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企業間転職交渉サービス「HR TRADE」のビジネスモデルを弁護士が解説

はじめに

人材支援の「株式会社プロフィフティーン」が、本年3月より業界初となる企業間の転職交渉サービスを開始します。

人材支援のプロフィフティーン(東京・渋谷)は3月から、企業同士が社員の転職について交渉できるサービスを始める。従来、転職志望者は人材紹介会社などを通じ新たな勤務先を探していたが、新サービスではプロスポーツ選手の移籍のように、現在所属する企業を窓口に条件にあった会社を見つけられるようになる。同社によると、企業間で転職交渉ができるサービスは業界初になるという。
                                           日経新聞より

今回は、リリースを間近に控えている企業間転職交渉サービス「HR TRADE(エイチアールトレード)」について、そのビジネスモデルを中心に解説していきたいと思います。

1 サービスの背景と概要

(1)背景

企業にとって、「離職率」を低く抑えることは一つの課題でもあります。
ですが、キャリアアップを目指す社員が転職していくことを完全に回避することは簡単なことではありません。
その一方で、採用コストは年々上昇傾向にあり、人材に割くコストから目をそむけるわけにもいきません。
このように、多くの企業では「人材の採用」と「離職」が経営課題の一つとなっているのです。

このような背景の中で、「HR TRADE」は企業間における人材の移籍を実現することにより、企業と社員の双方にメリットをもたらす仕組みを構築しました。
「HR TRADE」では、転職ミスマッチを防止するための工夫がこらされており、また、移籍が正式に成立すると企業は移籍金を受け取ることができます。

企業が一緒になって社員のキャリアを考えてくれるため、従来のように会社に隠れて転職活動をする必要はなく、社員の可能性をより広げることに繋がる可能性を秘めています。

(2)サービスの概要

HR TRADEでは、人材が移籍するまでに以下のような過程を踏むことになります。

  1. 掲載を希望する社員の情報を匿名で掲載する
  2. 人材を求める企業は人材を検索しオファーをかける
  3. 企業間で人材に関する情報交換や移籍条件の交渉を行う
  4. 採用面談を実施し、双方の合意に基づき採用を決定する
  5. 移籍金が支払われる

2 「HR TRADE」の特徴


「HR TRADE」には、主に3つの特徴があります。

(1)新しいキャリアアップを形成する機会の提供

社員に与えたフィールドや報酬が、社員の能力やキャリアなどと見合わなくなることがあります。
このような状態は、社員が転職を考えだす一つの契機にもなります。
「HR TRADE」では、このような状態に陥った場合に、「移籍」という新しい切り口で社員のキャリアアップを支援することにより、社員の可能性を広げることができます。

(2)採用ミスマッチの防止

「HR TRADE」において、掲載される人材情報は、あらかじめ在籍企業により内容の正確性が担保されており、また、長所と短所が記載された推薦状が添付されています。
人材を求める企業は、人材に関する正確な情報を基に、自社が必要とするポジションに適しているかなどを判断できるため、採用ミスマッチが起きる可能性は低くなっています。

(3)適切な人材コスト

採用したい人材が見つかった場合、在籍企業との間で直接交渉をすることになります。
移籍条件などについて合意が成立し採用が決まると、企業は在籍企業に対して合意した移籍金を支払います。
「HR TRADE」が採用している上記フローにより、企業は適切な人材コストで適切な人材を採用することが可能です。
また、在籍企業は支払われた移籍金を採用コストに充てることができます。

3 利用料金|マネタイズ


「HR TRADE」の利用料金は以下のようになっています。

(1)基本サービス

人材情報の掲載や検索、相手の企業との交渉といった基本サービスは無料で利用できます。

(2)移籍金

人材を採用することを決めた企業は、在籍企業に対して移籍金を支払う必要があります。
具体的な移籍金の額は、採用を決めた企業における理論年収からの割合で決めることとされており、同割合は在籍企業が事前に設定することになっています。
なお、移籍金には下記システム利用料金が含まれるため、採用を決めた企業が実際に移籍金として支払う金額は、移籍金からシステム利用料金を差し引いた金額になります。

(3)システム利用料金

社員の移籍が決まると、採用を決めた企業は、システム利用料として「移籍金の20%に相当する金額」または「20万円」のうち高くなる額を支払う必要があります。
「HR TRADE」は、このシステム利用料金により収益を上げているわけです。

4 ビジネスモデルと法的検討

(1)ビジネスモデル

従来から、エージェントによる人材紹介サービスはポピュラーでしたが、紹介料が高かったり、納得感が得られなかったりという問題がありました。

私(弁護士勝部)も、インハウスローヤー時代に求人採用の管理をしておりましたが、紹介する人材の月収1~4カ月分くらいの紹介料を取られることがあり、ハイパフォーマーを採用する場合など、結構な割高感がありました。
もちろん良い人材であれば結果的によいのですが、支払われるコストに納得していたかというと疑問符がついていました。

「HR TRADE」の場合、移籍金という概念を導入していますが、これは、サッカーや野球などのプロスポーツにおいて定着している概念で、その人材を育てた企業に当該人材の保有権があり、人材の保有権が移る場合にその人材を育てるまでに要したコスト等を含んだ移籍金を支払うというロジックに基づくものであり、納得感があります。

人材紹介をするエージェント企業がきっかけでその人材を採用できたとはいえ、エージェント企業が人材移転に伴う利益を独占してしまうという構造に納得がいっていなかったプレーヤーにとっては、面白いサービスになると思います。

(2)法的検討

対価を得て職業紹介(職業安定法第4条第1項)をする場合、同法第32条の11の規定により求職者に紹介してはならないものとされている職業以外の職業について、同第30条第1項の厚生労働大臣の許可を受けて行うことができます。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000180131.pdf参照

職業紹介とは、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることをいいますから、当該サービスが有料職業紹介に該当する場合は法令に基づく許可等が必要となってきます。

また、この点は厳密に法的問題点と言えるかは微妙ですが、プロスポーツの移籍金制度は極めて狭いコミュニティの中において厳格なルールの元成り立っている制度です。従業員には職業選択の自由がありますから、勤務先を退社するのも自由ですし、次にどの会社で働くのかも自由です。
移籍金制度は、このような、本来従業員が自由になしうることに課金をしていることになりますから、このサービスがどのようにしてそのビジネスモデルを維持していくのかについて、検討が必要になると思います(契約等で移籍金逃れにつながる行動を制限するのも一つの方法です)。

5 まとめ

経営課題として「社員の離職」を掲げている企業は少なくありませんが、社員が転職するまでに在籍企業が社員を育成した事実は適正に評価されるべきだと考えられます。
この点を実現したのが「HR TRADE」です。

「HR TRADE」は転職を希望する社員をはじめ、在籍企業や採用企業にもメリットをもたらします。
転職を希望する社員は、会社に隠れて転職活動をする必要がなくなり、また、在籍企業によって人材の能力などがあらかじめ担保されているため、採用企業は採用ミスマッチを引き起こすリスクを低く抑えることができます。
在籍企業にとっても、それまでに社員を育成した対価として、移籍金を受け取ることができるというメリットがあるのです。

業界初の試みでもある「HR TRADE」がサービスリリース以降どのような実績を作り出していくか、非常に楽しみです。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。

弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

   

トップコート国際法律事務所CEO。弁護士として稼働する傍ら、プログラマ・PMとして稼働した経験を活かし、システム開発に関連する業務を多く手掛ける。
法律相談チャットボットサービス「スマート法律相談」開発者。

事務所概要、詳しいプロフィールはこちら

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