宿泊サブスクサービス「ADDress」のビジネスモデルを弁護士が解説

はじめに
コロナ禍においてさまざまな働き方を支援するサービス「ADDress」を提供する「株式会社アドレス」は、現在、規制の壁に悩まされています。
日経新聞より
今回は、宿泊サブスクサービス「ADDress」のビジネスモデルを中心に、規制内容にも触れながら解説していきます。
1 サービスの背景・概要

地方の空き家問題はいっそう深刻化しており、10年後には、住宅の3割が空き家になるとも予測されています。
一方で、コロナを契機にテレワークやワーケーションなどの新しい働き方を導入する企業が増えており、場所に拘束されないスタイルが注目されるようになってきています。
「ADDress」は、地方への移住を希望する人などに空き家などの遊休物件を貸すことにより、空き家問題の解決を目指すとともに新しいライフスタイルを提案するサービスです。
「ADDress」では、サブスクリプション方式により日本各地で運営されている家に定額で住むことができます。
サービスの概要は、以下のようになっています。
(1)4万円/月~で住み放題
水道光熱費を含め、月額4万円から住むことが可能です。
また、通常求められる敷金や礼金なども必要ないため、初期費用は一切かかりません。
(2)生活や仕事に必要なものが完備されている
寝具やキッチン、洗濯機といった生活必需品からWifiといった仕事に必要なものまで完備されていますので、すぐに生活や仕事を始めることができます。
(3)同伴者も無料で滞在できる
二親等以内の家族やパートナー1名に限り、無料で個室を利用することが可能です。
2 ADDressの特徴|メリット
(1)好条件の立地
ADDressでは、アクセスの良い都市近郊や自然が豊かな場所を対象として物件が展開されています。
そのため、平日は主にリモートワークに使い、週末などは自然を楽しむとスタイルも可能であり、全国各地で気になっている自然を楽しむこともできます。
(2)家守(管理者)が担当に付いてくれる
各物件において、地域の住人が管理者として担当に付いてくれます。
そのため、その地域に関するさまざなことがわからずに不便を感じるといったこともありません。
地域における交流の機会など、住人ならではの情報を提供してくれます。
(3)交流が広がる
ADDressでは、シェアハウスのように複数の会員が同時期に滞在することになります。
そのため、さまざまなライフスタイルを送っている人たちと出会うことができ、交流が広がります。
3 法的検討

宿泊業のサブスクサービスは、コロナ禍によるテレワークの普及を背景に需要が高くなっています。
「宿泊業」を展開する際に、検討しなければならないのが「旅館業法」です。
(1)旅館業法について
旅館業法にいう旅館業を営むためには、その施設単位で旅館業法上の許可を受ける必要があります。
旅館業にあたるかどうかは、以下の4つの要素を基に総合的に判断するとされています。
- 宿泊料の有無
- 不特定多数が対象となっているか
- 事業の継続反復性の有無
- ユーザーにとって生活の本拠となっているか
ADDressとの関係で特に問題となってくるのは、4です。
「生活の本拠」といえるかどうかは、滞在期間が1ヶ月未満であるかどうかが一つの目安となります。
ADDressでは、1つの物件の予約期間が連続して7日までとなっているため、旅館業にあたり旅館業法の規制対象となる可能性が高いです。
(2)民泊プラットフォームのビジネスモデルとの比較
本来住居である建物や部屋を不特定多数の方に貸し出すビジネスモデルとして、Airbnb(https://www.airbnb.jp/)などが有名です。
Airbnbは、一言でいうとホテル感覚でホームステイができるようなサービスで、Airbnbを通じて申込のあった宿泊希望者に、自分の家の一室(若しくは使っていない家の部屋など)を貸すことができるサービスです。
自分の部屋をホテルのように使わせることも上記4要素を満たすと旅館業にあたるのですが、民泊新法(住宅宿泊事業法<平成二十九年法律第六十五号>)により、年間上限180泊までであれば民間住宅を宿泊のため提供できます。
そして、Airbnbは民泊と顧客をマッチングしているだけなので特に規制に服していないということになります。
(3)ADDressの法的スキーム「準共有契約」
ウェブ記事の解説を見ると、ADDressは、複数人で複数の物件を賃借する「準共有契約」を取り入れているとのことです。
準共有とは、所有権以外の権利(賃貸借契約に基づく債権など)の共有という意味ですが、要するに10人で10物件の賃貸借契約の借主になるというイメージです。
この内容であれば貸主は一般的な住居の賃貸サービスを提供しているだけなので旅館業には該当しないという説明が可能です。
しかし、契約の形式としてはそうであっても、実態として1か月未満の短期滞在(生活の本拠としての利用でない)というケースが出てくるのであれば旅館業に該当するのではないか、という問題が出てきているようです。
(4)ADDressの課題
ADDressが事業コンセプトとして掲げているのは「空き家問題の解消」です。
仮に、住宅街にある空き家について旅館業の許可を受けようとすると、自治体の用途地域の制限にひっかかるため、住宅地にある空き家を扱えなくなります。
自社で空き家を買い上げてそれぞれの物件で民泊の届出(住宅宿泊事業の届出)をすることも考えられますが、負担が重く、事業イメージに合致しているとは言い難いです。
他方で、そもそもアドレスホッパーと呼ばれるような方にとっては生活の本拠をどこか1つの住所にするという概念自体が合わなくなっているようにも感じます。日数によって旅館業該当性を判断するのも法律に書かれた基準ではないため、この部分の概念は流動的に解釈可能である可能性もあります。
また、民泊と既存宿泊施設は市場を食い合う関係にありましたが、ADDressのビジネスモデルは必ずしもそうではないようにも感じます。このような視点からニーズに合った規制緩和がなされることを期待したいです。
4 まとめ
ADDressは、コロナ禍によるリモートワークの浸透により、需要の高いサービスの一つです。
また、今後も新しい働き方やライフスタイルを支援するサービスの一つとして、よりいっそう飛躍していくことが期待されます。
もっとも、規制との関係で事業のコンセプトや進め方に支障が出ることは少なくありません。
このような壁にぶつかった場合、すぐに諦めるのではなく、自社の事業コンセプトなどを実現するための方法を模索することも大切になってきます。
一方で、リモートワークが拡大している現状に鑑み、ADDressのようなサービスが阻害されることなく健全に成長できるようなルールを構築していくことが国には求められます。
弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
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IT・EC・金融(暗号資産・資金決済・投資業)分野を中心に、スタートアップから中小企業、上場企業までの「社長の懐刀」として、契約・規約整備、事業スキーム設計、当局対応まで一気通貫でサポートしています。 法律とビジネス、データサイエンスの視点を掛け合わせ、現場の意思決定を実務的に支えることを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所で、訴訟・紛争案件を中心に企業法務を担当。 2015年~2016年 知的財産権法を専門とする米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M. を取得。コンピューター・ソフトウェア産業における知的財産保護・契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、当時法制化が始まった仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の法令遵守等責任者として登録申請業務に従事。 その後、独立し、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業(投資顧問業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。 2020年8月 トップコート国際法律事務所に参画し、スタートアップから上場企業まで幅広い事業の法律顧問として、IT・EC・フィンテック分野の契約・スキーム設計を手掛ける。 2023年5月 コネクテッドコマース株式会社 取締役CLO就任。EC・小売の現場とマーケティングに関わりながら、生成AIの活用も含めたコンサルティング業務に取り組む。 2025年2月 中小企業診断士試験合格。同年5月、中小企業診断士登録。 2025年9月 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期課程)合格。












