有給休暇が残ったままの退職は損!急な退職でも100%消化する方法

急な事情で退職することが決まったけど、有給休暇が使い切れず残ったままの方。
「有給消化せずに退職するとどうなるのか」「急な退職でも有給消化してよいのか」と疑問があるかもしれません。
結論をいうと、有給を消化しないまま退職すると、有給は2度と消化できなくなりますが、逆に退職前であれば必ず「消化」できます。
また、万が一消化できなかったときには、有給分をお金に変える「買取」という方法もあります。
有給を無駄にしないためには、「退職前」に全て消化するか、会社に「買取」してもらう約束を取り付けておく必要があるのです。
ただし、急な退職の場合、引き継ぎや人手不足などの問題で会社からすんなり有給消化のOKが出ないこともあります。
スムーズに有給消化するには、引き継ぎ期間・有給消化期間・退職日などを含めたスケジュールをきちんと話し合い、会社と一緒に決める必要があります。
本記事では、急な退職時に残っている有給のルールと、有給消化のために会社と相談するべきことを具体的に、詳しく解説します。
「有給消化できない」と言われた時の対処法も解説しているので、退職前の方はぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 有給休暇は残ったまま退職すると2度と消化できないため、全て「退職前」に消化するか買取してもらう必要がある
- 「退職前」でありさえすれば、自己都合の急な退職でも有給消化できる
- 必ず退職日より前に「有給消化の希望」を会社に伝えることが大切(消化がスケジュール的に無理なら買取も可能!)
- ただし、有給消化を希望したとき、会社からすぐにOKが出ないこともあるのでそのときは相談・交渉が必要
- 「急な退職だから」と会社に有給消化を拒まれたら、人事や総務など有給の担当部署に法的な正当性を主張する
- それでも会社が有給消化を認めない場合は、法的な根拠に基づいて確実に有給消化を認めさせてくれる弁護士の退職代行サービスに頼もう
なお、退職時の有給消化について、基本的なルールや手続きは以下の記事で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
[banner id=”17046″ size=”l”] [articleIndex]1.有給休暇は残ったまま退職すると2度と消化できなくなる

有給休暇を残したまま退職すると、その時点で有給休暇は「消滅」し、2度と消化できなくなります。
ここで言う「退職する」とは、「退職日」を過ぎるということです。
8月31日が退職日であった人が、9月1日以降に有給を消化したり、申請したりすることはできないのです。
つまり、有給を使い切れないまま退職するというのは、有給を捨てるのと同じことなのです。

逆にいえば、急な退職であっても、退職日を過ぎる前であれば有給は必ず消化できます。
日程的にどうしても有給を消化するのが難しい場合は、会社に有給の買取を交渉する方法もあります。
大事なのは、「退職日を過ぎる前に有給消化の希望を会社に伝えること」です。
既に退職すると伝えてしまった後でもまだ間に合うので、必ず退職前に「有給消化したい」と会社に伝えましょう。
2.【急な退職でも】「退職日」の前なら残った有給は必ず消化できる3つの根拠

「退職日」の前に有給消化の希望を伝えれば、有給は必ず消化できるのでご安心ください。
有給休暇は、「労働基準法」にも示されているように労働者が持つ権利であり、会社にどんな事情があっても有給の消化を拒むのは違法になるからです。
これは急な退職であっても変わりません。
上司に「有給消化できない」と言われたとしても、以下に挙げた3つの理由から「必ず有給消化できる」と理解して、きちんと有給を申請しましょう。
【退職日の前なら有給消化できる3つの理由】
- 本来は「引き継ぎなし」で有給消化できる
- 自己都合退職であっても関係なく消化できる
- 退職時の「時季変更権」は認められない
1)本来は「引き継ぎなし」で有給消化できる
退職時「引き継ぎなし」でも有給休暇は消化できます。
上司から「引き継ぎが終わらないと有給を使ってはダメ」と言われたとしても、有給を使う上で「引き継ぎ」しなくてはいけない義務は法律的にはないからです。
事情があって十分な引き継ぎができなかったとしても、必ず有給消化はできるのでご安心ください。
ただし、「引き継ぎを全くせず有給消化する」という主張は、会社との交渉を拗らせる原因になるので、無闇に主張することはおすすめできません。
ですので特別な事情がない限り、最低限の引き継ぎはした上で、有給消化する方向で会社と相談するのがベストです。
とはいえ、「会社の求める引き継ぎを完璧にこなさないと有給消化できない」わけではないということでもあります。
引き継ぎについて会社の要求が多すぎる場合は、「そこまでするのは難しい」と意見をはっきり伝えてもよいので、そのつもりで会社と相談しましょう。
2)自己都合退職であっても関係なく消化できる
自己都合退職の場合でも、有給休暇を消化してから辞められます。
「自己都合退職」と「会社都合退職」のどちらであっても、あなたが有給を消化できる権利は変わりません。
もしも上司が「自己都合退職のときは、退職前の有給消化はできない」と言ってきたとしたら、それは「違法」です。
有給消化をさせないために言いがかりをつけてきているだけなので、きちんと反論する、有給の担当部署や弁護士に相談するなどの対応を取りましょう(5章で解説)。
なお、自己都合退職の有給消化については以下の記事でも詳しく解説しているため、参考にしてみてください。
3)退職前の「時季変更権」は認められない
会社の「時季変更権」は退職前には認められません。
「時季変更権」は、あなたの希望する有給日が会社にとって都合が悪いとき、会社が日程を変更できる権利をいいます。
「労働基準法」には、以下のように書かれています。
⑤使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
ただし、「時季変更権」はあくまで「有給の日程を変更」するだけです。
あなたが有給消化後にすぐ退職する場合、会社は代替となる有給日を用意できないので「時季変更権」を使えません。
あなたが希望した日程が会社に変えられてしまうことはなく、申請すれば確実に消化できるのです。
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3.急な退職時に残った有給消化するための2つの交渉方法

急な事情で退職しなければならないとき、使い切れていない有給休暇は「退職前」なら消化できると述べてきました。
ただし、どんなスケジュールで有給消化するかは、あくまで会社との相談で決める必要があります。
あなたに「この時期まで出勤して、その後有給消化して、この辺の日を退職日にしたい」といった希望があっても、それが100パーセント通るとは限りません。
引き継ぎや人手不足などの事情により、会社から「この日まではできれば働いてほしい」といった要望が出されることがあるからです。
重要なポイントは、「退職日を後にずらせるかどうか」です。
あなたの状況に応じた交渉方法をこれから詳しく解説していくので、確認してみてください。

なお、これから紹介する交渉方法2つのうち、「①スケジュールの調整」の方がハードルが低く、会社に話を通しやすいのでおすすめです。
1)【まずすること】有給の消化希望を会社に伝える
「有給を全て消化すること」を前提に、以下についての希望を会社に伝えましょう。
具体的な希望がある場合は、以下のような詳細をきちんと伝えましょう。
【伝えること】
- 退職日はいつにするか
- いつからいつまで有給消化するか
- 最終出勤日はいつにするか
希望を伝えてそのままOKが出れば、有給消化のスケジュールが決定するので、この場合は交渉は必要ありません。
その後は有給に入るまでに「引き継ぎ」をどうするかを上司と相談し、引き継ぎ作業⇒有給消化⇒退職完了という流れです。
ただ、すぐにOKが出ないケースもあります。
あなたがいないと回らない仕事がある場合や、引き継ぎのためにもうしばらく出勤してほしいと相談されるようなケースです。
それでも断ることもできますが、円満な退職を目指すのであれば、これから解説する「交渉方法」のどちらかを使って、あなたの納得いく形で退職できるようにしましょう。
2)【交渉方法①】退職までのスケジュールを調整する
あなたが退職時期をある程度動かせる場合は、会社側の希望にあわせて退職日を後ろにズラすことを提案します。
例えば、10月11日を最終出勤日として有給消化し、10月31日に退職したいと希望していたところ、会社から10月21日までは業務が忙しいため出勤してほしいと言われたとします。
会社からの要望を受け入れるなら、以下のように有給消化日と退職日を10日後ろ倒すことになります。

スケジュールを後ろ倒すと当初の予定より出勤日数は増えてしまいますが、有給を全て消化した上で、会社とも円満に退職できます。
3)【交渉方法②】有給の買取を頼む
転職先が既に決まっているなど、退職日をどうしても動かせない場合は、残った有給休暇の「買取」を提案しましょう。
会社が有給を買い取ることは、通常の勤務時は違法なのですが、退職時であれば例外的に認められます。
「買取」してもらうと、有給を使って休むことはできませんが、有給分の給料は「退職手当」として支払ってもらえます。
ただし、会社に元々買取の義務がない点は注意が必要です。
ほとんどの企業は買取に応じてくれるはずですが、中には対応してくれない会社もあり、そういった会社に買取を強制することはできません。
また、ブラックな会社の場合、約束していたにもかかわらず「買取するなんて言ってない」と退職後に言われてしまうケースが絶対ないとは言えません。
後からトラブルにならないよう、スケジュールが確定する前に「買取」してもらえるかはきちんと確認しておき、やり取りのメールや書面なども証拠として残しておきましょう。
なお、有給の買取については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
4.急な退職で有給休暇を消化する場合に注意すべき3つのこと

急な退職の場合、残り時間が少ない中で有給消化について会社と調整することになるため、うまく都合がつかずトラブルになることがあります。
トラブルが起きるのを避けるために、最低限、以下3点について注意するようにしましょう。
【注意すべき3つのこと】
- なるべく早めに上司に相談する
- 直属の上司と担当部署の両方に相談する
- 有給の正確な日数を確認する
1)なるべく早めに上司に相談する
「○日までに退職したい」という目処がたった時点で、なるべく早めに上司に相談しましょう。
早いうちに相談することで、有給消化の日程について会社と合意を取りやすくなります。
まだ余裕のある時期に話を通しておけば、会社もあなたの後任や代わりの人を確保するなどの対応ができます。
また、多くの会社が社員の退職で心配する「引き継ぎ」も余裕をもって進められるので、会社側も不満を言う余地がなく、有給消化の交渉を進めやすくなるでしょう。
2)直属の上司と担当部署の両方に相談する
有給消化の希望は直属の上司と有給消化の担当部署の両方に伝えましょう。
直属の上司に対しては主に引き継ぎとそのためのスケジュール調整について、有給消化の担当部署には有給のシステム面について相談できます。
| 相談相手 | 相談内容 |
|---|---|
| 直属の上司 | ●有給に入るまでの業務内容の調整 ●引き継ぎ内容、方法、誰に引き継ぐか など |
| 有給消化の担当部署(人事・総務・労務管理など会社による) | ●有給申請の手続き・退職の手続き ●有給のルール ●有給の日数 ●支払い時期や方法 など |
それぞれ違った面での相談が必要なため、それぞれに話を通すことで有給消化の話をスムーズに進めやすくなります。
3)有給の正確な日数を確認する
残った有給の正確な日数を確認しておきましょう。
有給を無駄にしないためには、確実に有給を消化できるスケジュールを組む必要があります。
そのためには、今自分がどれくらい有給を持っているのか、正確な日数をわかっていなければいけません。
多くの会社では給与明細や勤怠システムに有給の残り日数を書いているので、それらを確認する方法もありますが、確実なのは有給消化の担当部署に尋ねることです。
退職前に有給の付与日があり、気付かないうちに新しく有給が付与されていたといったケースもあるからです。
例えば4月1日が有給の付与日だったが、急に月末退職しなければならなくなった場合、「3月の給与明細」を確認しても先月までの有給日数しかわからない可能性があります。
有給日数がどれくらいあるかによってスケジュールの組み方も変わってくるので、正しい有給情報に基づいて動けるようにしましょう。
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5.「急な退職だから」と頑なに有給休暇の消化を拒まれた場合の3つの対処法

3章のように会社から「引き継ぎしてほしい」または「人手が足りていない」と有給消化を渋られた場合は、スケジュール調整や買取などの交渉で話を進められます。
ですが、会社によっては引き継ぎなど関係なく、「急な退職だから」といった根拠のない言い方で有給消化を拒否してくることがあります。
いわゆるブラック企業や、コンプラ意識の低い会社にありがちな対応です。
こういった会社は、退職する社員に対して「有給分のお金を払う気がない」ので、ここまで解説してきたのとはまた違った交渉が必要になります。
以下3つの対処法を確認しておきましょう。
【有給消化を拒まれた場合の3つの対処法】
- 有給消化の担当部署に確認をとる
- 法的な正当性を主張して交渉する
- 弁護士に相談する
1)有給消化の担当部署に確認をとる
直属の上司が「有給消化はできない」と言っている場合でも、まず人事などの担当部署に「上司に有給消化はダメと言われたのですが本当ですか」と確認をとりましょう。
上司がそういった有給拒否が「違法」であると理解しておらず、単に「現場の仕事が回るか回らないか」「引き継ぎしてもらわないと困る」といった現場視点だけで言っているだけのケースがあります。
その上司が横暴なだけなら、有給消化について担当部署に相談することで有給消化を聞き入れてもらえる可能性があります。
担当部署に確認をとってみると、「いや、消化できますよ」とすんなり言われるケースも少なくありません。
2)法的な正当性を主張して交渉する
先述の通り 「退職前に有給消化できる」のは、法的に認められた労働者の権利です。
ですからまずは、法的な正当性はあなたにあることを主張し、有給消化を聞き入れてもらえるよう相談しましょう。
「有給を使うのは引き継ぎが終わってからにしてほしい」と会社が頼むのは問題ありませんが、「有給消化はダメ」と消化自体を拒否するのは違法です。
2章で挙げた例を参考に、法的に見てもこちらに正当性があることを訴えましょう。
なお、話す相手はあなたの直属の上司ではなく、有給の消化を管理している担当部署です。
担当部署の人なら、法的な根拠に基づいて話をすれば、最終的に有給消化を認めてくれる可能性が高いでしょう。
3)弁護士に相談する
有給消化の担当部署を通しても有給消化について拒まれる場合は、「弁護士」へ相談しましょう。
弁護士は、法的な根拠に基づき、あなたの権利を守るために会社との交渉を全て引き受けてくれます。
先述の通り、あなたが「有給消化できる」ことは法的に決められたルールです。
法的な正当性がある以上、弁護士なら確実に有給消化させてもらえるよう、交渉を成功させてくれます。
会社側も「弁護士がついている」とわかれば、訴訟などのリスクをおそれて有給消化を認めるケースが多いでしょう。
また、「有給消化」を拒否するような会社は、退職も頑なに許さなかったり、残業代や退職金なども拒否してきたりすることもあります。
こうしたトラブルについても、弁護士ならまとめて対応してもらえるので安心です。
6.交渉が難しそうなら最初から「弁護士」に頼るのもおすすめ

ここまで述べてきたように、急な退職の場合、有給消化するには会社との入念な相談・交渉が必要になります。
この相談・交渉が面倒だったり、会社がすんなり認めてくれないことが目に見えている場合などは、最初から弁護士に相談する対処法もおすすめです。
弁護士の中には、「退職代行サービス」を行っているところがあります。
退職代行サービスとは、「退職する」と会社に意思を伝えるところから、退職に必要な会社とのやり取りの一切を業者に代行してもらえるサービスです。
退職のために会社の上司や各部署と対面で面倒なやり取りをする必要がなくなり、精神的なストレスからも解放されます。
また、退職代行サービスを使えば、その日から出社しなくてもよいというメリットもあります。
あなたが即日退職をしたいと会社に伝えても受け入れてもらうのは難しいですが、弁護士であれば、法的に認められたことなら確実に話を通せます。
「引き継ぎなしで有給消化してそのまま退職する」ことは法的に問題ないので、実質的な即日退職を会社に認めさせられるのです。
7.急な退職で残ったままの有給についてよくある質問

有給休暇が残ったまま退職することについて、よくある質問をまとめました。
1)パート・アルバイト・派遣なども、退職時に有給休暇が残ったままだと有給は消滅してしまうのでしょうか
パート・アルバイト・派遣も有給休暇は与えられますし、有給休暇が残ったまま退職すると消滅します。
有給休暇についての基本的なルールは、正社員の場合と同じと考えてください。
記事でも述べているように、退職前に消化することが大切です。
2)退職後しばらく経ってから残ったままの有給休暇を買取してもらうことはできますか
退職した時点で与えられた有給休暇は消滅してしまいます。
事前に「有給を買取ってもらう」と会社と約束していない限り、退職後しばらく経ってから有給を買い取ってもらうことはできません。
必ず退職前に会社と交渉し、買取について合意を取っておきましょう。
やり取りのメールや書面なども証拠として残しておくと安心です。
3)退職後に未払いとなっている有給の給料は請求できますか
退職前に有給消化や買取の合意があったにもかかわらず、退職後にも有給分の支払いが行われない場合は、会社に未払いの給料を請求できます。
弁護士なら未払い給料の請求にも対応してくれるため、相談してみてください。
ただし、こうした未払いの給料の請求は時効が3年となっているため、何年も前の未払いについては請求できない場合もある点に注意してください。
まとめ
有給休暇は残ったまま退職すると2度と消化できないため、全て「退職前」に消化または買取してもらう必要があります。
必ず退職日より前に「有給消化の希望」を会社に伝えるようにしましょう。
「退職前」でありさえすれば、引き継ぎなし・自己都合の急な退職でも有給消化できるのでご安心ください。
ただし、「有給消化の希望」を伝えた際に、会社が「この日まではできれば働いてほしい」といった要望を出してくることもあります。
その場合は、以下2つの交渉方法を使い分けて、双方が納得できる形での退職を目指しましょう。
- 【交渉方法①】退職までのスケジュールを調整する
- 【交渉方法②】有給の買取を頼む
また、「急な退職だから」というだけで上司に有給消化を拒まれるようなら、会社が有給分の給料を支払う気がないおそれがあるので、しっかり対処しなければいけません。
有給の担当部署に、これが会社としての方針なのかを確認し、法的な正当性がこちらにあることを主張します。
それでも有給消化を会社が認めないなら、法的な根拠に基づいて確実に有給消化を認めさせてくれる弁護士の退職代行サービスを使いましょう。
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