前払式支払手段発行者に必要なライセンスは?2つのタイプごとに解説

はじめに
キャッシュレスが推進されるなか、ここ数年の間に、電子マネーやQRコード決済に代表される「前払式支払手段」を発行する事業者が増えました。
資金決済法は、前払式支払手段についてさまざまな規制を設けているため、これからの発行を検討している事業者は必ず確認しておくことが必要になります。
今回は、前払式支払手段発行者が求められるライセンスなどを中心に弁護士がわかりやすく解説します。
この記事を執筆したのは

- 弁護士・中小企業診断士 勝部 泰之
- 注力:知的財産権・著作権/ライセンス、ブロックチェーン、データ・AI法務
GWU Law LL.M.(知的財産法)
事業の成長とリスクを両立する実務寄りの助言に注力しています。 - 詳しいプロフィールはこちら
1 前払式支払手段の仕組みと種類
(1)前払式支払手段の仕組み
前払式支払手段は、以下のような仕組みになっています。
-
- 利用者が対価を支払い、前払式支払手段の発行を受ける
↓
-
- 商品・サービスの対価の支払いに使用する
↓
- 加盟店は前払式支払手段発行者から代金を受領する(第三者型の場合)
このように、前払式支払手段発行者は、チャージ金額に相当する金銭を事前に徴収したうえで、前払式支払手段を発行することになります(上記1)。
(2)前払式支払手段の種類
前払式支払手段は、主に以下の4つのタイプに分類することができます。
- プリペイドカードによるもの
- ICカードによるもの
- スマートフォンで使うもの
- インターネットで利用するもの
①プリペイドカードによるもの
プリペイドカードによるものは、昔から存在しています。
たとえば、商品券や図書券、テレフォンカードなどが挙げられます。
最近でこそ見かけることが少なくなりましたが、これらも法的には「前払式支払手段」にあたるのです。
②ICカードによるもの
ICカードによるものは、コンビニや銀行等の端末、クレジットカードなどを使って、事前に一定額をチャージして利用します。
たとえば、SuicaやPASMOなどの交通系電子マネー、nanacoやWAONなどの流通系電子マネーが挙げられます。
③スマートフォンで使うもの
近年、QRコードを利用した決済方法が主流になりつつあります。
たとえば、PayPayやLINE Payなどが挙げられます。
利用者が店側のQRコードをスマートフォンで読み込むものと、店側が利用者のスマートフォンに表示されるQRコードを機械で読み込むものがありますが、両者は法的性格において違いはありません。
④インターネットで利用するもの
サーバで払込の記録を管理し、利用者には英数字の符号がその都度発行されます。
たとえば、Amazonギフト券やiTunesギフトカードなどが挙げられます。
これらは主に、インターネット上での買い物やゲームの課金などに利用されています。
2 前払式支払手段発行者に求められるライセンス
前払式支払手段は、それを利用できる商品・サービスの範囲によって、以下の2つの種類に分かれます。
(1)自家型前払式支払手段
発行者が提供する商品・サービスにのみ利用できる前払式支払手段を「自家型前払式支払手段」といいます。
たとえば、ゲーム内でのみ利用できるコインは、自家型前払式支払手段にあたります。
自家型前払式支払手段を発行する場合、登録を受ける必要はありませんが、一定の場合に、必要事項を記載した届出書を内閣総理大臣に提出しなければなりません。
※自家型前払式支払手段発行者の届出義務について詳しく知りたい方は、「資金決済法が規制する「前払式支払手段」とは?2つの規制などを解説」をご覧ください。
(2)第三者型前払式支払手段
発行者以外の加盟店でも利用できる前払式支払手段を「第三者型前払式支払手段」といいます。たとえば、SuicaやPASMOなどの交通系電子マネーは、第三者型前払式支払手段にあたります。
第三者型前払式支払手段を発行しようとする場合、事業者はあらかじめ内閣総理大臣の登録を受けておく必要があります。
以上のように、自家型前払式支払手段については、その利用範囲が発行者の提供する商品・サービスに限られているため、登録制ではなく、届出制が採用されています。
登録制と届出制とでは、ライセンスを取得する際の難易度に違いが出てきます。
そのため、前払式支払手段発行サービスへの参入を検討する際には、自社が開始しようとするサービスについて、その利用範囲を当初から検討しておく必要があります。
3 資金決済法の適用が除外されるケース
以下のような前払式支払手段については、資金決済法の適用が除外されます。
- 乗車券、入場券等
- 発行日から6ヶ月に限り使用できる前払式支払手段
- 従業員に対して発行される自家型前払式支払手段
発行する前払式支払手段について、発行日から6ヶ月という使用期間を設けることにより、事業者は資金決済法上の各種規制を回避することが可能になります。
そのため、比較的負担が重いとされる供託義務についても、前払式支払手段の設計を工夫することにより、回避することができます。
※有効期限を設けて供託義務を回避する方法について、詳しく知りたい方は、「資金決済法にいう「6ヶ月」とは?前払式支払手段の有効期限を解説!」をご覧ください。
4 まとめ
前払式支払手段は、その利用範囲をどう定めるかによって、事業者に求められるライセンスが異なります。その後の手続きや準備にも大きく影響するため、まずは、利用範囲を確定することが必要です。
また並行して、各種規制を回避するための方法を検討することも忘れないようにしましょう。
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IT・EC・金融(暗号資産・資金決済・投資業)分野を中心に、スタートアップから中小企業、上場企業までの「社長の懐刀」として、契約・規約整備、事業スキーム設計、当局対応まで一気通貫でサポートしています。 法律とビジネス、データサイエンスの視点を掛け合わせ、現場の意思決定を実務的に支えることを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所で、訴訟・紛争案件を中心に企業法務を担当。 2015年~2016年 知的財産権法を専門とする米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M. を取得。コンピューター・ソフトウェア産業における知的財産保護・契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、当時法制化が始まった仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の法令遵守等責任者として登録申請業務に従事。 その後、独立し、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業(投資顧問業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。 2020年8月 トップコート国際法律事務所に参画し、スタートアップから上場企業まで幅広い事業の法律顧問として、IT・EC・フィンテック分野の契約・スキーム設計を手掛ける。 2023年5月 コネクテッドコマース株式会社 取締役CLO就任。EC・小売の現場とマーケティングに関わりながら、生成AIの活用も含めたコンサルティング業務に取り組む。 2025年2月 中小企業診断士試験合格。同年5月、中小企業診断士登録。 2025年9月 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期課程)合格。











