「第三種資金移動業」への2つの規制を弁護士がわかりやすく解説!

2022.06.24

はじめに

2021年5月から改正資金決済法が施行されたことにより、資金移動業は3つの類型に細分化されました。

3つの類型にはどのような違いがあるかというと、主に、取り扱うことができる金額に違いがあります。
そのなかでも、第三種資金移動業は、取り扱うことのできる金額がもっとも低い類型ですが、利用者の割合は高くなっています。

そこで今回は、「第三種資金移動業」にフォーカスして、その規制などを弁護士がわかりやすく解説します。

これから第三種資金移動業を営もうと検討している事業者は、参考にしてみてください。

1 第三種資金移動業とは

資金移動業を規制する資金決済法は、第三種資金移動業について以下のように定義しています。

    【資金決済法36条の2第3項】

    この章において「第三種資金移動業」とは、資金移動業のうち、特に少額として政令で定める額以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むことをいう


ここでいう「政令で定める額」は、5万円に相当する額とされています。

つまり、第三種資金移動業とは、5万円以下の為替取引を業として行うことをいいます。

送金サービスにおいては、100万円を超える送金ニーズ(海外送金など)もありますが、その大半を占めているのは「5万円未満の送金」です。

このような利用実態から、新たに設けられたのが「第三種資金移動業」です。

2 資金移動業の登録

資金移動業を営むためには、類型を問わず、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。

    【資金決済法37条】

    内閣総理大臣の登録を受けた者は、銀行法第四条第一項及び第四十七条第一項の規定にかかわらず、資金移動業を営むことができる


もっとも、登録を受けるためには、主に以下の3つの要件を満たす必要があり、決して簡単なことではありません。

  1. 株式会社等であること
  2. 事業を適正に遂行するために必要な財産的基盤があること
  3. 事業を適正に遂行する体制が整備されていること


このように、財産的基盤に加え、一定の体制が構築されていることが登録を受けるための条件となります。


※資金移動業の登録要件について詳しく知りたい方は、「資金移動業の登録に必要な4つの条件とは?登録後の規制とともに解説」をご覧ください。

3 登録後に課される2つの規制

第三種資金移動業者は、登録を受けた後もさまざまな規制を課されることになります。

そのなかでも特に重要なのが以下の2つの規制です。

(1)滞留規制

まずは、以下の規定をご覧ください。

    【資金決済法51条の3】

    資金移動業者(第三種資金移動業を営む者に限る。)は、第三種資金移動業の各利用者に対し、政令で定める額(=5万円)を超える額の債務(第三種資金移動業に係る為替取引に関し負担する債務に限る。)を負担してはならない


第三種資金移動業者は、利用者に対して、5万円を超える額の債務を負担してはならないとされています。

たとえば、利用者Aが利用者Bに対して送金を行うケースについて考えてみましょう。

    AからBに送金

  • 送金額:3万円
  • Bのアカウント残高:3万円


このケースでは、AからBに送金することにより、Bのアカウント残高は6万円になります。
そうすると、事業者は、Bに対して5万円を超える額の債務を負担することになってしまうため、滞留規制に抵触してしまうことになります。

このような場合には、規制に抵触するとしてシンプルに送金を不可とするか、もしくは、5万円を超える額については預貯金口座に自動的に出金するなどの措置が必要になると考えられます。

(2)履行保証金の保全義務

事業者は、送金途中にある資金の100%以上に相当する額を「履行保証金」として保全することが義務付けられます。

第三種資金移動業者の場合、「履行保証金」の額は、1週間以内で資金移動業者が定める期間ごとに、その期間における要履行保証額の最高額以上の額に相当する額とされています。

ここでいう「要履行保証額」とは、以下の2つの項目を合算した額を指します。

  • 未達債務の額(利用者から預かった資金のうち払い出していない額)
  •        +

  • 権利の実行の手続に関する費用の額(第三種資金移動業者が倒産した場合に、利用者から預かった資金の全額を返金するための費用の額)


「権利の実行の手続に関する費用の額」については、未達債務の額に応じて以下のように算出するとされています。

  • 未達債務の額が1億円以下である場合 → 未達債務の額の5%
  • 未達債務の額が1億円を超える場合  → 未達債務の額から1億円を控除した残額の1%に500万円
                        を足した額


保全のための方法は、供託、履行保証金保全契約、または、履行保証金信託契約の3つの方法がありますが、第三種資金移動業にかぎっては、この3つに加え、「分別した預貯金等で管理する」方法が認められています。

分別した預貯金等で管理する場合には、内閣総理大臣にその旨を届け出る必要があり、この場合、各営業日における未達債務の額に預貯金等管理割合(未達債務の額のうち預貯金等で管理する額の当該未達債務の額に対する割合)を乗じて得た額以上の額を預貯金等管理の方法により管理する必要があります。

4 まとめ

第三種資金移動業は、従来に比べると資産保全義務が緩和されています。

これからの参入を検討している事業者は、登録を受けるのに必要な要件はもちろんのこと、登録後にどのような規制を課されるかについてもきちんと押さえておくことが必要です。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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