偽装請負とは?4つの判断基準と罰則を弁護士がわかりやすく解説!

2023.01.10

はじめに

コンプライアンスの重要性が増す昨今、不祥事などを起こしてしまうと、その後の経営にも多大な影響を及ぼします。

「偽装請負」も、その一つでしょう。

「偽装請負」の問題は、報道でも大きく取り上げられることが多く、事業者が受けるダメージは計り知れません。
そのため、事業者は、偽装請負と判断されないように注意する必要がありますが、どのようにして、偽装請負の該当性を判断したら良いのか、わからないという方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、偽装請負の内容とその判断基準を中心に、弁護士がわかりやすく解説します。

SES契約について「SES契約とは?契約の性質や派遣法との違いについて弁護士が解説!」も参考にしてください。

また、2024年11月に成立したフリーランス法についてもチェックしたい方は「弁護士が解説する2024年フリーランス新法の改正点まとめ|今後の働き方への影響と注意点」も参考にしてください。

この記事を執筆したのは

弁護士 勝部 泰之
弁護士・中小企業診断士 勝部 泰之
東京弁護士会 所属
注力:知的財産権・著作権/ライセンス、ブロックチェーン、データ・AI法務
GWU Law LL.M.(知的財産法)
事業の成長とリスクを両立する実務寄りの助言に注力しています。

1 偽装請負とは

偽装請負」とは、その実態が労働者派遣であるにもかかわらず、請負契約という形式をとっているものをいいます。

本来、労働者派遣を事業として行う場合には、労働者派遣法上の許可・届出などが必要になります。
ですが、請負契約という形式をとることで、これらの規制を潜脱しているのが「偽装請負」です。

偽装請負は、職業安定法や労働基準法などで禁止されています。業務委託契約の実態が労働基準法上の「労働者」とみなされ、偽装請負に該当すると、労働基準法違反となり、罰則が科される可能性もあります。

このように、偽装請負は、労働者派遣法上の規制を回避するために、請負契約を偽装するというやり方で行われます。

2 偽装請負の判断基準

偽装請負にあたるかどうかは、契約内容や実際の運用状況などを基に判断されます。

以下の4点は、その際の判断基準であり、このうち一つでも満たさない基準があると、偽装請負に該当する可能性があります。

  1. 事業主が作業の完成についてすべての責任を負うものであること
  2. 作業に従事する労働者を指揮監督するものであること
  3. 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律上の義務を負うものであること
  4. 単に肉体的な労働力を提供するものでないこと

(1)事業主が作業の完成についてすべての責任を負うものであること

請負契約では「仕事の完成」が目的となるのに対し、偽装請負では「労働者の派遣」が目的となります。

そのため、請負人である事業者が、仕事の完成について一切の責任(財政上および法律上の責任)を負っているかどうかを判断する必要があります。

(2)作業に従事する労働者を指揮監督するものであること

作業に従事する労働者を指揮監督するのが「請負会社」であることが必要です。

たとえば、労働者を指揮監督する請負会社が注文者の指揮命令下に置かれており、注文者の指揮命令を忠実に再現しているに過ぎないような場合は、請負会社が労働者を指揮監督しているとはいえません。

この点は、実態によって判断されるため、注意するようにしましょう。

(3)作業に従事する労働者に対し、使用者として法律上の義務を負うものであること

通常の請負契約では、作業に従事する労働者は請負会社に雇用されていることがほとんどです。

ですが、偽装請負では労働者の雇用主が曖昧であることが少なくなく、また、社会保険の加入など、雇用主が使用者としての義務を果たさないまま労働者を派遣してしまうこともあります。

また、雇用関係があるにもかかわらず、使用者としての義務を回避するために、下請契約や業務委託契約を締結するケースも少なくありません。

作業に従事する労働者との関係で責任の所在が曖昧になっていないか、また、下請契約や業務委託契約を結んでいる場合には指揮監督関係がどうなっているかなどを確認することが必要です。

(4)単に肉体的な労働力を提供するものでないこと

自ら提供する機械や設備、材料などを使用し、または、専門的な技術や経験を必要とする作業であって、単に肉体的な労働力を提供するものでないことが必要です。

たとえば、マイホームの建築に係る契約は、請負契約の典型例ともいえますが、この場合に必要となる機械や原材料などは、請負人である建築会社が提供することが一般的です。
これに対し、派遣労働者が派遣先で使用するパソコンなどは、多くの場合、派遣先会社が提供します。

このように、作業をするにあたって必要となる機械や設備などの提供元は、契約の実態を判断する際の一要素となります。

また、請負契約は、請負人の専門的な技術や経験に着目した契約であるからこそ、請負人は仕事の完成という重い義務を負うことになるのです。

単に肉体的な労働力を提供する者に対して、仕事の完成義務を負わせることはあまりに酷であるため、その意味でも当然の要件だといえます。

以上の4つの要件をすべて満たす場合には、基本的には、合法的な請負ということになります。

もっとも、4つの要件をすべて満たしている場合でも、それが法規制を免れるために偽装された契約である場合には、偽装請負として処罰対象となるため注意が必要です。

3 偽装請負を行った場合の罰則

偽装請負を行った事業者は、以下の罰則を科される可能性があります。【コメント:各罰則の上限(懲役・罰金額)や該当条項は法改正で変動し得ます。実務では最新の条文・政省令を個別確認してください。(本コメントは情報源からの抽出外)】

(1)労働者派遣法による罰則

労働者派遣事業を無許可で行ったとして、事業者(請負会社)は、

  • 最大1年の懲役
  • 最大100万円の罰金

のいずれかを科される可能性があります。1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(労働者派遣法第59条1号、2号)。

(2)職業安定法による罰則

禁止される労働者供給事業を行ったとして、事業者(請負会社)と注文者の双方に以下のいずれかが科される可能性があります(職業安定法63条以下)。

罰則 違反内容の例
1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金 ・暴行、脅迫、監禁などにより職業紹介などを行う
・有害業務(公衆衛生・道徳に反する業務)への就業目的で職業紹介などを行う
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 ・無許可で有料職業紹介事業を営む
・虚偽の申請で許可を得る
6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 ・虚偽の広告や条件を提示して求職者を募る

(3)労働基準法による罰則

偽装請負が行われるケースでは、請負会社による中間搾取が問題となることがあります。

労働基準法は、中間搾取を禁止しており(労働基準法6条)、これに違反した場合、

  • 最大1年の拘禁刑
  • 最大50万円の罰金

のいずれを科される可能性があります(118条)。

4 まとめ

偽装請負にあたるかどうかは、実態に即して判断されることになります。

偽装請負に該当してしまうと、罰則を科されるだけでなく、取引先の信頼・社会的な信頼を失う可能性があります。

そうならないためにも、契約内容や運用状況を基に、今回見てきた4つの基準をきちんと満たしているかどうかを確認することが大切です。

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現在は、弁護士としての企業顧問と、大学院での研究という2軸の活動をしています。 弁護士としては、IT・ゲーム・フィンテック領域を中心とした企業法務をサービスの中心としています。 大学院では、一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1)において、法令工学に基づいて処理済みのデータを計量統計的に処理する研究しています。 証券会社の社内弁護士として、暗号資産交換業の法制化初期に、登録申請やコンプライアンス体制の整備に従事し、独立後も国内外の暗号資産交換業者、投資助言・代理業者、資金決済関連事業者の顧問業務を担当し、許認可・当局対応から契約、社内規程、サービス設計まで幅広く支援してきました。 ゲーム・デジタルコンテンツ、AI・データ分野では、開発・運営に関する契約、利用規約、著作権、個人情報保護、データの取得・利用条件、課金・サービス提供スキームなどを取り扱っています。また、日常的な契約・会社法務、資本政策、資金調達、株主・役員関係、紛争対応など、企業の成長段階に応じたジェネラル・コーポレート業務にも対応しています。 また、中小企業診断士として、財務分析、事業計画、資金繰り、融資・エクイティを含む資金調達の検討にも関与しています。法的な可否やリスクを指摘するだけでなく、事業性、財務、オペレーションを踏まえた実行可能な選択肢を示し、契約、規程、業務フローに落とし込むことを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所において、企業間紛争、訴訟その他の企業法務に従事。 2015年~2016年 米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M.を取得。コンピュータ・ソフトウェア産業における知的財産保護、著作権、ライセンス及び契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、法制化初期の仮想通貨交換業、現在の暗号資産交換業に関する登録申請及びコンプライアンス体制の整備に従事。 独立後、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業者(投資助言・代理業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。許認可・当局対応、契約・規約、社内規程、事業スキームの設計などを支援。

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