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「経営者保証に関するガイドライン」の4つのポイントを弁護士が解説

経営者保証

はじめに

これまで、中小企業を経営する方が融資を受けようとする際には、経営者保証を求められることが大半でした。

とはいえ、融資額は小さくないため、個人保証をするとさまざまなリスクを背負うことになります。

このようなリスクは、経営者の事業活動や事業承継時における後継者の確保の障害にもなっていました。

このような障害を解消しようと作られたのが「経営者保証に関するガイドライン」です。

もっとも、このガイドラインにより経営者保証の考え方がどのように変わるのか、経営者保証をせずに融資を受けるには、どのようなことが求められるのか、などわからない点もあると思います。

そこで今回は、「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、経営者保証をせずに融資を受ける方法やそのために必要な対応などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

1 経営者保証とは

経営者保証

経営者保証」とは、中小企業が融資を受ける際に、その経営者が保証人となることをいいます。

以下は、経営者保証の仕組みを図にしたものです。

このように、経営者保証は、企業が倒産した場合のリスクに備えて、金融機関から求められるものです。

かつては、中小企業が融資を受ける際には、必ずといっていいほど、経営者個人が連帯保証人となることが条件となっていました。

とはいえ、企業の債務について、経営者が保証人になることは、それだけで極めてリスクが大きいといえます。

そのためか、経営者は、失敗を恐れ、思い切った経営をすることを躊躇するようになるため、中小企業の事業拡大や成長を阻害する要因にもなるとの指摘がなされていました。

また、経営者は個人保証をしているため、業績が悪化した場合であっても、債務処理や企業再建に消極的となり、社会的にもデメリットとなっていました。

このような状況を受けて、国は、中小企業を支援する政策の一環として、「経営者保証に関するガイドライン」をまとめました。

2 経営者保証に関するガイドラインとは

ガイドライン

経営者保証に関するガイドライン」とは、2013年に日本商工会議所や全国銀行協会が公表したガイドラインで、2014年2月から運用が開始されています。

このガイドラインには、融資を受ける際に経営者保証を不要とする条件が定められており、また、早期に債務処理や企業再建に踏み切った場合には、経営者に一定の生活費を残すなどして、生活を維持するための可能性などが示されています。

経営者保証に関するガイドラインの適用対象となるのは、以下の条件をすべて満たす保証契約です。

  1. 保証契約における主債務者が中小企業である
  2. 保証人が個人で、主債務者である中小企業の経営者である
  3. 主債務者と保証人の双方が財産状況などの開示に誠実であること
  4. 主債務者と保証人がいずれも反社会的勢力でないこと

(1)保証契約における主債務者が中小企業である

経営者が保証する契約の本体となる契約の主債務者が中小企業であることが必要です。

中小企業は、その業態によって、資本金や出資の総額、従業員数などが異なります。

また、従業員が20人以下の製造業や従業員が5人以下の商業・サービス業も小規模企業者として、適用対象となります。

 

※中小企業者の定義について、詳しく知りたい方は、中小企業庁が公表している「中小企業・小規模企業者の定義」をご覧ください。

(2)保証人が個人で、主債務者である中小企業の経営者である

保証人が個人で、主債務者(中小企業)の経営者であることが必要です。

もっとも、

  • 実質的な経営権を有している人
  • 営業許可の名義人
  • 経営者とともに事業に従事する経営者の配偶者
  • 経営者の健康上の理由のため保証人となる事業承継予定者

などは、ここでいう「経営者」に含まれます。

(3)主債務者と保証人の双方が財産状況などの開示に誠実であること

主債務者と保証人の双方が、返済について誠実であり、金融機関等の債権者の求めに応じ、負債を含む財産状況などについて、適切に開示していることが必要です。

たとえば、債務整理に着手した後に、主債務者や保証人が債務を履行しなかった場合、財産状況などの開示が不正確である場合であっても、そのことをもって直ちにガイドラインの適用が否定されるものではありません。

このような場合には、債務不履行の態様や私的流用の有無などを踏まえて、主債務者または保証人の悪質性の程度などから判断されるものと考えられます。

(4)主債務者と保証人がいずれも反社会的勢力でないこと

主債務者と保証人がいずれも反社会的勢力でなく、そのおそれもないことが必要です。

この点は、主債務者や保証人が提出する書類の記載内容などから判断されます。

以上のように、ガイドラインの適用対象を明らかにしたところで、次の項目からは、具体的な内容について見ていきたいと思います。

 

※経営者に関するガイドラインの適用対象について、詳しく知りたい方は、「経営者に関するガイドライン」「経営者保証に関するガイドライン Q&A」をご覧ください。

3 ガイドラインのポイント

ポイント

ガイドラインについて、ポイントとなるのは、以下の4点です。

  1. 経営者保証なしに融資を受けるための対応
  2. 既存の経営者保証を見直すための対応
  3. 事業承継における対応
  4. 事業承継や保証債務の整理における対応

4 経営者保証なしに融資を受けるための方法

方法

主債務者が、経営者保証を提供することなく融資を受けるためには、経営状況として以下の点を満たしていることが求められます。

  1. 法人と経営者の分離
  2. 財政基盤の強化
  3. 経営の透明性の確保

(1)法人と経営者の分離

法人の資産と経営者個人の資産を明確に分離することや、法人の経理と経営者の家計を適切に分離する必要があります。

たとえば、法人の事業活動に必要とされる不動産や自動車などを経営者が個人で所有していると、経営者の個人的な事情によってこれらの資産を売却したり、担保に差入れることが可能になります。

そのため、法人の事業活動に必要な資産は、すべて法人所有とすることが望ましいといえます。

また、経理や家計についても、法人から経営者に対し、不要な貸付けを行わないことはもちろんのこと、経営者が個人として使った費用を法人の経費として計上しないことなどが挙げられます。

もっとも、経営者の自宅が事務所を兼ねているなど、明確に分離することが困難な場合は、法人から経営者に賃料などを支払うなどして、法人と経営者を分離することが必要です。

さらに、これらの対応について、外部の専門家(たとえば、弁護士や公認会計士など)に検証してもらい、その結果を金融機関に開示することによって、法人と経営者が分離しているということを担保できます。

(2)財政基盤の強化

経営者保証は、主債務者(中小企業)の信用を補完することを目的の一つとしていますが、経営者保証を提供しない場合でもスムーズに資金調達できるように、主債務者は、財務状況や経営成績の改善を通じて、返済能力を向上させ、信用力を強化していくことが求められます。

たとえば、業績が順調で十分なキャッシュフローを確保しており、内部留保も十分であることや、業績は不安定であるものの、内部留保が十分であることから借入金の全額を返済する能力があると判断できうるような財務状況が望まれます。

(3)経営の透明性の確保

主債務者は、金融機関などから業績の見通しやその進捗などに関する情報開示の要請があった場合には、正確かつ丁寧に信頼できる情報を開示・説明するなどして、経営の透明性を確保することが求められます。

たとえば、貸借対照表や損益計算書だけでなく、各勘定明細なども併せて開示することが望ましいといえます。

また、これらの開示情報について信頼性を担保するために、公認会計士や税理士・弁護士といった外部の専門家に検証をしてもらい、その結果を開示することも大切です。

さらに、情報を開示した後も、事業計画や業績の見通しなどに変更が生じた場合は、自ら報告するなどして適切に情報開示を行うことが望まれます。

 

※経営者なし融資を受けるための方法について、詳しく知りたい方は、「経営者に関するガイドライン」「経営者保証に関するガイドライン Q&A」をご覧ください。

5 既存の経営者保証を見直すための方法

見直し

主債務者と保証人は、既に締結済みの経営者保証契約の解除を申し入れる際には、以下の3点を将来にわたって維持するよう努力することが求められます。

  1. 法人と経営者の分離
  2. 財政基盤の強化
  3. 経営の透明性の確保

以上の3点は、これから経営者保証を提供せずに融資を受けようとする企業に求められる対応と同様です。

このようにして、主債務者が経営努力をするなどして、既存の経営者保証契約の解除を申し入れた場合、金融機関側に対しては、いまいちど、経営者保証が本当に必要かどうか、また、その保証金の額などについて検討をして、その結果を主債務者と保証人に対して、説明することが求められています。

さらに、主債務者において、上の3点に加えて、

    ⅰ)主債務者と経営者の資金のやりとりが、常識の範囲を超えていない

    ⅱ)主債務者の資力だけで借入れの返済が可能と判断できる

    ⅲ)主債務者から適切な財務情報などが提供されている

    ⅳ)経営者から十分な物的担保の提供がある

という4点が将来にわたって満たされると見込まれる場合には、金融機関側において、主債務者の経営状況や資金の使途、回収可能性などを考慮するうえで、経営者保証を不要とする可能性や代替的な融資方法を用いる可能性などを、主債務者の意向も踏まえたうえで、検討することが求められます。

この場合、必ずしも上に挙げた条件をすべて満たすことが必要になるわけではありませんが、可能なかぎり、多くの条件を満たすことが望ましいといえます。

以上のように、事業者は、既存の経営保証を変更したり解除の申し入れをする場合には、上に挙げた7点を一つでも多く満たすように、経営改善をするなどの対応が必要になります。

 

※既存の経営者保証を見直すための方法について、詳しく知りたい方は、「経営者に関するガイドライン」「経営者保証に関するガイドライン Q&A」をご覧ください。

6 事業承継や保証債務の整理における対応

事業承継

事業承継」とは、会社の経営権や資産・負債など、事業に関する一切のものを次の経営者に引き継ぐことをいいます。

そのため、事業承継が行われる場合には、経営者による個人保証も次の経営者に引き継がれることになります。

ですが、この点が事業承継にとって大きな障害となっていました。

平成29年度の中小機構アンケートでは、後継者となる者が経営者保証を理由として、事業承継を拒否するケースが6割近くを占めていました。

そこで、経営者保証ガイドラインでは、可能なかぎり、後継者が経営者保証を引き継ぐことなく、事業承継できるように、会社と旧経営者、そして、後継者が取るべき対応を定めました。

(1)会社(主債務者)・旧経営者・後継者が取るべき対応

主債務者と保証人(旧経営者)が、経営者保証を後継者に引き継ぐことなしに、事業承継を望む場合には、これまでに見てきたように、会社経営が以下の状態にあることが求められます。

  1. 法人と経営者の分離
  2. 財政基盤の強化
  3. 経営の透明性の確保

また、両者に求められる対応として、金融機関により一定の情報を開示するよう求められたときは、会社(主債務者)と旧経営者は適切な対応をとることが望まれます。

事業承継の場合、経営者が交替することになるため、経営方針や事業計画などに変更が生じる可能性があります。

その場合、どのような変更が生じたかなどを誠実かつ丁寧に金融機関に説明することが求められます。

(2)保証債務の整理

保証人は、以下に挙げる条件を満たすことで、自身が負担する保証債務について、このガイドラインに基づく保証債務の整理を金融機関に申し出ることができます。

まずは、保証債務の整理の対象となる保証契約が、経営者保証ガイドラインの適用を受けるための条件を満たしていることが必要です。

先に見たとおり、ここにいう条件は以下の4点です。

  1. 保証契約における主債務者が中小企業である
  2. 保証人が個人で、主債務者である中小企業の経営者である
  3. 主債務者と保証人の双方が財産状況などの開示に誠実であること
  4. 主債務者と保証人がいずれも反社会的勢力でないこと

また、以下の3つの条件も同時に満たしている必要があります。

    ⅰ)主債務者が倒産手続を行っており、または、手続が既に終結していること

    ⅱ)金融機関にとって経済的な合理性が期待できること

    ⅲ)保証人において、破産法上の免責不許可事由がないこと

ⅰ)主債務者が倒産手続を行っており、または、手続が既に終結していること

主債務者が、このガイドラインの利用とともに、破産手続や民事再生手続、事業再生ADRといった整理手続を現に行い、または、既に終結していることが必要です。

ⅱ)金融機関にとって経済的な合理性が期待できること

主債務者と保証人の資産や債務状況などから、破産手続をした場合の配当よりも多くの回収をできる見込みがあるなど、金融機関にとって経済的な合理性が期待できることが必要です。

ⅲ)保証人において、破産法上の免責不許可事由がないこと

免責不許可事由」とは、自己破産による免責が認められないものとして定められている一定の行為をいいます。

保証人において、この免責不許可事由が存在しないことが必要です。

 

※事業承継における対応について、詳しく知りたい方は、「経営者に関するガイドライン」「事業承継時に焦点を当てた経営者保証に関するガイドラインの特則」をご覧ください。

※保証債務の整理に関する対応について、詳しく知りたい方は、「経営者に関するガイドライン」「経営者保証に関するガイドライン Q&A」をご覧ください。

7 小括

小括

これまで、企業が融資を受ける際には、経営者個人がその債務を保証することがほとんどでした。

ですが、経営者個人が企業の債務を保証することには大きなリスクを伴うため、経営者の事業活動を萎縮させることにも繋がります。

経営者保証ガイドラインには、経営者保証をせずに企業が融資を受ける方法や経営者に求められる対応などが定められています。

これから新規で融資を申し込もうと考えている企業や既存の経営者保証を見直したいと考えている企業は、経営者保証ガイドラインに定められている内容をきちんと理解することが必要です。

8 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りになります。

  • 「経営者保証」とは、中小企業が融資を受ける際に、経営者が個人保証をすることをいう
  • 「経営者保証に関するガイドライン」とは、2013年に日本商工会議所や全国銀行協会が公表したもので、融資を受ける際に経営者保証を不要とする条件が定められている
  • 経営者保証に関するガイドラインの適用対象は、①保証契約の主債務者が中小企業である、②保証人が個人で、中小企業の経営者である、③主債務者と保証人の双方が財産状況などの開示に誠実であること、④当事者が反社会的勢力でないことの4つをすべて満たす保証契約である
  • 経営者保証をせずに融資を受けたり、既存の経営者保証を見直す際には、経営状況として①法人と経営者の分離、②財政基盤の強化、③経営の透明性の確保の3点を満たしていることが必要である
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