「定型約款」とは?合意や変更のルールについて弁護士が解説

はじめに
一般消費者に提供されるサービスにはさまざまなものがありますが、サービスの多くは「利用規約」を設けています。
利用規約を作成する場合には、改正民法で新設された「定型約款」に注意する必要があります。
今回は、施行されて間もなく1年となる「定型約款」について、わかりやすく解説します。
1 「定型約款」とは?

「定型約款」は、民法で「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」と定義されています。
また、ここでいう「定型取引」についても、民法が「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」と定義しています。
以上の定義をまとめると、定型約款にあたる要件は以下の3点ということになります。
- 不特定多数を対象とする取引であること
- 取引内容の画一性が取引当事者にとって合理的であること
- 契約内容とするために準備された条項の総体であること
これらの要件をすべて満たす場合は、「定型約款」にあたり、改正民法の規制対象となります。
一般的によく目にする「利用規約」の多くは、これらの要件をすべて満たすと考えられるため、定型約款にあたることになるのです。
2 定型約款の合意

定型約款にあたる利用規約の合意について、民法は以下のように定めています。
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【民法548条の2第1項】
定型取引を行うことの合意をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
「定型約款を契約の内容する旨の合意」とありますが、利用規約中に「利用規約に合意した場合は、同規約の内容を契約の内容とします」といった文言を盛り込んでおく方法によって、この要件を満たすことができます。
また、利用者が簡単に目に触れることができるようなサイト上のページに利用規約を掲載しておくことにより、「定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示」したといえます。
この2点のいずれかを満たしている場合において、利用規約に合意した利用者は、利用規約の各条項について合意したものとみなされます。
もっとも、定型約款にあたる利用規約において、以下のような条項が定められている場合は不利益条項として、その条項については合意をしなかったものとみなされます。
- 利用者の権利義務を制限・加重するもの
- 利用者の利益を一方的に害するもの
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先に見た2点のいずれかを満たしてさえいれば、すべての条項について有効な合意があったとみなされるわけではありません。
たとえば、利用者による解約を一切認めない条項、あまりに高額な違約金条項などは、利用者の権利義務を不当に制限・加重するものであり、利用者の利益を一方的に害するため、これらの条項については合意をしなかったものとみなされます。
3 定型約款の変更

サービスを提供している過程で、サービスの内容に変更が生じた場合には、その変更に伴い利用規約を変更する必要があります。
定型約款にあたる利用規約の変更について、民法は以下のように定めています。
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【民法548条の4第1項】
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
利用規約を変更する場合に、すべての利用者から個別に合意を取るとなると、そこに大変な手間と労力がかかります。
そこで、定型約款にあたる利用規約を変更する場合には、①利用者の一般利益に適合すること、もしくは、②変更が諸般の事情に照らして合理的であること、のいずれかを満たすことを条件として、利用者から個別に合意を得ることなく、変更することができます。
ここでいう「利用者の一般の利益に適合する」とは、たとえば、法律で禁止されている行為を禁止行為として追加する旨の変更などが挙げられます。
また、利用規約の変更内容が契約とはまったく関係のない内容であったり、利用者にとって不意打ちともいえるような利用規約の変更は、変更の必要性や変更後の内容の相当性が認められない可能性があります。
その場合、該当する変更の部分については無効となる可能性があります。
また、利用規約を変更する場合、事業者は利用規約の変更の効力発生日を定めたうえで、利用規約を変更する旨および変更後の内容とともに事業者サイトなどを通じて利用者に周知しなければなりません。
特に、効力発生日を周知していない場合には、変更の効力が生じない場合もあるため注意が必要です。
4 まとめ
サービスに関する「利用規約」には、想定されるさまざまなトラブルを未然に防ぐ目的があるとともに、トラブルが生じた場合の責任の所在や範囲を明確にしておくという目的もあります。
また、しっかりとした利用規約を設けているサービスは、利用者の信頼の向上にも繋がるため、その意味でも利用規約は大変重要な役割を担っています。
利用規約を作成する際には、改正民法上の定型約款の規定を十分に理解していることが前提となるため、その点に注意する必要があります。
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