はじめに

DApps」を開発する際にどういった法律や規制があるのか?については、正直全くわからないという方が多いのではないでしょうか?

DAppsを利用したゲームでは、仮想通貨でアイテムを購入できることなどから、仮想通貨周りを規制する改正資金決済法など、いくつかの注意すべき法律規制が存在します。

そこで今回は、そもそもDAppsとは何なのか?を始めに簡単に確認したうえで、DApps開発における法律上の問題点について、仮想通貨・ICOに詳しい弁護士が解説します。

目次

1 DAppsとは?

DApps

DApps(ダップス/ディー・アップス)」とは、「分散型アプリケーション(Decentralized

Applications)」のことをいいます。特定の者や集団にシステムを管理・支配させることなく、ブロックチェーンという分散型の仕組みによってシステムを相互管理するアプリケーションのことです。

以下の図のように、従来のアプリケーションは運営側が管理・運営を行う中央集権型でした。これに対し、DAppsは従来のように特定の管理者がいるのではなく、ブロックチェーンを利用して非中央集権型にした分散型アプリケーションのことをいいます。

アプリケーション

DAppsには、

  • オープンソースであること
  • 分散型であること
  • ユーザーに対し、暗号化されたトークンが報酬として支払われること
  • ユーザーの同意により、プロトコルの改善が行われること

といった特徴があり、その種類も独自のブロックチェーン上で構築するものから、既存のブロックチェーンを利用するものまで、大きく3つに分かれています。

従来は、特定の中央管理者がサービスを提供する形態がほとんどでしたが、これからは、DAppsによる非中央集権的なサービスが出てくるだろう、と注目されています。

では、DAppsのメリットはどこにあるのでしょうか。次の項目で見ていきたいと思います。

2 DAppsのメリット

メリット

DAppsのメリットは、主に以下の点にあります。

  1. 単一の障害点がない
  2. データ改ざんのリスク軽減

以下で詳しく見ていきましょう。

(1)単一の障害点がない

従来であれば、中央のサーバーが故障してしまうと、それに伴いシステムがダウンしてしまいます。ですが、DAppsは、ネットワーク上で多くのサーバーが同一のデータを共有・管理しているため、サーバーの一部が停止したり故障したりした場合であってもシステム全体は継続して稼働することが可能であるというメリットがあります。

(2)データ改ざんのリスク軽減

ブロックチェーンは、時間が経過すればするほど記録された情報の強度が増していきます。そのため、情報を改ざんされるリスクは小さくなります。また、ブロックチェーンは透明性が高いことも特徴の一つであるため、透明性の高さからノードがお互いにデータを監視することも可能です。

以上のように、DAppsにはブロックチェーンが用いられているため、ブロックチェーン特有のメリットを享受することができます。

そして最近、まだまだ数は少ないものの、このような特質を活かしたDAppsゲームがリリースされています。以下で、具体的に見てみましょう。

3 DAppsを利用したゲーム

DAppsゲーム

この項目では、現在リリースされているDAppsを利用したゲームの一部をご紹介したいと思います。

  1. CryptoKitties/クリプトキティ
  2. GODS UNCHAINED/ゴットアンチェインド
  3. Etheremon/イーサエモン
  4. MyCryptoHeroes/マイクリプトヒーローズ

以下で、簡単に見ていきましょう。

(1)CryptoKitties/クリプトキティ

色々なタイプのバーチャルネコを購入、収集、育成することなどを目的としたバーチャルゲームです。一時的にイーサリアムのネットワークが混雑するほどの人気を博したゲームです。

クリプトキティ

https://www.cryptokitties.co/

(2)GODS UNCHAINED/ゴットアンチェインド

ブロックチェーンゲーム初のeスポーツ化を行うトレーディングカードゲームです。カードの使用コストや能力など、戦略性が問われるゲームです。

ゴットアンチェインド

https://godsunchained.com/

(3)Etheremon/イーサエモン

育成とバトルを組み合わせたゲームです。メインコンテンツであるユーザー間でのランクマッチモードのバトルでランキングが上位になると定期的に報酬を受け取ることができます。

イーサエモン

https://www.etheremon.com/

(4)MyCryptoHeroes/マイクリプトヒーローズ

世界における歴史上の人物を集め、軍隊を作ったうえでバトルを行うシミュレーションゲームです。日本では初めてLoomNetwork(イーサリアム上にあるDAppsの「送金速度が遅い」「送金コストが高い」といった問題を解決するソリューション)が採用され、データ送信の遅延を解消するなど、利用者が快適にゲームをプレイすることが可能となっています。

また、ウォレットを用意していなくともプレイできるという特徴があります。

マイクリプトヒーローズ

https://www.mycryptoheroes.net/ja

以上のように、DAppsを使ったゲームが多く出てきており、今後市場規模も拡大される見込みです。

もっとも、DAppsゲームは仮想通貨であるイーサリアムを使って、アイテムなどを購入することができるため、仮想通貨周りを規制する改正資金決済法(通称:仮想通貨法)との関係で問題となります。

次の項目から、具体的に見ていきましょう。

4 DAppsの法律上の問題点

問題点

DAppsを利用したゲームは、仮想通貨であるイーサリアムを使って、アイテムを購入できるうえ、ユーザー間でイーサリアムを使って自分が育てたアイテムを売買することができます。

そこで、以下のような問題点が出てきます。

  1. ゲーム会社の行為:改正資金決済法上の「仮想通貨交換業」にあたるか
  2. ゲーム内アイテム:改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるか
  3. 独自トークン:改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるか

以下で順番に見ていきたいと思います。

5 問題点①:ゲーム会社の行為が改正資金決済法上の「仮想通貨交換業」にあたるか

仮想通貨交換業

(1)問題点の整理

昨今、人気が出てきているDAppsゲームですが、ゲーム内で仮想通貨を使ってアイテムを購入できるような場合には、「改正資金決済法」の規制対象となる可能性があります。

DAppsゲームが改正資金決済法との関係で問題となるのは、具体的には以下の点です。

  1. ユーザーが仮想通貨を使ってアイテム等を購入する点
  2. ユーザー同士で仮想通貨を使ってアイテム等を売買できる点

このように、ゲーム内で仮想通貨を使ってアイテム等を売買できるような場合、そのようなゲームを提供するゲーム会社の行為が「仮想通貨交換業」にあたるか?ということが問題となります。ゲーム会社の行為が仮想通貨交換業にあたるとすれば、ゲーム会社は仮想通貨交換業の登録を受けなければならないことになります。

この点について、以下で検討していきたいと思います。

(2)仮想通貨交換業とは?

仮想通貨交換業」にあたるといえるためには、改正資金決済法(通称:仮想通貨法)が定める以下の要件をすべてみたす必要があります。

  1. 仮想通貨の売買や仮想通貨同士の交換、またはこれらの行為の媒介・取次・代理
  2. ①の行為に関して、ユーザーの金銭・仮想通貨を管理すること
  3. 「①~②」の行為を事業として行うこと

これらの要件をすべてみたす事業は「仮想通貨交換業」にあたり、仮想通貨交換業の登録を受けなければなりません。

また、仮想通貨交換業の登録を受けた仮想通貨交換業者には以下の義務が課せられます。

  • 財務規制
  • 行為規制
  • 監督規制
  • マネロン規制

資本金が1,000万円以上であることや利用者財産の管理義務、マネロン防止を目的として課される口座開設時の取引時確認義務など、仮想通貨交換業者は多くの義務を課せられることになります。

なお、仮想通貨交換業の登録は、現状ですと登録のハードルが極めて高く、上場企業並みのパワーがない限り、スタートアップや中小企業では、登録するのが難しいのが現状です。そのため、DApps開発会社としては、仮想通貨交換業の登録をしなくてもOKなスキームを構築していく必要があります

では、DAppsゲームを提供することは「仮想通貨交換業」にあたるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

(3)DAppsゲームへのあてはめ

いまいちど、DAppsゲームの特徴について確認しておきましょう。

DAppsゲームでは、ユーザーもしくはユーザー同士が、

  • 仮想通貨を使ってアイテム等を購入できる
  • 仮想通貨を使ってアイテム等を売買できる

ことが予定されています。

ここで仮に、ゲーム内で購入・売買できる「アイテム」が改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたると、仮想通貨の売買・交換を行っていることになり、仮想通貨交換業にあたるということになります。

ここで注意すべきは、ゲーム内で発行する「コイン」等が「仮想通貨」にあたるか?を議論しているのではないという点です。

あくまでも検討すべきは、ゲーム内で発行しユーザーに付与するデジタルアセットとしての「アイテム」(例:マイクリプトヒーローズでいうキャラクター・アバター等)が、改正資金決済法上の「仮想通貨」に該当してしまい、その「アイテム」を販売する行為をするためには仮想通貨交換業のライセンスが必要なのか?という点を検討しているのです。

DAppsゲームの仕組み

では、ゲーム内の「アイテム」は改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるのでしょうか。次の項目で見ていきましょう。

6 ゲーム内アイテムが改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるか

仮想通貨

(1)問題点の整理

繰り返しになりますが、ゲーム内「アイテム」が改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたれば、ゲーム会社の行為は「仮想通貨交換業」に該当することになり、仮想通貨交換業の登録を受けなければなりません。反対に、ゲーム内アイテムが「仮想通貨」にあたらないのであれば、仮想通貨交換業の登録を受ける必要はありません。

この点について、具体的に見ていきましょう。

(2)仮想通貨とは?

改正資金決済法では、「仮想通貨」を以下のように2つに分けて定義しています。

  1. 1号仮想通貨
  2. 2号仮想通貨

以下で、簡単に見ていきましょう。

①1号仮想通貨

1号仮想通貨」とは、以下の要件をすべてみたす通貨のことをいいます。

  • 物品の購入・借受、または役務の提供に対して代価弁済のために不特定の者に対して使用できること(不特定性)
  • 不特定の者を相手方として購入・売却できる財産的価値があること(財産的価値)
  • 電子機器やその他の物に電子的方法によって記録され、電子情報処理組織を用いて移転できるものであること(電子的記録)
  • 日本通貨・外国通貨、通貨建資産でないこと(非法定通貨)

簡単にいうと、日本円などの法定通貨と交換できるデジタル通貨のことをいいます。たとえば、ビットコインは1号仮想通貨にあたります。

②2号仮想通貨

2号仮想通貨」は、以下の要件をいずれもみたす通貨のことをいいます。

  • 不特定の者を相手方として、1号仮想通貨と交換できる財産的価値があること(交換可能性)
  • 電子情報処理組織を用いて移転できるもの(電子的記録)

たとえば、ビットコイン以外の通貨(=アルトコイン)の多くが、2号仮想通貨にあたります。

以上のことをまとめると、次のようになります。

  • 1号仮想通貨=不特定の者との間で、物の売買に使用できる財産的価値をもつもの
  • 2号仮想通貨=不特定の者との間で、1号仮想通貨と交換できる財産的価値をもつもの

DAppsゲームとの関係で問題となるのは、仮想通貨にあたるための要件である「不特定性」がゲーム内アイテムに認められるかという点です。

(3)DAppsゲームへのあてはめ

(ⅰ)まず、利用者に配布するアイテムは、何かの代価の弁済のために使用できる性質ものではありません。そのため、1号仮想通貨の不特定性の要件をみたさず、1号仮想通貨にはあたりません。

(ⅱ)次に、DAppsゲーム内で仮想通貨を使って購入するアイテムは、イーサリアムと交換することができます。このイーサリアムという間違いなく「仮想通貨」であるコインと交換できる点については、「不特定の者を相手方として」イーサリアムと交換しているとみなされると、そのアイテムは「2号仮想通貨」にあたってしまうことになります。

ゲーム内アイテムが2号仮想通貨にあたれば、ゲーム会社の行為は仮想通貨交換業にあたり、仮想通貨交換業の登録が必要になります。また、ゲーム独自のアイテム(仮想通貨)を新たに作り取り扱うためには、金融庁から認可という手続きも受けなければなりません(ですが、この認可もなかなか下りないのが現状)。

一方で、DAppsゲーム内で使用できるアイテムが、そのゲーム内でしか使用できず、また、ゲーム利用者のみがイーサリアムと交換することができる、といった仕組みになっていれば、「不特定の者を相手方として」という不特定性をみたさない結果、仮想通貨にあたらないとも考えられます。

もっとも、ゲーム内アイテムが仮想通貨にあたるかどうかは簡単に答えが出る問題ではありません。ゲーム内アイテムがどのような性質をもっているか、仮想通貨と交換できる相手方の範囲がどうなっているか、などによって結論が変わる可能性がありますので、注意が必要です。

7 ゲーム会社が独自のトークンを発行した場合

トークン

(1)問題点の整理

ゲーム内アイテムとは別に独自のトークンを作っているゲームがあります。このような場合も、ゲーム内アイテムと同様に、独自トークンが仮想通貨にあたるかどうかが問題となります。ゲーム会社が発行する独自トークンが「仮想通貨」にあたるのであれば、ゲーム会社の行為は「仮想通貨交換業」にあたり、仮想通貨交換業の登録を受ける必要があります。以下で検討していきたいと思います。

(2)独自トークンとは?

独自トークン」とは、ブロックチェーン上で発行された独自コインのことをいいます。「何らかの価値があるものと交換できる引換券」といったイメージです。

身近なところで例をあげると、私たちが日常的によく利用する「ポイントサービス」はトークンの一種です。お金の代わりに貯めたポイントを使って、サービス元から商品やサービスを購入できます。

この点、独自トークンが将来的な上場を予定している場合トークン自体に売買や譲渡を可能とする機能が備わっている場合には、改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるというのが金融庁の解釈です。

(3)DAppsゲームへのあてはめ

DAppsゲームにおいて、ゲーム会社が独自に発行したトークンがゲームの内外を問わずイーサリアムなどと交換できるような仕組みになっている場合には、独自トークンが改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたり、仮想通貨交換業の登録が必要になる可能性があります。

このように、ゲーム内アイテムや独自トークンが改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたると、その発行企業は「仮想通貨交換業の登録」を受けなければなりません。仮想通貨交換業の登録要件は非常に厳しい内容となっているうえ、仮想通貨交換業者として登録を受けられたとしても、その後も色々と面倒な規制を課せられることになります。

そのため、ゲーム内アイテムや独自トークンについて、改正資金決済法上の仮想通貨にあたらないように工夫をこらして設計することが求められます。

以上のように、DAppsにおける法律上の問題点のうち、特に問題となる改正資金決済法上の「仮想通貨交換業」規制について見てきました。もっとも、問題となるのは改正資金決済法との関係だけではありません。最後に、その他の法律上の問題点について見ていきましょう。

8 その他の法律上の問題点

問題点

DAppsには改正資金決済法のみならず、以下のような法律上の問題点もあります。

  1. 賭博罪にあたるか(刑法)
  2. 前払式支払手段にあたるか(資金決済法)
  3. 景品類にあたるか(景表法)

以下で、簡単に見ていきましょう。

(1)賭博罪にあたるか(刑法)

刑法上の「賭博罪」にあたるためには、

  1. 偶然の勝敗によるものであること
  2. 財産上の利益の得喪を争うこと

という2つの要件をみたす必要があります。

たとえば、以下のような場合には賭博罪のリスクが高いと考えられます。

  • DAppsゲームで得たアイテムを外部に売ることができる仕組みになっている場合
  • 「合成(2つのキャラクターから一つの新キャラクターが誕生する)」という仕組みがとられているDAppsゲームにおいて、ランダムな合成により得たアイテムを転売できるような仕組みになっている場合

もっとも、以上の仕組みとは別の仕組みを採っていても、ゲームを全体としてみた場合に、賭博罪にあたると判断されるケースもあります。賭博にあたるかどうかの判断は、簡単でないこともあるため、ゲーム全体としてのギャンブル性の程度を確認するなど、慎重に検討する必要があります。

(2)前払式支払手段にあたるか(改正資金決済法)

前払式支払手段」とは、私たちが日常的に使っているSuicaや電子マネーなどのように、ユーザーがお金を支払って購入(チャージ)し、商品などの支払いに使うものをいいます。

DAppsゲームの中には、アイテムを購入するためのゲーム内通貨を販売するものがあります。このような場合、アイテムを購入しようとするユーザーはそのために使うゲーム内通貨を日本円などで購入することが通常であるため、ゲーム内通貨は前払式支払手段に該当します。そのため、前払式支払手段を発行するための届出が必要になってきます。

そのことにくわえ、前払式支払手段の発行事業者に対しては、以下のような義務を課せられます。

  • 表示義務
  • 供託義務
  • 行政への継続的報告義務
  • 払い戻し義務

この中でも特に重要なのが「供託義務」です。供託義務は、事業者が倒産した場合などにおいて、それまでに利用者が支払ったお金で返還すべきお金をきちんと返すことができるようにすることを目的としています。供託すべき金額は、最低でも500万円以上であり、スタートアップ企業やベンチャー企業などにとっては、かなり厳しい義務になっています。

このように、前払式支払手段の発行事業者に対しては非常に厳しい義務が課せられるため、事業者はできるだけこういった義務を回避・軽減するための方法を検討することが必要になってきます。このような義務を回避・軽減する方法としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 未使用残高を調整する
  2. 使用期間を発行日から6か月以内に限定する
  3. 利用者に対価の支払いではなくポイントなどを付与する

以下で、簡単に見ていきましょう。

①未使用残高を調整する

前払式支払手段の発行者としての届出や供託義務は、基準日(毎年3月末or9月末)において、発行済みの仮想通貨の未使用残高が1,000万円を超えたときに課せられます。そのため、基準日において、発行済みの仮想通貨の未使用残高を1,000万円以内とする方法が考えられます。

②使用期間を発行日から6か月以内に限定する

前払式支払手段は、発行日から6か月以内にかぎり使用できるものについて、規制の対象から外しています。そのため、発行する前払式支払手段について、発行日から6か月以内にかぎり使用できるように有効期間を設けることが考えられます。

③利用者に対価の支払いではなくポイントなどを付与する

この方法は①や②のように届出や供託義務そのものを回避するのではなく、供託義務に係る供託金の金額を軽減する方法です。具体的には、前払式支払手段を発行する際に、併用してポイントなどを対価なしで利用者に付与することにより、未使用残高を押さえることができ、供託金額の軽減に繋がるわけです。

以上のように、前払式支払手段を発行する事業者に対しては、供託義務を始めとした厳しい義務が課せられます。特に財務力の弱い企業にとっては、事業の存続そのものにも影響を与えかねません。そのため、できるだけこういった義務を回避できるようなスキームを検討することが重要です。

もっとも、ゲーム内通貨がイーサリアムなどの仮想通貨でしか購入できないような場合は、原則として前払式支払手段にはあたらないと考えられます。

(3)景品類にあたるか(景表法)

景品類」とは、以下の要件をみたす経済上の利益のことをいい、景表法上その提供が禁止されています。

  1. 顧客を誘引する手段であること
  2. 取引に付随して提供されること
  3. 物品や金銭などの経済上の利益

近頃のゲームでは、ユーザーのゲーム離れを防ぐために一定のボーナス(ログインボーナスや達成ボーナスなど)をユーザーに対して配布するといったことがよく見受けられます。このような場合に、ユーザーに配布されるボーナスが仮想通貨(イーサリアムなど)であったり、トークンであるような場合には、これらが「景品類」にあたるかどうかを検討する必要があります。

これらの付与ボーナスが仮に「景品類」にあたる場合には景表法の範囲でボーナスが付与されなければなりません。

以上のように、DAppsには改正資金決済法のほかにも注意しなければならない法律がいくつかあります。改正資金決済法だけ守っておけば問題ないだろうなどと軽く考えていると、場合によっては、罰金刑などの刑事罰を科せられることにもなりかねません。問題となる法律規制を一つ一つ着実にクリアして、事業を展開していくようにしましょう。

9 DAppsゲームへのあてはめ

DAppsゲーム

最後に、既に前で触れたCryptoKitties/クリプトキティ、Etheremon/イーサエモンを例に挙げて、法律上の問題点をどのようにクリアしているのかについて見ていきたいと思います。

(1)CryptoKitties/クリプトキティ

クリプトキティは、色々なタイプのバーチャルネコを購入、収集、育成することなどを目的としたバーチャルゲームです。このゲームで問題となるのは、アイテムである子猫が「仮想通貨」にあたれば、ゲーム会社は、「仮想通貨であるイーサリアム」と「仮想通貨である子猫」を交換する場となるため、仮想通貨交換業の登録を受ける必要があることになります。

この点について特に問題となるのが、「子猫」がイーサリアムのような1号仮想通貨と「不特定の者を相手方として」交換ができるかどうかという、2号仮想通貨該当性です。クリプトキティでは、イーサリアムと子猫を交換できるのは、ゲーム内に限られており、アイテムとしての子猫の種類も多数に上ります。

そうすると、利用者間における売買は相対的であり、子猫の一体一体が「不特定の者を相手方として」イーサリアムと交換されるということが予定されているとはいえません。

そのため、子猫とイーサリアムの交換がゲーム内の利用者に限られているのであれば、2号仮想通貨にいう不特定性をみたさず、仮想通貨にはあたらないと考えられます。

また、子猫同士の交配によって産まれる子猫に突然変異のような事象が起きることがあるため、刑法上の「賭博罪」との関係も問題になります。

この点、賭博罪が成立するための要件である「偶然性」はみたしているように考えられますが、子猫同士の交配自体に財物などが支払われるわけではないため、「財産上の利益の得喪を争うこと」という要件をみたさず、賭博罪にはあたらないという仕組みになっています。

(2)Etheremon/イーサエモン

このゲームは、育成とバトルを組み合わせたゲームですが、問題となるのは主にはクリプトキティと同様です。具体的には、ゲームのキャラクターであるイーサエモンが仮想通貨にあたるかという問題です。この点は、クリプトキティと同様に仮想通貨にはあたらないと考えられます。

もっとも、ゲーム内で使われるトークン(EMONT)については、RadarRelay取引所でイーサリアムと交換できるため、2号仮想通貨に当たると考えられます。

また、イーサエモンが他の利用者との戦闘に勝てば、報酬であるEMONTを入手することができるため、刑法上の「賭博罪」との関係が問題となりますが、イーサエモンは繰り返しトレーニングをすることで戦闘に勝ちやすくなるという仕組みになっています。

そのため、賭博罪の要件である「偶然性」をみたさないと考えられます。

以上からもわかるように、既にローンチされているゲームについては、主にゲーム内で使われるアイテムやトークンなどの2号仮想通貨該当性が問題になっており、ひいては仮想通貨交換業の登録を検討する必要が出てきます。このような規制を回避するためにも、工夫をこらした仕組みを検討することが必要です。

10 小括

小括

ブロックチェーンを使ったDAppsゲームは、ゲーム内で仮想通貨を使ってアイテムなどを購入できるようになっているため、仮想通貨周りを規制する改正資金決済法に抵触しないかどうかを検討しなければなりません。その際には、ゲーム内アイテムや独自トークンなどをいかにして改正資金決済法上の仮想通貨にあたらないように設計できるかという点がポイントになってきます。また、改正資金決済法のほかにも刑法上の賭博罪など、見過ごすことができない法律規制も存在します。

事業を円滑に進めていくためにも、各法律規制について丁寧に検討していくことが重要です。

11 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 「DApps(ダップス/ディー・アップス)」とは、ブロックチェーン技術を使った中央管理者不在の非中央集権による分散型アプリケーションのことである
  • DAppsのメリットとしては、主に①単一の障害点がない、②データ改ざんのリスク軽減がある
  • DAppsゲームはイーサリアム(=仮想通貨)を使って、アイテムなどを購入することができるため、改正資金決済法との関係で問題となる
  • DAppsの法律上の問題点として、①ゲーム会社の行為が「仮想通貨交換業」にあたるか、②ゲーム内アイテムが「仮想通貨」にあたるか、③独自トークンが「仮想通貨」にあたるか、という点が挙げられる
  • ゲーム内アイテムが仮想通貨にあたるかどうかは、ゲーム内アイテムがどのような性質をもっているか、仮想通貨と交換できる相手方の範囲などによって、結論が変わる可能性がある
  • 独自トークンが将来的な上場を予定している場合やトークン自体に売買や譲渡を可能とする機能が備わっている場合には、「仮想通貨」にあたるというのが金融庁の解釈である
  • DAppsには改正資金決済法のほか、①刑法上の賭博罪、②改正資金決済法上の前払式支払手段、③景品表法上の景品類、といった注意すべき法律規制がある