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スタートアップの5つのラウンドにおける資金調達とその注意点を解説

資金

はじめに

スタートアップが資金調達する際、ラウンドによってその手段などが大きく変わることをご存知ですか?

創業初期のシード期にかぎり利用できる資金調達方法もあれば、その後のラウンドにおいても、資金調達の方法は一律ではありません。

そのため、スタートアップが資金調達をする際には、自社のラウンドに応じ、気をつけなければならないポイントを押さえておく必要があります。

そこで今回は、スタートアップにおけるラウンドごとの資金調達とその注意点について、スタートアップに詳しい弁護士が解説します。

1 資金調達の方法とは

資金調達

スタートアップが資金調達をする際には、主に以下の4つの方法を検討することが一般的です。

  1. エンジェル
  2. VC
  3. CVC
  4. 金融機関

(1)エンジェル

エンジェル」とは、創業して間もない企業に対して、個人の責任で資金を提供してくれる投資家のことをいいます。エンジェルは、投資をする代わりに、株式などの付与を受けることが一般的です。

また、起業家との個人的な関係に依拠して投資をしてくれることがあることもエンジェルの特徴の一つです。

そのため、売り上げが立っていない状態でも、精度の高いビジネスモデルを構築しているような場合には、資金を投下してくれる可能性があります。

スタートアップにおいて、もっとも多くエンジェルから資金調達をするのは、シードラウンドやアーリーラウンドといった創業初期であるといえます。

(2)VC

ベンチャーキャピタル(VC)」とは、ハイリターンを狙って、大きな成長を見込める未上場企業に資金を提供する投資会社のことをいいます。資金を投下するだけでなく、経営上のコンサルティングを行うなど事業の手助けをしてくれることが特徴です。

投資に際しては、エンジェルと同じように、株式を付与することがほとんどです。VCからの資金調達は、ほぼ全ラウンドにわたるものと考えて問題ありません。

(3)CVC

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」とは、自社のプロダクトや事業に対してシナジーがありそうなスタートアップに対して、資金提供をする事業者のことをいいます。

CVCによる投資は、自社の事業へのシナジーが前提となっているため、資金調達額も高額になりやすいと言われています。

そのため、スタートアップにとっては、とてもありがたい存在であるといえます。

(4)金融機関

資金調達をする際には、投資以外にも融資を受けるという方法もあります。銀行や信用金庫といった金融機関からお金を借り入れることを意味します。

融資を受ける場合は、自社の株式を付与する必要がない代わりに、利息を含め返済をすることが必要になります。

このように、スタートアップが資金調達を検討する際には、主に、以上の4つの方法を検討することになります。

もっとも、その際には、自社がどのラウンドにあるか、ということも念頭に置きながら、検討を進めていくことが必要になってきます。

2 投資のラウンド(フェーズ)とは?

ラウンド

投資ラウンド(フェーズ)」とは、投資家がスタートアップ企業などに投資をする際の段階のことを意味します。

投資家が投資をする目的は、一律ではありません。

たとえば、スタートアップ企業などを対象に投資をするVC(ベンチャーキャピタル)は、投資をした時よりも株価が上がったタイミングで株を売却することによって得られる利益の獲得を投資目的としています。

これに対し、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)は、一般的に、自社が手掛ける事業領域でシナジー効果を得ることを投資目的としています。

そのため、投資家によって、投資をするタイミングなどにも違いが生まれます。

具体的には、投資家は、スタートアップ企業がどのような段階(ラウンド)にあるのかを基準にして、投資の実行を決めることになります。

投資ラウンドは、主に以下の5つの段階に分かれます。

  1. シード
  2. アーリー
  3. シリーズA
  4. シリーズB
  5. シリーズC

ラウンドという概念が示されることで、投資家は投資先の企業の成長段階を把握することができます。

他方で、資金を調達したいと考えているスタートアップ企業は、ラウンドごとに注意すべき点や、資金調達のためのポイントを押さえておく必要があります。

3 シード・ラウンド

シード

シード・ラウンド」とは、ビジネスモデルの大枠は決まっているものの、具体的な商品開発やサービスの実現、会社設立などができていない段階のことをいいます。

この段階では、実際にビジネスが稼働しているわけではないため、ただちに多額の資金が必要になるということはあまりありません。

もっとも、市場調査などのために費用などが必要になることもあり、エンジェル投資家やVCから出資を受ける場合もあります。

この際の投資規模は、数百万程度となるのが一般的ですが、シード・ラウンドにあるスタートアップ企業が投資を受けるには、

  1. 事業計画書
  2. 資本政策
  3. 創業者株主間契約

の3点に注意する必要があります。

(1)事業計画書

事業計画書」とは、具体的な事業内容や事業目標、目標を達成するための戦略などを示した書面のことをいいます。

シード・ラウンドにある企業は、サービスローンチの前段階にあるため、事業計画書に基づいて、自社のビジネスモデルを積極的に投資家にアピールすることになります。

投資家側から見ても、シード・ラウンドにある企業については、投資の是非を判断するための材料が少なく、主に事業計画書によって判断するほかないという側面があります。

そのため、企業は、事業計画書において、自社が今後成長していくということをできるだけ具体的にアピールする必要があります。

投資をしてもいいと思えるだけの説得力が事業計画書になければ、投資家との交渉はまとまらない可能性が高くなります。

企業は、自社が展開するビジネスモデルが利益を生み出す仕組みとして合理的であることを投資家に示す必要があります。

(2)資本政策

資本政策」とは、企業が事業を展開する上で、必要となる資金をどのようにして調達するかということを計画立てたものをいいます。

資本政策を立てる際には、

  • 事業の成長を目的として、必要となる資金を調達すること
  • 経営陣が安定して経営が行える持株比率を確保すること
  • 創業者のキャピタルゲインを確保すること
  • 上場基準を満たしていること
  • 役職員への適切なストックオプションの発行

といった事項を入念に検討して、これらを満たしたものにする必要があります。

資本政策では、スタートアップがどの時点にどれだけの株式を発行して、資金調達をするのかが決められます。VCなどは、資本政策を事業計画などと突き合わせることにより、どの時点で一定のキャピタルゲインが得られることになるのかを予測できるようになります。

また、事業計画と資本政策との整合性や実現性を検証することが可能となります。

このようにして、今後、事業を展開していくことが可能かといった点について予測を立て、投資の是非を検討することになります。

(3)創業者株主間契約

創業者株主間契約」とは、共同創業者の一人が辞めることとなった場合に、その者が保有する株式を残った他の創業者が買い取ることができるようにするために締結される契約のことをいいます。

仮に、創業者間において、仲違いが生じ、そのうちの一人が会社を辞めることになった場合に、その者に株式を持たれたまま退職されてしまうと、会社にとっては非常に厄介なことになります。

なぜなら、退職者が保有する株式の比率によっては、会社の経営に介入することが可能となるためです。

このようなことにならないよう、創業者株主間契約を締結しておくことは極めて大切なことなのです。

投資と引き換えに株式を取得することになる投資家にとっても、創業者間株主契約がきちんと締結されていることは、投資判断のうえで、プラスに働く要素であるといえます。

このように、シード・ラウンドでは、多額の資金が必要になることはそれほど多くはありません。

とはいえ、資金調達をする際には、自社がシード・ラウンドにあることを踏まえ、以上に上げた3点を始め、投資家が投資判断をするにあたりどのようなことを求めているのか、という視点に立つことが大切です。

4 アーリー・ラウンド

アーリー

アーリー・ラウンド」とは、起業直後で事業をはじめて間もない段階のことをいいます。この段階での資金調達は、市場の獲得や優秀な人材の確保、ビジネスモデルの確立などを目的としていることが一般的です。シード・ラウンドの場合と同様にVCから資金を調達することもできますが、シード・ラウンドとは異なり、実際に事業が稼働し始めているため、その意味では、投資リスクが高くなると考えられ、投資を受けられない可能性があります。

もっとも、このようなフェーズにおいても、以下の方法によって、資金を調達することは可能です。

  1. 創業融資
  2. 補助金・助成金

(1)創業融資

創業融資」とは、起業・独立・開業時に必要となる資金を、自己資金でまかなえない場合に、金融機関などから行う借り入れのことをいいます。

アーリー・ラウンドでは、シード・ラウンドと異なり、実際に事業が動き出しているため、事業を進めるための資金が必要になります。

もっとも、スタートアップ企業などは、これといった実績もなく、社会的な信用が低いことが多いため、銀行などから融資を受けることは困難です。

そこで、まだ信用のないスタートアップのような企業が資金を調達することを可能にする制度が「創業融資」です。

たとえば、日本政策金融公庫による創業融資は、無担保・無保証であるうえ、固定金利で、融資実行までのスピードが早いという特徴があります。

創業融資を申し込む際には、主に、以下のような書類の提出を求められます。

  • 借入申込書
  • 創業計画書
  • 通帳コピー
  • 履歴事項全部証明書
  • 見積書(設備投資がある場合)
  • 不動産の賃貸借契約書
  • キャッシュフロー計算書
  • 許認可証(事業に許認可が必要な場合)
  • 法人の印鑑証明書

創業融資は、融資の実行後も金利が変動しないため、資金計画を立てやすいというメリットがあります。

(2)補助金・助成金

補助金」とは、国や地方自治体が、政策目標に親和性のある事業をサポートするために交付する資金のことをいいます。

アーリー・ラウンドでは、事業を進めるうえで必要な設備や、新商品を開発するための研究など、さまざまな場面で資金が必要になります。

補助金の交付を受けるためには、公募期間内に国や地方自治体に対し、補助金の交付申請を行う必要があります。その後、補助金の交付決定がなされて始めて、事業者は補助金を受け取ることができます。

もっとも、申請を行ったからといって、すぐに交付を受けられるわけではありません。実際には、申請から補助金の交付を受けられるまでに1年以上かかることも少なくありません。

他方で、「助成金」とは、主に厚生労働省が管掌する雇用関係などについて、奨励といった意味合いで、支給されるものをいいます。

たとえば、新卒を採用している場合には、三年以内既卒者等採用定着奨励金を受け取れる可能性がありますし、中小企業団体を助成するための助成金などを受け取れる可能性もあります。

補助金と助成金のいずれも、その種類に応じて申請や交付の条件が定められているため、自社の事業がこれらの条件を満たしているかどうかを十分にチェックする必要があります。

以上のように、アーリー・ラウンドにある事業者は、事業が既に動き出していることもあり、投資家からすればその分のリスクが高まります。

そのため、投資を受けられないということも想定する必要があります。

もっとも、この場合であっても、創業融資や補助金・助成金といった制度を利用することにより、資金を調達することは可能です。

各制度の仕組みを理解したうえで、クリアしなければならない条件などをしっかりと押さえることが必要です。

5 シリーズAラウンド(拡大期)

シリーズA

シリーズAラウンド」とは、本格的にサービスやプロダクトをリリースし、実際に市場を獲得していく段階のことをいいます。

シリーズAラウンドでは、事業が完全に軌道に乗っているとまでは言えないものの、利益が上がりはじめるフェーズでもあります。

そのため、少なくともシードラウンドやアーリーラウンドよりは、VCやCVC、金融機関などから資金を調達しやすくなるとされています。

もっとも、このラウンドでは、コストに応じた利益を十分に生むことができない場合もあるため、資金繰りに苦労することもしばしばです。

シリーズAラウンドにある企業にとっては、その後の事業のためにも、VCから投資を受けることが得策であるということがいえます。ゆくゆくのイグジットに備え、事業コンサルティングも行ってくれるVCのような投資家と協力関係を築いておくことは、プラスになることも少なくありません。

シリーズAラウンドにおいて、VCから受けられる投資額は数千万円規模になると言われていますが、そのためには、VCとの間で投資契約を交わす必要があります。

投資契約を締結する際には、色々と注意しなければならない点がありますが、その中でも特に問題となるのが、持株比率の問題です。

ここでいう「持株比率」とは、発行済みの株式総数に対し、株主(投資家)が保有する株式の割合のことをいいます。

具体的には、

  1. 投資家の持株比率が3分の2以上となる場合
  2. 投資家の持株比率が過半数となる場合
  3. 投資家の持株比率が3分の1以上となる場合

という3つの場合に、持株比率が問題となります。

(1)投資家の持株比率が3分の2以上となる場合

発行済みの株式総数に対し、3分の2以上の株式を保有していると、株主総会による特別決議が必要となる事項を投資家が単独で決議することが可能になります。

ここでいう「特別決議」とは、定款の変更や事業譲渡・合併などといった、企業にとって重要な事項を決めるために会社法上必要とされる決議方法のことをいいます。

言い換えれば、定款変更や合併などについては、株主総会による特別決議を経ないかぎり、行うことはできません。

このように、投資家の持株比率が発行済み株式総数の3分の2以上になると、企業にとって重要な事項を投資家が単独で決断することができるようになるため、経営の自由度を著しく害することになります。

(2)投資家の持株比率が過半数となる場合

発行済みの株式総数に対し、過半数にあたる株式を保有していると、株主総会による普通決議が必要となる事項を投資家が単独で決議することが可能になります。

ここでいう「普通決議」とは、役員の選解任や剰余金の配当などを決めるために会社法上必要とされる決議方法のことをいいます。

投資家の持株比率が過半数になると、特別決議が必要となる事項を除けば、企業の意思をある程度自由に決定することができるようになります。

たとえば、取締役の選解任や企業の組織に関する一部の事項についても、単独で決議できるようになるため、その点を念頭に置いて持株比率を決定する必要があります。

(3)投資家の持株比率が3分の1以上となる場合

発行済みの株式総数に対し、3分の1以上の株式を保有していると、その株主(投資家)は特別決議を拒否することが可能になります(拒否権)。

そうすると、企業にとって重要な事項を投資家一人の反対によって、特別決議できなくなる可能性があります。

そのため、発行済み株式総数の3分の1以上の株式を投資家に保有させることには、事業者にとって一定のリスクが伴うことになります。

このように、シリーズAラウンドでは、それ以前のラウンドより事業の見通しを立てやすくなるため、投資を受けやすくなります。

もっとも、その後の経営支配などの観点から、持株比率の問題を念頭に置いておくことが必要です。さもなければ、経営に関わる重要事項の決定権を投資家に与えることになってしまい、経営の自由度が害されることにもなってしまいます。

6 シリーズBラウンド(グロース期)

シリーズB

シリーズBラウンド」とは、シリーズAを乗りこえて事業がうまく軌道に乗りだし、一定の市場を獲得することにより、売上が伸び始める段階のことをいいます。

そのため、シリーズBラウンドでは、積極的に人材登用や設備投資、広告宣伝を行っていく必要があり、そのために必要な資金を調達することになります。

シリーズBラウンドに達した企業は、それなりの実績を積んでいることが一般的であるため、よりいっそうの成長を期待され、VCからの注目度も高まります。

シリーズBラウンドでの資金調達額は数億円にのぼることもあります。

なお、シリーズBラウンドまでくると、すでに見たように企業は一定の実績と信用などを得ていると考えられるため、資金調達を主導してくれるリードと呼ばれるVCが、数社による資金調達をまとめてくれることが多くなります。

シリーズBの段階で注意すべき点としては、「ストックオプション」が挙げられます。シリーズBラウンドまでくると、イグジットに現実味が出てくるため、企業としてはさらなる努力が必要となります。

そのため、インセンティブとしてのストックオプションを社員に付与するなどして、事業にブーストをかけることが必要になってきます。

ストックオプションの導入を考える際には、

  1. 税制適格
  2. 種類
  3. 発行

などに留意する必要があります。

※「ストックオプション」について詳しく知りたい方は、「スタートアップがストックオプションを発行する場合の注意点を解説!」をご覧ください。

7 シリーズCラウンド(レイター)

シリーズC

シリーズCラウンド」とは、成長段階を終え、経営が安定し始める段階です。

また、IPOやM&Aを模索する段階でもあります。シリーズCラウンドでは、プロダクトやサービスの質を高めたり、事業を加速させることが求められます。

また、赤字の企業であれば、黒字化が求められる段階でもあります。

シリーズCまでくるとIPOやバイアウトといったイグジットを現実的に考える必要があります。そのため、株式による資金調達においては、上場の審査基準や株式の種類などに注意する必要があります。

たとえば、上場審査基準との間で、形式的なポイントとなりうるのは、

  • 株主数が200人以上であること
  • 500単位以上の公募を行うこと
  • 流通株式数が2000単位以上であること
  • 流通株式の時価総額が5億円以上であること
  • 流通株式数が上場株券などの25%以上であること

といったものです。

また、以下のように、実質的な要素もポイントとなります。

  • 企業内容やリスク情報などを適切に開示できる状況にあること
  • 公正・忠実に事業を行っていること
  • 内部管理体制が企業の規模などに応じて適切に整備されていること
  • 合理的な事業計画を策定していること

シリーズCラウンドでは、経営も安定し始めているため、金融機関などから資金調達をすることも難しくはありません。

そのため、融資を受ける形で資金調達することも比較的容易になります。

8 小括

小括

スタートアップが資金調達を実施する際には、ラウンドごとにその目的が異なります。

経営者は、ラウンドに応じた留意点などに注意し、自社に合った資金調達方法を選択する必要があります。

事業を拡大していくためには、積極的に資金を調達しなければならないという側面もありますが、戦略的・計画的に資金調達を実施していかないと、経営がうまくいかなくなってしまうおそれもあるため、注意が必要です。

9 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りです。

  • スタートアップの資金調達先となるのは、主に、①エンジェル、②VC、③CVC、④金融機関である
  • 投資のラウンドには、主に、①シード、②アーリー、③シリーズA、④シリーズB、⑤シリーズCがある
  • シードラウンドにおける資金調達では、①事業計画書、②資本政策、③創業者株主間契約などに注意する必要がある
  • アーリーラウンドからは、①創業融資、②補助金、③助成金といった資金調達手段がある
  • シリーズA以降、大口の投資を受ける際には、持株比率に留意し、経営権を確保することが重要である
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