はじめに

近時、Airbnb(エアビー)やUberといった「シェアリングエコノミー」サービスがユニコーン企業になるのを見て、自分たちも新しいシェアサービスを開始したいというスタートアップ企業が増えています。

ところが、シェアサービスは新しいビジネスモデルであるため、従来の法律を調べてみても特段そこには「こうすべし」といったルールが書かれていません。そのため、具体的にどのような法律規制があるのかがよくわからないでお困りのスタートアップが多いのではないでしょうか?

近いところでいえば、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法民泊新法)はまさにAirbnb(エアビー)等の民泊のシェアリングエコノミーを規制対象とした法律です。

民泊新法のように、今後もシェアリングエコノミーを対象とした規制が増えていくものと思われます。

そこで今回は、シェアリングエコノミーを用いたビジネスモデルをいくつか例として挙げながら、モデル毎に、その法律規制をITに強い弁護士が解説していきます。

1 シェアリングエコノミーとは?

シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミー」とは、シェアサービス事業者を通して、個人が持っているけど使っていない・余っているモノ(遊休資産)を他人とシェアする(場合によっては売る)サービスのことをいいます。

シェアするモノについては、車のような有形なものから、一定のスキル・サービスのような無形なものまで多岐にわたります。

シェアサービス

代表的なシェアリングサービスとして、メルカリなどの「フリマアプリ」や、Airbnbなどの「民泊サービス」などがあります。みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

シェアリングエコノミーには、貸し手(売り手)は遊休資産を活用することで利益が得られ、借り手(買い手)は欲しいもの・必要なものを簡単に借りたり買ったりすることができる、というメリットがあります。

また、シェアリングエコノミーは社会問題の解決にも役立っています。たとえば、不用品を売るフリマアプリが多くの人に利用されれば、ゴミ(廃棄物)の減少や環境保全にも繋がります。さらに、スキルをシェアするタイプのビジネスモデルは、「フルタイムでは働けないけど少しの時間なら・・・」といった人たちに新たな雇用を生み出しています。

このような背景もあり、現在世界中でたくさんの種類のシェアリングエコノミービジネスが展開されているのです。

では、シェアリングエコノミーを取り締まる法律規制はあるのでしょうか?新たにシェアリングサービスを始めようとしている事業者にとっては大変気になる点だと思います。

次の項目で確認していきましょう。

2 シェアリングエコノミーの法律規制

シェアリングエコノミーの法律規制

現在のところ、シェアリングエコノミーを直接規制する法律はありません。では、何の縛りもなく自由にシェアサービスを行えるのかというと、そうではありません。自社が行おうとしているシェアサービスが、既存の法律により規制を受けないかどうかを検討しなければなりません。

シェアリングエコノミーが成立するには、

  1. 専用のプラットフォーム等で貸し手と借り手をマッチングする
  2. マッチングした者同士で対象物をシェアする

という2つのステップを踏む必要があるため、シェアリングエコノミーに対する法律規制は、1・2それぞれの視点から検討されなければなりません。

具体的には以下のとおりです。

  1. 貸し手と借り手を結びつける「マッチングサービス(プラットフォーム)」への法律規制の有無
  2. 「シェアすること(貸すこと)」への法律規制の有無

現在、①・②に係る行為を直接規制する法律はありません。

もっとも、①については、プラットフォーム上でユーザーとのトラブルが生じる可能性があるため、その場合の対応などを利用規約などで定めておく必要があります。

また、②については、「何をどのようにシェアするか(=ビジネスモデル)」によって、既存の各種法律規制の対象となる可能性があります。

次の項目で、ビジネスモデル別にどのような法律規制があるのか、具体的にみていきましょう。

3 ビジネスモデル別の法律規制

ビジネスモデル別の法律規制

シェアサービスを用いたビジネスモデルは、シェアする対象によって以下の5つに分けることができます。

  1. モノ×シェア
  2. 空間×シェア
  3. スキル×シェア
  4. 移動×シェア
  5. お金×シェア

それぞれのビジネスモデルについて、その具体例と現状の法律規制について見ていきましょう。

(1)モノ×シェア

ご存知の方も多いと思いますが、フリマアプリの「メルカリ」はモノを対象としたシェアサービスの典型例です。「メルカリ」には、多くの人によって出品された商品が掲載されており、購入者が出品されている商品から希望するものを選ぶ仕組みになっています。そのほかにもハンドメイド作品を売買する「minne(ミンネ)」や「Creema(クリーマ)」などがあります。

このように「モノ」を対象としたシェアサービスは、モノを売り買いすることが目的であるため、モノを購入した人はその出品者に対して、モノの代金を支払わなければなりません。この点に関して、確認しておくべき事例があります。以下で詳しく見てみましょう。

    【メルカリ事例】
    従来は、出品者は売買で得た売上金を最大で1年間メルカリに預けておくことができ、また、預けている売上金を直接別の商品の購入代金に充てることが許されていました。

メルカリが採用していたこのような仕組みについて、金融庁は、資金決済法上の「資金移動業」にあたるのではないかと目をつけました。資金移動業にあたる場合、資金移動業の登録が必要になるとともに、出品者から預かっているお金の100%以上の金額を供託することが必要になります(資産保全義務)。資金移動業者に対して資産保全義務が課せられるのは、事業者が倒産などに陥った場合に、出品者が事業者に預けているお金を確実に返還してもらうためです。加えて、ユーザーがアカウントを作る際には、運転免許証などにより本人確認をすることが義務付けられます(本人確認義務)。

現在は、出品者がメルカリに売上金を預けることができる期間は90日間に短縮され、期間を過ぎた場合には預けた売上金は出品者の銀行口座に自動的に振り込まれるようになっています。また、出品者が他の商品を購入する場合に、預けている売上金をそのまま購入代金に充てることはできず、いったんポイントに変えたうえで、そのポイントによって購入するようになっています。

なお、ここでいうポイントは資金決済法上の「前払式支払手段」にあたるため、

  • 前払式支払手段の発行者としての届出
  • 表示義務
  • 供託義務
  • 行政への継続的報告義務
  • 払い戻し義務

といった義務が課されることになります。

以上のように、決済が絡むサービスを行う際には、まずはそのサービスが「資金移動業」にあたるかどうかを検討することが必要になってきます。資金移動業の登録は、特にベンチャー企業などにとっては非常にハードルが高いため事実上不可能だと考えられます。

そのため、いかに資金移動業にあたらないようなサービスを構築するか、ということが極めて重要になってきます。

※前払式支払手段の法律規制について詳しく知りたい方は、「ICOで注意すべき前払式支払手段の3つの法律規制を弁護士が解説!」をご覧ください。

(2)空間×シェア

空き部屋などを宿泊場所として貸し出す民泊サービスや駐車場・会議室などを共有するサービスは、空間をシェアの対象とするサービスです。具体的には、

  • 空き部屋(宿泊サービス)
  • 駐車場
  • 会議室
  • 農地

などをシェアの対象とするサービスです。

具体的には、空き部屋の所有者と宿泊を希望する者とのマッチングを行う「airbnb」や駐車場をシェアするためのサービスである「スマートパーキング」、会議室を貸し借りできるサービスである「スペイシー」などが挙げられます。

このうち、現状法規制の対象となるのは「民泊サービス」と「農地のシェアサービス」のみです。以下で、詳しく見ていきましょう。

①民泊サービス

民泊サービスは、空き部屋の所有者と宿泊を希望する人とをマッチングするサービスです。民泊サービスに対する法規制として挙げられるのが、「住宅宿泊事業法」という法律です。住宅宿泊事業法は、民泊サービスを提供する事業者に対して、

  • 都道府県知事への届出
  • 建物の用途
  • 営業日数の制限

という3つの規制を課しています。

住宅宿泊事業法が施行される前までは、民泊サービスを提供するには「旅館業」の営業許可を受ける必要がありました。ですが、同法の施行により、旅館業法上の営業許可がなくても、都道府県知事に届出をするだけで、民泊サービスを提供できるようになりました。

もっとも、都道府県知事に届け出さえすれば、その後自由に民泊サービスを提供できるというわけではありません。

シェアする空き部屋の建物は「住宅」である必要があり、かつ、実際に営業できる日数は「年間で180日まで」という制限があります。

そのため、シェアする建物の用途が「住宅」ではなく「ホテルや旅館など」であったり、営業日数が180日を超える場合には、住宅宿泊事業法は適用されず、旅館業法が適用されることになります。このような場合、事業者は旅館業法上の営業許可を受ける必要がありますので注意が必要です。

※民泊サービスの法律規制について詳しく知りたい方は、「民泊ビジネスの法律規制とは?違法にならないための4つのポイント!」をご覧ください。

②農地のシェアサービス

シェアサービスは、国内の農業にも波及しています。たとえば、「TABICA」は農業体験のシェアリングを可能にしたサービスです。農業に興味がある都会在住者などを対象に農業を体験してもらうことにより、移住や拠点の増加を促進することを目的としています。

もっとも、「農地」をシェアの対象にしたサービスに対しては、「農地法」による規制が課されます。

ここにいう「農地法」は、安定した国民の食糧を確保するために作られた法律です。そのため、当事者の合意だけで農地を売買・賃借することはできず、農地を売買・賃借するためには、農業委員会または都道府県知事の許可を受けることが必要になります。

仮に、このような許可を受けずに農地の売買・賃借をしてしまうと、重いペナルティを科されることになりますので、注意が必要です。

以上のように、「空間」をシェアする一定のサービスについては、知っておくべき法規制が存在します。このような法規制を無視して事業を行うと、場合によっては、ペナルティの対象になる可能性もありますので、注意するようにしましょう。

(3)スキル×シェア

「スキル」をシェアするサービスもあります。具体的には、

  • 料理の提供(料理人の出張)
  • 家事代行
  • 介護・育児

などをシェアの対象とするサービスです。

たとえば、個人向けに安価でシェフを出張させ料理を提供するためのサービスである「My Chef(マイシェフ)」や、家事代行のシェアサービス「CaSy(カジー)」、子どもの送迎・託児などを依頼できる「AzMama(アズママ)」などといったサービスがあります。

以下では、特に法規制との関係で問題となる「料理提供」に係るサービスについて見ていきたいと思います。

個人向けにシェフを出張させ料理を提供するサービス(出張料理)は、食品の調理や利用者への料理の提供をサービスの内容としており、「飲食店営業」または「喫茶店営業」に含まれると考えられています。そのため、出張料理を内容とするサービスに対しても、飲食店営業などを行う場合に必要となる営業許可が必要になります。この営業許可を取るためには、条件として許可申請者が栄養士や調理師などの「資格者(食品衛生責任者)」であることが必要です。

このように、出張料理をシェアするサービスにおいて、主に問題となる法規制は食品衛生法です。仮に、食品衛生法上求められている営業許可などを受けずにサービスを行ってしまうと、重いペナルティを科される可能性があります。このようなことにならないためにも、法規制としての食品衛生法をきちんと理解しておくことが重要です。

(4)移動×シェア

シェアリングエコノミーの中でも一番知られている「カーシェアリングサービス」は、「移動」をシェアするサービスです。たとえば、コインパーキングで有名なTimes(タイムズ)が運営する「タイムズカープラス」や、一般のドライバーと移動希望者とをマッチングする「Uber」などがあります。

以上のような「移動」をシェアするサービスですが、このサービスは大きく「ライドシェアリング」と「カーシェアリング」とに分けることができます。

「ライドシェアリング」とは、簡単にいうと、「相乗り」のことをいい、1台の車に複数人で乗り、高速代金と燃料費を人数に応じて精算します。他方で、「カーシェアリング」とは、登録を受けた会員の間で特定の自動車を共同使用するサービスのことをいいます。

以上の2つのサービスにおける法規制について、以下で詳しく見ていきましょう。

①ライドシェアリングサービスの場合

ライドシェアリングサービスは、相乗りをする自動車の所有者と、相乗りをする複数の利用者とをマッチングさせるサービスです。

この点、自家用自動車で他人を運送する場合には道路運送法との関係で問題となります。具体的には、

  1. 自家用自動車であること
  2. 有償であること
  3. 運送の用に供すること

という3つの要件をすべてみたしていると、その事業は「旅客自動車運送事業」に該当し、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。旅客自動車運送事業者の例としては、タクシーやハイヤー、路線バスなどが挙げられます。

ここでいう「自家用自動車」とは、「有料で旅客や貨物を運送するための自動車」にあてはまることなく一般的な用途(運送の用途)で使われる自動車のことをいいます。そのため、旅客自動車運送事業の要件である①と③はみたされているといえます。そうすると、ここで問題となるのは、相乗り行為が有償で行われているかどうかという点になります。たとえば、自動車の所有者が利用者から運送の対価として金銭などを受け取っていれば、相乗り行為について「有償」であるといえます。

もっとも、国土交通省の通達によると、以下のような場合には「有償性」が否定される可能性があります。

  • 利用者から任意に謝礼の趣旨で支払われた場合
  • 利用者による支払いが金銭的に換算が困難・不可能であるような場合
  • 運送行為がなければ発生しないことが明らかな費用

以上からすると、運送行為と対価性がある価値のあるものを支払う場合で上記①と③の要件を満たす場合には、旅客自動車運送事業にあたる可能性が高いといえます。

この点、ライドシェアリングサービスである「notteco」において、相乗りを行う自動車の所有者が受け取る対価は、ガソリン代や駐車場料金など、「運送行為がなければ発生しないことが明らかな費用」だけです。

そのため、このようなサービスは旅客自動車運送事業にあたらず、道路運送法による規制を受けないものと考えられています。

②カーシェアリングサービスの場合

カーシェアリングサービスは、自動車を貸し出したいと考えている個人と、自動車を利用したいと考えている個人とをマッチングさせるサービスです。

ここでは、「利用者に自家用自動車を貸し渡す行為」が道路運送法との関係で問題となります。具体的には、このような貸渡し行為がレンタカー事業とよく似ているため、レンタカー事業をする際に必要となる国土交通大臣の許可が、カーシェアリングサービスを行う際にも必要になるのではないか、という点が問題になります。

この点、レンタカー事業(自家用自動車有償貸渡事業)にあたるといえるためには、以下の要件を備えている必要があります。

  • 自家用自動車であること
  • 有償であること
  • 事業として貸渡していること

もっとも、自動車を借りた人が自動車の使用者である場合は、レンタカー事業に該当しません。

カーシェアリングサービスについては、これらの要件をすべてみたしているように考えられます。そのため、カーシェアリングサービスを始めるにあたっては、国土交通大臣の許可が必要になってきそうです。

ですが、自動車の所有者がカーシェアリングサービスを利用する最大のメリットは、簡易な手続きで遊休資産である自動車を貸し出し、収入を得られることにあります。

にもかかわらず、自動車を貸し出す都度、国土交通大臣の許可を受けなければならないとすると、そのようなサービスを利用する人は極めて少ないでしょう。

そこで、カーシェアリングサービスがレンタカー事業にあたらないよう、スキームを検討することが必要になってきます。

この点、カーシェアリングサービスの中でも人気の高いAnyca(エニカ)CaFoRe(カフォレ)は、以下のように独自のスキームを構築し、「レンタカー事業」の適用を避ける形で自社サービスを展開しています。

    【Anyca(エニカ)】
    自動車の所有者と利用者との間で「共同使用契約」を締結し、その旨を利用規約に記載する

共同使用契約を結ぶことで、自動車を貸し渡すというのではなく、共同で使用するということを前提に、「レンタカー事業」の適用を避けるスキームです。

    【CaFoRe(カフォレ)】
    利用者から自動車の所有者に支払われる金銭の名目を、「情報提供料、独占交渉権の対価」とする

利用者から支払われる対価の名目を「情報提供料」などとすることで、「レンタカー事業」の適用を避けるスキームです。

もっとも、これらのスキームはいずれも合法であると公的にお墨付きをもらっているわけではありませんので、その点は注意が必要です。

※カーシェアリングの法的問題について詳しく知りたい方は、「5分でわかる!カーシェアリングの法的問題と対応策【IT企業向け】」をご覧ください。

(5)お金×シェア

お金を貸したい人(レンダー)とお金を借りたい人・企業(ボロワー)とをマッチングさせるサービスを「ソーシャルレンディング」といいます。欧米では人気の高いソーシャルレンディングですが、このようなサービスを日本で行う場合、貸金業法との関係で問題になります。

具体的には、事業としてお金を貸し付ける場合には、「貸金業者」として都道府県知事などの登録を受ける必要があります。ソーシャルレンディングについても、レンダーが反復継続して(事業として)お金を貸し付けるような場合には貸金業にあたる可能性があります。

にもかかわらず、貸金業者としての登録を受けずに、貸金業を行った場合には、

  • 最大10年の懲役
  • 最大3,000万円の罰金

のどちらか、もしくは両方が科される可能性があります。

そのため、ソーシャルレンディングを行うにあたっては、レンダーが貸金業の登録を受けておくことが安心ですが、貸金業の登録は一定の財産的基盤や体制整備が条件として求められており、決して低いハードルではありません。そのため、サービス自体が利用されない可能性が出てきます。

そこで、レンダーにおいて貸金業法上の登録を回避できるスキームが必要になってきます。

この点、日本でソーシャルレンディングを行うmaneoでは、レンダーとの間で匿名組合契約、ボロワーとの間で金銭消費貸借契約を結び、ボロワーは貸金業の登録を受けたmaneoからお金を借りるという仕組みを採っています。

以下の図をご覧ください。

ソーシャルレンディング

ボロワーから融資依頼を受けたmaneoは、

    ①レンダーから投資を受ける(匿名組合契約)

    ②maneoからボロワーに融資(金銭消費貸借契約)

    ③ボロワーからmaneoに返済

    ④ボロワーから受けた返済をレンダーに分配

このような仕組みによれば、レンダーはmaneoに対して投資をしていることになり、レンダーが貸金業法上の登録を求められることはなくなります。

 

以上に見てきたように、シェアリングエコノミーにはさまざまなビジネスモデルがあり、さらにこれからも新しいモデルが出てくることが期待されます。

もっとも、それぞれのモデルには、独自の法的問題が存在するため、その点を念頭に置いたうえで法規制に抵触しないスキームを構築するといった企業努力が求められます。

また、多くのビジネスモデルが出てきている中で、今後の課題もはっきりとしてきています。最後の項目で、今後の課題について見ていくとともに、その対応策について詳しく見ていきたいと思います。

4 シェアリングエコノミーの今後の課題(問題点)と対応策

シェアリングエコノミーの課題

シェアリングエコノミーの今後の課題として考えられるのは、以下の6点です。

  1. 安全性の確保
  2. 保険・補償制度
  3. 法整備、既存事業者との利害調整
  4. 課税漏れ
  5. デジタル格差
  6. 抵抗感の解消

これらの課題をクリアするためには、どのような対応が求められるのでしょうか。

以下で、順番に見ていきましょう。

(1)安全性の確保

シェアリングエコノミーにおいては、提供者・利用者いずれも個人であることが通常です。そのため、提供者によるサービスが劣悪であったり、利用者のマナーが極めて悪かったり、といったことが想定され、現にそのようなトラブルが報告されています。

また、個人間での取引であるため、企業と比べ安全面などにおいて劣る部分があることも否定できません。

このような理由により、シェアリングエコノミーではトラブルなどが起きやすく、トラブルが起きた後の対応も万全であるとはいえません。

それでは、このような課題を克服するためにどのような対応が必要になってくるのでしょうか。考えられる対応策は、以下の3つです。

  1. サービスの質の向上と支払いの保証
  2. 安全性への配慮の強化
  3. 本人確認

以下で、簡単に見てみましょう。

①サービスの質の向上と支払いの保証

多くのプラットフォームでは、サービスの提供者とその利用者とがお互いに相手を評価する「相互評価制度」を設けています。相互評価制度により、いい加減なサービスや悪質な利用者をあらかじめ認識することができます。

また、当事者間で直接やり取りするのではなく、プラットフォームを通じて支払いを行うことで、代金の未払いや支払後にサービスが提供されないといったトラブルを未然に防ぐことができます。

②安全性への配慮の強化

現状では、事業者に対し、安全性への配慮の強化について注意喚起することや研修を実施することぐらいしかできません。

もっとも、民泊新法の成立に見られるように、今後さまざまな法規制が設けられ、安全性の強化などを目的としたルールが確立されていくことが期待されています。

③本人確認

シェアリングエコノミーに限らず、サービスを受ける際には本人確認が実施されることが多くなってきました。

公的な身分証などにより利用者の本人確認をしておくことにより、信頼関係を構築できるとともに、トラブルが起きた場合にもしっかりとした対処ができます。

(2)保険・補償制度

シェアリングエコノミーを利用して、事故・トラブルなどが起きた場合、保険が十分に整備されていないと十分な補償を受けられません。

シェアリングエコノミーは、まだまだ新しいビジネスモデルであるため、どういったトラブルが想定されるかなど、保険でカバーしきれていないことが多いのが現状です。

このような現状を踏まえ、近頃ではシェアリングエコノミーに対応した保険が出てきています。たとえば、三井住友海上の民泊専用保険は、民泊によるトラブルや事故などを補償する保険であり、通常の保険でカバーしきれていない部分も、こういった専用の保険がカバーしてくれるのです。

(3)法整備、既存事業者との利害調整

繰り返しになりますが、シェアリングエコノミーはまだまだ新しい分野のサービスであるため、法整備も十分であるとはいえません。

また、シェアリングエコノミーは既にそのサービスを展開している既存事業者との対立を生みやすいということがいえます。そのため、既存事業者との利害調整が必要になってきます。

シェアリングエコノミーへの事業参入を検討している企業が増えてきている現状を踏まえると、こういった状況に対応するためには、早急に法整備を進めるほかありません。もっとも、一言に法整備といっても、既存事業者に対する配慮やサービスそのものに対する配慮が求められるため、バランスのとれた法整備が必要になってきます。

(4)課税漏れ

シェアリングエコノミーでは、サービスの提供者である個人が一定の収入を得ることになります。本来であれば、このような収入に対しても公正に課税される必要があることから、収入を得た個人は確定申告をしなければなりません。

もっとも、日本ではシェアリングエコノミーによる課税漏れが話題として上がったように、個人で確定申告をする習慣がありません。

こういった現状に対応するためには、プラットフォームを提供する事業者側からの一定の情報提供であったり、納税を促す仕組みづくりなどが効果的であると考えられます。

以上のように、事業者との不公平感を生まないためにも、課税漏れを防ぐための対応が早急に求められます。

(5)デジタル格差

シェアリングエコノミーを利用するためには、PCやスマホなど、インターネット環境が必要になってきます。もっとも、誰もが適当なデジタル機器を持っているわけではありませんし、リテラシーの問題もあります。そのため、「デジタルデバイド」の問題が指摘されています。

デジタルデバイド」とは、情報通信技術を使って恩恵を受ける人と、反対に使うことができずに恩恵を受けられない人との間に生ずる知識・機会などの格差のことをいいます。インターネットの利用率は年齢や所得によって変動する傾向にあります。そのため、高齢者・低所得層が若年層・高所得層に等しくシェアリングエコノミーを利用するチャンスを得ているとまではいえません。

そのため、このような格差をなくすための対応が必要になってきます。もっとも、近時は無料のWi-Fiスポットが設けられた商業施設なども増えてきているため、より多くの人がインターネット環境を得ることが可能になりました。

他方で、プラットフォームなどによるリテラシー教育もデジタルデバイドをなくすために有益であるといえます。

実際に、Airbnbはイタリアのシニア層に向けたリテラシー教育をするために、リテラシー教育スクールをミラノ市と開催しています。

(6)抵抗感の解消

最後の課題として、シェアリングエコノミーそのものに対する抵抗感が挙げられます。そもそもシェアリングエコノミーがどのようなサービスなのか、そこまで認知されていないということも原因の一つであると考えられます。また、個人によるサービスの提供に不安を覚える人も少なくありません。

この点は、シェアリングエコノミーの利用によって受けるメリットや安全性などについて、事業者が積極的にPRしていくことで個人が抱く抵抗感を解消していくほかないように思われます。

 

以上のように、シェアリングエコノミーにはまだまだ多くの課題が残されています。このような課題を解決するためにも、サービスを提供する事業者を含め、政府や自治体が主体となった今後の啓蒙活動が期待されます。

5 小括

まとめ

シェアリングエコノミーは、ここ数年で急速に拡大したサービスのうちの一つです。そのため、まだまだ法整備が十分ではありませんが、それでもビジネスモデルに応じて検討しなければならない法規制が存在します。

まだまだ課題の多い分野ではありますが、現状においては、既存の法規制をきちんと検討・遵守したうえでサービスを展開していくことが極めて重要です。

6 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 「シェアリングエコノミー」とは、シェアサービス事業者を通して、個人が持っている遊休資産を他人とシェアするサービスのことをいう
  • 現在のところ、シェアリングエコノミーを直接規制する法律はない
  • シェアサービスを用いたビジネスモデルは、シェアする対象によって、①モノ×シェア、②空間×シェア、③スキル×シェア、④移動×シェア、⑤お金×シェアなどに分かれる
  • 決済が絡むサービスを行う際には、「資金移動業」にあたるかどうかを検討することが必要である
  • 民泊サービスには、住宅宿泊事業法が適用される
  • 「農地」をシェアする場合には、「農地法」による規制が課される
  • 出張料理をシェアするサービスとの関係で主に問題となる法規制は食品衛生法である
  • カーシェアリングサービスを行う際には、そのサービスがレンタカー事業にあたらないよう、スキームを検討することが必要である
  • ソーシャルレンディングを行う際には、レンダーにおいて貸金業法上の登録を回避できるスキームが必要になってくる
  • シェアリングエコノミーの今後の課題として、①安全性の確保、②保険・補償制度、③法整備、既存事業者との利害調整、④課税漏れ、⑤デジタル格差、⑥抵抗感の解消の6点が挙げられる