はじめに

近時、クラウドファンディングサービスを提供するプラットフォームも増え、資金調達の方法としてクラウドファンディングが注目されています。

多くの場合、お金を出してくれた出資者に対し、お礼として商品や金銭などをリターンとして提供しますが、そのようなリターンを予定していないものとして、寄付型クラウドファンディングがあります。

ですが、「寄付型」には特有の問題点もあり、その点をきちんと理解していないと、購入型と同じ規制を課されたり、お金が集まらないということにもなりかねません。

そこで今回は、寄付型のクラウドファンディングについて、基本的な仕組みから、実際に実施する場合の手続き、法的に問題となりうる点などについて弁護士がわかりやすく解説していきます。

1 クラウドファンディングとは?

クラウドファンディング

クラウドファンディング」とは、インターネット上で企業と資金の提供者を結び付け、少しずつお金を集めることをいいます。クラウドファンディングという名称は、「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」を組み合わせた造語です。

クラウドファンディングは、以下のような流れで行われます。

クラファン

このように、クラウドファンディングは、

  1. プロジェクトの掲載
  2.    ↓

  3. 出資する
  4.    ↓

  5. お金をわたす
  6.    ↓

  7. リターンをわたす

といった流れで行われます。

(1)プロジェクトの掲載

事業者は、クラウドファンディング提供会社に対して、「〇〇をやるために●円を集めたい」といった旨の企画(=プロジェクト)を起案し、同社のサイトにプロジェクトを掲載してもらいます。

(2)出資する

支援者や投資家といった出資者に、プロジェクトに対して一口●円といった形でお金をだしてもらいます(=出資)。

(3)お金をわたす

事業者は、クラウドファンディング提供会社から、プロジェクトへの出資金を渡されます。その際、出資金の中から、クラウドファンディング提供会社に対する仲介料が差し引かれます。

(4)リターンをわたす

事業者は、出資してくれた支援者や投資家に対して、出資のお礼として、プロジェクトで開発した商品やお金など(=リターン)をわたします。

以上のように、クラウドファンディングは、事業者のプロジェクトに賛同する出資者がクラウドファンディング提供会社を通じて事業者に出資し、事業者はそのお返しとして出資者にリターンを提供するという流れで実施されることになります。

2 クラウドファンディングの種類

クラファン 種類

クラウドファンディングには、いくつかの種類があります。

以下は、クラウドファンディングの種類を図にしたものです。

クラファン 種類

このように、クラウドファンディングには、以下の4つの種類があります。

  1. 寄付型
  2. 購入型
  3. 貸付型
  4. 投資型

(1)寄付型

寄付型」とは、事業者(=プロジェクト実施者)が、出資者に対してリターンを与えることを予定していないクラウドファンディングのことをいいます。

ですが、プロジェクトによっては、出資者に対して、お礼の手紙や写真といった非金銭的なものをリターンとして提供する場合があります。

(2)購入型

購入型」とは、プロジェクト実施者が、出資者に対して、自社の商品やサービスをリターンとして提供するクラウドファンディングのことをいいます。

(3)貸付型

貸付型」とは、プロジェクト実施者が、資産運用をしたいと考えている出資者からお金を貸し付けてもらい、出資者に対して、金利をリターンとして提供するクラウドファンディングのことをいいます。

「貸付型」は、「P2Pレンディング」や「ソーシャルレンディング」ともよばれています。

(4)投資型

投資型」とは、プロジェクト実施者が、出資者に対して、リターンとして、プロジェクトが成功した際の収益の一部をリターンとして提供するクラウドファンディングのことをいいます。

今回は、以上の中から、唯一リターンが予定されていない「寄付型」について解説していきたいと思います。

3 寄付型クラウドファンディングのメリット

メリット

寄付型クラウドファンディングのメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  1. リターンを提供しなくてよい
  2. 社会貢献ができる

(1)リターンを提供しなくてよい

寄付型クラウドファンディングは、基本的には「寄付」と同じ性質をもっているため、何の見返りも求めず、ただプロジェクトを成功させて欲しいという意向でお金を出している出資者が多いといえます。

そのため、事業者は、出資者に対して、金銭的なものをリターンとして提供することまでは求められていません

もっとも、「寄付型」であってもリターンを設定しているプロジェクトもあります。

具体的には、募金において、羽などのお返しがもらえるのと同じように、「寄付型」でも、出資者に対して手紙や写真などの非金銭的なものをリターンとして提供するケースもあります。

(2)社会貢献ができる

「寄付型」は、既に見たように、出資者に対して金銭的なリターンを予定していません。また、リターンを予定している場合であっても、それは、手紙などの非金銭的なものであることが一般的です。

寄付型のプロジェクトは、慈善事業や復興支援といったように、公益性が高く社会的意義を有するものであることがほとんどです。

このようなことから、「寄付型」に参加する出資者には、「お返しなんていらないから何か社会的に意義のあることに協力したい!」と考えてお金を出してくれる人が多いと考えられます。

このように、「寄付型」を行う事業者は、社会的意義のあるプロジェクトを通して社会に貢献することができます。

以上のように、寄付型クラウドファンディングは、出資者に対するリターンの提供が予定されていないうえ、集めた資金を社会的意義のあるプロジェクトに使うことで、社会に貢献することができるというメリットがあります。

もっとも、寄付型クラウドファンディングには、以下で見るようなデメリットも存在します。

4 寄付型クラウドファンディングのデメリット

デメリット

寄付型クラウドファンディングのデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  1. 税金がかかる
  2. 詐欺行為と疑われてお金が集まらない可能性がある

(1)税金がかかる

寄付型クラウドファンディングで集めたお金には、税金がかかります。

具体的には、プロジェクト実施者が個人であった場合は、人から財産を譲り受けたときにかかる「贈与税」がかかります。プロジェクト実施者が会社であった場合は、会社の所得にかかる「法人税」がかかります。

税金については、後ほど詳しく説明します。

(2)詐欺行為と疑われてお金が集まらない可能性がある

募金において、慈善目的と謳いながら、実際は自分の遊興費などに充てるためにお金を集めていたといったケースがあります。「寄付型」においても、出資者に「慈善事業目的に名を借りた詐欺なのでは…?」と疑われてしまい、思ったように出資が募れない可能性があります。

そのため、事業者には、プロジェクトの公開ページなどで、具体的なプロジェクト概要や、こまめな活動報告などを掲載するなどの工夫が求められます。

その他にも、

  • 出資者が集まらず、プロジェクトが成立しない可能性がある
  • お金が集まるまでに時間がかかり、すぐにプロジェクトを実行に移せない可能性がある

といったデメリットもあります。

このように、寄付型では、集めたお金が課税対象となるうえに、詐欺と疑われやすく、出資者が集まらない可能性もあります。

また、たとえ実行できるとしても実行までに時間がかかる可能性もあります。

そのため、事業者は、出資者に賛同してもらえるだけのしっかりとしたプロジェクトを構築することが必要です。

以上が、寄付型クラウドファンディングにおけるメリットとデメリットになります。

次の項目では、寄付型クラウドファンディングのやり方を実際の成功例とあわせて、見ていきたいと思います。

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5 寄付型クラウドファンディングサイトと成功例

寄付型

(1)寄付型クラウドファンディングサイトの利用

多くの寄付型クラウドファンディングは、クラウドファンディング提供会社のサイトを通じて実施されます。

以下の図をご覧ください。

寄付型クラファン

このように、事業者は、

  1. 相談・申込み
  2.    ↓

  3. プロジェクトのページを作成
  4.    ↓

  5. 審査・公開

という流れで寄付型クラウドファンディングを実施することになります。

①相談・申込み

事業者は、クラウドファンディング提供会社に、予定しているプロジェクトに問題がないかどうかなどを相談し、同社の提供するサイトの利用について、申込みを行います。

②プロジェクトのページを作成

事業者は、予定するプロジェクトについて、その概要やリターン、目標金額、募集する期間などを掲載するページを作成します。

③審査・公開

プロジェクト実施におけるトラブルを防ぐため、作成したプロジェクトのページは、公開前に、クラウドファンディング提供会社により審査されます。審査を通過することにより、プロジェクトのページがサイトに公開されます。

ここで、寄付型を扱っているクラウドファンディングサイトについて、以下の2つをご紹介します。

(ⅰ)Ready for

Ready for

                                                  https://readyfor.jp/

Ready forは、以下のような点を特徴としています。

  • 手数料が他と比べて安い
  • プロジェクトページの審査を2回行うことにより、トラブル防止を図っている
  • プランによっては、専任のプロがプロジェクト終了までサポートしてくれるため安心して利用できる

このように、Ready forは、手数料も比較的安く、サポートも充実しているため、はじめて「寄付型」を実施するような事業者に向いていると考えられます。

(ⅱ)A-port

A-port

                                                   https://a-port.asahi.com/

A-portは、以下のような点を特徴としています。

  • 雑誌、新聞、WEBなど様々な媒体でアピールしてくれる
  • 朝日新聞社が培ってきた編集力でプロジェクトの魅力を引き出すサポートをしてくれる
  • お金を集める方法として「達成時実行型」「実行確約型」の2つのタイプから選択できる

達成時実行型(All or nothing)」とは、プロジェクト成功時のみ、事業者がお金を受け取れる方式をいい、「実行確約型(All in)」とは、プロジェクトが成功しなくても事業者はお金を受け取れますが、プロジェクトを確実に実施することを約束しなければならない方式をいいます。

このように、A-portは、朝日新聞社が運営しているため、独自の編集力でプロジェクトをさらに魅力的なものにしてもらえます。また、多数のメディアでアピールしてもらえることから、特に多くの資金を必要としている事業者に向いていると考えられます。

以上のように、寄付型クラウドファンディングを実施する場合には、一般的に上のようなサイトが使われています。

もっとも、「寄付型」を含め、クラウドファンディングでは、思うようにお金が集まらず、プロジェクトが不成立となってしまうケースもあります。

そのため、過去の成功例を知っておくことは有益だと考えられます。

(2)成功例

寄付型クラウドファンディングの成功例として、

「広げたい、愛され猫のしるし。殺処分0の裏側を見逃さないために」

というプロジェクトがありました。

    【プロジェクト概要】

    野良猫が殺処分されることを防ぐために、野良猫の不妊手術を支援し、野良猫の数が増えないように支援するプロジェクトです。

    動物愛護法の改正により、行政が野良猫の引き取りを拒否できるようになり、野良猫の殺処分数は減少しましたが、結果として、不妊手術をしていない野良猫が地域に増え続けることになり、野良猫に対する苦情が増える→殺処分といった流れは変わらず、根本的な解決には至っていません。

    そこで、飼い主のいない野良猫について、不幸な猫を増やさないようにするために、殺処分ではなく不妊手術を施すこととし、その手術費用を集めることになりました。

    なお、不妊手術を施された猫は、その印として、猫の耳先をカットされますが、その形が桜の花びらの形に似ていることから、「さくらねこ」とよばれています。

    【結果】

    多くの人の共感・応援があり、目標金額である500万円を超えて、689万円の調達に成功しました。

なお、このプロジェクトでは、

  • お礼の手紙
  • 活動報告書
  • 寄付証明書
  • HPへの名前の掲載
  • 犬、猫の写真・動画コンテストのレポート

といった非金銭的なものがリターンとして設定されていました。

このように、寄付型クラウドファンディングは、公益性の高いプロジェクトが多く、設定されているリターンも出資者にとって金銭的な利益につながるものではありません。

そのため、目標金額に達するためには、プロジェクトの内容について、出資者から共感を得られるかが重要なポイントになるといえます。

以上のことを踏まえて、事業者は寄付型クラウドファンディングを実施することになりますが、寄付型では以下で見ていくように2つの規制が問題となるため、その点にも注意が必要です。

6 寄付型クラウドファンディングへの規制

規制

寄付型クラウドファンディングを実施する場合には、以下の2つの規制が問題となります。

  1. 税制上の取り扱い
  2. 返礼品に対する決まり

(1)税制上の取り扱い

先にも説明したように、寄付型クラウドファンディングで集めたお金には税金がかかります。この税金は、プロジェクト実施者が、個人であるか会社であるかによって、以下のように種類が異なります。

①個人の場合

出資者から受け取ったお金が110万円を超えた場合、事業者は贈与税を納めなければなりません。

②会社の場合

出資者から受け取った金額を問わず、事業者は法人税を納めなければなりません。

もっとも、以下の2つの条件を満たす場合は、法人税は非課税とされています。

  • プロジェクト実施者がNPO法人や公益財団法人などであること
  • 「収益事業」を行っていないこと

収益事業」とは、法律で定められた34種類の事業で、継続して行われているものをいいます。たとえば、物品販売業、不動産業、製造業などが挙げられます。

NPO法人であっても、多くは収益事業を行っているため、法人税が非課税となる場合はあまりないと考えられます。仮に、NPO法人などにおいて、自社の事業は収益事業にあたらないと考える場合には、それぞれの地域の税務署でその点を確認してもらう必要があります。

なお、「寄付」によって集めたお金に対しては、消費税法上の税金はかからないものとされているため、プロジェクト実施者が、個人であっても会社であっても、寄付型クラウドファンディングで集めたお金に消費税はかかりません。

(2)返礼品に対する決まり

先にも説明したように、寄付型クラウドファンディングでは、出資者に対するリターンの提供は予定されていないのが一般的ですが、プロジェクトによってはリターンを提供する場合があります。

寄付型クラウドファンディングでリターンを提供する場合には、そのリターンが過剰にならないように注意しなければなりません。

どのようなものが過剰なリターンとされるのかは、「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」におけるリターンの扱いがひとつの目安になります。

ガバメントクラウドファンディング(GCF)」とは、政府が行うクラウドファンディングのことをいいます。

GCFにより集まったお金はふるさと納税の対象とされていますが、昨今の返礼品に関する問題を受けて、総務大臣が「総務大臣通知」を出しています。

この通知には、「過剰なリターン」として、以下のようなものが挙げられています。

  • 商品券や電子マネーなどのようにお金と同視できるもの
  • 電子機器や貴金属など資産性の高いもの
  • 高級食材など価格が高価なもの
  • 返礼品の調達額が寄付額の3割をこえるようなもの

寄付型クラウドファンディングにおいて、リターンを設定する場合にも、上記の例示を一つの参考として「過剰なリターン」にあたらないようにしなければなりません。

仮に、「過剰なリターン」にあたってしまうと、実質的には「購入型」と変わらないことになってしまい、「購入型」に適用されるルールを課される可能性がありますので、注意が必要です。

7 小括

小括

寄付型クラウドファンディングでは、慈善事業や復興支援といったように、公益性が高く社会的意義のあるプロジェクトが多いといえます。出資者においても支援などをすることを目的として出資することが多いため、基本的にリターンの提供は予定されていません。

このようなことから、「寄付型」を行う場合には、多くの人から共感を得られるようなプロジェクトを構築しなければなりません。

また、「寄付型」を実施する際には、税制面や返礼品に関して注意しなければならない点があることにも留意が必要です。

8 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。

  • 「クラウドファンディング」とは、インターネット上で不特定多数の人から少しずつお金を集めることをいう
  • クラウドファンディングのタイプは、①寄付型、②購入型、③貸付型、④投資型の4つである
  • 「寄付型」を行うメリットは、①リターンをしなくてよい、②社会貢献ができる、といった2点である
  • 「寄付型」を行うデメリットは、①税金がかかる、②詐欺行為と疑われてお金が集まらない可能性がある、という2点である
  • サイトを利用して「寄付型」を行う場合、①相談・申込み、②プロジェクトのページを作成、③審査・公開といった3つの手順を経ることになる
  • 「寄付型」を行うサイトとして、①Ready for、②A-portがある
  • 「寄付型」を行う際に注意すべき規制は、①税制上の取り扱い、②返礼品に対する決まりの2点である