なくてはなりません。

また、以下の複製はNGとなっています。

  • 企業としてソフトウェア1本を購入し、それを全社員のパソコンにコピーすること
  • 違法な手段で複製されたもの(海賊版)であると知って入手したものでないこと

(2)電子計算機のキャッシュ

電子計算機(パソコンなど)には「キャッシュ」と呼ばれるデータが存在します。

キャッシュ」とは、パソコンを効率的に利用するために、情報の処理過程でパソコンのメモリやハードディスクに蓄積されるデータのことをいいます。

たとえば、プログラムを実行する際に、一時ファイルや複製ファイルが作られることで、次に起動する際に早くなったり、一度開いたウェブサイトを再度開いた際に、読み込みが早くなったことはないでしょうか。これもキャッシュが蓄積されたことで、効率よくサイトが読み込めたと考えられます。

①何ができるようになるのか

本来、著作物のコピーや、改変は著作権者でなければできません。

そのため、著作物にあたるプログラムや著作物にあたるサイト上の文章や画像をコピーしたり、改変したりした状態でキャッシュとしてパソコン上に蓄積することも、著作権者でなければできないことになります。

もっとも、パソコンの内部に蓄積された情報が著作権者に不利益を与えることは通常考えられません。そのため、著作権者の同意を得なくても、一定の条件のもと、キャッシュを利用することは認められています。

②著作権が制限される条件

著作権者の許諾なく、著作物をキャッシュとして利用できるのは以下の条件を満たした場合です。

  1. プログラム著作物をコンピュータ―上やインターネット上で効率よく実行するために利用することが目的であること
  2. 必要な限度内での利用にとどめること

③例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

キャッシュとしてのデータが、例外的に著作者の利益を不当に害する場合は「必要な範囲を超えた」複製とみなされますので、著作権者の許諾を得ずに利用はできなくなります。

(3)電子計算機のバックアップなど

バックアップ」とは、パソコンの状態を維持したり、保守や修理をしたりするためにデータをコピーすることをいいます。

①何ができるようになるのか

本来は著作物を複製できるのは著作権者のみです。もっとも、バックアップされる対象に、他人が作成した著作物が含まれていることがあります。

たとえば、サーバーを運営している事業者を考えてみてください。サーバーに利用者が書いた絵が保存されたていた場合、本来この絵のコピーできるのは著作権者である利用者のみです。

もっとも、いちいち許諾を得なければいけないとすると、サーバーを移管したり、データが失われた時の対策としてのバックアップはできなくなってしまいます。

そのため、一定の条件を満たせば、パソコン上で著作物のバックアップをとることができます。

②著作権が制限される条件

著作権者の許諾なく、著作物をバックアップできるのは以下の条件を満たした場合です。

  1. 著作物をパソコン上で利用できる状態を維持・回復することが目的である場合
  2. 必要な限度の範囲内にとどめること

③例外的に著作権が制限されない場合(著作権者から許諾を得なければいけない場合)

著作物の種類、用途、利用方法によって、著作権者の利益を不当に害するとみられた場合は、権利が制限されずに著作権侵害となります。

(4)電子計算機による情報の検索・解析・結果提供に伴う軽微利用

①何ができるようになるのか

デジタル化・ネットワーク化の進展にともない、インターネット検索などにみられるように、大量のデータを処理し、その中から有用な情報を探し出すサービスが登場するようになりました。

たとえば、以下のサービスなどがあります。

  • 特定のキーワードに関連する書籍を抽出し、その書籍情報を提供するサービス
  • 対象となっている論文が他人の論文や雑誌をパクっていないか確認するサービス(剽窃確認サービス)

前者であれば、サービス提供に際し、書籍の検索結果に表紙の画像が表示されれば、どのような本なのか分かりやすいですよね。また、後者であれば、どの論文のどこの部分をパクっているか具体的に示されていればどの部分が問題なのか分かりやすくなります。

そして、これらのサービスには一定の社会的意義があります。

そのため、著作権の制限対象として、一定の条件のもと、著作権者の許諾なく行うことができることになっています。

②著作権が制限される条件

情報の検索・解析・結果提供に伴う軽微利用として著作権者から許諾を得ることなく著作物を利用できる条件としては、以下の条件などがあります。

  1. 検索・解析したうえで結果を提供するものであること
  2. 必要な限度内での利用であること
  3. 著作物の利用が①の行為に付随して行われること
  4. 利用する著作物が公表または誰でもアクセスできるサーバなどにアップされていること

著作物が、あくまでも検索や解析の結果として提供されていなければなりません。

著作物の提供がメインとなってはいけないことになります。

そして、著作物の利用の方法は限定されていませんが、著作物が本来流通・販売される市場に影響を与えない程度で、必要な範囲のみの利用にとどめなければいけません。

③例外的に著作権が制限されない場合

著作権侵害をする形でアップされた著作物であることを知っていた場合は、軽微な利用でも権利の制限の対象とならないことに注意してください。

たとえば海外のサイトにアップロードされた海賊版のデータでも、日本国内であれば権利侵害になるべきケースであれば、利用は認められません。

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著作物は、使用の全てを著作権者が把握していなければならないわけではなく、過剰な保護とならないよう、適度に許諾なしで利用することができます。

もっとも、この場合も例外がありますので、そのときは著作権侵害が発生してしまうことに注意をしましょう。

11 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りです。

  • 著作権は、画像や文章、音楽などの著作物を著作権者が独占利用できる権利で、必要に応じて著作権者に許諾を得なくても著作物の利用ができることが「著作権の制限」となる
  • 著作権の制限がかかるのは、大きく分けて7つの場合がある
  • 私的利用であれば、著作物の複製(コピー)を取ることができる
  • 屋外の撮影の背景や音楽の写りこみは、著作権者の許諾を得なくてもよい。また、著作物を利用した商品の検討段階で図柄を使用したりすることも許諾は必要ない
  • 研究・調査目的の場合は、すでに公表されている著作物を、正当な範囲内で、出所を明示することなどを条件に、無許諾で利用することができる
  • 福祉や非営利目的の場合、視覚や聴覚に障害がある人が著作物を利用できるように加工することは、許諾を得ずに行うことができる
  • 報道や立法・司法・行政上の利用は、国民が知るべき議論の基礎や、立法・司法・行政上で周知の必要があり、著作権によって手続きがストップしないように制限がかかっている
  • 美術品の著作権は、原作品の所有者から展示の許可を得ていれば、著作者からの許諾がなくても展示をすることができる
  • プログラムの著作物は、市販品のパッケージソフトの購入者であればソフトウェアの中身をPCなどに複製することができ、これはプログラムの著作者の許諾がなくても良い

なお、記事の内容は投稿時の法令・制度に基づいており、投稿後に法改正等がなされている可能性があります。
記事をご参考にされる際は、必ずご自身の責任において最新情報をご確認下さい。

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

弁護士(35487 / 東京弁護士会)。証券会社勤務時代に携わったシステム開発案件を中心に、決済、暗号資産、特許関連法務を多く手掛ける。また、エンジェル投資家としてスタートアップ企業の成長を多角的にサポートする活動も行う。 George Washington University Law School (LL.M.・知財専攻) 卒業(2016)。経済産業省 中小企業庁主催 適正取引講習会 「下請法(実践編)」講師(2024)

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