はじめに

「金融庁による仮想通貨への規制は厳しい」ということはよく聞きますが、仮想通貨マイニング事業について具体的にどういった法律規制があるのか?についてきちんと理解している事業者は少ないと思います。

仮想通貨マイニングによって、警察に摘発、逮捕されてしまったという例もあり、いくつかの注意すべき法律規制は存在します。

そこで今回は、まず始めに仮想通貨マイニングとは何なのかを確認したうえで、仮想通貨マイニングに関する法律規制やリスクを仮想通貨に詳しい弁護士が解説します。

1 仮想通貨マイニングとは

マイニング

仮想通貨マイニング」とは、仮想通貨の基礎にあるブロックチェーンという台帳技術の中で、台帳に取引を記録する行為(承認作業:POW)をいいます。そして、このマイニングを行う人を「マイナー」と呼んだりします。

ブロックチェーン」とはブロックを時系列でチェーンのように繋げて、台帳のように記録していく仕組みをいい、「ブロック」とは、定期的に作られる複数の取引データの束のことを指しています。

マイニングの仕組みを簡単に表すと以下の図のようになります。

マイニングの仕組み

マイニングは、POW(Proof of Work)という膨大な計算量を必要とする作業を成功させた人が取引の承認者となる仕組みを前提として、ブロック内の取引データが改ざんされていないかを確認し、取引を確定させるために必要な計算作業となります。マイニングに成功することによって、マイナーは報酬を得られます。

例えば、ビットコインのマイニングの場合、マイニングに成功したマイナーには、1ブロックにつき12.5ビットコインの報酬が与えられます(2019年1月現在)。

それでは、具体的にどのような方法でマイニングを行うのでしょうか。マイニングの手法について、次の項目で見ていきましょう。

2 マイニングの3つの手法

マイニングの手法

マイニングには、次に挙げる通り3つの手法があります。

  1. ソロマイニング
  2. プールマイニング
  3. クラウドマイニング

それぞれの手法の違いを以下で見ていきましょう。

(1)ソロマイニング

ソロマイニング」とは、単独でマイニングを実施することをいいます。事業者はマイニングに必要なパソコン(マイニングマシン)、電力、運営施設などの設備を全て自身で用意することになるため、大きな負担を背負う一方でマイニング報酬は全て得ることができます。

ソロマイニング

もっとも、事業者が単独で用意できる設備には限界があり、規模によってはマイニングに成功すること自体が難しい場合もあるかと思います。

そこで、複数のマイナーが協力する「プールマイニング」が次の手法として挙げられます。

(2)プールマイニング

プールマイニング」とは、複数のマイナーが持つマイニングマシンのパワーをシェアして、マイニングを実施することをいいます。
プールマイニングには、

  • プールマイニングの管理者が参加するマイナーを集めること
  • プールマイニングの管理者がマイナーを代表して報酬の受領者となること
  • 協力関係にあるマイナー全員で同じブロックをマイニングすること
  • マイニング成功時には、管理者に支払われた報酬を各マイナーで分配すること

といった特徴があります。

仮想通貨マイニング事業を開始したい事業者としては、プールマイニングの管理者となる、あるいは、マイナーとして参加するという選択肢があります。

プールマイニングは、マイニングに必要な設備をマイナーそれぞれが用意します。ソロマイニングに比べ、多くの設備を投入できるため、マイニングに成功する可能性が高くなります。もっとも、マイニング報酬については参加者であるマイナー全員に計算量、貢献度に応じて分配することになるため、ソロマイニングのように報酬の総取りはできません。

プールマイニング

(3)クラウドマイニング

クラウドマイニング」とは、マイニング事業者にお金を出資することで、自身の代わりにマイニングをしてもらうことをいいます。

仮想通貨マイニング事業を開始したい事業者としては、マイニング事業者となる、あるいは、既にマイニング事業を行っているマイニング事業者に出資するという選択肢があります。

マイニングに必要な設備は全てマイニング事業者が用意することになります。マイニング事業者は出資を得ることで、用意した設備費用の早期回収、設備の拡充を行うことができます。

また、マイニング事業者に出資する場合、出資者はマイニングに関する専門知識の一切が不要、設備の用意も不要となる一方で、出資者への報酬の分配は少額となります。

クラウドマイニング

以上のように、それぞれの手法にはメリットもあればデメリットもあるため、そのことを踏まえて自分に合った手法を選択する必要があります。そして、手法の選択にあたっては、選ぼうとする手法を規制する法律があるのかどうかという点が大きく影響してきます。
次の項目で、見ていきましょう。

3 マイニングの法律規制

マイニングの法律規制

まずは全ての手法に共通する法律規制について見ていきましょう。

現在のところ、日本において、マイニングそのものを直接規制する法律はありません

また、マイニングに用いるパソコンや部品を売ることを規制する法律もありません。

もっとも、マイニング報酬である仮想通貨の取扱いに際し、「改正資金決済法」に定める「仮想通貨交換業」に当たらないように注意する必要があります。

仮想通貨交換業」とは、コインチェック等の仮想通貨取引所ビジネスが典型ですが、ビットコイン等の仮想通貨の売買や交換に関するサービスを提供する事業のことをいいます。

「仮想通貨交換業」に当たる場合、仮想通貨交換業の登録というライセンスが必要となりますが、その登録要件は非常に厳しい内容になっており、経済的基盤が弱いスタートアップ等の事業者では登録を受けることはできません。

そのため、仮想通貨マイニング事業をはじめる際には、できるだけこのライセンスがいらない形でビジネスモデルを設計する必要があります

具体的には、仮想通貨マイニングの報酬として得た仮想通貨を反復継続して(事業として)売買したり、他の仮想通貨と交換をしないようにする必要があります。

なお、マイニングで得た仮想通貨を円などの法定通貨に換金する場合は、仮想通貨取引所といった仮想通貨交換業者を通せば、特に問題はありません。

次に、選択する手法によっては、注意しなければならない法律規制が異なるため、それぞれの手法における法律規制を見ていきましょう。

※仮想通貨交換業の登録について詳しく知りたい方は、「仮想通貨交換業の登録のために必要な6つの要件とは?弁護士が解説!」をご覧ください。

(1)ソロマイニング

ソロマイニングを直接規制したり、禁止したりする法律はありません。

(2)プールマイニング

プールマイニングは、複数のマイナーが持つマイニングマシンのパワーをシェアしてマイニングを行い、その結果得られたマイニング報酬などをプールマイニングの管理者がマイナーに分配する仕組みとなっています。

この仕組みにおいて、プールマイニングの管理者がマイナーから受ける出資が設備そのものではなく、金銭である場合、金融商品取引法上の「ファンド規制」というが適用されてしまうのではないかを検討する必要があります。

ファンド」とは、多くの投資家から集めた資金を元に事業を行い、収益を投資家に分配する仕組みをいいます。ファンドが法律で規制されているのは、投資家を保護するためです。

以下の図で双方の仕組みをご確認ください。

プールマイニングとファンド規制のスキームの対比

プールマイニングがファンド規制の対象となる場合、その事業者は国から「第二種金融商品取引業」の登録を受ける必要があります。

もっとも、この登録を受けるためには、特にスタートアップ企業などにとって、非常に厳しい条件が課せられます。

例えば、会社の資本金が原則1000万円以上であることや、投資家保護のために十分な人的・物的管理体制が整っていることが必要になり、非常に高いハードルとなっています。

それでは、ファンド規制を回避するスキームはないのでしょうか。

考えられるスキームとして、以下の2つが挙げられます。

①マイニングの「業務委託」スキーム

このスキームは、マイニングという業務を管理者に業務委託するという形を採ることにより、ファンド規制を回避するスキームです。

具体的な流れは、以下の通りとなります。

  1. プールマイニングの管理者が参加するマイナーを集める
  2. 管理者が参加するマイナーに対してマイニングに必要な設備(マイニングマシンなど)を販売する
  3. 参加するマイナーは自らが所有する各設備を管理者に提供するとともに、マイニングの業務委託を行う
  4. 管理者はマイニングによって獲得した報酬を参加するマイナーの所有する各設備の仕事量に応じて分配する

このような流れで実施すれば、参加するマイナーから、ファンド規制の対象となる金銭の出資は発生しないことになり、ファンド規制の対象にならないことになります。

②計算能力の「貸与」スキーム

金銭を出資してもらうのではなく、マイナーから計算能力のみを貸し出してもらうというスキームです。この場合も、参加するマイナーから、金銭の出資は発生しないことになるため、ファンド規制の対象にならないことになります。

なお、このスキームにおいては、プールマイニングの管理者は、設備を1箇所に集める必要がなく、それぞれのパソコンは、参加するマイナーが管理することになります。

(3)クラウドマイニング

クラウドマイニングは、金融商品取引法上のファンド規制の対象になります。プールマイニングとは異なり、クラウドマイニングは、設備の提供ではなく、金銭の出資を受けるからです。そのため、クラウドマイニングを行う事業者は、国から「第二種金融商品取引業の登録(金融二種ライセンス)」を受けなければなりません。

もっとも、アマチュアではなくプロやセミプロを相手方とする「適格機関投資家等特例業務」と呼ばれる業務にあたる場合は、例外的に「第二種金融商品取引業」の登録は不要です。

なぜなら、プロであれば情報の非対称性も少なく、投資の是非を自分でキチンと判断できるため、法律でギチギチに規制する必要に乏しいからです。

適格機関投資家等特例業務」とは、以下のいずれかに該当する業務のことをいいます。

  • 適格投資家等のみから出資された金銭等を自ら運用する業務
  • 1名以上の適格投資家と49名以下の投資判断能力を有する一定の投資家を勧誘する業務

適格投資家等」とは、金融商品取引法で認められているプロの投資家のことをいいます。もっとも、この場合であっても、国への事前の届出は必要となりますので、その点は注意が必要です。

以上のように、マイニングにはその手法に応じて知っておかなければならない法律規制があります。手法に応じてどのような法律規制があるかをきちんと知っておくことが、適切な手法を選ぶためにも重要であるといえます。

最後の項目では、このマイニングに関し実際に起きた事件を一つご紹介したいと思います。

※実際の適格機関投資家に関する情報や国への届出書の書式については、金融庁の「適格機関投資家に関する情報」をご参照ください。

4 コインハイブプログラムの問題点

コインハイブプログラムの問題点

2017年末から2018年前半にかけて、Coinhiveが提供する「コインハイブ(Coinhive)プログラム」というマイニングツールが問題となり、16人が摘発され、そのうち3名が逮捕されるという事件が起きました。

コインハイブ(Coinhive)プログラム」とは、仮想通貨「Monero」のマイニングを行うためのマイニングツールです。サイトの運営者は自身のサイトに専用のJavaScriptコードを埋め込むことにより、サイトの閲覧者のパソコンを用いて、「Monero」のマイニングを行います。マイニングの報酬はサイトの運営者が獲得するという仕組みになっていました。

コインハイブプログラムの仕組みを簡単に表すと以下の図のようになります。

コインハイブプログラムの仕組み

Coinhiveがこのようなプログラムを作成した目的は、サイト運営者に広告以外の収益をもたらす手段を用意することで、多くのWEBサイトに表示されている邪魔な広告を無くすことにありました。

では、日本において、このプログラムのどのような側面が問題になったのでしょうか。

結論から言うと、コインハイブプログラムが刑法上の「不正指令電磁的記録に関する罪」にあたるのはではないかという点が問題となりました。

不正指令電磁的記録に関する罪」とは、犯罪目的でコンピューターウィルスを作成、提供、供用、取得、保管する行為を罰するものです。

コインハイブプログラムは、コンピューターウィルスであると判断され、不正指令電磁的記録に関する罪のうち、供用の罪(他人のパソコンやスマートフォンなどの端末に対して、その使用者の意図に反する動作をさせるような不正な指令を与えること)あるいは、保管の罪に当たるものとされたのです。

2019年1月より、コインハイブプログラムがコンピューターウィルスといえるだけの不正な指令を与えるものなのかといった点を争点とした全国初の裁判が横浜地方裁判所で始まりました。裁判所がどのような判断を示すかが注目されるところです。

また、警視庁は次の通り、マイニングツールに関し注意喚起(仮想通貨を採掘するツール(マイニングツール)に関する注意喚起)を行っています。

自身が運営するウェブサイトに設置する場合であっても、マイニングツールを設置していることを閲覧者に対して明示せずにマイニングツールを設置した場合、犯罪になる可能性があります。

コインハイブ事件においても、自身が運営するサイトにマイニングツールを設置していることを閲覧者に明示していませんでした。

そのため、少なくとも現状においては、、マイニングツールを自身のサイトに設置する場合には、マイニングツールを設置していることをサイトの閲覧者に明示するという対応を取ることが必要であると考えられます。

5 小括

マイニング小括

マイニングは、その成功報酬として仮想通貨を手に入れることができます。もっとも、その取り扱い次第では仮想通貨周りを規制する改正資金決済法の規制対象となったり、金融商品取引法上のファンド規制の対象になる可能性があります。最悪の場合、刑事罰を受ける可能性すらあります。

このようなことにならないためにも、マイニングをする際には、関係する法律規制やリスクをきちんと理解し、そのうえで自分に合った手法を選択することが重要です。

6 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 「マイニング」とは、POW(Proof of Work)という膨大な計算量を必要とする作業を成功させた人が取引の承認者となる仕組みを前提として、ブロック内の取引データが改ざんされていないかを確認し、取引を確定させるために必要な計算作業を行うことである。
  • マイニングには①ソロマイニング、②プールマイニング、③クラウドマイニングの3種類の手法がある
  • 「ソロマイニング」は、単独でマイニングを行うことである
  • 「プールマイニング」は、複数のマイナーが持つマイニングマシンのパワーをシェアして、マイニングを行うことである
  • 「クラウドマイニング」は、マイニング事業者にお金を出資することで、自身の代わりにマイニングをしてもらうことである
  • マイニングには、①改正資金決済法、②金融商品取引法、③刑法といった3つの注意すべき法律がある
  • マイニングを通して獲得した仮想通貨を反復継続して売買したり、他の仮想通貨に交換する場合、仮想通貨交換業の登録が必要となる場合がある
  • プールマイニングやクラウドマイニングでは、スキームによっては、ファンド規制の対象となり、第二種金融商品取引業の登録が必要となる場合がある
  • ファンド規制を回避するためには、「業務委託」スキームあるいは計算能力の「貸与」スキームが考えられる