社外取締役とは?5つの要件や期待される役割などを弁護士が解説

はじめに
ひと昔前とは違い、社外取締役に女性が就任する時代になりました。
そこには、これまでとは違った視点を企業経営に注入できるというメリットがあります。
ところで、「社外取締役」がどのような職に就くことを意味するのか、ご存知でしょうか。
社外の者であるとはいえ取締役である以上、会社法上の規制を課されることになります。
今回は、「社外取締役」について、わかりやすく解説します。
1 社外取締役とは

「社外取締役」とは、言葉のとおり、社外にいる取締役のことをいいます。
「取締役」は、通常社内で出世した者が就任するポストですが、社内では一定のしがらみや利害関係が存在することが少なくありません。
内部のしがらみや利害関係がそのまま取締役の意見に反映されていることもあり、その意味では公正な組織とはいえない側面があります。
その点、社外取締役は内部のしがらみや利害関係にとらわれていないことが多く、社外から客観的に経営状況などを見て意見を述べることができる立場にあります。
社外取締役は、企業における経営の透明性・健全性を図るために重要な役割を果たしているのです。
2 社外取締役の要件

社外取締役となるためには、以下の要件をすべて満たしていることが必要です。
- 事業者(子会社を含む)の業務執行取締役でなく、かつ、就任前10年間に事業者等の業務執行取締役でなかったこと
- 就任前10年以内に事業者の取締役等であった場合には、その就任前10年間に事業者の業務執行取締役でなかったこと
- 事業者の親会社または親会社の取締役等・その他の使用人でないこと
- 事業者の親会社の子会社の業務執行取締役等でないこと
- 事業者の取締役等の配偶者または二親等内の親族でないこと
根拠法は会社法2条15号です。
詳細については法務省の資料を参考にしてください。
また、上場会社の社外取締役に就任する際には、取引所(東京証券取引所など)の独立性要件を充足する必要もあります。
弁護士も社外取締役就任の依頼を受けることがありますが、上場会社の場合は取引所の定めるルールにも従う必要があります。
単に顧問弁護士であるというだけで独立役員になれないわけではありませんが、取引関係や依存度等によって認定が変わってきます。
ただ、そこまで厳密なジャッジが会社に要求されるわけではなく、事前相談である程度確認することが可能です。
3 社外取締役の役割

社外取締役に期待される役割としては、以下のような点が挙げられます。
(1)取締役会への参加
もっとも大きな役割は、取締役の一人として、取締役会に出席して意見を述べるということにあります。
先に見たように、社外取締役は内部のしがらみや利害関係にとらわれていないため、正直な意見をぶつけたり、厳しい意見を述べたりすることが役割として期待されます。
常勤の取締役では、内部の利害関係などから質問しにくい部分についても、納得のいくまで質問をすることが社外取締役には期待されます。
事業者側は、社外取締役が十分に役割を果たせるように、取締役会の議題に関する背景やそれまでの審議状況などをあらかじめ具体的に説明しておくことが望ましいと考えられます。
(2)業務執行の委託
事業者と取締役との利益が相反する場合や、取締役が業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがある場合は、取締役会の決議によって業務執行を社外取締役に委託することができます。
もっとも、それを許してしまうと、委託を受けた業務を執行することとなる社外取締役は「業務執行取締役」にあたり、社外取締役の要件を満たさなくなるのでは?と思う人もいるかもしれません。
この点、一部例外はあるものの、ここでいう「委託を受けた業務の執行」を社外取締役が行っても、「業務執行取締役」にはあたらないとされています。
事業者と取締役が利益相反の関係にある場合であっても、業務執行を社外取締役に委託することにより、機動性を失うことなく業務を執行することができます。
このような役割も社外取締役には期待されているのです。
(3)適切に判断することができる
ニュースなどで耳にしたことがある人も多いと思いますが、事業者が不祥事を起こした場合に「第三者委員会」が設置されるケースがあります。
第三者委員会とは、外部の有識者で構成され、不祥事などについて、その検証や再発防止策の検討・報告などを行う機関のことをいいます。
もっとも、第三者委員会を設置するかどうかを検討する際、「問題を大きくしたくない」「体制の不備等を露呈することになる」といった理由から事業者側が消極的になる場合があります。
その点、社外取締役には、このような状況下であっても、外部から客観的に状況を確認したうえで、第三者委員会設置の要否などを適切に判断することが期待されます。
4 社外取締役の報酬

東京商工リサーチなどにより実施された調査によれば、東証1部に上場する企業(2018年4月末時点)のうち、公開されている社外取締役の報酬の平均額は663万円となっています。
社外取締役は、弁護士や会計会計士、経営者といった学識経験者などが就任することもあります。学識経験者を社外取締役に置くことにより、専門的な知見を企業経営に活かすことができるため、報酬が高額となる場合もあります。
また、デロイトトーマツグループが2020年に実施した「役員報酬サーベイ(2020年版)」によれば、株式関連報酬の導入が増加傾向にあり、特に譲渡制限付株式や株式交付信託の導入が進んでいるようです。
他方で、新型コロナウイルスの影響もあり、役員報酬の減額や自主返上を実行・検討している企業が2割を超えているという結果も出ています。
5 まとめ
社外取締役は、内部のしがらみや利害関係にとらわれることなく、企業の経営状況を外から中立的に把握することができます。
企業にとって、経営の透明性や公正性を確保することは重要な課題でもあるため、社外取締役に期待される役割は大きいといえます。
企業に対しては、社外取締役が十分に役割を発揮できるように、体制等を整備することが求められます。
スタートアップやベンチャー企業では、まだまだ導入が進んでいない社外取締役ですが、今後、社外取締役が担う役割の重要性などから導入を検討する企業が増えていく可能性があります。
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IT・EC・金融(暗号資産・資金決済・投資業)分野を中心に、スタートアップから中小企業、上場企業までの「社長の懐刀」として、契約・規約整備、事業スキーム設計、当局対応まで一気通貫でサポートしています。 法律とビジネス、データサイエンスの視点を掛け合わせ、現場の意思決定を実務的に支えることを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所で、訴訟・紛争案件を中心に企業法務を担当。 2015年~2016年 知的財産権法を専門とする米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M. を取得。コンピューター・ソフトウェア産業における知的財産保護・契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、当時法制化が始まった仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の法令遵守等責任者として登録申請業務に従事。 その後、独立し、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業(投資顧問業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。 2020年8月 トップコート国際法律事務所に参画し、スタートアップから上場企業まで幅広い事業の法律顧問として、IT・EC・フィンテック分野の契約・スキーム設計を手掛ける。 2023年5月 コネクテッドコマース株式会社 取締役CLO就任。EC・小売の現場とマーケティングに関わりながら、生成AIの活用も含めたコンサルティング業務に取り組む。 2025年2月 中小企業診断士試験合格。同年5月、中小企業診断士登録。 2025年9月 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期課程)合格。











