上場審査の期間は?6つのフェーズごとにその概要を弁護士が解説!

2022.10.18

はじめに

株式市場への上場を見据え、日々準備を進めている事業者もいらっしゃると思います。

上場するためには、そのための申請と上場審査を経る必要がありますが、株式市場での上場審査はどのようなスケジュールで進められるのでしょうか。
上場申請を控える事業者にとって、上場審査のスケジュールを把握しておくことは、上場日を知るためにも必要なことです。

そこで今回は、株式市場における上場審査のスケジュールを中心に、弁護士がわかりやすく解説します。

1 上場審査のスケジュール

上場申請後、実際に上場が承認されるまでのスケジュールは以下のようになっています。

  1. 上場申請
  2. ヒアリング
  3. 実地調査
  4. 社長・監査役・公認会計士等のヒアリング
  5. 社長説明会
  6. 上場承認

2 上場申請~実地調査

(1)上場申請

上場申請は、申請日の直前事業年度に係る定時株主総会が終了した後に行われることが一般的です。
具体的な時期は、事業者と主幹事証券会社(事業者の上場を支援する証券会社)の話し合いにより決まります。

申請にあたっては、申請全体に係る責任者や窓口となる責任者、そして、主幹事証券会社の担当者が出席します。

申請書類を提出すると、審査担当者から上場審査のスケジュールや審査内容などについて説明が行われ、上場申請の理由や事業内容、経営環境などについて、事業者へのヒアリングが実施されることが一般的です。

その後、提出書類を基に書面審査が行われ、追加質問事項が提示されます。
事業者は回答期限内に追加質問事項に対する回答書を提出しなければなりません。

(2)ヒアリング

追加質問事項に対する回答書などに関してヒアリングが実施されます。

審査は主に、事業者を把握し、上場会社としての適格性の有無を判断するために実施されます。
そのため、事業者は、正確な情報を開示することが必要です。

開示する情報が不十分・不正確だと、さらに追加質問が発生し、上場スケジュールに遅延が生じる可能性があるため注意するようにしましょう。

(3)実地調査

事業内容を正確に把握するために、審査担当者が事業者の本社や工場、事業所などに赴き、会計伝票や帳票類の閲覧・ヒアリングを実施します。

上場する市場によって多少の違いはありますが、通常、上場申請から実地調査に至るまでは6週間~10週間程度かかることが一般的です。

3 社長・監査役・公認会計士等のヒアリング~上場承認

(1)社長・監査役・公認会計士等のヒアリング

社長や監査役等に対してヒアリングが実施されます。
具体的なヒアリング事項は、以下のようになっています。

①社長へのヒアリング

審査担当者が会社に赴き、主に以下の事項について社長へのヒアリングが行われます。

  • 経営ビジョン
  • 上場会社となった際の投資者への対応
  • コーポレートガバナンス・コンプライアンスに対する方針
  • 適時開示に関する体制・内部情報管理に関する体制

②監査役へのヒアリング

常勤監査役に対し、実施している監査の状況や事業者が抱えている課題などのヒアリングが行われます。

もっとも、個別の事情によっては、社長や監査役以外の役員に対してヒアリングが行われることもあります。

③公認会計士へのヒアリング

上場審査は、主幹事証券会社や公認会計士により事前指導が行われていることを前提として実施されます。
そのため、公認会計士に対してもヒアリングが行われることが一般的です。

具体的はヒアリング事項は、以下のようになっています。

  • 監査契約締結の経緯
  • 経営者や監査役などとのコミュニケーションの状況
  • 内部管理体制の状況
  • 経理・開示体制

(2)社長説明会

社長から証券取引所自主規制法人役員に対して、会社の特徴や経営方針、事業計画などについての説明が行われます。

説明に伴い質疑応答が行われ、自主規制法人役員からは、上場会社となった場合の留意事項や要請事項の説明が行われます。

東京証券取引所では、上場後の開示体制への要請も行われるため、「情報取扱責任者」に予定されている者の同席が必要です。

(3)上場承認

社長説明会を終え、証券取引所の内部決裁が下ると、上場が承認された旨の連絡が入ります。
証券取引所のホームページにおいても、その旨公表されます。


以上が、上場申請後、上場が承認されるまでの大まかな流れです。

東京証券取引所を例にとると、本則市場が申請日から3ヶ月、マザーズ・JASDAQが申請日から2ヶ月程度が標準的な審査期間とされています。

もっとも、審査過程において、それまでに判明していなかった問題点などが発見された場合は、問題点を確認したりその改善策を策定したりすることが必要になるため、審査期間が標準的な期間よりも長くなることもあります。

4 まとめ

上場審査では、上場会社としての適格性があるかどうかを判断する必要があるため、書面審査に加えヒアリングによる調査も予定されています。

審査を円滑に進めるためには、上場審査のスケジュールをきちんと把握したうえで、しっかりとした準備を行うことが大切です。


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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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