はじめに

昨今、さまざまな分野でドローンが活用されていますが、アメリカでは、ドローンを魚群探知に使うシステムが開発されており、魚群探知の機能をもったドローンが販売されています。

これまでは、「魚群探知」というと、機械を搭載した船で魚群を調査する場所まで行く必要がありました。ですが、ドローンを魚群探知に活用できれば、あらかじめ魚群を特定することが可能となり、燃料や時間をかけて魚群を探す必要がなくなります。

もっとも、魚群探知のためとはいえ、ドローンを飛ばす以上、自由にいつでも飛ばすことはできず、一定のルールに則って飛ばす必要があります。

そこで今回は、魚群探知にドローンを活用する際に、守るべき法律について、必要な申請の手順や方法にも触れながら、ITに強い弁護士が解説します。

1 魚群探知におけるドローンの活用

魚群探知機

従来の魚群探知機は、船に搭載されていることがほとんどであったため、その船で探知しようとする場所の近くまで行く必要がありました。

この点、ドローンを魚群探知に活用できれば、出航する前に魚群を特定でき、まっすぐ漁場に向かうことが可能になります。そうなれば、燃料代や時間といったコストを大きくカットできることが期待できます。

もっとも、ドローンは自由に飛ばせるものではありません。ドローンを飛ばすためには、「航空法」を始めとしたいくつかのルールをきちんと守ることが必要です。

2 航空法による法律規制

航空法

航空法」とは、航空機の航行の安全を確保したり、航空機の航行で障害が発生することを防止することを目的とした法律です。

魚群探知用ドローンの法律問題を検討するにあたっては、まずは、

  1. 飛行「場所」(飛行禁止区域)
  2. 飛行「方法」(飛ばし方)

を規定した「航空法」の適用が問題となります。

(1)飛行「場所」(飛行禁止区域)

航空法は、ドローンを飛ばすことができる場所を制限しています。両翼のジェットエンジンにドローンが巻き込まれエンジンが停止してしまったり、操縦室の窓ガラスにドローンが激突して割れてしまうような事故が起きないようにするための規制です。

具体的には、以下の2つの場所が飛行禁止区域とされています。

  1. 航空機の航行にとってリスクがある場所
  2. 人や家屋が密集している地域(DID地区)

①航空機の航行にとってリスクがある場所

航空法は、航空機の航行にとってリスクがある場所として、以下の2つを定めています。

    (ⅰ)空港の周辺地域

    (ⅱ)一定の高度以上の空域

(ⅰ)空港の周辺地域

空港周辺では、原則として、ドローンを飛ばすことができません。

「空港周辺の上空」とは、具体的には、以下の場所を意味します。

  • 進入表面、転移表面もしくは水平表面
  • 国が指定した延長進入表面、円錐表面もしくは外側水平表面
  • 飛行場周辺の、航空機の離陸および着陸の安全を確保するために必要なものとして国が定める空域(進入表面が無い場合)

これらを見ても抽象的で分かりづらいと思いますが、基本的には空港の周辺では飛ばせないという理解で問題ありません。
 
※飛行禁止区域としての「空港の周辺地域」について、詳しく知りたい方は、国土地理院の「空港等の周辺の空域(航空局)」をご確認ください。

(ⅱ)一定の高度以上の空域

航空機の最低飛行空域は、地表または水面から150mと定められています。

そのため、航空機の航行上の安全性を確保することを目的に、150m以上の空域では、原則として、ドローンを飛ばしてはいけないとされています。

 

以上より、空港周辺以外の150m未満の空域では、ドローンを飛行させることが可能だと分かります。もっとも、150m未満の空域でも飛ばせない地域があります。

②人や家屋が密集している地域(DID地区)

人や家屋が密集している地域(DID地区)」とは、人や家屋が密集している地域のことを意味します。

DID地区での飛行は、なんらかの誤作動や天候条件でドローンが制御できなくなり墜落した際に、人や家屋に損害を与える恐れがあるため制限されています。

人口集中地区マップ

上の地図は、東京都心を示した人口集中地区マップです。赤色になっている部分がDID地区にあたります。

 

このように、空港周辺や人口集中地区などでは、原則として、ドローンを飛ばすことはできませんが、国土交通大臣から許可を受けていれば、これらの地域でもドローンを飛ばすことができます。
 
※どの地域が人口集中地区にあたるかは、国土地理院の「人口集中地区マップ」で確認することができます。

(2)飛行「方法」

航空法は、「飛行場所」とは別にドローンの飛ばし方についても一定のルールを設けています。具体的には、以下の6つです。

  1. 目視の範囲内で飛行させること(★)
  2. 日中に飛行させること
  3. 人または物件との間に30m以上の距離を保って飛行させること(★)
  4. 催し場所(イベントやお祭りの会場)の上空で飛行させないこと
  5. 危険物を輸送しないこと
  6. 物件を投下しないこと

魚群探知にドローンを用いる際には、主に目視内飛行(①)と人または物との距離が30m以上保たれているか(③)が問題になります。

そのため、今回はこの2点に絞って解説していきたいと思います。

①目視の範囲内で飛行させること(目視外飛行)

目視の範囲内

ドローンを飛行させる際は、操縦者本人がドローンを直接目で見ながら操縦することが求められます。仮に、直接目で見ながら操縦ができない場合は、「目視外飛行」にあたるため、国土交通大臣から承認を得る必要が生じます。

魚群探知にドローンを用いる場合、直接目でドローンを監視しながら操縦することは、通常、想定されていません。

そのため、「目視外飛行」にあたり、国土交通大臣の承認を得る必要があります。

なお、承認を得るためには、以下のように、「機体」・「操縦者」・「安全確保のための体制」の3つの基準を満たす必要があります。

    【機体】

  • 自動操縦システムの装備
  • 機体の位置および異常を地上で把握できること
  • 自動帰還機能などの危機回避機能の装備
    【操縦者】

  • モニター越しに意図した飛行が可能な能力
    【安全確保のための体制】

  • ドローンの飛行状況や周囲の気象状況の変化を常に監視できる補助者の配置

このうち、安全確保のための体制として配置が求められる「補助者」については、配置しないことも可能です。ですが、補助者を配置しない場合は、飛行場所を山や森林など第三者が立ち入る可能性の低い場所にする必要があります。そのほかにも、ドローンの操縦中に突如として問題が起きた時に、着陸・着水させるポイントをあらかじめリストアップしておくといった対策をとっておく必要があるなど、さらに厳しい条件を課されます。
 
※ドローンの目視外飛行における承認基準について詳しく知りたい方は、国土交通省がまとめた「無人航空機の目視外飛行に関する要件」をご覧ください。

②人または物件との間に30m以上の距離を保つこと

距離の確保

ドローンを飛ばす際には、人・物件との間に30m以上の距離を保たなければなりません。

この規制は、人や物件の安全性を確保することを目的としています。

ここでいう「人」には、ドローンを飛行させる操縦者とその関係者は含まれません。

この点、魚群探知にドローンを用いる際に、海を航行する他の船舶との距離が30m未満になる可能性は大いにあります。

そのため、基本的には国土交通大臣の承認を得ておいた方が無難であると考えられます。

 

このように、魚群探知にドローンを用いる際に、守るべき航空法の規制の中でも特に注意すべきは、以上の2点です。

もっとも、以上で見てきた航空法さえ気を付けておけばいいというわけではありません。航空法以外にも注意すべき法律規制はあります。

3 航空法以外に留意すべき規制

その他の法律

ドローンを使って魚群探知をする場合、航空法以外に留意すべき法律規制として、以下の2つの法律があります。

  1. 海上交通安全法
  2. 港則法

(1)海上交通安全法

海上交通安全法」とは、船舶が複雑かつ多量に交通する海域において、危険を防止することを目的として定められた法律です。航路となる海域やその周辺において「工事または作業」を実施する場合は、海上保安庁長官の許可を得る必要があります。工事にあたると考えられるものとして、海底トンネルや油田を掘削するためのリグの建設などが挙げられます。また、作業にあたると考えられるものとしては、測量などのように船舶が航行する上でリスクとなりうるものが挙げられます。

もっとも、ドローンを単体で飛ばす場合には、そこまで大がかりなものではないことが一般的であるため、「工事または作業」には該当しないものと考えられます。

(2)港則法

港則法」とは、特定の港の中やその境界周辺における、船舶の交通の安全と秩序を図るための法律です。喫水の深い船舶や外国船が入港するような特定の港湾内で「工事または作業」を実施する場合には、海上保安庁長官によって任命・監督される港長の許可を得る必要があります。

港則法との関係においても、海上交通安全法と同じように、魚群探知でドローンを用いても、「工事または作業」には当たらないものと考えられます。

 

このように、海上交通安全法と港則法では、一定の場所で「工事または作業」を実施する場合には許可を取得することを求めています。

この点、魚群探知に用いられるドローンは比較的小規模であることが多いため、「工事または作業」にあたるとされるケースはさほど多くないといえます。そのため、許可を不要とするケースが多いということがいえます。

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4 航空法に違反した場合の罰則(ペナルティ)

ペナルティ

航空法に違反した場合、

  • 最大50万円の罰金

を科される可能性があります。

たとえ、罰金であっても、前科として扱われます。

前科がついてしまった場合、

  • 就職活動や転職活動で、マイナス査定がつく
  • 資格取得の制限、欠格事由(資格を取得する資格の喪失)になる
  • 海外への渡航に制限がつく

といった不利益を受ける可能性があります。

このように、航空法に違反してしまうと、経済的のみならず社会活動上のデメリットも生じるおそれがあります。

このようなことにならないためにも、ドローンを使って魚群探知をする場合には、許可・承認が必要となるのか、などをきちんと確認し、必要に応じて、許可・承認を取得し、適切にドローンを飛ばすことが極めて重要です。

5 航空法上の許可・承認申請のやり方

許可申請

(1)飛行許可申請の種類

目視外飛行などでドローンを飛行させるには、航空法上の許可・承認を受ける必要があり、そのためには申請を行う必要があります。許可・承認申請には、大きく分けて以下の2つの種類があります。

  1. 個別申請
  2. 包括申請

①個別申請

個別申請」とは、あらかじめドローンを飛ばす日や飛行経路(飛行場所)を指定して行う申請です。前もって、飛行日と経路が決定できる場合に利用する申請方法です。

②包括申請

包括申請」とは、飛ばす日に期間を設けたり、飛行する経路(飛行場所)に範囲を設けて行う申請です。ドローンを使って魚群探知をする場合、当日の気候や波の状態に左右されやすいといえます。このような場合に利用できるのが包括申請です。

包括申請には、以下の2つの種類があります。

    (ⅰ)期間包括申請

    (ⅱ)飛行経路包括申請

(ⅰ)期間包括申請

期間包括申請」とは、ドローンを飛ばす期間を最長で1年として行う申請のことをいいます。

この申請方法によれば、「令和元年5月1日から令和2年4月30日」といった形で申請することになります。この場合、許可された期間内であれば繰り返しドローンを飛ばすことが可能です。

たとえば、決められた漁場で継続的にドローンを使って魚群探知を行いたい場合には期間包括申請によることとなります。

(ⅱ)飛行経路包括申請

飛行経路包括申請」とは、飛行する経路が1つに特定できない場合に、経路に範囲を設けて行う申請のことをいいます。飛行場所は決まっているものの、それが複数の場所にわたる場合や、飛行場所が明確には決まっていないものの、飛行範囲はだいたい決まっているような場合に利用できる申請方法です。

 

このように、ドローンの飛行日や飛行場所に応じて申請の種類は変わります。そのため、飛行日や飛行場所を特定できているかどうかを事前にきちんと確認し、それに見合った申請を行うことが大切です。
 
※申請用の書類は、国土交通省HPの「無人航空機の飛行に関する許可・承認申請書(様式)」からダウンロードできます。

(2)飛行許可の申請先

申請書類を提出する先は、以下の2つのいずれかです。

  1. 空港事務所
  2. 航空局

①空港事務所

以下の空域における飛行の許可申請を行う場合は、「空港事務所」が提出先となります。

  • 空港周辺の空域
  • 150m以上の空域

②航空局

以下の7つにあたる飛行の許可申請を行う場合は、「航空局」が提出先となります。

  • 人や家屋が密集する地域における飛行
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人や物との距離が30m未満の飛行
  • イベント会場上空の飛行
  • 危険物の輸送を伴う飛行
  • 物件の投下を伴う飛行

魚群探知でドローンを飛ばす場合は、先にも見たように、「目視外飛行」と「人や物との距離が30m未満の飛行」が特に問題となるため、この点に注意して申請を行うことが必要です。

なお、提出先が航空局となる場合には、ドローンの飛行地域によって、さらに東京航空局と大阪航空局にわかれているため、注意が必要です。

(3)飛行許可の申請方法

飛行許可の申請方法は、以下の4つです。

  1. 郵送
  2. 持参
  3. オンライン申請
  4. 電話、電子メールまたはFAX

これらのうち、電話、電子メールまたはFAXによる申請は、事故や災害調査といった有事にのみ利用できる申請方法です。
 
※ドローンの飛行申請を具体的にどのように行うかを知りたい方は、「ドローンの飛行許可申請のやり方は?5つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

6 小括

まとめ

魚群探知にドローンを活用したい場合には、航空法をチェックする必要があるのはもちろんのこと、そのほかにも、海上交通安全法や港則法といった法律を念のために確認する必要があります。

ドローンを使った魚群探知は、通常「目視外飛行」にあたるため、国から承認を受ける必要があることを前提に、今回見てきたルールをきちんと理解した上で、ドローンを適切に魚群探知に活用するようにしましょう。

7 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • ドローンは航空機の安全を目的とする航空法の規制対象である
  • 航空法では、ドローンが飛行できる空域と方法について制限を設けている
  • ドローンを使って魚群探知をする場合、航空法だけでなく、海上交通安全法と港則法の規制対象になることがある
  • 航空法の規制をまもらないと最大50万円の罰金を科される可能性がある
  • 航空法上の許可申請には、①個別申請、②包括申請の2つの種類がある
  • 許可申請は、①郵送、②航空局窓口、③オンライン申請、(緊急時は)④電話、電子メールまたはFAXで行う