越境ECを始めようとする事業者が押さえておくべき法律を解説!

はじめに
近年、越境ECが大きな注目を集めています。
越境ECは、国外に実店舗を構える必要がないためコストを抑えながら、海外にいる消費者に商品・サービスを訴求できるサービスです。
越境ECに挑戦する事業者は年々増えているため、これから挑戦しようと準備を進めている事業者もいらっしゃるのではないでしょうか。
準備を進めるにあたっては、越境ECに関する基礎知識はもちろんのこと、越境ECに関わる法規制も押さえておく必要があります。
そこで今回は、「越境EC」を始めようとする事業者が押さえておくべき法律を弁護士がわかりやすく解説します。
1 越境ECとは
「越境EC」とは、インターネットを通して、国内から国外へ向けて商品を販売するEC(電子商取引)のことです。
自社で越境ECサイトを開設して運用する方法や、海外にあるECモールに出店して商品を販売する方法など、越境ECの形態はさまざまです。
たとえば、アメリカを代表するモール「Amazon」では、越境ECを行うことができるため、多くの事業者が出店しています。
中国であれば、天猫国際(Tmall Global)や京東全球購(JD Worldwide)などが有名なモールとして知られており、こちらもAmazonと同様、越境ECを行うことが可能です。
越境ECの市場規模は、アメリカと中国が飛び抜けて大きく、両国から比べると日本の市場規模はまだまだ小さいといえます。
2 越境ECのメリットとデメリット
越境ECには大きなメリットがある反面、デメリットも存在します。
そのため、越境ECを行う際には、メリットだけでなくデメリットも把握したうえでビジネスを展開していくことが大切です。
(1)メリット
越境ECの最大のメリットは、海外の顧客を獲得できるということにあります。
市場規模や取引環境などを見極めることで、多くの収益を生みだすことも可能です。
また、実店舗を海外に構える必要がなく、簡単に出店することができるというメリットもあります。
通常であれば、実店舗を構えるために現地でテナント契約を結び、実店舗で業務に携わる人を雇い入れなければなりませんが、越境ECであればこのような煩わしさがありません。
(2)デメリット
越境ECを行う場合、国や地域によって遵守すべき法規制も異なります。
たとえば、EU域内であればGDPR(個人情報に関する規制)が適用されるため、規制内容を細かく確認しなければなりません。
また、越境ECでは輸送コストの高さもデメリットの一つです。
日本から海外に向けて商品などを発送することになるため、国内に輸送するよりも輸送コストが高額になります。
3 越境ECを行う際に注意すべき日本法とは
一般的に、越境ECでは、販売する商品等の「支払い(決済)」がサービスの中に組み込まれています。
そのため、日本法との関係では、「資金決済法(決済などに関してさまざまな規制を設ける法律)」に注意する必要があるのです。
特に、越境ECとの関係では、資金決済法上の「資金移動業」への規制が大きく関わってきます。
(1)資金移動業とは
「資金移動業」とは、銀行以外の事業者が現金以外の方法で資金を移動させること(「為替取引」)を業とすることをいいます。
資金移動業を行う場合には、内閣総理大臣の登録を受ける必要があり、これは、越境ECを行う場合において自社が独自に決済サービスを提供する場合も同様です。
既存の決済サービスを導入する場合は、導入しようとする決済サービスを提供する事業者が資金移動業の登録を受けているかどうかを確認しておくようにしましょう。
(2)資金移動業への規制
資金移動業への規制としては、既に見たように「登録制」が採られているということが挙げられます。
もっとも、以下に挙げた登録要件からもわかるように、簡単に登録を受けられるというものではありません。
- 株式会社であること
- 資金移動業を遂行するために必要な財産的基礎があること
- 資金移動業を遂行するために必要な体制が整備されていること
- 資金決済法を遵守するために必要な体制が整備されていること
特に2つ目の要件である「財産的基礎」は、最低でも1,000万円が確保されているかどうかが一つの目安となります。
また、越境ECでは、資金決済法に限らず、外為法や犯罪収益移転防止法など他の法律による規制をも遵守できるよう体制を整備する必要があります。
事業者は、資金移動業者として登録を受けた後も、さまざまな規制を課されることになりますが、そのなかでも特に重要なのが「資産保全義務」です。
資金移動業者は、事業開始時において最低でも1,000万円を保全すべき義務を負っており、これが登録要件でもある「財産的基礎」の有無を判断する基準にもなります。
それだけでなく、事業開始後においても、送金途中にある資金の100%以上に相当する額を履行保証金として保全しなければなりません。
このように、数ある規制のなかでも、「資産保全義務」は特に厳しい内容になっており、スタートアップ企業のように経済的基盤が確立していないと一般的に考えられる事業者にとっては、大変負担の重い規制になっています。
※資金移動業の登録要件について詳しく知りたい方は、「資金移動業の登録に必要な4つの条件とは?登録後の規制とともに解説」をご覧ください。
4 まとめ
ビジネスの幅を広げる越境ECは、大きな可能性を秘めたビジネスといっていいでしょう。
越境ECを始めるにあたっては、事業が頓挫することがないように、現地の法規制はもちろんのこと、国内法による規制もきちんと確認することが大切です。
弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 
       
   
   
   
  